著者
神宝 貴子 國方 弘子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.5_71-5_78, 2008-12-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
18

デイケア・作業所に通所中の統合失調症患者が,自己の生き方に対してどうおりあいをつけているのかそのプロセスを明らかにすることを目的に,統合失調症患者12名を研究参加者に,自己の生き方についての思いをインタビューし,質的帰納的に分析した。その結果,≪気が楽になる≫≪今におりあいをつける≫≪過去に向き合う≫≪未来を見つめる≫【自分はこれでいい】の5つのカテゴリーが抽出され,【自分はこれでいい】が中核カテゴリーであった。ある出来事を契機にあるいは時間をかけながら≪気が楽になる≫ことで,≪今におりあいをつける≫ことが出来,さらに≪過去に向き合う≫ことが出来,病状の変化により【自分はこれでいい】という気持ちが揺らぎながらも【自分はこれでいい】と生き方に対して納得していく。しかし,将来への不安は大きく,今に近い≪未来を見つめる≫ことをしながら一日一日を納得しながら生きていた。
著者
飯田 智恵 山本 昇
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1_43-1_50, 2004-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
24

安全な温罨法の表面温度と継続時間を検討することを目的に,熱による皮膚組織の変化を検討した。一定温度に保った銅管に,ウレタン麻酔下でマウス大腿部を接触させ,様々な温度と時間で加温後,7日後までの皮膚の変化を光学顕微鏡で観察した。42℃5時間または43℃以上の加温で表皮細胞核濃縮や表皮下水疱,肥満細胞脱顆粒,コラーゲン線維配列変化,白血球浸潤が観察され,7日後までに真皮深部まで壊死に陥った。42℃2時間加温では変性像が軽度見られただけであった。また異なる材質(アルミニウム管,ネル布,ポリエステル布)を接触させた場合,43℃2時間加温でも傷害の程度は銅管に接触させた場合より弱く,皮膚組織の壊死は観察されなかった。以上のことから43℃以上や42℃5時間の加温で低温熱傷発症の可能性が高いことが示唆された。従って,低温熱傷を予防するために温罨法の表面温度への配慮と適切なカバーの材質の選択が必要である。
著者
國方 弘子 茅原 路代 大森 和子 神宝 貴子 岡田 ゆみ
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1_37-1_44, 2006-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
21

地域生活をしながら精神科デイケアまたは作業所に通所している統合失調症患者の生活への思いとその影響要因を明らかにすることを目的として,グラウンデッド・セオリー法による質的帰納的研究を行った。結果,《充実感がある》,《病気が安定している》,《自分をこれでいいと思える(自尊心)》,『折り合いをつける』,《自分を受けとめてくれる》,《居場所がある》,《心のよりどころがある》の7個のカテゴリーが抽出された。彼らは《充実感がある》生活を送っていることが見いだされ,『折り合いをつける』ことと《自分をこれでいいと思える(自尊心)》ことは,《充実感がある》生活に至るには必要であり,《病気が安定している》ことは《充実感がある》生活の基盤となっていた。本結果は,在宅生活をする統合失調症患者の生活の質を維持・向上するための看護支援のあり方に寄与できることが示唆された。
著者
渡邊 生恵 杉山 敏子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.5_117-5_128, 2012-12-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
35

目的:患者と看護師における療養環境評価の視点の特性を明らかにする。方法:一般病床入院患者20名と同病棟看護師20名に対し,評価グリッド法を用いて入院環境についての評価を調査した。結果:①看護師は患者に比べ評価する項目が多かった。②患者は多床室でプライバシーを保ちつつ他者とかかわれる環境,看護師は家族とのプライバシーを重視していた。③患者は細かな生活のしやすさを評価していたが,看護師は安全性を評価していた。④患者は自分の必要性にあった環境が整っていることを評価していたが,看護師はすべての患者に同じレベルの環境が提供され,家よりも高い快適性であることを評価していた。結論:看護師による環境評価には基礎教育および臨床での経験が反映されており,患者間のエンパワメント効果や日常生活の送りやすさという患者の視点を加えることで,より一層患者の求める環境を提供できる可能性が示唆された。
著者
川口 孝泰 松岡 淳夫
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1_82-1_94, 1990-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
15

本論文は,本学会誌Vol.12,No.1で報告した「プライバシー及びテリトリーの基礎概念の提案」に引き続き,多床室における患者のテリトリー及びプライバシーに関する意識の実態を明らかにし,患者の療養生活を援助してゆくために重要な,看護としての基礎的な知見を得ることを目的としている。 本論の中で使われているテリトリー及びプライバシーは, テリトリー;personalised spaceとして扱い,患者が自分だけの場所として認知している空間 プライバシー;自分の望んでいない侵入事物に対して,調整しようとする心理的な防壁(Westin. 1977)として捉え,検討を行った。 結果は,以下のとおりである。1) テリトリーの意識は,病室でのベット位置に影響を受けた。2) ほとんどの患者のベット位置の好みは,ほぼ同様の傾向であった。患者のテリトリーの意識と,好みのベット位置との関連をみると,多床室では患者同志が,お互いに遠慮しあいながらテリトリーを認知していると考えられる。3) プライバシーの意識は,患者の属性,病室の環境条件,患者の状態などの要因と関連がみられた。これにより,プライバシーは患者が入院生活を過ごす上で最も重要な事柄の一つであると考えられる。4) プライバシーは,日常生活の場面状況によって,質的に異なることが明らかとなった。
著者
成田 栄子 水上 明子 栄 唱子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.2_26-2_31, 1982-06-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
2

本調査は,第一報に引き続き生後7か月児について夜泣きの要因の検討を行ったものである。対象は受診児821人中夜泣き児89人である。今回は夜泣き群を二群に分け,夜泣きが長期間で泣き方のひどいものをA,長期間で泣き方のひどくないものをBとした。 その結果,A・B群に共通しているものは就寝時少しの物音にピクつく,湿疹の既往,夜間授乳や添寝・添乳の習慣,あやしすぎ,日光浴を行っていない,母親は神経質な傾向がある等の要因がみられる。一方,Aに特徴的なものは,下痢と発熱の既往,最終授乳時刻が遅いか或は決っていない等であり,Bに夜間授乳を出生時より継続している。離乳食の進行状態がよくない等養育にかかわる要因が多い。
著者
当目 雅代 上野 範子 木村 みさか
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.5_9-5_21, 1999-12-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
28

看護職における社会資源の認知度とそれらに及ぼす要因を検討することを目的として,病院勤務者を対象とした調査を行った。 そして,性,年齢の明らかな2,651名データから,1)認知度が高率だったのは,デイサービス・ショトステイ・高額療養費,傷病手当金制度で,低率だったのはライトハウス・更生医療・在宅介護支援センター・老人日常生活給付事業であった。2)勤務先に医療相談室のある者はない者に比べ,小児慢性特定疾患・ライトハウスの認知度が高率であった。 3)訪問看護制度のある者はない者に比べ,ホームヘルパー・デイサービス・ショートステイ・在宅介護支援センターの認知度が高率であった。 4)入院経験のある者はない者より高額療養費・補装具交付修理・身体障害者運賃割引制度の認知度が高率であった。 5)福祉体験・学習経験のある者はない者に比べ,すべての社会資源の認知度が高く,特に,ホームヘルパー・デイサービス・ショートステイ・在宅介護支援センターに関する認知度は50%を越えていた。 以上より,病院に勤務する看護職での社会資源の認知度は,福祉に関する体験や学習経験,あるいは家族を含む入院経験などの個人的要因に加え,勤務先での医療相談室や訪問看護制度の有無など,環境要因の影響を受けていることが示唆された。
著者
中馬 成子 土居 洋子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.5_59-5_69, 2011-12-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
25

2型糖尿病患者のインスリン療法に対する心理的行動的反応を明らかにするために,インスリン療法を1年以上継続している20名を研究の対象とした。インタビュー内容から逐語録を作成し,データ化したうえで,継続比較分析することにより5つのカテゴリーを抽出した。インスリン療法の告知時は,【インスリン療法に対し否定的感情】をもっていた。その後,【インスリン療法の知識による認識の変化】がもたらされ,【インスリン療法の開始を決意】し,インスリン自己注射を実施し体験する過程を経て,【インスリン自己注射に対する安心感を獲得】しており,【インスリン療法を維持する意志と行動】という肯定的な態度へと変遷していた。治療開始時の心理的行動的問題を焦点化したうえで,早期から正しい知識と安心感が得られる情報を提供し,肯定的な認識と態度がもてる援助が重要である。
著者
横山 純子 宮腰 由起子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1_55-1_65, 2008-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
39

本研究の目的は,脳梗塞発症後の急性期から自尊感情の経時的変化を捉え,自尊感情の関連要因を時期別に明らかにすることである。4回の調査(入院時,3ヶ月後,6ヶ月後,1年後)すべてにおいて協力が得られた脳梗塞患者92人を分析対象者とした。各時期のRosenberg’s Self-Esteem(RSE)の平均値は30.2~30.7点と安定して高値を示したが,個々のRSEは時期により変動していた(p<0.001)。脳梗塞発症後の自尊感情にはADLの自立度(3ヶ月後と6ヶ月後),職場復帰状況(6ヶ月後),主観的健康感(すべての時期),情緒的サポート提供者(6ヶ月後と1年後)が関連していた(p<0.05)。脳梗塞発症後の患者の自尊感情を高めるためには常に健康状態に留意しながら,発症6ヶ月後までは動作と役割の再獲得に向けた支援を中心に,発症6ヶ月後以降は情緒的サポート支援を中心に援助していくことが重要であると考えられた。
著者
本江 朝美 金井 和子 土屋 尚義
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1_61-1_68, 1996-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
12

本研究は,睡眠障害を把握し対応を考察するために,セルフケア可能な23例を対象とし,起床前後の心電図変化と睡眠に関するアンケート調査結果との関連を検討した。その結果,以下の知見を得た。① 不眠感,不満感は,52.2%で認められた。不眠感を訴える人は,就床時および中途覚醒時のねつき時間が長く,早朝覚醒後起床に至るまでの時間が長い傾向があった。不満感を訴える人は,むしろ不快症状を有し,それらは夢を伴う場合が多い傾向があった。② 起床前後の心拍数の変動は,起床前2時間から1時間では夜間睡眠安定時の平均心拍数より3.63±3.54bpmの増加がみられ,その後起床30分前から徐々に増加しはじめ起床後10分でピークに達した。これらの心拍数の変動は,不満感の有無では差は認められなかったが,不眠感の有無で比較すると,不眠感がない人は起床30分前から徐々に心拍数が増加するのに対し,ある人は起床10分前になって急激に心拍数が増加した。また起床に至るまで30分以上目覚めている人は,起床前90~70分で心拍数が増加しており,6時以降に起床した人は起床5分前から急激な心拍数が増加した。③ 起床前後の不整脈の出現については,不眠感不満感との関連を認めなかった。
著者
池田 七衣 白井 文恵 土肥 義胤
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.5_19-5_25, 2006-12-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
17

院内感染は,患者への新たなる感染や多剤耐性菌の拡散に繋がることから,医療従事者にとって重要な問題である。院内感染対策に重要なことは,感染源を認識しその伝搬経路を遮断することである。頭髪は手指が触れる機会も多く,感染源及び伝搬経路となる可能性がある。そこで,シャンプーで洗髪した頭髪への,院内感染で重要な位置を占める黄色ブドウ球菌,緑膿菌,大腸菌の付着性について調べた。その結果,頭髪には多量の細菌が付着することが明らかになり,付着した細菌の40 ~ 60%はシャンプー洗髪でも遊離せず付着したままであった。また,黄色ブドウ球菌は,種々のシャンプー剤により殺菌されるが,緑膿菌や大腸菌は全く殺菌されないことも明らかになった。従って,多くの緑膿菌株や大腸菌株は,シャンプー洗髪しても一部が生きたまま付着し続け,再び増殖することから,頭髪が院内感染における感染源および伝搬経路となる可能性を強く示唆した。
著者
三上 勇気 水溪 雅子 永井 邦芳
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.4_31-4_40, 2010-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
60

本研究の目的は,精神科病院で働く看護師の抑うつと怒りの持続の関連とその認知的特性(自動思考,不合理な信念,敵意認知)の影響を明らかにし,抑うつモデルを作成することであった。公立精神科病院2ヶ所,および私立病院5ヶ所の精神科病院に勤務する看護師・准看護師572名に調査を実施した。調査票は無記名で記入後,各自が郵送で返送した。 CES-D得点を平均値より高群と低群に分け,CES-Dの高低群間で「JIBT-R20」と「怒りの持続」,「敵意認知」の得点を比較し,相関分析と先行文献を基に構造方程式モデリングによる因果モデルを作成した。モデルの適合度指標は,GFI=1.000,AGFI=.996で受容でき,どのパスも0.1%水準で有意だった。不合理な信念を強く持つほど敵意認知を高め,怒りが持続しやすくなり,自動思考や抑うつ気分を高める。さらに怒りの持続しやすさもまた,自動思考を高め,抑うつ気分を高めていることが明らかになった。
著者
高岡 光江 香月 富士日
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.5_737-5_745, 2017-12-20 (Released:2017-12-27)
参考文献数
59

目的:本研究の目的は,新人看護師の被害的認知,およびその認知時に喚起される感情とバーンアウトとの関連性を明らかにすることとした。方法:急性期病院に勤務する26歳未満の新人看護師を対象に質問紙調査を実施,分析した。結果:解析対象者のうち92.4%(354名/383名)が被害的認知を経験していた。被害的認知経験者は,未経験者よりもバーンアウト傾向にあることが示された(p = .001~ .19,t-test)。被害的認知に伴う不安や怒り感情が強い者ほど,バーンアウトの傾向にあった(p = .000~ .030,One-way ANOVA)。結論:本研究の結果は,被害的認知に伴う不安や怒り感情を低減することによって,バーンアウトを低減できる可能性を示唆するものである。
著者
松田 春華 小川 智子 塚田 理奈 児玉 友紀 山崎 亜希子 小迫 由佳 宮本 啓代 森本 美智子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.4_47-4_55, 2012-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
47

本研究の目的は,青年期の女子大学生を対象とし,睡眠の質に影響を与える要因とその関連性の強さを明らかにすることであった。分析対象者は,A大学の2~4年生126名である。睡眠の質には,Pittsburgh Sleep Quality Indexの日本語版(PSQI-J)を用いた。PSQI-Jと各因子の関連性を重回帰分析を用いて検討した結果,PSQI-J合計得点に対して“STAI特性不安(A-Trait)合計得点”(β = .230,p < .01),“起床時刻の前進”(β = .221,p < .01),“足先の冷えの程度”(β =.191,p < .05)が関連していた。睡眠の質を高めるためには,これらの要因に焦点をあてて,方策を検討することが必要であることが示された。複数ある因子のなかでも不安傾向が睡眠の質に最も影響しており,睡眠の質を改善するには,メンタルヘルスに重点をおいた方策が必要となる可能性が示唆された。
著者
澁谷 幸
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1_43-1_51, 2019-04-20 (Released:2019-04-20)
参考文献数
25

目的:本研究の目的は,看護師が清拭をどのようにとらえ実践しているのかを明らかにすることである。方法:研究方法はエスノグラフィーで,一般病院外科病棟において参加観察とインタビューを行った。結果:看護師は,清拭を〔患者に快を与えられる〕技術として,専門的知識を活用して創造的に実践していた。また,患者との感覚の共有によって,より深く患者とかかわることで〔患者がみえる〕ととらえていた。看護師は清拭を看護実践には欠かせない技術だと認識し〔清拭しないで看護したとはいえない〕と考えていた。結論:清拭は,安楽の提供という看護師の役割を遂行する最も有効な手段であり,看護職としての自信ややりがい,誇りを見出すことができる技術である。清拭は,看護師が自分の価値観や信念を込め,専門的創造的自律的に実践できる技術であり,看護の専門性が発露される,看護実践の拠り所となる技術である。
著者
吉井 美穂 八塚 美樹 安田 智美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1_125-1_129, 2009

近年,入院患者におけるペットボトル飲料の利用は増加しており,直接口を付けて飲むいわゆる口飲みが多く行われている。そのため,細菌が混入する確率は高く,免疫力が低下している患者にとっては問題であると考えられる。今回,入院患者のペットボトル保有状況と保存方法の実態を把握し,それに基づいた細菌学的調査を行うことを目的に研究を行なった。結果,飲用頻度は多いものから茶,スポーツ飲料,ミネラルウォーターの順であり,保存方法としては常温保存と冷所保存ともにほぼ同数であった。また,実際に被験者によって口飲みされた飲料水を用いて検証したところ,スポーツ飲料水からは室温,冷所ともにほとんど菌の増殖は認められなかった。茶飲料水では室温保存において時間の経過とともに細菌の増殖が認められ,24時間以降,細菌増殖が著しく測定不能となった。一方,冷所保存では24時間まで平均46CFU/mlと一定菌数を維持していたもののそれ以降抑制されていった。また,ミネラルウォーターにおいても室温保存において経時的な細菌増殖が認められ,冷所保存でも10時間までは細菌増殖が認められたが,それ以降菌数の減少を認めた。<br> 今回の結果より,スポーツ飲料水からは,保存方法の違いに関係なく細菌増殖が抑制されていることが明らかとなった。しかし,茶およびミネラルウォーターの一度口をつけたペットボトル飲料水からは菌が検出され,保存方法によっては飲料水基準を満たさず,衛生学的に問題であることが示唆された。
著者
小山 沙都実 三吉 友美子 水野 暢子 皆川 敦子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.2_211-2_217, 2019-06-20 (Released:2019-06-20)
参考文献数
33

目的:看護師再就職者が求める職場サポートを測定するための尺度を構成しその信頼性と妥当性を検討する。方法:141病院に再就職した看護師1,479人を対象に無記名自記式質問紙を用いた郵送調査を実施した。尺度案はフォーカス・グループとContent Validity Index at the Item Levelによる項目の検討を行い作成した。得られたデータについて探索的因子分析とCronbachのα 係数を算出した。結果:探索的因子分析を行った結果〔仕事サポート〕と〔精神的サポート〕〔適応準備サポート〕〔教育的サポート〕の4因子20項目からなる「看護師再就職者用職場サポート尺度」を構成した。尺度全体のCronbachのα 係数は .94であった。考察:Cronbachのα 係数と構成概念妥当性の検討から本尺度は一定の信頼性と妥当性を保持していると判断できた。
著者
光岡 由紀子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20190308052, (Released:2019-07-22)
参考文献数
58

目的:本研究の目的は看護師の本来感,感情労働,職業的アイデンティティの関連を明らかにすることとした。方法:特定機能病院,地域医療支援病院で勤務する卒後2年目以上の看護師を対象に質問紙調査を実施,分析した。結果:「表層演技に伴う感情労働」は「職業的アイデンティティ」に負の影響を及ぼしていた。「深層演技に伴う感情労働」は「職業的アイデンティティ」に最も影響を及ぼしていた。「本来感」は「職業的アイデンティティ」と「深層演技に伴う感情労働」に影響を及ぼしていた。結論:本研究結果は,看護師の職業的アイデンティティに対し感情労働は両義性を示すこと,そして本来感の発揮は看護師の職業的アイデンティティ形成に対し直接的影響を及ぼすとともに深層演技に伴う感情労働を介して間接的影響を及ぼすことを示唆するものである。