著者
川本 真一 足立 吉広 大谷 大和 四倉 達夫 森島 繁生 中村 哲
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.250-264, 2010-02-15
被引用文献数
2

視聴者の顔をCGで再現し,CGキャラクタとして映画に登場させるFuture Cast System(FCS)を改良し,視聴者から収録した少量の音声サンプルを用いて,視聴者に似た台詞音声を生成するため複数手法を統合し,生成された台詞音声をシーンに合わせて同期再生することで,視聴者の声の特徴をキャラクタに反映させるシステムを提案する.話者データベースから視聴者と声が似た話者を選択する手法(類似話者選択技術)と,複数話者音声を混合することで視聴者の声に似た音声を生成する手法(音声モーフィング技術)を組み合わせたシステムを構築し,複数処理を並列化することで,上映準備時間の要求条件を満たした.実環境を想定してBGM/SEを重畳した音声によって,従来手法である類似話者選択技術より得られる音声と,提案法で導入した音声モーフィング技術より得られる音声を主観評価実験により評価した結果,Preference Scoreで56.5%のモーフィング音声が目標話者の音声に似ていると判断され,音声モーフィングを組み合わせることでシステムが出力する台詞音声の話者類似性を改善できることを示した.In this paper, we propose an improved Future Cast System (FCS) that enables anyone to be a movie star while retaining their individuality in terms of how they look and how they sound. The proposed system produces voices that are significantly matched to their targets by integrating the results of multiple methods: similar speaker selection and voice morphing. After assigning one CG character to the audience, the system produces voices in synchronization with the CG character's movement. We constructed the speech synchronization system using a voice actor database with 60 different kinds of voices. Our system achieved higher voice similarity than conventional systems; the preference score of our system was 56.5% over other conventional systems.
著者
藤井 彩恵 内山 彰 梅津 高朗 山口 弘純 東野 輝夫
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.3601-3611, 2008-10-15

本論文では,正確な位置情報を発信する固定ノード(ランドマーク)や他の移動ノードとの遭遇情報を収集し,それらを用いて移動ノードの軌跡をオフライン(非リアルタイム)で推定する手法を提案する.提案手法では,ランドマーク間を最も直線に近い軌跡で移動したと考えられるノードの移動軌跡を推定し,その移動軌跡を他のノードの軌跡の推定に用いるという処理を繰り返す.さらに,シミュレーテッド・アニーリング(SA)を用いて,全移動端末の軌跡を一括して修正することにより,移動軌跡の精度を向上させる.シミュレーション結果より現実的な環境下で推定誤差が最大無線到達距離の40%程度に抑えられることを確認した.In this paper, we design and implement an algorithm to estimate the movement of wireless terminals. The proposed method relies on the history of ad hoc wireless communication between those terminals and the landmark stations to track the movement of each terminal. The principle of the algorithm design lies in iterative refinement of their positions so that they finally settle in appropriate positions that satisfy the constraints derived from the given communication history. We have evaluated the performance of our algorithm by simulations and confirmed that the average position estimation error was less than 40% of the wireless range with realistic settings.
著者
石井 亮登 森田 ひろみ
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.1784-1793, 2013-06-15

スクロール表示は,狭い領域に多量の情報を提示するために用いられる.本論文では,横書きの文章が下から上へと流れる縦スクロール表示について,その基本的な読み特性を調べることにより,携帯端末などのデザインに資することを目的とする.実験1ではスクロール表示の読みの基本的評価指標の1つとされる快適速度(読み手が快適に読めると感じる速度)と,移動単位(スクロールする際に1度に移動する距離,ここでは1ピクセルまたは1行)や表示枠サイズ(表示行数および1行内の表示文字数)の関係を調べた.その結果,移動単位が1ピクセルの条件の方が快適速度が速いこと,また表示行数および表示文字数の増加にともない快適速度が速くなること,表示枠内の広さが同じであれば,行数を犠牲にして行内の文字数を多くとる方が快適速度が速くなることが示された.実験2では,読み最中の眼球運動を測定した結果,移動単位により読み方が異なることが分かった.ピクセル単位のスクロール表示を読む場合は,1行を読み終えたら速やかに次の行の行頭に視線移動するのに対し,行単位のスクロール表示を読む場合,1行を読み終えてもそのまま行末で行送りを待つ読み方をする.また,移動単位によらず読み手は表示枠内の最下行に視線を向けて読むことが多いことが分かった.結果から,移動単位により異なる縦スクロール表示の読みモデルを提案する.
著者
山岡 史享 神田 崇行 石黒 浩 萩田 紀博
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.3577-3587, 2007-11-15

最近,遠隔操作型のコミュニケーションロボットが用いられ始めてきた.本研究のねらいは,このような遠隔操作型のロボットと人が相互作用する際,人はロボット自身と相互作用しているように感じるのか,それとも背後の人と相互作用していると感じるのか,またそのような感じ方の違いは,相互作用にどのような影響を与えるのだろうか,ということを検証することである.そこで本研究では,ロボットはプログラムによって自律的に動いていると被験者に教示する条件と,ロボットは操作者によって遠隔操作されていると被験者に教示する条件の2 つの実験条件を設定し,2 つの条件間における被験者のロボットに対する印象の差異を検証した.実験では,被験者は人型ロボットと,アイコンタクトや接触行動などお互いの身体を使った相互作用を行い,そのときのロボットの印象を評価した.実験の結果として,2/3 の被験者は,ロボット自身と相互作用していると感じており,彼らの感じた楽しさは,ロボットが操作されているのかどうかといった事前知識には影響されていなかった.また,残りの1/3 の被験者はロボットの背後の人と相互作用しているように感じており,彼らの相互作用は事前知識に影響されていた.ロボット自身ではなく,背後の人間と相互作用していると感じていた被験者は,自律型ロボットと相互作用すると教示された場合には,より相互作用が楽しいと感じ,相互作用時間も増えていた.一方で,操作型ロボットと相互作用すると教示された場合は,よりつまらないと感じ,相互作用時間も減少していた.
著者
坂崎 尚生 側高幸治 長谷部 高行 山田 朝彦 大岩寛
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.2194-2203, 2012-09-15

2011年6月30日に政府・与党社会保障改革検討本部から社会保障・税番号大綱(案)[2]が示された.社会保障・税番号制度は,社会保障や税制を一体的にとらえ,社会保障給付等の効率性・透明性・公平性を高めようという観点から導入が検討されてきた社会基盤である.上記番号制度は社会保障・税分野で利用することを目的とした制度であり,民間への利活用は現段階では検討範囲外である.そこで,産業競争力懇談会(COCN)では,民間への利活用をテーマに,番号制度が国民に安心・安全な社会基盤として受け入れられるように,番号制度の民間利用に関する脅威分析を行い,セキュリティ対策を検討した.本論文は,医療,製品安全,金融の分野での想定したユースケースを基に,課題とその課題を解決するための技術的・制度的対応策をまとめたものである.We discuss the threat analysis in expansion of the use of the social security and tax number system. In this paper, we describe security countermeasures of the number system based on the medical treatment usage, the distribution industry usage and the financial usage.
著者
鳥海 不二夫 松澤 有 鈴村 豊太郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.1277-1286, 2017-06-15

ソーシャルメディア上で頻繁に見られる意見と,世間一般における多数派の意見とは必ずしも一致しない.このような現象が発生する原因の1つにヴォーカル・マイノリティがあると考えられる.本研究では,ヴォーカル・マイノリティ現象が発生する要因を明らかにするために,ソーシャルメディア上でのユーザ行動のマルチエージェントモデルを提案した.提案モデルを用いたシミュレーションによってハブエージェントの影響がヴォーカル・マイノリティが発生する要因の1つであると考えられることを明らかにした.さらに,ソーシャルメディアの実データを用いて分析を行い,本シミュレーション結果が実データでも支持されることを確認した.
著者
松本 敬 遠藤伶 重野 寛
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.1310-1319, 2010-06-15
被引用文献数
2

P2Pファイル共有において,レアリティが高く入手の難しいブロックが発生し,ブロック収集効率が下がるブロックのレアリティ問題が存在する.ブロックとは,共有するファイルをあらかじめ決められたサイズに分割した断片のことである.そこで,本論文ではブロック収集効率をあげるためにブロックのレアリティを考慮したブロックを効率的に分散させるP2Pファイル共有手法CASの提案を行う.CASではレアリティ問題の原因であるブロックの分散速度とピア離脱の2点に対処することで,ブロックを収集するための効率をあげる.さらに,シミュレーション評価を行い,ネットワーク内のピア数に変動がない場合にネットワーク内の全ピアがファイル復元に要する時間が,CASは既存手法と比べ60%に短縮されることを示した.This paper discusses a rarity problem of blocks in P2P file sharing that degenerates the blocks collection efficiency of peer by the blocks that have high rarity and thus difficult to obtain it. Blocks are the divided fragments of shared files as which size is decided previously. The aim of this proposal is to improve the blocks collection efficiency of peer in P2P. We propose CAS which is a P2P file sharing method for efficient distribution of blocks that considers the rarity of blocks. In the proposal, CAS deals both the dispersion speed of blocks and the peer departure to improve the blocks collection efficiency. Moreover, we show through simulations when number of peer is stable that CAS reduces file reconstruction time of all peers in network to 60 percent than traditional method.
著者
戸倉 毅 鈴木 隆子 中村 浩子 牧野 優子 高倉 穂
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.20-28, 1988-01-15
被引用文献数
5

本論文では ワードプロセッサ等のOA機器に個性的で美しい日本語出力を実現することを目的とした 毛筆体文字の計算機による生成方式について論じる.毛筆体文字は ストロークごとに生成する.各ストロークは骨格線上の3?7点のx y座標と太さ情報をパラメータとし それらを3次スプライン補間し輪郭情報を得る.ストロークの起筆・収筆部は 12角形の筆触形をあてはめることにより筆らしさを表現する.文字をストローク単位に生成しているため 文字の変形が可能であり ひらがなに対してつづけ字を実現している.また 各ストロークのパラメータを半自動的に抽出し文字データを容易に作成できるエディタ 外字を簡単に作成できるエディタも同時に実現した.JIS第1水準の漢字およびひらがな 片仮名計3148字の行書体文字を作成し 実用レベルの出力品質が得られていることを確認した.データ量は 平均的な11画の漢字について約150バイト 作成した3148文字に対し432kバイトであり 実用上妥当な量である.
著者
松井 遼太 長谷川 麻美 竹川 佳成 平田 圭二 柳沢 豊
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.789-797, 2020-04-15

本稿では,ピアノ演奏時の悪癖アノテーション機能を持つ,ピアノ教師向け悪癖発見支援システムの構築について述べる. ピアノ演奏者にとって正しい指使いを身につけることは,高度な演奏技術を修得するうえで必須となる. 指使いは身体や運動に依存するため,個人の体格や弾き方に影響されやすい.そのため,演奏者が誤った指使いを身につけた場合,指使いは悪癖として定着しやすく,定着後に修正することが難しい.したがってピアノ教師は,生徒の指使いに関する悪癖を発見し,指導する. しかし,生徒に悪癖があっても上手に演奏できている場合もあり,教師が一聴しただけでは悪癖の発見が難しい.一方,悪癖を視覚的に判断する手段も存在するが,演奏時の手指の動きは素早いため,教師は実時間で単方向から見ただけでは生徒の悪癖を見逃してしまう. そこで,提案システムは生徒の演奏を3視点から撮影した映像それぞれをコマ送り再生できる機能,打鍵間隔や打鍵の強さを可視化する機能を持つ.これにより,教師は単に映像を見るよりも効率良く生徒の悪癖を発見できる.また,提案システムは深層学習を用いた悪癖アノテーション機能により,演奏中に悪癖がある箇所を推定し,教師の見逃しを防止できる. 一般的な動画再生機能を持つツールを使用した従来手法群と,提案システムを使用した提案手法群を比較した評価実験の結果,提案手法群が悪癖発見に役立つことが示唆された.
著者
馬渕 充啓 高田 真吾 小沢 健史 豊岡 拓 松井 慧悟 佐藤 聡 新城 靖 加藤 和彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.974-988, 2010-03-15
被引用文献数
1

多くの大学では,情報コンセントや無線LANをいたるところから利用することができるようになりつつある.利用者がすべてのネットワークに対して接続するための権限(接続権限)を持っているとは限らないため,ネットワークを利用できないことがある.それらを利用できる利用者が接続権限を信頼できる他の利用者に手軽に渡すことができれば,他の利用者も手軽にそれらを利用することができる.本論文では,接続権限を利用者間で受け渡し可能なネットワーク制御機構CaNectorについて述べる.我々は,ケーパビリティに基づくアクセス制御を用いてCaNectorを実現している.CaNectorで扱うケーパビリティは,管理権限(接続権限を管理するための権限)ありのケーパビリティと接続権限のみのケーパビリティに分類される.管理権限ありのケーパビリティを保持している利用者は,そのケーパビリティを元に手軽に新しいケーパビリティを作成し,信頼できる他の利用者に渡すことができる.CaNectorは,筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻所属のソフトウェア研究室内で約6カ月間問題なく稼働している.Information outlets and wireless LANs are becoming available everywhere in many universities. Since a user doesn't always have access rights for all the networks, the user sometimes cannot use a network. If a user who can use them can pass his or her access rights to other trusted users easily, other users can use them readily. This paper describes CaNector, which enables passing access rights among users. We realize CaNector by using capability-based access control. Capabilities in CaNector are classified into two types: the first one is a capability that includes both management rights and access rights, and the second one is a capability that includes only access rights. A user who has a capability that includes management rights can create new capabilities based on his or her own capability and then pass them to another trusted user easily. CaNector has been working for 6 months in Software laboratory in Department of Computer Science, Graduate School of Systems and Information Engineering, University of Tsukuba.
著者
井上 亮文 吉田 竜二 平石 絢子 重野 寛 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.212-221, 2004-01-15
参考文献数
14
被引用文献数
8

本研究では,映画の映像理論に基づく対面会議シーンの自動撮影方式を提案する.対面会議シーンの撮影には複数のカメラを用いる必要があるが,位置的に離れたカメラの映像でスイッチングを行うと急激な変化が生じ,視聴者が参加者の位置関係の認識に混乱を来たす.提案手法では,人物の位置関係を明確にする映像理論であるイマジナリーラインを設定および解除する方法と,参加者の対話シーンを強調する三角形配置に従った撮影用カメラの決定方法を定義している.実験では正確なイマジナリーラインを冗長な部分があるものの70¥%の確率で設定でき,映像表現に影響を与えるような検出ロスは少なかった.アンケートによる比較実験では,人手でスイッチングしたものと比べて位置関係の見やすい映像を自動生成できたことが確認された.In this paper,an automatic shooting method for face-to-face meeting scene based on grammar of the film language is proposed.Shooting a meeting scene requires multiple video cam- eras,however,viewers may get confused in case of switching shot between spatially distant cameras.To shoot participants effectively,we introduce two filming theory into automatic shooting method.The dectection of the メimaginary line モmakes spatial relationships of the participants clear.The determination of the メcamera triangle モfigures out the conversation of the participants.Although there remains some redundancies,the detection ratio of the ideal imaginary line was 70%,the loss of which had less effects on the video image.The comparative experimental result indicated the availability.
著者
細田 真道 坂本 寛 村上 友規 毛利 忠 中山 彰 小川 智明 宮本 勝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.946-958, 2021-03-15

本論文ではMaaS,イベント,施設等の運営者が人流把握を目的として来場者所持端末を測位する方法を提案する.我々はこの目的のため,広く普及している無線LAN端末を対象とし,端末にアプリケーション等のインストール不要,端末は分散アンテナを用いたアクセスポイントに帰属するだけでアクセスポイント側から1次元測位できる方法を以前提案した.本論文ではこれを2次元に拡張するとともに,より多くのアンテナや複数種の計測値を統合して位置推定計算する方法を提案し,有効性を確かめるための実験を行い測位結果および評価を示す.最後に,フィールド実証として来場者が多数集まる展示会で動作させ,実フィールドでの有効性を確かめる.
著者
小越 康宏 日名田 明 広瀬 貞樹 木村 春彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.397-400, 2003-02-15

コンピュータシステムの個人認証においては,従来よりユーザ名,パスワードの情報を用いて本人かどうかの認証を行っているが,これらの情報が漏れた場合に不正利用される恐れがある.そこで,ユーザ名,パスワードを入力するときの打鍵間時間(あるキーが打たれてから次のキーが打たれるまでに要する時間)の特徴を参考にして個人認証を行うシステムがいくつか提案されている.しかし,打鍵の熟練者においては打鍵間時間に差異が現れにくく,どのシステムにおいても本人かどうかの認証が困難となる問題点があった.本研究では,このような打鍵間時間を基にした認証システムにおいては,認証時に意図的なリズムを持たせて打鍵するリズム打鍵が有効で,認証精度を大幅に改善できることを示す.
著者
富樫 雅文
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.839-848, 1989-07-15

新しい和文入力方式として超多段シフト方式を提案する.従来の各種入力方式の長所を継承するために 多段シフト方式からキーヘの漢字の多重配置を コード入力方式から漢字のコード化を また 仮名漢字変換からは 入力のてがかりとしての読みの利用を各々取り入れた.入力には標準鍵盤を使用し あらかじめ 各キーに漢字を多重配置しておく.漢字の入力には まず 読みを入力して鍵盤を仮想的にシフトし 漢字の配置されたキーを次に打鍵して漢字を一意に指定する.これは シフト段数が2 943段に及ぶ超多段シフトである.パーソナルコンピュータ上で 本方式による和文入力システムを実現した.本方式のための漢字配列の決定と 操作性向上のための若干の工夫および使用方法について説明する.また 本方式による和文入力速度を 学習を伴う打鍵モデルに基づいて予測し 200時間の訓練後で毎分137字という結果を得た.超多段シフト方式は 初心者には仮想鍵盤の表示と目視打鍵による対話型のインタフェースを また 熟練者には可変長コードの触指打鍵入力による一方的インタフェースを提供する.
著者
小山 謙二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.1923-1936, 2000-07-15

盤面の駒が玉1枚の裸玉詰将棋問題は,簡素な配置ゆえそれ自身高度な芸術性を持つ論理ゲームである.裸玉問題を解いたり,創作(発見)するのは人間にもコンピュータにも難しい.すべての裸玉問題を体系的に解明することが課題となっている.まずすでに発表されている裸玉問題を検討した.次に,詰む最小持駒集合の定義と性質を述べ,体系的に新作問題の候補を見つけ出す方法を明らかにした.最後に,詰将棋プログラムとコンピュータを援用して,玉の位置が1八の問題を網羅的に探索した.その結果,完備な詰む最小持駒集合を得るとともに,5つの準完全作と1つの完全作を発見した.
著者
田中康 飯田元 松本健一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.1233-1245, 2005-05-15

ソフトウェアプロセスの適切なモデル化は,開発のフレームワークを提供するとともに,継続的なプロセス改善のベースラインを提供する意味においても重要な課題である.しかし,従来のプロセスのモデルは,変化を続ける現実の開発活動を適切にモデル化することが困難なために,当初定義したプロセスモデルが利用されず形骸化してしまう問題が起こっていた.そこで我々は,継続的なプロセス改善への適用に有効なプロセスモデルとして,成果物間の関連に着目したプロセスのモデル化方法「PReP(Product Relationship Process)」モデルを開発した.実際の開発プロジェクトに適用した結果,PRePモデルは,現実の開発活動のモデル化,理解の容易性,モデル化の柔軟性,そして再利用性にすぐれていることを確認した.PRePモデルを使用することにより,開発活動の実行とプロセスの継続的改善に効果的に利用できるプロセスモデルを定義することができる.
著者
川上 隼斗 笹田 裕太 五十嵐 覚 秋田 純一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.1174-1183, 2015-04-15

視線計測はユーザインタフェースや心理状態の分析などインタラクション分野での幅広い応用が期待されている.サッケードと呼ばれる高速な眼球運動は,従来の視線計測システムではリアルタイムでの追尾が不可能であるものの,新しいインタラクションへの応用が期待されている.本稿では,サッケードを含む眼球運動を500[fps]以上の高フレームレート,かつリアルタイム(低レイテンシ)で計測・追尾が可能な視線計測システムの開発について,高速カメラとFPGAを用いた実動作検証システムと専用イメージセンサの設計のそれぞれについて述べる.またそれを用いて「サッケードが行き着く先」を先回りで予測する手法について検討した結果について述べ,さらにそのリアルタイムのサッケード予測を用いるインタラクションの可能性について考察する.
著者
越後 宏紀 小林 稔
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.90-99, 2021-01-15

高齢者の独り身世帯や単身赴任,一人暮らしの学生など家族が離れ離れに暮らすことが増えている.日々の生活が家族内で共有できないことで,生活のずれによる孤独感や不安,心配をかかえてしまう.この問題を解決するために,我々は,足音を用いて離れて生活する家族があたかも近くで生活しているような感覚を得られるシステムの実現を目指している.本論文では,マイクロホンで録音した足音を単純に再生する方法ではアウェアネスを適切に伝達できない場合があるという問題を解決するために,足踏みの音源を位置計測で得られたユーザの位置情報によって変換して再生することで足音の移動を表現する手法を提案した.比較実験を行い,提案手法が適切な足音の移動を伝達することに対して有効であることを確認したとともに,位置計測のデータから自動で表現できることを確認した.
著者
磯島 和樹 萩原 将文
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.378-386, 2021-01-15

本論文では,話題語を応答に反映させる話題語Seq2Seqを用いた,共感と助言に着目した自動相談システムを提案する.相談においては相手の感情に共感する発話と,相手に対して情報を与える助言の発話が求められる.提案システムでは相談者の入力文から抽出した感性語や話題語をもとに共感と助言の2つの発話を使い分ける.共感の発話にはテンプレート文を用い,助言の発話には話題語を応答に反映させる話題語Seq2Seqを提案する.話題語Seq2Seqにより,ありきたりな応答を生成しやすい従来のSeq2Seqを改善し,相談内容に関する多様な応答を生成できるようになった.評価実験では,従来のSeq2Seqを用いた相談システムと比較する主観評価実験を行った.その結果,従来システムよりも多様でユーザに寄り添う応答を生成できることが示された.
著者
板倉 和治 中村 勝洋
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.474-480, 1983-07-15

Rivestらが発表した公開鍵暗号方式は 公開鍵機能と署名磯能を備えたすぐれた方式である.しかし 査閲署名 承認署名のように一つの文書に多重に署名をする際に 異なる法(modulo)による演算を多重に実行すると演算のたびにメッセージ長が増加し 演算単位であるブロックの数が増えていくという好ましくない点がある.本論文ではオフィス内の下の地位の人間から順に署名をする限り 多重に署名を行ってもメッセージ長やブロック数が増えることなく かつ地位の変動があったとしても公開されている公開鍵には影響を与えないで 変動のあった個人のもっている非公開鍵のみの容易な変更で済むシステムを検討し 提案している.このシステムではRivestらの方法を直接的に拡張し オフィスシステムに適合した多重署名機能を有する形で用いているが パラメータの大きさ等を考慮に入れれば実際のシステムに適用しても十分実用可能であると考えられる.