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著者
岩田 修二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-1, 2006 (Released:2010-06-02)
著者
川端 光昭 佐野 可寸志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.246-257, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
18

持続的な地域公共交通網形成には,地域の実情に合わせ多様な運行主体の組合せを検討する必要がある.本稿では,タクシー事業者の地域公共交通への参画状況,自治体のタクシー事業者の活用意向を明らかにする.加えて,先行事例の分析を通して,官民協働による地域公共交通のマネジメントに役立つ知見を得ることを目的とする.おおよそ半数の自治体が,公共交通事業をタクシー事業者に委託しており,タクシー事業者の参画が進んでいることがわかった.しかし,事業委託による運転士増等の雇用創出効果は限定的であること,委託事業者との情報共有が不十分な自治体が多いことが明らかとなった.先行事例の分析を通して,持続的な公共交通網形成には,タクシー事業者の経営資源を有効活用することの重要性を確認した.さらに,タクシー事業者の経営体力を十分に情報共有・理解し,実行可能な公共交通サービスを官民協働で制度設計するプロセスが不可欠と言える.
著者
瀬戸 芳一 福嶋 アダム 高橋 日出男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.223-232, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

本研究では,夏季の関東地方南部を対象として,風向の定常性を示す定常度や風向の日変化に着目し,都市の気温分布とも密接に関連する局地風系の交替時刻の地域分布を検討した.日中と夜間との風向変化が内陸で明瞭な海陸風日を抽出し,定常度の変化から判断した交替時刻の等時刻線を描いたところ,日中には海風前線に対応する海岸線に平行した等時刻線の内陸への進行が認められた.一方,夜間の陸風への交替は海風よりも進行速度が遅く,翌5時においても東京都区部の大部分では陸風への交替がみられなかった.東京都区部など海岸に近い地域ほど,1日を通して南寄りの風が卓越し陸風が到達しない日数の割合が大きく,特に東京湾岸では海陸風日のうちの約60%を占めた.そこで,海陸風日の中で沿岸部まで陸風が到達した日について改めて交替時刻を求めたところ,陸風への交替は海陸風日よりも早く,翌5時には東京都区部のほぼ全域において陸風への交替が認められた.
著者
大和 広明 浜田 崇 田中 博春 栗林 正俊
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.197-212, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本論文の目的は,長野市を対象にヒートアイランド現象と冷気湖および山風との関係について,土地利用から求めた都市化率と標高に着目して明らかにすることである.寒候期の晴天静穏夜間の100事例を対象に日没時刻を基準とした気温のコンポジット解析をした.日没後2時間半以降に気温が都市部で高く郊外で低い,明瞭なヒートアイランド現象の気温分布が見られた.日没後数時間後には冷気湖も発達し,日出前まで冷気湖の底に明瞭なヒートアイランド現象を伴う気温分布が確認された.長野市中心部では山風が吹いている時に,中立に近い都市境界層が形成されていた.山風による力学的混合により都市境界層が維持されていた可能性が考えられた.また,日没後6時間過ぎ以降は郊外から都市に向かう冷気の流れの存在が示唆され,この流れが冷気湖の底でヒートアイランド現象の強さを若干弱めるものの,ヒートアイランド現象の気温分布を維持していたと考えられた.
著者
日下 博幸 猪狩 浩介 小久保 礼子 佐藤 拓人 ドアン グアン ヴァン
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.180-196, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
58
被引用文献数
1 1

本研究は,商業地,住宅地,緑地という異なる土地利用を1~2 km以内に有する東京都渋谷区を対象に,土地利用や人間活動の違いが気温とWBGTの非一様性の形成に及ぼす影響を観測によって明らかにした.観測結果から,日中では,住宅地の気温が商業地に比べてやや高く,緑地が最も低いことが明らかとなった.夜間は,商業地の気温が最も高く,緑地が最も低かった.また,緑地では夜間に接地逆転層が認められる一方で,商業地では夜間に少なくとも観測範囲内(地上から高度33 mまで)では絶対不安定となっていた.熱画像観測は,昼夜を問わず,商業地と住宅地で同程度の表面温度であることを示した.これらの結果は,商業地の大きな表面積・建物体積・熱容量による大きな熱慣性と人工排熱によると考えられる.この結果は,多層都市キャノピーモデルを用いた数値実験からも支持された.WBGTの場合は,気温とは異なり,商業地と緑地で大きな差はなかった.これは,緑地の高い湿度が原因であることが分かった.
著者
横山 貴史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.116-129, 2019 (Released:2019-03-20)
参考文献数
21

アルギン酸は,褐藻類から作られる安定剤として,食料品生産のみならず様々な工業生産に欠かせない製品である.南米,チリ共和国は,世界のアルギン酸原料海藻類の一大生産地である.本稿は,チリにおける近年のアルギン酸原料海藻類の生産動向を,現地調査をもとにして報告するものである.チリでは,2000年代初頭から,アルギン酸原料海藻類生産の急増がみられた.その要因には,中国国内の養殖コンブの工業用から食用への利用用途の変化を背景とした中国の購買力の高まりがあった.そのため,海藻価格は上昇し,第3州ウアスコ地区では,海藻採取人の所得が上昇した.近年では,海藻採取が行われていなかった地域でも海藻採取が開始されるなど,チリではアルギン酸の原料海藻類の採取が過熱している.
著者
岩間 絹世
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.59-73, 2017 (Released:2017-06-09)
参考文献数
28

兵庫県豊岡市城崎温泉は外湯周辺に集積する小規模宿泊施設が中心であり,これらの宿泊客は近隣府県からの若者や女性が多く,欧米からの外国人観光客も増加している.近年の城崎温泉の活況は2000年代後半から取り組まれた観光まちづくりの成果ともいえる.本研究では近年の城崎温泉の観光事業,宿泊施設,宿泊客の特徴を明らかにし,観光まちづくりを推進するリーダー集団の人間関係に着目した.観光まちづくりは20歳代~40歳代の若手・壮年の男性がリーダー集団となり,観光業以外の職業の住民も参加する点に特色があることが分かった.歴史的にみると,内湯騒動の経験が温泉街全体で栄える「共存共栄の精神」を生み,伝統的祭礼が異年齢でさまざまな職業の人々を結びつけ,若手・壮年に委任する祭礼の仕組みが観光まちづくりも若手・壮年の男性に任せるという地域特性を形成したことが明らかになった.最近では観光事業への女性の参加や周辺地域との協力関係もみられる.
著者
池口 明子 岡本 耕平
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.48-58, 2013 (Released:2013-04-19)
参考文献数
21

本稿は,海外フィールドワークによる地理的知の還元の1つのモデルとして,大学地理学教育への還元を提案し,その課題をラオスにおける実践例に基づき検討した.市場経済化にともなう土地利用計画の変化や観光化を受けて,ラオス国立大学ではGIS(地理情報システム)や地誌教育のニーズが高まっている.GIS教育への還元において筆者らは,単にコンピューターの操作や地図情報の提供ではなく,地図を作成するプロセスを重視し,ラオス農村で自ら用いたGPSによるデータ作成法を教員らと実践した.地誌教育においてはフィールドワークの成果に合わせて日本の農山漁村の問題も提示するなどの工夫により,調査する側とされる側の双方の研究教育機関による地理的知の創造を目指す必要がある.
著者
栗林 賢
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.463-472, 2018 (Released:2018-10-04)
参考文献数
9

近年,廃棄されるはずの食品を企業などから収集し,食品の支援を必要とする生活困窮者などに再分配するフードバンク団体の活動が活発になってきている.しかし,地方に立地する団体の多くは東京に立地するセカンドハーベスト・ジャパン(以下,2HJ)からの食品の転送によって活動を維持できている状況にある.そこで本研究では,2HJからの転送を受けてこなかったフードバンク団体がどのようにして食品調達先を確保し,活動を維持してきたのかを,東京から遠距離にある北海道に立地するフードバンク団体を事例に明らかにした.その結果,事例としたフードバンク団体の中でも,活動を開始する以前から近接する他団体との繋がりを有していた団体は,活動初期から食品提供を受けたり,調達先を紹介してもらっていた.一方で,他団体との繋がりを有していなかった事例でも,調達方法の工夫や活動の周知によって食品調達先を確保し,活動を維持できていることもわかった.
著者
多田 忠義
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.347-358, 2018 (Released:2018-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
池田 真利子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.164-185, 2016-09-30 (Released:2016-10-11)
参考文献数
60

本稿の目的は,EUおよびドイツにおける文化創造産業(以下,KKW)政策の策定経緯を注視しつつ,特に5州(N=W,ハンブルク,ブレーメン,ベルリン,ザクセン)のKKW産業構造と空間的特性をみることにより,ドイツのKKW政策の特徴を検討することにある.ドイツにおけるKKWは,経済危機時の経済的安定性や,欧州文化首都等,創造都市への国際的機運の高まりを背景に新しい産業としての認識が高まった.ドイツのKKW政策は,特に都市空間との関連性が顕著であり,都市経済および都市構造への影響と多分に関わると推測される.
著者
畠山 輝雄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.476-488, 2016 (Released:2017-03-29)
参考文献数
22
被引用文献数
2

本稿は,徳島県三好市三野地区太刀野山地域を事例に,過疎地域における集落維持を目的とした廃校利活用事業の可能性と,同事業が地域住民へ及ぼす影響について明らかにした.太刀野山地域の廃校利活用事業は,域外からの社会的企業が三好市の休廃校等利活用事業を活用し,介護保険事業の地域密着型通所介護や地域支援事業(介護予防)を核としたコミュニティビジネスを実施している.同事業の結果,利用者の活動増加や健康増進がはかれただけでなく,太刀野山地域の住民の集落維持意識が向上した.このように,同事業は公民連携の「新しい公共」による地域づくりとしての事例だけでなく,近年過疎地域の地域づくりのあり方として議論されている「ネオ内発的発展論」の事例として,研究蓄積に寄与できると考える.
著者
杉本 興運
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.246-260, 2017 (Released:2017-12-16)
参考文献数
18

本研究では,シンガポールが大きな観光発展を遂げ,外国人訪問客の多く訪れる国際観光拠点となった過程を,観光やMICEに関する政策や資源・施設開発の側面から明らかにする.シンガポールにおける現在までの観光産業の成功の背景には,地理的・言語的優位性を活かしながら,政府主導による観光立国への積極的な取組みを継続してきたことがある.独立当初には,観光振興は外貨獲得や雇用創出のための手段であったが,2010年以降のMICEの発展や統合型リゾートの成功にみられるように,現在では国家の国際競争力を高める手段としても重要な役割をもつようになった.特に,最近の中心地区における話題性の高い大規模な観光・MICE施設開発が,拠点機能の向上に大きく寄与している.
著者
一ノ瀬 俊明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.229-235, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
16

地理学の成果を政策立案に生かすための行政支援の事例として,世界的に高い評価を得たヒートアイランド対策の体系化,および国連環境計画の地球版環境白書など,従前より筆者が関わってきた地理学のアウトリーチ活動を振り返り,アウトリーチ活動への提言をまとめた.研究活動が少なからぬ公的資金で支えられている今日,アウトリーチ活動は単なる社会奉仕にとどまらない.研究活動を見直し,強めていくプロセスでもある.とりわけ,アウトリーチ活動を通じて得られた各種ステイクホルダーからのリアクションを,自身の研究活動にフィードバックしていくことが重要である.
著者
野澤 一博
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.24-49, 2018 (Released:2018-03-16)
参考文献数
21

地域経済活性化のために,新たな技術を導入するなどして,競争力を失った地域産業の再生を図る取組みが各地で行われている.北陸地方では繊維産業の競争力強化のために,県が中心となり国の助成事業を活用し,炭素繊維複合材の開発を積極的に行っている.本稿では,北陸地域で展開されている炭素繊維複合材開発の状況と政策展開を明らかにし,産地企業の新技術を用いた実用化の取組みについて分析する.炭素繊維複合材に関して,石川県では大学を中心に研究開発が行われており,企業間のつながりもあり実用化の動きに広がりが見られた.一方,福井県ではコア技術をもとに公設試が中心となり,実用化の展開が図られていた.炭素繊維複合材の開発は,従来産業である繊維産業産地の高度化というより,将来,航空機や自動車部品という全く違った産業のサプライチェーンの一部となる可能性がある.
著者
古関 喜之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.261-279, 2017 (Released:2017-12-16)
参考文献数
20

バナナの生産・流通・消費においてグローバル化が進んでおり,多国籍アグリビジネスは重要な役割を演じている.しかし,日本と台湾との間には,植民地時代を背景として,独特な生産と流通の仕組みが維持され,日本市場は台湾バナナにとって依然として重要な存在である.日本市場がグローバル化の影響を受けて多様化する中で,台湾はバナナの生産と輸出において大きな変化を迫られている.本稿では,輸出自由化後の日本向けバナナ産業の特徴について検討した.輸出自由化後,台湾では,国内価格の影響を受けて輸出価格が決定されるようになった.日本では,台湾バナナの品質が向上し,流通過程の統合の動きがみられた.しかし,依然,伝統的な流通が残っており,川下主導で価格決定される日本側との差異が浮き彫りになった.製糖会社の土地による輸出用バナナ栽培では,借地面積に上限があり,生産者を保護しながら輸出強化を図るという新たな局面を迎えている.
著者
大和 広明 森島 済 赤坂 郁美 三上 岳彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.74-84, 2017 (Released:2017-07-27)
参考文献数
12
被引用文献数
1

関東地方で実施した高密度観測から得られた夏季の気温と気圧データに対して主成分分析を行い,これらの時空間変動にみられる特徴を明らかにした.気温場と気圧場それぞれの上位3主成分には,海陸風循環,ヒートアイランド現象,北東気流に関係した空間分布が認められ,相互の主成分間に有意な相関関係が存在する.これらの気温と気圧の関係は,いずれも相対的に気温が高い(低い)地域で気圧が低い(高い)傾向を示す.晴天日の気温と気圧の分布には明瞭な日変化が認められ,日中には海風の発達に伴い,関東平野の内陸部で相対的に高温低圧となり,日没後から夜間にかけては,ヒートアイランド現象が顕在化して東京都心から北側郊外にかけての都市部で相対的な高温低圧傾向が認められた.これらの観測事実に基づいた解析から,晴天日の気温と気圧の主要な日変化パターンに,内陸部の高温低圧に伴う海風循環とヒートアイランド現象に伴う高温低圧が認められた.