著者
大久保 直美 辻 俊明
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.344-353, 2013 (Released:2013-11-16)
参考文献数
13
被引用文献数
12 34

チューリップの花の香りの質は,カンキツ様の香り,ハチミツ様の香り,青臭い香りなど,バラエティに富んでいる.そこで,チューリップの香りの質の多様性を化学的に明らかにするために,香りに特徴のある 51 品種のチューリップの香りを採取し,GC-MS を用いて解析した.チューリップの主要香気成分は,5 つのモノテルペノイド(ユーカリプトール,リナロール,d-リモネン,トランス-β-オシメン,α-ピネン),4 つのセスキテルペン(カリオフィレン,α-ファルネセン,ゲラニルアセトン,β-イオノン),6 つの芳香族化合物(アセトフェノン,ベンズアルデヒド,ベンジルアルコール,3,5-ジメトキシトルエン,サリチル酸メチル,2-フェニルエタノール),5 つの脂肪酸誘導体(デカナール,2-ヘキサナール,シス-3-ヘキサノール,シス-3-酢酸ヘキセニル,オクタナール)であった.主要香気成分の割合と生花の官能評価から,チューリップの香りは,アニス,シトラス,フルーティ,グリーン,ハーバル,ハーバル・ハニー,ロージィ,スパイシー,ウッディの 9 種類に分類された.
著者
細見 彰洋 三輪 由佳 真野 隆司
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.215-221, 2013 (Released:2013-10-12)
参考文献数
20
被引用文献数
4 8

果実品質向上,凍害や獣害防止など,複合的な機能を期待して考案したイチジクの主枝高設樹形で,地上 180 cm の主枝から結果枝を垂下させる新樹形を考案し,栽植密度を変えた異なる樹勢条件で,‘桝井ドーフィン’樹の生育と果実生産への影響を調査した.新樹形樹では,従来の一文字整枝樹(対照樹)に比べて展葉日が 2~3 日早くなった.また,新樹形樹では新梢先端部の肥大生長(先口径,比葉重)が抑制されたが,新梢の伸長生長は対照樹と差がなかった.結果枝上の副梢や結果枝以外の新梢は,栽植密度が高まるほど多発し,特に前者は,従来樹形樹に比べ新樹形樹で秋季に多発した.強勢な新梢の基部に発生し易い不着果は,新樹形樹の方が抑制された.果実の着色は,新梢の先端付近では新樹形樹の方が抑制されたが,基部付近では向上した.また,果実肥大は,全般に新樹形樹の方が抑制される傾向にあった.果実着色や果実肥大におけるこれらの特徴には,新梢の垂下による採光条件の変化が作用している可能性が考えられた.以上,考案した新樹形については,えき芽の多発や果実の肥大不足を避けるための,より適切な新梢誘引法の検討が必要なものの,新梢下位節の果実の着生や着色を促進する利点が明らかとなった.
著者
河崎 靖 松尾 哲 鈴木 克己 金山 喜則 金濱 耕基
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.322-327, 2013 (Released:2013-11-16)
参考文献数
25
被引用文献数
11 13

トマト施設生産において高温障害を緩和する低コストな冷却技術が求められている.本研究では根域冷却の生理学的・形態学的知見を得ることを目的に,養液栽培されたトマトの培養液を最適温度と考えられるおよそ 25°Cに冷却して 2 週間栽培し,生育,養分吸収,根の活性としての出液速度および根呼吸速度,根の IAA 濃度および根の内部形態について調査した.高気温条件下で根域を最適な温度に冷却することで,根の RGR が増加し,その後地上部の RGR も増加した.根の IAA 含量は根の RGR と高い正の相関が認められた.根域冷却により出液速度,根呼吸速度が増加し,同様に Ca および Mg 吸収が促進された.また,根先端付近の木部発達も認められた.以上のことから,高温期の根域冷却は,根の活性および IAA 濃度を増加させることで,根の生育および木部発達を介した養分吸収を促進し,遅れて地上部の生育を促進することが示唆された.
著者
加藤 雅也
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.219-233, 2012 (Released:2012-07-21)
参考文献数
52
被引用文献数
52 81

カンキツは,果実に様々なカロテノイドが含まれる.カンキツ果実のカロテノイド含量および組成は,品種間において非常に多様である.ウンシュウミカン(Citrus unshiu Marc.)は,砂じょうに β-クリプトキサンチンを主に集積する.バレンシアオレンジ(Citrus sinensis Osbeck)は,砂じょうに主にビオラキサンチンを集積する.リスボンレモン(Citrus limon Burm.f.)は,砂じょうに低レベルのカロテノイドを集積する.カンキツ果実の成熟過程におけるカロテノド集積メカニズムを解明するために,カロテノイドプロフィールの異なる上記カンキツ 3 種を用いて,カロテノイド生合成および代謝分解に関わる遺伝子の発現を比較,調査した.その結果,カンキツ果実のフラベドおよび砂じょうにおけるカロテノイドの集積は,カロテノイド生合成および代謝分解に関わる遺伝子の発現により,高度に調節されていることが明らかとなった.‘たまみ’は,‘清見’(Citrus unshiu Marc. × Citrus sinensis Osbeck)に‘ウィルキング’(Citrus nobilis Lour. × Citrus deliciosa Ten.)を交雑して,育成された品種である.砂じょうに,ウンシュウミカンより多く β-クリプトキサンチンを蓄積する‘たまみ’における β-クリプトキサンチンの集積メカニズムを解明するために,‘たまみ’のカロテノイド生合成および代謝分解に関わる遺伝子の発現を調査した.その結果,‘たまみ’における β-クリプトキサンチンの集積メカニズムは,ウンシュウミカンと同様のメカニズムであることが明らかとなった.また,最近の研究では,培養した砂じょうを用いて,カロテノイド含量および組成を調節する要因について調査した.
著者
猿渡 博輝 首藤-中野 友香 中野 兼宏 比良松 道一 尾崎 行生 大久保 敬
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.312-317, 2008
被引用文献数
7

タカサゴユリ(<i>Lilium formosanum</i> Wallace)は,種子発芽後 1 年以内に開花する早期開花性および複数花茎抽苔の形質を持つ.これらの形質の育種的利用価値を検討するために,花柱切断授粉法により種子親としてタカサゴユリ,花粉親としてヤマユリ(<i>L. auratum</i>),カノコユリ(<i>L.</i> <i>speciosum</i>),リーガルユリ(<i>L. regale</i>),'ロリポップ','ピンクタイガー','ザザ','ル・レーヴ','マルコ・ポーロ'および'アフリカンクィーン'を用いた 9 組み合わせの種間交雑を行い,その後,子房切片培養を行った.すべての交雑組み合わせで発芽が観察され,雑種を 53 個体得ることができた.そのうち 30 個体(56.6%)および同様の手法を用いて作出したタカサゴユリ自家交配実生は発芽後 24 か月以内に開花した.開花雑種個体のうち 11 個体(36.7%)では 2~4 本の花茎が抽台した.早期開花性,複数花茎抽苔および有色花を同時に合わせ持つ雑種は,タカサゴユリと有色花アジアティックハイブリッドユリとの交配から 4 個体得られた.これらの結果は,タカサゴユリと有色花のアジアティックハイブリッドユリと交配すれば,3 つの有用形質,すなわち,早期開花性,複数花茎抽苔および有色花を同時に合わせ持つユリを育種できる可能性を示唆している.<br>
著者
杉原 雄一 上野 秀人 平田 聡之 荒木 肇
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.222-228, 2014
被引用文献数
3

トマト生産においてカバークロップとしてのヘアリーベッチ(<i>Vicia villosa</i> R.,以下 HV)と化学肥料の効率的な施用方法を確立するために,HV,速効性肥料(Fast)および緩効性肥料(Slow)から放出された窒素のトマトへの吸収について,安定同位体 <sup>15</sup>N を利用して調査した.窒素の速効性肥料(硫安)と緩効性肥料(LP-S100)を供試して,両者の混合割合を 2 : 8(Fast + Slow)と 0 : 10(Slow-only)とした.窒素施肥量を 240 kg N·ha<sup>-1</sup> として,土壌培養試験を行うと,培養 4週間において Fast + Slow では高濃度の無機態窒素環境が形成された.同様の施肥条件を用いて,1/2000 a のワグネルポットでトマト'ハウス桃太郎'を栽培すると,<sup>15</sup>N でラベルした HV(0.89 atom% excess)を土壌中にすき込むことで,定植12 週後のトマトの植物体乾物重は HV 無添加より有意に増加したが,窒素肥料の混合割合による差異は認められなかった.HV 由来窒素は主に定植 4 週後までに吸収され,その吸収量には Fast の有無による差異はなかったが,吸収した全窒素に対する HV 由来窒素の含有率(%N<sub>dfhv</sub>)は Fast を施用しない Slow-only で有意に高くなった.しかし,この差異も定植 8 週以降は認められなかった.トマトによる窒素吸収は栽培終了時の定植 12 週後まで続いた.以上の結果から,HV 由来窒素は速効的であった.生育初期においては,トマトへの窒素吸収に土壌・肥料由来窒素と HV 由来窒素の間で競合関係があり,多量の土壌・肥料由来窒素が存在すると HV 由来窒素の吸収が抑制される.この試験で得られた知見は,トマト生産における HV と化学肥料の適切な混合体系の確立に寄与する.
著者
野村 佳宏 原田 太郎 森田 重人 窪田 聡 腰岡 政二 山口 博康 棚瀬 幸司 八木 雅史 小野崎 隆 佐藤 茂
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.242-254, 2013
被引用文献数
6

カーネーションの老化時においては,初めに雌ずいにおいてエチレンが生成し,このエチレンが花弁に作用して自己触媒的エチレン生成反応を引き起こす.本研究では,アブシシン酸(ABA)の含量および ABA の生合成と作用に関与する遺伝子群の発現を解析して,雌ずいのエチレン生成開始反応における ABA の役割を明らかにすることを試みた.初めに,カーネーション'ライトピンクバーバラ'の花組織から,ABA の生合成と作用に関与する遺伝子群の cDNA をクローニングし,構造を明らかにした.次に,雌ずいの ABA 含量の変化とこれらの遺伝子の発現を,3 品種のカーネーションを用いて調べた.3 品種は,切り花の老化時にエチレンを生成し約 1 週間の花持ち期間を示す'ライトピンクバーバラ'と'エクセリア',および老化時にエチレンを生成せず約 3 週間の花もち期間を示す'ミラクルルージュ'を用いた.子房の ABA 含量は,'ライトピンクバーバラ'では開花時期 2(Os 2)から Os 5 にかけて 530–710 pmol·g<sup>−1</sup> FW,'エクセリア'では同じ時期に 200–380 pmol·g<sup>−1</sup> FW で,老化時期 1(Ss 1)(老化の初期)に 930 pmol·g<sup>−1</sup> FW に増加した.他方,'ミラクルルージュ'では 70–160 pmol·g<sup>−1</sup> FW で推移した.ABA 含量の変化は,<i>DcNCED1</i>(9<i>-cis</i>-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ)転写産物量の変化と並行関係にあった.<i>DcPYR1</i>(ABA 受容体)転写産物量は,'ライトピンクバーバラ'の Os 1–Os 3 では 0.004–0.007 相対発現量(r.e.l.)であり,Ss 1 には 0.028 r.e.l. に増加した.'エクセリア'の子房では,開花時期は 0.025–0.037 r.e.l. で推移し,Ss 1 でさらに増加した.これに反して,'ミラクルルージュ'では開花と老化時期を通じて 0.002–0.006 r.e.l. であった.エチレン生合成の鍵遺伝子である <i>DcACS1</i> の転写産物は,'ライトピンクバーバラ'では Ss 1,'エクセリア'では Ss 2 で検出されたが,'ミラクルルージュ'では開花と老化の時期を通じて検出されなかった.以上の結果から,ABA が雌ずいにおける <i>DcACS1</i> の発現を誘導してエチレン生成を引き起こすこと,ABA の作用の発現には ABA 含量と <i>DcPYR1</i> の発現量が特定の閾値を超える必要があることが推定された.
著者
赤木 剛士 梶田 啓 木部 隆則 森村 春香 辻本 誠幸 西山 総一郎 河井 崇 山根 久代 田尾 龍太郎
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.214-221, 2014 (Released:2014-07-31)
参考文献数
44
被引用文献数
4 28 2

雌雄性は作物の栽培そして育種の大きな制限要因となる.カキ(Diospyros kaki Thunb.)の雌雄性に関してこれまでに多くの形態学的な観察が行われ,カキは雌雄混株あるいは雌性両性異株とされている.しかしながら,カキにおける雌雄性の遺伝制御機構は明らかにされていない.本研究では,カキ(六倍体あるいは九倍体)の近縁野生種であり,雌雄異株であるマメガキ(D. lotus L.)(二倍体)を用い,交雑分離集団を作出し,雌雄分離の調査を行った.また同じ集団を用いて AFLP 解析によって雌雄性判別のための分子マーカーの開発を試みたところ,雄性と共分離を示す 2 種類の AFLP バンド(DlSx-AF4 および DlSx-AF7)が同定された.このため,マメガキの雌雄性は,他の多くの雌雄異株の植物種と同じく,単一の遺伝子座(ハプロブロック)によって支配される雄性異型接合型(XY 型)であることが明らかになった.しかし,DlSx-AF4 から作製した SCAR マーカー DlSx-AF4S および雌雄性形質の分離は,一遺伝子座支配における理論値である 1:1 から有意に雌性側に偏り,1:2 に近い分離を示した.DlSx-AF4S はカキにおいても雄花の着花性と相関を示し,カキの雌雄性もマメガキと同様の遺伝制御を受けていること,ならびにカキの育種における DlSx-AF4S を用いたマーカー選抜の可能性が示された.
著者
Fuminori Komai Kanako Okada Yuko Inoue Mitsunori Yada Osamu Tanaka Susumu Kuwabata
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
pp.MI-008, (Released:2014-09-23)
被引用文献数
1 5

Mature pollen grains of Lilium cultivar, with their germ pores folded in upon themselves, were observed under a scanning electron microscope (SEM). The conventional pretreatment process requires aldehyde fixation, dehydration, drying and metal sputtering for SEM observation. These complicated and laborious procedures can considerably alter the morphology of pollen grains. In order to omit this conventional pretreatment process, we established a novel technique utilizing an ionic liquid (IL) that is composed solely of ions, namely, a liquid salt that can remain in a molten state even at room temperature. IL-treated pollen grains could be observed under vacuum conditions without artifacts, and furthermore, a satisfactory SEM image could visualize pollen grains in a wet state. The possible direction of future studies on ionic liquids in the SEM field is also discussed.
著者
Thanda Aung Yukinari Muramatsu Naomi Horiuchi Jingai Che Yuya Mochizuki Isao Ogiwara
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
pp.CH-110, (Released:2014-07-03)
被引用文献数
2 18

The purpose of this study was to clarify the plant growth and fruit quality of blueberry in a controlled room under artificial light. Cultivars used were a northern highbush ‘Blueray’, and two southern highbush, ‘Misty’ and ‘Sharpblue’. A comparative study was carried out of growth characteristics, photosynthetic potential and fruit quality analysis in different growing environments, in particular focusing on plants growing in a glasshouse under natural sunlight and plants in a controlled room under artificial light. Environmental conditions of the controlled room under artificial light were 15 to 25°C, 50 to 70% humidity, 150 to 350 μmol·m−2·s−1 light intensity, and a 10-hour photoperiod from the primary experiment. In these growing environments, normal fruits developed from all the tested cultivars by successful growth without decreasing plant vigor and leaf photosynthetic ability until fruit harvesting time compared to the cultivars grown in the glasshouse under natural sunlight condition. Moreover, it was confirmed that high-quality fruits could be harvested in a controlled environment to increase fruit production with high SSC % and high anthocyanin content but low acid % in ‘Blueray’ and ‘Misty’, but not ‘Sharpblue’. Finally, this report presents the possibility of high-quality blueberry production in a controlled environment under artificial light conditions with some cultivars.
著者
Takanori Horibe Kunio Yamada
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
pp.CH-101, (Released:2014-05-22)
被引用文献数
1 13

Some flowers including rose open in a rhythmic fashion during specific times of the day. We used time-lapse cinematography to understand the mechanism of rhythmic opening and perception of light in cut rose flowers. Cut rose flowers exposed to a 12 h light/12 h dark photoperiod started opening shortly before the light period had begun and stopped during the light period even when their leaves were removed, indicating that petals and/or sepals perceive light and synchronize flower opening to photoperiods. This rhythmic opening could be seen in constant darkness even though the time of flower opening shifted to an earlier point in constant darkness compared with the 12 h photoperiod, but it was not observed in constant light. We also evaluated the effect of exposing cut flowers first to a 12 h photoperiod and then shifting them to an 18 h photoperiod. During the 12 h photoperiod, flower opening started shortly before the light period had begun and stopped during the light period, while in the 18 h photoperiod, it proceeded in the middle of the dark period. These results suggested that changes of light to darkness or vice versa were important signals for the start and maintenance of rhythmic flower opening. In addition, we found that even a petal removed from a rose flower showed rhythmic growth when exposed to a 12 h light/12 h dark photoperiod, showing that petals could perceive light and synchronize their growth to the photoperiod.
著者
Fumi Tatsuzawa Kenjiro Toki Yuko Ohtani Kazuhisa Kato Norio Saito Toshio Honda Masahiro Mii
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
pp.CH-100, (Released:2014-04-26)
被引用文献数
2 7

Two anthocyanins (pigments 1 and 2) were detected from the blue flowers of Nemophila menziesii ‘Insignis blue’ and the purple flowers of its variants as the main floral anthocyanins. These two anthocyanins were isolated from the blue flowers and elucidated to be petunidin 3-O-[6-O-(cis-p-coumaroyl)-β-glucopyranoside]-5-O-[6-O-(malonyl)-β-glucopyranoside] (1) and petunidin 3-O-[6-O-(trans-p-coumaroyl)-β-glucopyranoside]-5-O-[6-O-(malonyl)-β-glucopyranoside] (2), respectively, by chemical and spectroscopic means, and pigment 1 was confirmed as a new anthocyanin in plants. Two flavonol glycosides (pigments 3 and 5) and two flavone glycosides (pigments 4 and 6) were also isolated from the blue flowers, and were identified to be kaempferol 3-(6-rhamnosyl)-glucoside-7-glucoside (3), apigenin 7,4′-di-glucoside (4), kaempferol 3-(2,6-di-rhamnosyl)-glucoside (5), and apigenin 7-glucoside-4′-(6-malonyl)-glucoside (6) as major flavonoids. Among these four flavonoids, however, pigments 4 and 6 (flavones) were not detected in the purple flowers. These results might be attributed to color production in blue and purple flowers.
著者
Nguyen Thi Lam Hai 比良松 道一 金 鐘和 増田 順一郎 大久保 敬
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.191-197, 2012 (Released:2012-04-17)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

ハカタユリの花は開花時には黄色であるが,一日で白色へ変化する.本性質を有し,さらにウイルス病を回避できる種子繁殖性品種の育成を目的に,ハカタユリ(♂)とその近縁種であるタカサゴユリ,テッポウユリ,およびシンテッポウユリ(♀)の種間交配をおこなった.交配 7 から 28 日後の発達中の子房の薄切片をショ糖 40 g・L−1,D マニトール 40 g・L−1,およびジェランガム 2.5 g・L−1 を含む MS 培地上で培養した.タカサゴユリ × ハカタユリおよびシンテッポウユリ × ハカタユリから雑種個体を得ることができたがテッポウユリ × ハカタユリからは得られなかった.順化した 179 個体中 79 個体は栽培 1 年以内に開花し,それらの花はハカタユリと同じ花色変化の性質を有していた.また,それらの内 28 個体はタカサゴユリが持つ多花茎性をも有していた.雑種個体は高い花粉稔性を示したが,それらの自家交配では成熟種子は得られなかった.
著者
安達 義輝 小森 貞男 星川 義真 田中 紀充 阿部 和幸 別所 英男 渡邉 学 壽松木 章
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.402-409, 2009 (Released:2009-10-23)
参考文献数
33
被引用文献数
30 34

リンゴを含むバラ科に属する種は自家不和合性を有しているが,多くの種では倍数化によって打破される報告がある.リンゴで同質四倍体品種とその倍数化前オリジナル二倍体品種を用いて,交雑和合性試験および花粉管伸長調査を行った.同質四倍体品種が自家結実性を示し,同質四倍体品種花粉が自家受粉およびオリジナル二倍体品種雌ずいにおいて和合性を誘導した.一方,オリジナル二倍体品種花粉を同質四倍体品種に交配した場合には不和合性を示したことから,同質四倍体品種の自家和合性誘導の原因は花粉側にあることが示唆された.また,自家受粉の花粉管伸長は同質四倍体品種が最も大きく,次いで二倍体,三倍体の順であった.二倍体および三倍体品種の花粉管は雌ずいの倍数性とは無関係に伸長が抑制されるのに対し,同質四倍体品種の花粉管は他家受粉には及ばないが不和合花粉管よりも有意に伸長する中間的な伸長度を示した.交雑試験と花粉管伸長調査の結果から,同質四倍体品種の自家和合性は花粉側にあることが判明した.さらに,倍数化による花粉管伸長度の増大ではなく,自家不和合性機構が打破されている可能性が示された.
著者
細見 彰洋 三輪 由佳 古川 真 瓦谷 光男
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.159-165, 2012 (Released:2012-04-17)
参考文献数
19
被引用文献数
11 12

日本の主要イチジク品種‘桝井ドーフィン’については,病原菌(Ceratocystis fimbriata)によるイチジク株枯病(以下,株枯病)が深刻である.そこで本病抵抗性が期待される‘Celeste’,‘Boldido Negra’,‘Ischia Black’,‘Negronne’の 4 品種の耐病性を検証し,‘桝井ドーフィン’用の抵抗性台木としての能力を検討した.砂礫 350 mL を培地とする根箱の‘Celeste’苗は,培地への病原菌の接種直後から根の伸長が抑制され,根の呼吸速度は接種 2 ヶ月後には低下し,細根は伸長が停止して病斑を生じた.用土 3.5 L で鉢栽培した 4 品種は,病原菌の土壌かん注 5 ヶ月後の調査で地下部には病斑が確認された.しかし,全個体は生存し,大量の菌を接種しなければ根の呼吸速度は低下せず,‘Celeste’以外では葉重,新梢重および根重の有意な減少はなかった.4 品種を台木とする‘桝井ドーフィン’樹を用土 22 L のコンテナで栽培し,病原菌を接種すると,2 年目には一部の個体が枯死し,全般に接ぎ穂や根の生育が減退する傾向にあったが,‘Negronne’台木には,枯死や有意な生育の低下は認められなかった.4 品種を台木とする‘桝井ドーフィン’樹は株枯病汚染ほ場でも枯死が少なく,定植後 5 年間はその大半が枯死を免れた.この間,穂木‘桝井ドーフィン’の生育に,経年的な明らかな樹勢衰弱はなかった.以上から,4 品種については,株枯病の被害を受けながらも生存を維持する「ほ場抵抗性」が実証され,台木の耐病性は‘Negronne’が最も期待できた.
著者
本勝 千歳 稲田 真梨江 湯地 健一 戸敷 正浩 黒木 重文 神崎 真哉 鉄村 琢哉
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.27-34, 2012 (Released:2012-01-20)
参考文献数
38
被引用文献数
7 9

マンゴーはこれまで偶発実生からの優良系統の選抜によって品種が育成されてきたが,望ましい形質を持った個体同士の交雑による計画的な育種が今後行われる必要がある.しかしながら,マンゴーの花は 1 cm 以下で非常に小さく,また結実率も低いため,人工受粉による十分な数の交雑後代の獲得が困難であった.そこで,日本の独特なマンゴー栽培様式(閉鎖的な温室内での栽培,ミツバチ導入による自然交配)を利用して,‘アーウィン’と‘紅キーツ’の二品種を導入した温室内で,まずミツバチにより自然交配させた後,得られた実生を SSR マーカーによって花粉親を識別することによって,効率的に交雑後代が獲得できるのではないかと考え,その検証を行った.その結果,‘アーウィン’では 239 個体の実生が得られ,そのうち 185 個体で花粉親を判別することができ,他家受粉果は 106 個体,自家受粉果は 79 個体であった.‘紅キーツ’では 20 個体の実生が得られ,そのうち 14 個体で花粉親を判別することができ,他家受粉果は 12 個体,自家受粉果は 2 個体であった.‘アーウィン’実生で判別された花粉親の比について,温室内での両品種の花房数を期待比としてカイ二乗検定を行ったところ,積極的に他家受粉が起こっていることが示された.また‘アーウィン’について判別された花粉親に基づき,花粉親が果実形質に及ぼす影響について調査したところ,‘アーウィン’自家受粉果では Brix 値が有意に高くなったが,果皮色に関するいくつかの値で他家受粉果より低い値となった.
著者
吉田 裕一 尾崎 英治 村上 賢治 後藤 丹十郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.343-349, 2012 (Released:2012-10-24)
参考文献数
27
被引用文献数
8 14

低コストで簡便な促成栽培イチゴの新しい花芽分化促進法として間欠冷蔵処理を考案して‘女峰’のトレイ苗に試みたところ,体内非構造炭水化物濃度の低下が抑制され,顕著な開花促進効果が認められた.果実予冷用に用いられるプレハブ冷蔵庫を用いて 13℃暗黒の冷蔵庫内と戸外の 50%遮光条件下に 2,3,4 日間ずつ交互におく処理をそれぞれ 4,3,2 回繰り返し行った.冷蔵庫の利用効率を高めることを前提として,冷蔵庫と戸外で経過する期間は同一とし,交互に入れ替える 2 処理区をそれぞれに設定した.相互の移動は正午頃に行い,処理期間中の戸外の環境条件は,日平均気温 22.5~29℃,日長 12.4~13.1 時間(日の出から日没まで)であった.ピートバッグに定植し,12 日間連続で低温暗黒処理を行った処理区および無処理の対照区と比較したところ,いずれの処理においても,冷蔵処理区は無処理区より 6~10 日早く開花した.12 日間連続処理区と同じ日に処理を開始してその中間で 4 日間戸外においた間欠冷蔵処理区とを比較すると,9 月 13 日定植では 15 日,9 月 17 日定植でも 4 日早く間欠冷蔵処理区が開花した.冷蔵を中断し,2~4 日間戸外で光合成を行わせることによって炭水化物栄養条件が大きく改善される結果,イチゴの花芽分化が促進されると考えられた.効果的な処理条件については今後詳細に検討する余地があるが,2 から 4 日間の低温暗黒と自然条件を繰り返す間欠冷蔵処理は新規の花芽分化促進技術としてきわめて有望であることが示された.
著者
寺本(稲福) さゆり 諏訪 竜一 福澤 康則 川満 芳信
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.214-224, 2011 (Released:2011-04-22)
参考文献数
43
被引用文献数
17 20

琉球列島ではシィクワーサー(Citrus depressa Hayata)をはじめとした在来品種が数百年以上栽培されている.カンキツ類は特有の香気や機能性成分が含まれることから,沖縄で栽培されている 10 品種を材料とし,未熟ならびに適熟果皮に含まれる香気成分を GC-MS 分析によって,また HPLC 分析によりシネフリンと 6 種類のポリメトキシフラボノイド類(PMFs:シネンセチン,ヘキサメトキシフラボン,ヘプタメトキシフラボン,ノビレチン,ナツダイダイン,タンゲレチン)について分析を実施した.沖縄在来品種は,それぞれの品種において特有の香気成分プロファイルを示し,‘カブチー’(C. keraji hort. ex Tanaka var. kabuchii)にはセスキテルペン炭化水素類が 3.90–5.17%,‘ケラジ’(C. keraji hort. ex Tanaka)にはエステル類が 12.15–19.10%,シィクワーサーの‘大宜味クガニー’には,γ-テルピネンが 21.17–29.60%,p-シメンが 6.49–9.84%含まれていた.シネフリンは,未熟果皮における‘トークニブ’(C. nobilis Lour.)で 8.97 mg・gDW−1 と最も高く,ついで‘イズミベニ’(C. tangerina hort. ex Tanaka)が 7.03 mg・gDW−1,‘大宜味クガニー’5.17 mg・gDW−1 の順であった.フラボイド類の PMFs は未熟果皮の‘大宜味クガニー’で 20.62 mg・gDW−1,‘カブチー’20.66 mg・gDW−1,‘オートー’(C. oto hort. ex Yu. Tanaka)12.52 mg・gDW−1,また主要栽培種のタンカン‘T-132’(C. tankan Hayata)にも 18.95 mg・gDW−1 含まれており,それぞれ固有のフラボノイドプロファイルを示した.これらの結果から,特に生産量の多いシィクワーサーとタンカンの加工残渣,摘果果実といった未利用廃棄物を有効利用できる可能性が示唆された.
著者
岸本 久太郎 中山 真義 八木 雅史 小野崎 隆 大久保 直美
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.175-181, 2011 (Released:2011-04-22)
参考文献数
16
被引用文献数
10 22

現在栽培されている多くのカーネーション(Dianthus caryophyllus L.)品種では,芳香性が低下傾向にある.強い芳香や特徴的な芳香をもつ Dianthus 野生種は,非芳香性品種に香りを導入するための有望な遺伝資源であると考えられる.我々は,花き研究所に遺伝資源として保持されている Dianthus 野生種の中から,芳香性の 10 種と,それらとの比較のためにほぼ無香の 1 種を選び,嗅覚的評価に基づいて 4 つにグループ分けした.GC-MS を用いた解析の結果,Dianthus 野生種の花の香りは,主に芳香族化合物,テルペノイド,脂肪酸誘導体に属する 18 種類の化合物によって構成されていた.最も強い芳香をもつグループ 1 の甘い薬品臭は,芳香族化合物のサリチル酸メチルに由来した.グループ 2 の柑橘様の香りは,テルペノイドの β-オシメンや β-カリオフィレンに由来した.グループ 3 の青臭さは,脂肪酸誘導体の (Z)-3-ヘキセニルアセテートに由来した.ほぼ無香のグループ 4 では,香気成分がほとんど検出されなかった.これらの花における放出香気成分の組成と内生的な香気成分の組成は異なっており,蒸気圧が高く沸点の低い香気成分が効率的に放出される傾向が認められた.また,グループ 1 の D. hungaricus の主要な芳香族化合物は花弁の縁に分布し,グループ 2 の D. superbus の主要なテルペノイドやグループ 3 の D. sp. 2 の主要な脂肪酸誘導体は,花弁の基部や雄ずい・雌ずいに分布した.この結果は芳香性に寄与する花器官が,Dianthus 種によって異なることを示している.本研究において,嗅覚的に良い香りで,芳香性に対する寄与が大きいサリチル酸メチルや β-オシメンや β-カリオフィレンを豊富にもつグループ 1 やグループ 2 の Dianthus 野生種が,カーネーションの芳香性育種に重要な遺伝資源であることが示唆された.