著者
志久 修 中村 彰 黒田 英夫 宮原 末治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.1086-1095, 2000-04-15
参考文献数
17
被引用文献数
2

本論文では,手書きされた日本語単語の認識方法について述べる.提案方法では,単語からの個別文字の切出しと認識を行わずに,単語全体を1つのパターンと見なして認識を行う.手書き日本語単語には,文字単体の手書き変形のほかに,文字間隔や文字サイズの変動,単語長さ方向への文字の伸縮が生じており,一般的な個別文字認識方法を単語画像にそのまま適用しても,高い認識性能を得ることは困難であると考えられる.そこで,提案方法では,上記の単語変形に対し,3段階の正規化処理〔図形間隔,図形幅,および単語画像サイズ(非線形正規化)〕と単語長さ方向へのDPマッチングを採用することにより対処している.郵政研究所の手書き漢字画像データベースIPTP CD-ROM2から作成した2種類の単語画像セット(町域部:1655件,都道府県名:174件)を用いて,提案方法と基本的な従来方法(個別文字に注目する方法)との正読率の比較実験を行った.その結果,これらの画像セットに対しては,従来方法において良好な条件(文字切出し正解率100%)での正読率と同等の結果〔正読率:96.50%(町域部)?<,95.98%(都道府県名)〕が得られ,提案方法の有効性を明らかにした.This paper describes a method for handwritten Japanese words recognitionbased on holistic strategy which treadts a word as a whole unitwithout segmenting it into individual characters.Our method, to compensated for word shape distortions,adopts three processes of normalization (i.e.\ figure gap normalization,figure width normalization and word size normalization) and DP matching.We tested the proposed method for 1,655 (town name) and 174 (prefecture name)images in the IPTP CD-ROM2 (the database of handwitten KANJI character images).As a result, 96.50% of 1,655 town names and 95.98% of174 prefecture names were correctly recognized.
著者
大島 千佳 中山 功一 安藤 広志
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.265-276, 2010-02-15

本研究は,市販の香料で遠隔地の景色の画像の臨場感を高めることを目的とする.本論文では,以下に示す4つの香りの特性を利用し,それぞれの特性から,ある特定のContentsを含む画像の臨場感を高める度合いが推定できるかどうか議論した.(1) 色特性:香りと色との関連,(2) 名詞特性:香りから想起される物の名前,(3) 形容詞特性:香りの印象を表現する形容詞,(4) 化学成分特性:香料に含まれる化学成分.実験では,Contentsが木である16種類の画像を用いて,被験者に20種類の各香料の臨場感を高める度合いを評価してもらった.次に各香料から想起される物の名前を記述してもらい,さらに香料の印象を形容詞対により表現してもらった.これらの結果から,臨場感を高める香料の推定は,(1) 色特性からは困難であり,(2) 名詞特性と(4) 化学成分特性からは限定された一部の香料にのみ可能であったが,(3) 形容詞特性からは臨場感を高めるすべての香料を推定できる可能性が示された.
著者
片岡 信弘 小泉 寿男 高崎 欣也 白鳥 則郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.466-479, 1998-02-15
参考文献数
15

企業の情報システムは,受注から出荷までのサイクルタイム短縮を目指し,統合パッケージを利用してシステム構築を行う動きが広がってきている.このような統合パッケージを利用したシステムを構築には,統合パッケージの持つ機能の理解,これをどのように業務に適用していくかをプロトタイピングにより,利用者,開発者の間で合意を得ていくJAD (Joint Application Design)が重要な役割を果たす,JADにおいては,仕様決定のキーマンが参加することが必要であるが,これらの人は必ずしも同一場所にいるとは限らないため遠隔地とJADを行う必要が多々発生する.したがってこのような協調作業は,CSCW (Computer Supported Cooperative Work)の一形態として捉えることが可能である.CSCWには,それぞれの対象作業に応じて,その協調作業の支援プロセスも異なってくる.本論文では,統合パッケージを利用した企業情報システム開発プロセスのモデルの提案と,仕様決定を支援するCSCWの方式について提案を行う.このモデルでは,開発作業をいくつかのステージに分け,このステージごとに遠隔地に存在するメンバーとともにJADを行う方式である.また,この方式を実際の開発に適用して評価した結果その有効性を確かめることができた.Environment of many companies has been more more strictly.To corresponded this environment many companies has began to use integrated package software for their cooperate information management systems.In this case it is important to make consensus between user and developer about functions of package and applications to apply packages.It is also important to use proto-type by package software and JAD(Joint Application Design)for specification making.User and developer some times resident in separate locate,this JAD is one kind of CSCW(Computer Supported Cooperative Work)which support specification making among the peoples who resident in separate location.We propose development process of enterprise information management system that use integrated package software and remote JAD(Joint Application Design)model that support specification making.The proposed method was evaluated in development a actual system,where its effectiveness was confirmed.We share windows of application systems between remote site and there is no incompatibility for using remote JAD.
著者
知場 貴洋 齊藤 政典 伊丹 悠一 兪明連 横山 孝典
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.2702-2714, 2012-12-15

本論文では,異なるノード上のタスク管理やタスク間の同期を可能とする位置透過性のあるシステムコールを有する分散リアルタイムOSについて述べる.本論文の対象は,自動車制御などの分野で用いられている分散型の組み込み制御システムである.まず,全ノードで統一した時刻に基づく動作を可能とするため,ネットワークにTDMAプロトコルに基づくリアルタイムネットワークであるFlexRayを用いてノード間でOSが管理する時刻の同期を行う手法を提案する.また,ノードの違いを意識しないアプリケーション開発を可能とするため,異なるノード間でタスクの起動や同期が可能な位置透過性のあるシステムコールを提案する.そして,自動車制御向けのリアルタイムOSであるOSEK OSを拡張し,提案した機能を有する分散リアルタイムOSを実装する.OSEK OSのタスク管理やイベント管理に関わるシステムコールに位置透過性を持たせ,異なるノード上のタスクを対象にシステムコールを発行可能にする.通信量を考慮してFlexRay通信のパラメータを設計した場合,位置透過性のあるシステムコールのネットワーク通信時間を含む最悪応答時間は予測可能である.The paper presents a distributed real-time operating system that provides location-transparent system calls for task management and inter-task synchronization. The target application of the operating system is hard real-time embedded systems such as automotive control systems. The operating system manages distributed tasks based on the global time supported by the clock synchronization of FlexRay, which is a real-time network based on a TDMA (Time Division Multiple Access) protocol. By using the operating system, we can develop a distributed control application program with location-transparent system calls. The distributed real-time operating system is an extension to OSEK OS, which is a standard operating system in the automotive control domain. The worst case response time of a remote system call of the operating system is predictable if the FlexRay communication is well configured.
著者
伊木 惇 亀井 清華 藤田 聡
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.2461-2475, 2014-11-15

ecサイトにおける商品のレビューは,商品購入の意思決定に大きく関わり,価値ある情報として注目されている.一方で,ステルスマーケティングを目的とした,レビュースパムと呼ばれる信頼性の低いレビューの投稿が問題となっている.既存研究では,レビューの文章などから,それらスパムを検知する取り組みが行われてきた.しかしながら依然として,すべてのスパムの検知は難しい.さらに,レビューを読むユーザ自身が判断するにも,信頼性を判断するための情報は十分でない.また,ユーザは,ウェブ上の情報に対して,ある程度信じやすいという報告もされている.そのため,ユーザが信頼性を意識し,判断するための機構が必要である.よって,本稿ではecサイトにおけるレビューを対象とした信頼性を判断するための支援システムを提案する.具体的には,レビューの信頼性を表す指標として,類似性,協調性,集中性,情報性という4つの信頼性指標を定義し,各指標ごとのスコアを求める.そして,レビューごとにそのスコアを可視化して提示する.それにより,ユーザ自身に信頼性を意識してレビューを読むように促すとともに,信頼性判断がしやすくなるよう支援を行うことが可能となる.本研究では,これらの指標を用いた判断支援を行うシステムを構築し,評価を行った.その結果,提案システムにより,ユーザの信頼性に対する意識を促すとともに,有効な判断支援が行えることが確認できた.
著者
金森 務 片寄 晴弘 新美 康永 平井 宏 井口征士
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.139-152, 1995-01-15
参考文献数
17
被引用文献数
13

本稿ではジャズセッションシステムのための音楽認識処理について述べる。ジャズセッションは、演奏者および聴取者がライブ演奏を楽しむために行われる音楽形態である。メロディー、ハーモニー、リズムなどを通じて、演奏者の意図の交換が行われている。我々はリアルタイムのノンバーバル・コミュニケーションの研究対象として、音楽セッションのモデル化とそのシステム化を行っている。音楽セッションにおける奏者間の伝達要素を機能的に、1)論理的制約:事前の打ち合わせや音楽理論によって全体の進行を方向づけるメッセージ、2)感性惰報:奏者の心理的な状態を示すメッセージでそれ自体は強い制約ではなく、応答については相手の性格に大きく委ねられるもの、に分類し、これらのメッセージの抽出機構と反応機構に墓づいたセッションシステムの構築を行っている。音楽近知覚という問題を一般性を特っていると思われる部分と個性による部分に分けることで、セッションシステムのユーザ・インタフェースという観点から扱いやすい形に整理した。また、音楽の情動を扱うための枠組みとして、音楽の期待感を扱う認識、分かった時点での喜ぴを扱う認識、マクロ的に情動を扱う認識の機構について述べる。システムはリアルタイムで動いており、音楽聴取部では筆者の一人である音楽家の実践的経験則をインプリメントしている。ここでは、昔楽聴取部についての実験結果を示した。
著者
廣野 哲 中村 宏 朴 泰祐 中澤 喜三郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.10, pp.1850-1858, 1996-10-15
参考文献数
9
被引用文献数
1

大規模科学技術計算においては データ参照に時間的局所性が少ないためにキヤッシュが有効に働かない. このような計算においても高い実効性能を達成する擬似ベクトルプロセッサPVP-SWを我々は提案している. また データがランダムに参照され データ参照に空間的局所性も少ないリストベクトル処理においてもPVP-SWは有効であることが過去に報告されている. しかし 過去の報告では リストベクトルの内容に重複がないことが保証された場合のリストベクトル処理についてのみ論じている. 本論文では このような保証がなく 従来のべクトル型スーパーコンピュータではベクトル化できない一般のリストベクトル処理においてもPVP-SWが効率良く処理を行えることを示す. 計算機シミュレーションによる性能評価結果より PVP-SWが高い実効性能を達成することが確認できた.In large scientific/engineering applications, data caches do not work effectively because of little temporal locality. We have proposed "Pseudo Vector Processor based on Slide-Windowed Registers (PVP-SW)" for these applications. This processor realizes high performance even in list vector processing which has little spatial locality due to random data accesses. However, previous reports assumed that none of the list vector data is the same. In this paper, we focus on more general list vector computation without this assumption. Such list vector computation can not be vectorized in ordinary vector supercomputers. We show that PVP-SW is also effective even in such list Vector processing. Performance evaluation reveals that PVP-SW achieves high performance even in general list vector processing.
著者
丸山 勝久 島 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.1777-1790, 2000-06-15
参考文献数
24

オブジェクト指向ソフトウェア開発において,フレームワークを再構成することは,その再利用性をより高くする効果を持つ.しかしながら,再構成操作は手動で行うには複雑である.本論文では,過去のアプリケーション開発時のメソッドの変更履歴に基づく重み付き依存グラフを用いて,フレームワークを自動的に再構成する手法を提案する.本再構成手法では,継承によりクラスを再利用した際,メソッド内部に存在する依存関係が保存あるいは破壊されるかどうかに応じて,依存関係の強さを指す重みを変動させる.重み付き依存グラフの矢印に蓄積された重み値に基づき,もとのフレームワークにおいて,そのまま再利用可能な固定部分と要求に応じて柔軟に変更する可変部分を分離することで,個々の開発者に特化したフレームワークの成熟化を実現する.適切に分離された固定部分と可変部分を含むフレームワークを用いることで,アプリケーション開発における実装の繰返しを軽減できる.本論文における評価実験では,開発者の記述コード量に関して,最大22%(従来手法に比べて約2倍)の減少率を確認した.While refactoring makes application frameworks more reusable,it is complex to do by hand.This paper presents a mechanism that automatically refactors methodsin object-oriented frameworks by using weighted dependence graphs,whose edges are weighted based on the modification histories of the methods.To find the appropriate boundarybetween frozen spots and hot spots in the methods,the value of the weight varies based on whether the dependencein the original methods has been repeatedly preserved or destroyedin the methods of applications created by programmers.The mechanism constructs both template methods that containthe invariant dependence and hook methods that are separatedby eliminating the variant dependence.The new template methods and hook methods tailored toeach programmer save him/her from writing superfluous codewhen reusing a framework.Experimental results show a reduction rate of up to 22%in the number of statements a programmer has to writewhen creating several applications;this percentage is double that achievableby a conventional refactoring technique.
著者
高橋 碧 セーリム ナッタウット 林 晋平 佐伯 元司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.1040-1050, 2019-04-15

大規模なソフトウェア開発では,ある特定のバグを解決するために修正すべきソースコード箇所を見つけるBug Localizationが必要である.情報検索に基づくBug Localization手法(IR手法)は,バグに関して記述されたバグレポートとソースコード内のモジュールとのテキスト類似度を計算し,これに基づき修正すべきモジュールを特定する.しかし,この手法は各モジュールのバグ含有可能性を考慮していないため精度が低い.本論文では,ソースコード内のモジュールのバグ含有可能性として不吉な臭いを用い,これを既存のIR手法と組み合わせたBug Localization手法を提案する.提案手法では,不吉な臭いの深刻度と,ベクトル空間モデルに基づくテキスト類似度を統合した新しい評価値を定義している.これは深刻度の高い不吉な臭いとバグレポートとの高いテキスト類似性の両方を持つモジュールを上位に位置付け,バグを解決するために修正すべきモジュールを予測する.4つのOSSプロジェクトの過去のバグレポートを用いた評価では,いずれのプロジェクト,モジュール粒度においても提案手法の精度が既存のIR手法を上回り,クラスレベルとメソッドレベルでそれぞれ平均22%,137%の向上がみられた.また,不吉な臭いがBug Localizationに与える影響について調査を行った.
著者
相澤 和也 鄭 顕志 本位田 真一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.1025-1039, 2019-04-15

ソフトウェアシステムの安全性は,通常,開発時に想定した実行環境の前提下において保証される.この前提が実行時の環境変化等によって崩れると,システムの安全性は保証されない.実行時に起こる環境変化に対して可能な限りの安全性を維持・保証するためには,変化した環境下でどのような安全性が保証可能かを実行時に分析する必要がある.実行時の情報を用いた分析手法は環境情報の分析にかかる計算時間オーバヘッドが課題となる.本論文では,(1)環境変化の差分情報から効率的に安全性保証の判定を行うアルゴリズムを提案し,(2)アルゴリズムの効率性に関する評価と(3)安全性保証に関する証明を行う.このアルゴリズムは安全性を構成する要素ごとの保証可否と,環境変化によって生じる差分の2つの観点に基づいて分析している.これら2つの観点を組み合わせることによって既存技術を用いた分析と比べて計算時間を最大0.2%程度にまで削減できることが実験結果によって確認できた.
著者
宇佐美 芳明 安生健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.746-755, 1992-05-15
参考文献数
9

コンピュータ・グラフィックスにより リアルな人間を表示可能にすることは ニーズのある重要な課題であるしかし従来の映像生成の手法では 他の人体各部に比較して 頭髪の表現レベルが不十分であるまた 容易に髪形を定義できるような 頭髭のモデリング方法も存在しないこれらの問題は頭髪の形状決定の際に 頭髪の物理的特性が考慮されていないことが原因と考えられるそこで 頭髪の曲げ変形に対する剛性を考慮した物理シミュレーションを導入して 新しいモデリング方法を提案する。曲げ剛性を利用すると 頭髪の変形長はこれに作用する曲げモーメントの大きさから求められ 頭髪の変形の基本的性質をシミュレートできるすなわち 頭髪の生え際付近では変形量が小さく 先端に向かうにつれて変形量が大きくなる性質であるそのため 本手法では頭髪の分け目やボリューム感が容易に表現でき 従来手法にないリアルな頭髪の表現が可能となったまた 頭髪をコンパクトな3次元のポリラインのデータで表現しており 多数のポリゴンで頭髪を近似する必要はないしたがって グラフィックス・ワークステーションのハードウェアを利用して 高速なレンタリングが可能であるさらに モデリング処理である頭髪の曲げ計算の時間についても 実用上問題のない範囲で処理できる
著者
森元 逞 田代 敏久 竹澤 寿幸 永田 昌明 谷戸 文廣 浦谷則好 鈴木 雅実 菊井 玄一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.1726-1735, 1996-09-15
参考文献数
21
被引用文献数
5

日本語から英語へ翻訳可能な音声翻訳実験システム(ASURA)を開発した. ASURAでは 分野間の移植性を確保できるよう 一般的な日本語話し言葉の表現を網羅するとともに 音声認識と言語翻訳のコンポーネントのいずれも 名詞や動詞などの分野に依存する辞書項目を容易に入れ替え可能な構成としている. また 音声認識や言語翻訳にともなって発生する暖昧さ(複数の候補)に対処するため 正しい候補を効率良く選択できるようにコンポーネント間 サブコンポーネント間で機能分担を行い また候補の探索メカニズムを組み込んでいる. 本論文では このようなASURAのシステム構成について述べ また システムの性能評価を行い このシステム構成の有効性を示す.We have developed the experimental speech translation system ASURA, which translates from Japanese to English. In order to keep high portability to various domains, most of the common expressions in spoken Japanese are covered, and both the speech recognition and language translation components are constructed so that domain-dependent lexical items such as nouns and verbs are easy to replace. Furthermore, all of the components and sub-components in the system share functionalities so that they can effectively reduce ambiguities created in the course of speech recognition and language translation processing. The candidate search mechanisms are also incorporated for the same purpose. This paper describes the configuration and performance evaluation of the system, and demonstrates the effectiveness of the configuration.
著者
西村 治彦 新地 辰朗
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.787-796, 1995-04-15
参考文献数
25
被引用文献数
9

力学系アトラクタとの対応により、セルオートマトンの多様な挙動パターンがWolframによって4つのクラスに分類されて以来、クラス4は秩序的なクラス1,2と無秩序(カオス)的なクラス3の境界に位置する特異な存在として、様々な視点から注目されてきた。本論文では、このクラス4とクラス3の違いを定量化する新たな試みとして、1次元2状態セルオートマトンに時系列フラクタノレ解析の手法を適用する。セノレ配列全体を時系列ベクトルデータとすることにより、挙動の大域的性質が精確に捉えられる。その結果、3近傍と5近傍ルールの具体的評価を通して、クラス4はフラクタノレ次元が大きく異なる粗視化時間構造の重ね合せ状態であることが明らかとなった。従って、ここでの解析法は、セルオートマトンのクラス分類を定量化する指標として十分有効であると言える。
著者
塩村 尊 能多 秀徳
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.2874-2877, 2007-08-15
参考文献数
6

本稿の目的は,エージェント間で直接意見交換を行い,互いに説得,あるいは順応しつつ合意が形成されてゆくプロセスにおいて,意見交換が同時いっせいに行われる場合と逐次的に行われる場合のシミュレーション分析を行うことにある.これら2 つの調整過程は一般に異なる帰結を生み出し,平均として後者の方が早く合意に至ること,および後者の帰結がエージェントの交渉順に依存することを示す.特に,この効果は合意に要する交渉回数が少ないほど,顕著に現れることが強調される.また,合意の帰結は集団内の頑固者,あるいは発言力の大きい者の意見に偏向する傾向があることを確認する.The purpose of the paper is to present two models. In the first model, members exchange views simultaneously, while in the second one sequentially. Two models induce different results. A sequential model on average arrives at a goal faster and its final result depends on the sequence of turns taken in negotiations. If the turn of a member is taken later, the final result becomes more favorable to that member. The effects, however, are smaller if the number of negotiations is many. The result of negotiations tends to be in favor of a member with small adaptability or large persuasiveness.
著者
和田 俊和 野村 圭弘 松山 隆司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.879-891, 1995-04-15
参考文献数
11
被引用文献数
15

画像の領域分割問題は、明度、色、テクスチャの統計的性質、境界のエッジ強度の極大性など各領域の「属性」に関する性質と、それらが互いに素であり、画像全体を被覆するという領域間の「関係」に関する性質を同時に満足する領域集合を求める問題である。このように、部分の属性と部分間の関係の両者を取り扱わなければならない問題に対しては、各部分を自律的に動作するプロセス(エージェント)によって表現し、それらの相互作用によって解析を行う分散協調処理が適している。本研究では、領域の属性情報と領域間の空間的関係情報の両者を分散協調処理を用いて統合する領域分割法を提案する。本手法では、まず画像中の領域を表す各エージェントが他のエージェントの位置・形状を参照することにより、領域間の関係、すなわち領域の境界位置に関する仮説を生成する。各エージェントは、生成した仮説とボトムアップ解析によって得た領域固有の属性情報を、スネークのエネルギー関数を通じて統合し、エネルギー関数の最適化によって領域形状の変形を行う。さらに、エージェント間で互いに矛盾する仮説が生成された場合、各エージェントは仮説を修正することによって矛盾の解消を行う。以上のように「仮説の生成」、「矛盾する仮説の検証と修正」という機能を持つ分散協調システムによって整合性のある領域分割が行えることを実験によって示す。
著者
杉本 麻樹 小島 稔 中村 享大 冨田 正浩 新居 英明 稲見 昌彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.3490-3500, 2007-11-15
参考文献数
23
被引用文献数
1

本論文では,複合現実感技術を用いて小型ロボットとCG オブジェクトのインタラクションを実現する実世界指向のゲーム環境を提案する.複合現実環境の主体として駆動装置を持つロボットを用いることで,CG でロボットの周囲に映像の修飾を加えるのみではなく,ロボット自身の動作によって情報世界での衝突などで生じるバーチャルな力の表現を行うことが可能である.このような表現を行うことによって,実世界のロボットと複合現実環境のシームレスな融合を実現できる.This paper proposes a novel game environment with Mixed Reality technologies. The environment enables an interaction between Computer Graphics objects and real robots. The Computer Graphics objects enhance the robots with visual augmentation. Furthermore, the robots can show several virtual events such as a collision by their reactions in the real environment. A seamless fusion of the robot and the Mixed Reality environment can be achieved with the reactions of the robots.
著者
山岸 伶 高田 哲司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.1119-1128, 2019-04-15

知識照合型個人認証の脅威として推測攻撃が存在し,これはとりうる秘密情報から,攻撃者が利用者の秘密情報だと考える順序をつけ,その順に試行することでなりすましを試みる攻撃方法である.推測攻撃は,多くの利用者が設定している秘密情報を優先する傾向型推測攻撃と正規利用者の属性や好みに基づいて順序をつける個人情報型推測攻撃に分類される.推測攻撃は,秘密情報の偏りや利用者の個人情報に基づいた脆弱な秘密情報により可能となる.これらの脆弱な秘密情報は作成・記憶保持可能である点を重視する利用者の秘密情報設定戦略に起因する.本研究では,a)推測攻撃に対する安全性改善,b)秘密情報の記憶保持が可能,c)利用者が秘密情報を作成可能の3要件を満たす個人認証を目的とし,単語ぺアを秘密情報とする個人認証を提案する.単語ぺアを秘密情報とすることは選択する情報を2つに増やし,そのぺア間の関連も利用者が定義可能な点から,自由度が増加して推測攻撃に対する安全性が向上すると考えた.この提案に基づいてプロトタイプシステムを実装し,要件a)とb)の観点で評価実験を実施した.その結果,提案手法は70試行までは推測攻撃の成功例がなく,1,2週間隔での利用でも記憶保持が可能という結果を得た.
著者
後藤 功雄 加藤 直人 田中 英輝 江原暉将 浦谷則好
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.968-979, 2006-03-15
参考文献数
22

カタカナで表記された外国人名の英訳語を,関連語をキーワードとする言語横断情報検索と,発音類似性を利用した訳語推定により,World Wide Web(WWW)文書から獲得する手法を提案する.ニュース記事に出現する人名は新出語であることが多く,対訳辞書に登録されていない場合も多い.提案手法は,カタカナの外国人名が文書中に存在した場合,はじめにその周辺の単語を対訳辞書によって英訳し,これらをキーワードとして英語のWWW 文書検索を行う.次に,検索されたWWW 文書中から人名候補となる英単語列を翻字により変換し,発音が類似した英単語列を訳語とする.ニュース記事に出現した外国人名を対象として本手法による実験を行い,有効性を確認した.This paper proposes a method of acquiring English equivalents of foreign personal names written in katakana characters from the World Wide Web (WWW). In news articles, new foreign personal names appear frequently and are rarely registered in bilingual dictionaries. Our method can automatically obtain the English equivalents of personal names by using two phases: cross-language information retrieval using related words and acquisition of translation based on phonetic similarity. In the first phase, given a katakana foreign personal name appearing in a news article, the method extracts words related to the foreign personal name, translates these words into English using bilingual dictionaries, and retrieves WWW documents in English using the translated words as keywords. In the second phase, our method extracts candidates of English equivalents from the retrievedWWWdocuments, transliterates the candidates to phonetic expressions, compares them with the phonetic expression of the personal name written in katakana, and obtains the most similar one as the English equivalent. We confirmed the effectiveness of our method with a series of experiments using foreign personal names appearing in news articles.
著者
相澤 彰子
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.1720-1730, 2003-07-15

本論文ではテキスト分類における低頻度語の利用とその効果について述べる.テキストに含まれる多数の低頻度語を手がかりとして利用するために,線形判別関数に基づく単純なテキスト分類法に注目し, (1)情報量的な観点に基づく重み付け尺度,(2)確率的言語モデルにおける統計的ディスカウンティング法の適用,(3)形態素解析ツールを利用した複合語抽出処理による性能の改善を目指す.実験では,ともにスケーラビリティに優れた手法である単純ベクトル法やサポートベクタマシンを用いて,大規模なテキスト分類問題における改善や特性を考察する.
著者
橋田 光代 松井 淑恵 北原 鉄朗 片寄 晴弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1090-1099, 2009-03-15

音楽研究用のデータベースは近年の音楽情報検索技術の発展とともに整備されつつあるが,音楽の印象を決定づけるうえで重要な役割を担っている演奏表情を扱った共通データベースは,一部の民俗音楽学を対象とするものに限られてきた.我々は,音楽情報科学,音楽知覚認知,音楽学などにおける共通研究基盤の構築を目的として,伝統的西洋音楽におけるピアノ演奏を対象とした演奏表情データベースCrestMusePEDBの作成を進めている.現在,ver.1.0/2.0として計60演奏に対する演奏表情データが用意され,本データベースを利用した連携プロジェクトも開始された.本論文では,音楽演奏表情データベース構築上の課題を整理したうえで,CrestMusePEDBの概要,演奏表情データの作成手順について述べ,現在の利用状況,応用領域,課題について議論する.