著者
大伴 周也 原田 智広 ターウォンマット ラック 伊東 卓男
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.1294-1305, 2020-08-15

近年施設の老朽化によるタンク,配管施設等からの油漏れが深刻な問題となっている.石油の漏洩は土壌汚染等の環境問題につながる恐れがあるため,漏洩を早期に検知することが必要となる.本論文では,この石油漏洩を早期に発見するための漏洩検知手法を提案し,その有効性を評価する.提案手法は,位相データ解析を用いた高水準データ解析で得られる時系列特徴量から,機械学習を用いて漏洩の有無を判別するモデルを学習する.実際の石油タンクから得られた液面計データを用いた性能評価実験の結果,提案手法は非常に少ない漏洩量であっても,高精度に漏洩判定が可能であることを確認した.
著者
Natsumi Shimada Natsuki Yamazaki Yuichi Takano
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, 2020-08-15

This paper is concerned with many-to-one matching problems for assigning resident physicians (residents) to hospitals according to their preferences. The stable matching model aims at finding a stable matching, and the assignment game model involves maximizing the total utility. These two objectives however are generally incompatible. We focus on a case involving predetermined groups of residents who want to be matched in groups. To pursue these conflicting objectives simultaneously, we propose several multi-objective optimization models for many-to-one matching problems. We first derive a bi-objective optimization model for maximizing the total utility while minimizing the number of blocking pairs to promote stability. We next introduce a small-subgroup penalty, which will be minimized as the third objective for the purpose of matching in groups. Our multi-objective optimization models are formulated by means of the ε-constraint method as scalar objective mixed-integer optimization problems, which can be solved to optimality by using optimization software. The efficacy of our method is assessed through simulation experiments via comparison with the outcomes of two common matching algorithms: the deferred acceptance algorithm and Gale's top trading cycles algorithm. Our results highlight the potential of optimization models for computing good-quality solutions to a variety of difficult matching problems.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.28(2020) (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.28.406------------------------------
著者
吉長 裕司 金川 明弘 川畑 洋昭
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.3252-3255, 2003-12-15

大学生を対象としたタッチタイピング教育において,打鍵能力に加えて学習者の初期熟達感(慣れの意識)を測定した.「少し慣れた」以上の初期熟達感に達した日と,練習目標とした自己流タイピングの入力時間を更新した日との関係に着目し,学習者を,(1)「慣れた日」が「更新した日」より早い群,(2)「慣れた日」と「更新した日」が同じ群,(3)「更新した日」が「慣れた日」より早い群の3群に分類した結果,3群間の自己流タイピングの入力時間に1%水準で有意差があることが確認された.この結果に基づき,各群の習熟特性を考察するとともに,学習者の自己流タイピングと初期熟達感を考慮に入れた練習目標の設定方法を提案した.
著者
亀井 邦裕 児玉 公信 細澤 あゆみ 成田 雅彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1351-1362, 2015-05-15

企業情報システムは変化する企業環境に対し,柔軟で機敏な対応を迫られている.そこで稼働するビジネス系アプリケーションは短期間での構築が可能で,なおかつ変化に強い構造を持っており,再利用開発が可能でなければならない.それは経験に裏打ちされた合理的な概念構造を持ち,変化する部分と固定部分が明確に分かれた実装構造となっているはずである.本論文は,そのようなアプリケーションを開発するための1つの取組みとして,概念モデルに基づく実装方法を試行し,消費税計算などの公開可能な題材を用いた概念モデル,実装モデルなどを成果として提示する.
著者
蜷川 繁 津田 伸生 服部 進実
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.517-520, 2000-02-15

うわさに代表されるような集団における情報の伝播を調べるために,構成要素間にランダムに張りめぐらされたネットワーク上を情報が伝播する,うわさの伝播モデルを提案し,個人の間の関係と情報の伝播との関係を計算機シミュレーションを用いて調べた結果,各個人が平均して3人に情報を伝達すると,ほぼ集団全体に情報が伝搬することが明らかになった.この結果から,物理的あるいは経済的な制約条件によって構成要素間の接続が限られているようなネットワークで,ほぼ全体に情報を行きわたらせるためには,各構成要素から3本の出力を出し,それをランダムに接続すればよいことが分かる.
著者
竹房 あつ子 小川 宏高 松岡 聡 中田 秀基 高木 浩光 佐藤三久 関口 智嗣 長嶋 雲兵
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1827-1838, 1998-06-15
参考文献数
14

広域ネットワークの整備につれ,高性能広域分散計算を実現する試みが我々のNinfを含めていくつか行われている.しかしこのような広域計算システムの,特にWANにおいて複数のクライアントが複数のサイトに分散している状況下での性能特性に関する議論は十分になされていない.本稿では,Ninfおよび類似のシステムの実現可能性を調査するため,LAN/WAN環境でLinpack/EPベンチマークを実施し,次のような結果を得た.1)十分なバンド幅があれば,Ninfを用いた方がLocal実行するより高速になる.2)既存の高性能計算機は性能や耐久性の点で広域計算システムの運用に十分なプラットフォームである.3)ベクトル並列計算機(Cray J90)では,高性能並列ライブラリが有効利用できる,すなわち既存の高性能ライブラリの再利用性がある.4)計算主体の計算(EP)では現状の広域計算システムで十分に運用できる.5)通信主体の計算(Linpack)では,LAN環境ではサーバの稼働率が性能を支配し,WAN環境では通信性能と設置条件によって性能に与える影響に一定の傾向がある.Rapid increase in speed and availability of network of supercomputers is making high-performance global computing possible,including our Ninf system.However,critical issues regarding system performance characteristics in global computing have been little investigated,especially under multi-client,multi-site WAN settings.In order to investigate the feasibility of Ninf and similar systems,we conducted benchmarks under various LAN and WAN environments,and observed the following results:1)Given sufficient communication bandwidth,Ninf performance quickly overtakes client local performance,2)current supercomputers are sufficient platforms for supporting Ninf and similar systems in terms of performance and OS fault resiliency,3)for a vector-parallel machine (Cray J90),employing optimized dataparallel library is a better choice compared to conventional task-parallel execution employed for non-numerical data servers,4)computationally intensive tasks such as EP can readily be supported under the current Ninf infrastructure,and 5)for communication-intensive applications such as Linpack,server CPU utilization dominates LAN performance,while communication bandwidth dominates WAN performance,and furthermore,aggregate bandwidth could be sustained for multiple clients located at different Internet sites;as a result,distribution of multiple tasks to computing servers on different networks would be essential for achieving higher client-observed performance.
著者
高木 浩光 松岡 聡 中田 秀基 関口 智嗣 佐藤三久 長嶋 雲兵
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.2203-2214, 1999-05-15
参考文献数
23
被引用文献数
1

地球規模の広域分散計算システムを魅力的なものとするためには 不特定の者に対して システムの利用だけでなく応用プログラムの作成をも解放する必要があると考える. その実現のためには 安全性を保証しながら任意のプログラムを実行できる仕組みが必要である. そこで Javaのセキュリテイ機構を活用してこれを実現した 大域的並列計算環境「Ninflet」を提案する. これを用いることで 任意の計算を他人が所有する計算機上でさせることが可能となる. このシステムは 夜間利用されていない計算機を地球の裏側の昼間の地域に貸し出すといった 地球規模の共同利用メタコンピュータシステムを実現するためや また ワークステーションクラスタ上に並列処理環境を構築するためにも利用することのできるものである. 本論文では Ninfletシステムのアーキテクチャを提案するとともに 並列処理環境として利用する場合の予備的な性能評価を行う.To make global-wide distributed computing system attractive, the system should be open to an arbitrary individual not only for its usage but also for construction of wide variety of application programs. For this purpose, the system must supply a secure environment for safely executing arbitrary programs. Our proposed global computing environment "Ninflet" fulfills such a requirement by exploiting the security mechanism of the Java language, allowing computation to occur on machines not owned or administered by the individual invoking the computation. Ninflet realizes a globally-shared metacomputer which would allow "lending" of computing cycles of machines which would be otherwise unused at nights to the other side of the globe, or to simply build a parallel execution environment on a heterogeneous sets of workstation clusters. We present the system architecture of Ninflet and a preliminary performance evaluation when used as a parallel execution environment.
著者
高木 浩光 有田 隆也 曽和 将容
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.1583-1592, 1991-12-15
被引用文献数
7

並列計算機において高い性能を得るためには 高速な命令実行順序制御機構の開発が重要である本論文では単純なハードウェアによって構成できる 命令のプロセッサ割り当てをコンパイル時に決定する静的順序制御方式について議論する従来の単純なハードウェアによる静的順序制御機構としてバリア型同期が挙げられるバリア型同期機構は構成が単純なため高速な制御が可能であるが すべてのプロセッサが一斉に待ち合わせを行うという同期の性質上 本質的に不要な待ちが生ずるという欠点を持つ本論文では 静的順序制御方式による実行を並列コントロールフローモデルによって抽象化し その特性を示すとともに その特性を利用することによってはじめて可能となる 単純で かつ 不要な待ちを生じない静的順序制御機構を提案する提案する制御機構は一般化静的順序制御機構と呼び プログラムカウンタのほかに それと同程度に単純なカウンタを任意のプロセッサ間に設け これらを協調的に動作させることによって実現される
著者
中田 秀基 高木 浩光 松岡 聡 長嶋 雲兵 佐藤三久 関口 智嗣
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1818-1826, 1998-06-15
参考文献数
7
被引用文献数
4

ローカルなネットワーク上でのメッセージパッシングライブラリを用いた分散並列計算はすでに広く行われている.しかし,ネットワークの高速化によって現実的になりつつある広域ネットワーク上での分散並列計算については,ソフトウェアの枠組みがいまだ十分に整備されていない,我々は,広域分散並列計算に適した分散計算の枠組みとして「Ninf」を提案している.Ninfは広域分散環境でのマクロデータフローによる並列実行を支援するシステムで,広域での動的負荷分散とスケジューリングを特徴とする.メッセージパッシングライブラリを用いた手法と比較して,(1)広域ネットワークに適した通信パターンを用いる,(2)ユーザにとってプログラミングが容易でかつ再利用性が高い,(3)既存のライブラリの再利用が容易,(4)ネットワーク上の資源の利用が可能,といった特長を持つ.Distributed computing using message passing libraries in a LAN(Local Area Network) environment is already accepted as an effective supercomputing methodology.On the other hand,although distributed computing in WAN(Wide Area Network) environment is becoming practical due to recent development of high-speed network facilities,software framework for supercomputing in WAN is yet to be established.We propose 'Ninf',a distributed computing framework for globally distributed computing environment.Ninf enables parallel computing in WAN based on the macro dataflow model,and facilitates automatic dynamic load distribution and scheduling.Ninf has the following advantages over using existing message passing libraries in WAN supercomputing:(1) communication protocol suited for globally distributed environment,(2) ease of programming (3) reuse of existing libraries,(4) integration with existing data resources on the Internet.
著者
松田 大樹 村田 佳洋
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.1452-1463, 2016-05-15

近年,移動の快適性を考慮した経路探索システムが積極的に取り入れられている.たとえば,交通渋滞や道幅を考慮した経路探索システムがある.本研究では,西日の眩しさを考慮した経路探索アルゴリズムを提案する.このアルゴリズムはダイクストラ法に基づいており,そして,時刻に対する道路網グラフの眩しさの変化を考慮しながら経路探索を行う.また,提案アルゴリズムでは建物の影を考慮する.計算コストを抑えるために,建物データは東西に伸びる長方形のグリッド単位で管理されている.提案アルゴリズムの性能を評価するため,広島市内の地図を用いて実験した.
著者
今野紀雄 小張 泰弘 建部 英輔 中浜 清志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.12, pp.1-10, 1990-12-15

楽曲の音高列に対する時系列解析の一つの手法として 従来「定常性」をアプリオリに仮定した上でAR(自己回帰)モデル等に適用する方法があった.しかし 楽曲の音高列が「定常」であるかどうか一般にはわからないので その「定常性」について検討を加えるのはごく自然なことであると思われる.本研究ではまず厳密な意味での「定常性」の定義を述べ ここでの「定常性」を特に「局所弱定常性」と名付ける.そして 新しい確率論の理論であるKM_2O-ランジュヴァン方程式理論を用いて「局所弱定常性」の検定を行い 日本の歌謡曲の音高列に対して「局所弱定常性」の仮定が妥当であるかどうかを検討する.その後に「局所弱定常」であると見なされた曲に対し ARモデルを拡張したこのKM_2O-ランジュヴァン方程式理論から計算された幾つかの基本特性量を用いることにより新しい結果を導く.特に「多重マルコフ性」(音楽分析の文脈では楽曲の「記憶の効果」とも呼べよう)と密接な関係にある特徴パラメータのデルタと 各時刻ごとに分散が異なりうるノイズ(KM_2O-ランジュヴァン力)は従来の時系列解析では得られなかった新たな解釈をもたらす.
著者
高橋 大介
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.1918-1921, 2000-06-15
参考文献数
9

本論文では,Fibonacci数を高速に計算する方法について述べる.Fibonacci数 $F_n$ を計算するには,Lucas数の積に基づくアルゴリズムが,最もビット演算量が少ないことが知られている.このアルゴリズムにおいて,多倍長数の乗算を多倍長数の自乗計算に置き換えることで,さらに演算量を減らすことができることを示す.We present a fast algorithm for computing Fibonacci numbers.It is known that the product of Lucas numbers algorithm usesthe fewest bit operations to compute the Fibonacci number $F_n$.We show that the number of bit operations in the conventional product ofLucas numbers algorithm can be reduced by replacingmultiple-precision multiplication with the multiple-precision square operation.
著者
高木 智彦 古川 善吾
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.1794-1804, 2010-09-15

統計的テスト法においてテストケースを生成するために用いる利用モデルを,多重マルコフ連鎖に基づき,現実のユーザの振舞いをより反映するように構築する手法を提案する.統計的テスト法は欠陥を網羅的に検出することよりもソフトウェア信頼性を評価することに主眼を置いたソフトウェアテスト技法であり,その評価の正確さはユーザの振舞いのモデルである利用モデルに依存している.従来手法では単純マルコフ連鎖や斉時マルコフ連鎖などが利用モデルとして用いられる.その場合,ユーザの次の振舞いがそれまでの振舞いの内容に影響されるような状況を表現することができず,利用モデルの正確さを損なう場合があった.そこで本稿では,多重マルコフ連鎖に基づく精密化利用モデルの構築手法を提案する.本手法の手順やアルゴリズム,適用例などについて述べる.精密化利用モデルが従来のものよりも正確であり,ソフトウェア信頼性を正確に評価するうえで役立つこと,そして実際のソフトウェア開発に適用可能であることが分かった.また,本手法をより有効化するための課題について明らかにすることができた.
著者
金藤栄孝 二木 厚吉
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.2124-2137, 2004-09-15

Dijkstraのgoto文有害説とそれに引き続く構造的プログラミングの提唱以降,goto文の使用に関する問題は永く議論された.goto文の使用法に関し理論的裏付けを持つ研究としては,逐次的プログラムでの任意の制御フローは順次接続・条件分岐・反復の3基本構造のみで表現可能であるという結果に基づくMillsらのgoto文排斥論以外は皆無である.Dijkstra本来の正しさを示しやすいプログラムを書くための構造化という立場?つまりプログラム検証論の立場?からのgoto文使用の是非は考察されていない.本論文では検証手段としてのHoare論理に基づき有限状態機械モデルに基づくプログラミングでのgoto文の使用を検討する.その結果,状態をラベルで表し状態遷移をgoto文での飛び越しで行うプログラミングスタイルが,状態を表す変数を追加しgoto文を除いたプログラミングスタイルと比べ,Hoare論理による検証での表明が簡単で自然な形となり機械的検証の時間的コストも少ない.ゆえにプログラムの正しさの示しやすさという観点からは有限状態機械モデルに基づくプログラミングでの状態変数導入によるgoto文除去は有害でありgoto文を用いたスタイルの方が望ましいことを示す.There have been a vast amount of debates on the issue on the use of goto statements initiated by the famous Dijkstra's Letter to the Editor of CACM and his proposal of "Structured Programming". Except for the goto-less programming style by Mills based on the fact that any control flows of sequential programs can be expressed by the sequential composition, the conditional (if-then-else) and the indefinite loop (while), there have not been, however, any scientific accounts on this issue from the Dijkstra's own viewpoint of verifiability of programs. In this work, we reconsider this issue from the viewpoint of Hoare Logic, the most standard framework for correctness-proving, and we see that the use of goto's for expressing state transitions in programs designed with the finite state machine modelling can be justified from the Hoare Logic viewpoint by showing the fact that constructing the proof-outline of a program using goto's for this purpose is easier than constructing the proof-outline of a Mills-style program without goto by introducing a new variable.
著者
藤田 俊 鷹野 孝典
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1200-1209, 2020-06-15

マイクロブログやレビューサイトなどの情報サービス上の膨大な情報からユーザの共感や興味を喚起する情報を提供することは重要である.情報サービス上の発言には,感想や評価などのようなユーザがコンテンツに対して抱いた感情を含む発言が多く存在する.このような感情を考慮することで共感や興味を抱くコンテンツの推薦が可能である.しかし,協調フィルタリングのように類似したユーザから推定される感情を考慮するだけでは,推薦対象となるコンテンツがユーザの感情に与える影響は十分に考慮されていないため,コンテンツが与える感情との関係を考慮する仕組みが必要である.本研究では,コンテンツのユーザに与える感情を考慮したコンテンツ推薦手法を提案する.提案手法は,コンテンツに対してユーザが抱く感情およびコンテンツが与える感情を,ユーザの発言履歴から感情判定モデルにより8種の感情値として算出する.推薦処理では協調フィルタリングを適用することにより,ユーザの感情間の類似性に基づいて,未知のコンテンツに抱く感情を算出し,コンテンツが与える感情との関係性を考慮したコンテンツ推薦を行う.ユーザが抱く感情に類似した感情を与えるコンテンツを提示することで,そのコンテンツに対するユーザの興味を高める効果が期待できる.本研究では,マイクロブログの1つであるTwitterを対象とした実験により,提案手法の実現可能性と有効性を検証する.
著者
上川 先之 秋山 満昭 山内 利宏
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1134-1145, 2020-06-15

Webを介するサイバー攻撃に使用されるJavaScriptコードは,攻撃コードの意図の隠蔽や検知回避のために,難読化やクローキングなどの解析妨害が施されていることがある.このような解析妨害コードの解析が課題であり,迅速に解析できる手法やシステムが求められる.そこで,我々は解析妨害JavaScriptコード解析支援システムを提案する.提案システムは,JavaScriptコードによるブラウザAPI操作を網羅的に捕捉し,API操作ログを出力することにより,JavaScriptコードの挙動を把握できるようにする.API操作の捕捉にProxyオブジェクトを利用することで,既存手法では捕捉しきれないAPI操作を捕捉する.また,変数の参照を置き換えることにより,置き換え禁止のAPIに対するAPI操作を捕捉可能にする.本論文では,提案システムのコンセプトと,コンセプトを実現する解析手法の実現方式について述べる.また,提案システムの評価として,解析妨害JavaScriptコードの解析を行った結果を報告する.
著者
金井 文宏 庄田 祐樹 橋田 啓佑 吉岡 克成 松本 勉
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.2275-2288, 2015-12-15

スマートフォン向けOSとしてAndroidが広く用いられている一方で,それを狙ったマルウェアの数も増加している.Androidマルウェアの中には,リパッケージと呼ばれる手法を用いて,正規アプリの中に悪性コードを追加することで作成されたものが多く存在する.攻撃者がリパッケージマルウェアを大量に作成する際には,リパッケージ処理の自動化が必須であると考えられるが,自動リパッケージの実態や対策については,十分な調査・検討が行われていない.そこで我々は,既存の正規アプリが自動リパッケージに対して,どの程度の耐性を有するかを検証する.まず,実際のリパッケージマルウェアの解析を行うことで,リパッケージの方法を特定し,自動リパッケージを再現するスクリプトを作成する.次に,このスクリプトによって,複数の正規アプリに対して,外部と通信を行う機能だけを持つ検証用コードを挿入する.作成したリパッケージ済みアプリを動的解析して,挿入した検証用コードが正常に動作するかどうかを検証する.その結果,自動リパッケージの手法により成功率に差がみられるものの,評価対象としたアプリの7~9割において,挿入した検証用コードが正常に動作し,なおかつ起動時の動作が変化しないことを示す.さらに,ユーザによるインストール数が5,000万件を超える33種類のアプリにおいて,アプリの持つ基本的な機能がリパッケージ後にも保持されるかを確認し,87.9%にあたる29種類のアプリにおいて機能が保持されていることを示す.この実験において挿入した検証用コードを,悪性のコードに変更した場合でも,同様の方法で自動リパッケージが可能であることが予想される.以上より,現状のAndroidアプリの多くは自動リパッケージへの耐性が不十分であり,耐タンパ技術などを用いたリパッケージ対策が必要であることが分かる.
著者
本田 新九郎 富岡 展也 木村 尚亮 大澤 隆治 岡田 謙一 松下 温
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1472-1483, 1998-05-15

本稿では,3次元返想空間を利用した在宅勤務環境を提供する仮想オフィスシステムValentineについて述べる.Valentineは,地理的に分散したユーザをネットワーク上に仮想的に構築したオフィスに出勤させ,そこで他のメンバの雰囲気・気配を伝達し,コミュニケーションを支援するシステムである.物理的なオフィスは存在せず,ユーザはすべて仮想オフィスに通うことを想定している.遠隔地にいる他の社員の気配を伝達するために,「周辺視ビュー」および「効果音」を実現し,アウェアネスの提供を行った.またアウェアネスの過度な提供が効率的な個人作業の妨げとなることから,ユーザの「集中度」を定義し,集中度に応じたアウェアネス提供環境を実現した.集中度は「キーボード,マウスの利用頻度」「椅子を動かす頻度」という2つの要素からシステムで自動検出され,作業環境に反映される.評価実験を行った結果,気配の伝達および集中度に応じた環境の提供について,良好な結果を得た.
著者
森 岳志 中川 正樹 高橋 延匡 中森 眞理雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.29, no.8, pp.807-814, 1988-08-15

本論文は 新しい浮動小数点表現法の比較・評価を行う環境を提供することを目的とし OS用言語CコンパイラCATに複数通りの浮動小数点表現法を実現したことについての報告である.本研究では (1)URR (2)IEEE表現法(3)MIL-STD-1750A表現法の3種類の表現法をサポートしている.さらに 表現法の選択を (ア)コンパイル時に行う方法 (イ)実行時に行う方法の両者を用いて実現した.後者の方法は 効率の良い評価環境を与えることを目的として考案された方式で 評価の際のコンパイルとリンクの手間を軽減し 新たに表現法を追加したとしても浮動小数点演算ライブラリの再編成だけを行えばよく プログラムの再コンパイルを必要としないことなどの特徴を有している.定数の扱いに問題が生じたが 現時点では実行時に内部表現に変換することによって解決している.
著者
谷川 嘉伸 手塚 悟 小黒 博昭 橋川 善之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.3110-3124, 2007-09-15
参考文献数
19

タイムスタンプの統一的な検証およびタイムスタンプの時刻信頼性の検証を実現するタイムスタンプ検証サーバを開発した.実用性と拡張性を重視し,RFC 3029 を拡張したタイムスタンプ検証プロトコルを設計・開発し,任意の方式で作成されたタイムスタンプを統一的に検証できるようにした.また,検証対象とするタイムスタンプ方式において商用サービスの独自方式を含めることを目標とし,非公開の検証モジュールをタイムスタンプ検証サーバにアドオンするために使用できる共通インタフェースを設計・開発した.さらに,時刻信頼性検証方式として時刻監査証明書確認方式と時刻監査レポート確認方式を設計・開発した.実装したタイムスタンプ検証サーバを用いてRFC 3161 ベースのタイムスタンプとISO/IEC 18014-2 アーカイブ方式ベースのタイムスタンプの検証動作を確認し,対話環境において実用性があることを確認した.We developed a time-stamp validation server which provides universal time-stamp verification and time reliability verification. We designed and developed the time-stamp validation protocol based on RFC 3029 for its practicality and extensibility. Moreover, we designed a common interface for verification modules of original non-standard time-stamping schemes. As time reliability verification schemes, we also designed time attribute certificate verification scheme and time audit report verification scheme. We constructed a prototype client-server system, and confirmed that the server successfully performed time-stamp validation of two types of time-stamps, which are based on RFC 3161 and the ISO/IEC 18014-2 archiving scheme.