著者
永井 朝子 久米 和興
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.4_61-4_73, 2004-09-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
56

本研究は,精神科病棟における保護室の看護技術をカテゴリー化し,保護室の看護技術に関する臨床看護師の認識を明らかにすることを目的とした。保護室の看護技術について【安全管理・集中治療】,【患者説明・患者教育】,【処遇改善・サービス向上】の3つのカテゴリーに関する項目からなる質問紙を作成し,Y県内の精神科病棟を有する12施設に従事する看護職員を対象とした質問紙調査を行い,596の有効回答を分析した。その結果,各カテゴリーの看護技術項目において,属性(性別,職階,精神科看護臨床経験年数)によって重視度が異なる項目がみられた。また,3つのカテゴリー間の看護技術項目に対する重視度の違いを検討した結果,【安全管理・集中治療】は【患者説明・患者教育】及び【処遇改善・サービス向上】と比較して,重視されている項目数の割合が高かった。これらの結果は,実際に提供されるケアに影響を与えている可能性がある。
著者
木村 克典 松村 人志
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.2_49-2_59, 2010-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
30

本研究は,精神科入院病棟に勤務する看護師から,直面している問題,葛藤,悩みなどを聴取し,精神科入院看護の根本にどのような問題が内包されているのかを探り出すことを目的とした。対象者は看護師10名で,KJ法に基づき,インタビュー内容で得られた70項目をカテゴリー化及び構造化した。その結果,6つの要因を見いだし,6要因はさらに,中核要因である「ビジョンのない看護」と,内部要因すなわち「看護者間の相互理解の困難さ」及び「患者尊重の欠如」,そして外部要因すなわち「不十分な退院環境」,「他職種との未熟な関係」,「規則・法律と現実との乖離」とに分けられた。そして,内部要因と外部要因は,中核要因と相関関係あるいは因果関係にあると捉えられ,悪循環を形成している状況が推測された。精神科医療における看護業務の役割を明確化し,「ビジョンのない看護」からの脱却を図り,これらの悪循環を解消する試みを始める必要がある。
著者
榎本 聖子 松下 祥子 河原 加代子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.5_75-5_85, 2012-12-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
27

【研究目的】本研究の目的は,糖尿病児童生徒への支援の現状を分析することである。【研究方法】埼玉県の公立学校に勤務する養護教諭997名を対象に質問紙調査を行い,451名の有効回答を得た。質問内容は,①糖尿病に関する専門知識と低血糖リスクへの判断,②学校での支援の実際,③医療機関との連携等であった。②と③は,強化インスリン療法一般化以降の指導経験者204名を対象にした。【研究結果】1)養護教諭は,糖尿病に関する基本的な理解はできていたが,長期合併症やヘモグロビンA1cに関する知識は不十分であった。2)専門知識,指導経験をもつ養護教諭は,低血糖リスクに対してより適切な判断をしていた。3)養護教諭と看護職とのかかわりはほとんどなかった。4)医療的ケアの実施を依頼された経験のある養護教諭は指導経験者の11~15%で,そのうちの一部は同意していた。5)看護職と養護教諭との協働は,学校における支援の質の向上につながる,と考えられた。
著者
加藤 真紀 竹田 恵子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.4_685-4_694, 2017-09-07 (Released:2017-10-21)
参考文献数
34

本研究は,高齢者の終末期にかかる家族の意思決定について国内外の文献をレビューし,研究の動向とともに高齢者の終末期にかかる家族の意思決定の特徴を明らかにすることを目的とした。2015年までの国内外における高齢者の終末期にかかる家族の意思決定に関する研究を,「高齢者」「家族」「意思決定」「終末期 or 緩和ケア」などのキーワードで検索を行った。家族の意思決定の特徴は,高齢者の希望や心情を理解しようと努め,高齢者のライフストーリーから推定を行っていることが示された。しかし,家族であっても高齢者の意思を推定することはむずかしく,困難や不確かさがあり,意思決定後もその決断内容の問い直しをして揺れを伴う体験であることも明らかとなった。今後は,家族が手がかりとしている高齢者のライフストーリーの要素や,家族の判断基準,判断材料,決定への影響要因などを明らかにし,困難を緩和できる効果的な支援を検討していく必要がある。
著者
本田 智子 城戸 滋里 岡崎 寿美子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.4_45-4_57, 2003-09-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
33

本研究は,入院施設などで個別的な睡眠環境温度が保持できない対象者へ,快適な睡眠を提供するために,冷却パックの後頭部冷却が睡眠に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 調査期間中を通して,決まった時間に自宅での就寝が可能な健常者7名に対し,通常の環境下と冷却パック使用下での睡眠中の活動量と覚醒回数・覚醒時間のアクチグラフによる測定,及び,寝つきの主観的評価についての質問紙調査を行い,両環境下でのデータを比較検討した。 調査の結果,睡眠中の活動量は,入眠後90分から180分の間で冷却パック使用下での睡眠中の活動量が有意に減少しており,覚醒時間と覚醒回数においても冷却パック使用下の方が減少していたことが明らかになった。 (p<0.05) また質問紙調査からも,冷却パックの使用は,高温多湿環境下における睡眠の助けになることが示唆された。
著者
片山 聡子 叶谷 由佳 日下 和代 佐藤 千史
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1_147-1_161, 2003-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
39

精神障害者小規模作業所通所者の生活満足度と個人的特性,客観的QOLとの関係を明確にすることを目的に首都圏の精神障害者小規模作業所7カ所に通所する精神障害者58名を対象とし,面接調査を行った。 その結果,以下のことが明らかになった。 作業所通所者の項目別生活満足度で,最も得点が高かったのは作業所に対する満足度の項目であり,最も得点が低かったのは障害者として扱われることに対する満足度であった。 生活満足度総得点と総入院期間とは負の相関があり,生活満足度と情緒的サポート得点は正の相関があった。 情緒的サポート,手段的サポートのいずれも家族の占める割合が大きかった。 調査結果から,地域で生活している精神障害者に対し,病院においては入院早期から地域に患者を帰す援助,入院施設と作業所との連携,精神障害者と家族との関係を改善させる援助,地域にノーマライゼーションを浸透させる働きかけが重要であることが示唆された。
著者
藤田 愛 山口 咲奈枝 宇野 日菜子 佐藤 志保 佐藤 幸子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1_135-1_140, 2013-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
26

【目的】妊娠期の体重増加量別により,栄養所要量や栄養バランスの実態を調査する。【方法】褥婦111名に対し,『141項目半定量食物摂取頻度調査』を用いて妊娠期の栄養所要量ならびにPFCバランスを調査し,妊娠期の体重増加量別を三分位した群について,ANOVA分析を行った。【結果】体重増加量は「8.5㎏未満群」「8.5㎏以上11.0kg未満群」「11.0kg以上群」の3群に分類した。栄養摂取所要量は3群すべて推奨量を満たしておらず,葉酸や鉄は推奨量の半分で,低栄養状態であった。PFCバランスは「8.5㎏以上11.0kg未満群」が理想の栄養バランスをとっており,「8.5kg未満群」と「11.0kg以上群」は脂肪割合が高い欧米型の栄養バランスであった。【結論】現在,妊娠期の体重増加量の指導は,非妊時BMIを基準とした至適体重増加チャートを使用している。本研究より,妊婦の低栄養や欧米型の栄養バランスが示されたことから,体重増加だけでなくバランスのとれた食事の栄養指導が望まれる。

1 0 0 0 OA 足の裏の計測

著者
斉藤 光市 十束 支朗
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.3_35-3_41, 1983-07-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
5

これまで,足の裏の面積を計測する研究は少い。著者らは,土ふまずと接地足底面積を比較し(土ふまず比の算出),扁平足の数量的な研究を行なった。対象は,山形県南陽市立漆山小学校6年生男女合計24名であり,足底の面積計測には,コントロン社(英国)製作による画像解析装置MOP/DIGIPLANを使用した。次のような結果が得られた。 ① 左・右の足の土ふまず面積を比べると,左足の土ふまず面積は,右側より大である。 ② 土ふまず比は,扁平足と判定された児童ではパーセント値は低く,土ふまずが明瞭にできている児童では高い値を示している。 ➂ Hラインを越えた土ふまずの部分の面積は,いずれも左右差がある。 ④ 接地足底面積については,左・右差はなく,ほぼ一致した値を示している。
著者
山下 舞琴 堀田 佐知子 長島 俊輔 東條 千章 若村 智子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1_19-1_28, 2018

本研究の目的は,冬の日照時間が短い地域に住む高齢者の冬と夏の睡眠に関連する要因を明らかにすることとした。京丹後市高齢者大学の受講生149人に,質問紙調査(睡眠:ピッツバーグ睡眠質問票,気分:感情プロフィール検査,他)を冬と夏に行い,分析した。夏の睡眠時間は,冬に比べ有意に短く,睡眠困難の得点が高い傾向があり,さらに夏の活気と疲労の得点は有意に高かった。冬に会話を毎日する人の割合は,夏に比べ有意に少なかった。重回帰分析の結果,外出頻度,疲労,精神疾患などが冬の睡眠に,会話頻度,緊張-不安,消化器疾患などが夏の睡眠に,影響を与えていた。降雪地帯であったが,冬の日常的な外出が,よい睡眠を導くための具体的な指針の一つとして示唆された。また,冬に疲労が,夏に緊張が強い人には,睡眠障害も念頭においてかかわる必要があるかもしれない。このように,冬と夏によって適切な睡眠の指導が異なる可能性が示された。
著者
山下 真裕子 伊関 敏男 藪田 歩
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.2_163-2_170, 2017-06-20 (Released:2017-08-30)
参考文献数
23

本研究は,地域で暮らす精神障がい者の服薬の現状と困難感およびその要因について検討するため,地域で暮らす149名の精神障がい者に調査を行った。対象者らの9割が服薬の必要性を認識しており,関連することは,服薬による「ポジティブな体験」,服薬を中断したことによる「ネガティブな体験」,「個々の目標」があること,周囲の指示による「コンプライアンス」であった。一方,6割が何らかの服薬への困難を体験し,飲み忘れが最も多かった。対象者は1日に4回の処方,昼食後薬が処方されている場合に負担感を抱く傾向が認められた。今後は服薬に関する個々の体験を意味づけするプロセスを支援すること,人生の目標の明確化を支援することで服薬の意思を支えること,加えて対象者の生活パターンや服薬への認識を考慮し,服薬回数やタイミングを十分なSDMのうえで決定されることが,主体的なセルフケアの向上,精神障がい者の地域定着の促進につながると考える。
著者
山本 真実 浅野 みどり 野村 直樹
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.4_733-4_744, 2020-09-20 (Released:2020-09-20)
参考文献数
29

本稿では,時間を言語として見る立場から,療育教室に通う子どもの母親が語る我が子の成長を,時間のことばとして記述することにより,対話を通じ母親が理解する成長とはどのようなものか,成長をナラティヴとして理解するとはどのようなことかを議論する。筆者(山本)は,母親との対話と療育教室での参与観察を行い,成長がどのような刻み方(punctuation)を有した時間で語られるかに注目した。母親が語る時間のことばには,①別々に語られる時間のことば,②相反する時間のことばがせめぎ合う葛藤,③全ての時間を等価に語る時間のことば,があった。母親は,どんな時間も選ばれる価値を等しく持つとする『等価な時間』という視座を獲得し,それに沿って成長を理解していった。『等価な時間』とは,成長をナラティヴとして理解するための考え方であり,これまでの成長の理解を見つめ直すときに役立つ時間のことばのポリフォニーのことである。
著者
神宝 貴子 國方 弘子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.5_71-5_78, 2008

デイケア・作業所に通所中の統合失調症患者が,自己の生き方に対してどうおりあいをつけているのかそのプロセスを明らかにすることを目的に,統合失調症患者12名を研究参加者に,自己の生き方についての思いをインタビューし,質的帰納的に分析した。その結果,≪気が楽になる≫≪今におりあいをつける≫≪過去に向き合う≫≪未来を見つめる≫【自分はこれでいい】の5つのカテゴリーが抽出され,【自分はこれでいい】が中核カテゴリーであった。ある出来事を契機にあるいは時間をかけながら≪気が楽になる≫ことで,≪今におりあいをつける≫ことが出来,さらに≪過去に向き合う≫ことが出来,病状の変化により【自分はこれでいい】という気持ちが揺らぎながらも【自分はこれでいい】と生き方に対して納得していく。しかし,将来への不安は大きく,今に近い≪未来を見つめる≫ことをしながら一日一日を納得しながら生きていた。