著者
坂梨 左織 田島 康子 青木 芳恵 宗正 みゆき 吉川 千鶴子 原田 広枝
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1_61-1_70, 2016-04-20 (Released:2016-12-02)
参考文献数
28

目的:学士課程における血圧測定に関する教育プログラム開発に向けて,看護基礎教育における教育上の課題を明らかにすることを目的とした。方法:新人看護師4名を対象としてグループインタビューによってデータ収集を行い,質的帰納的に分析した。結果:課題として,〈血圧に関する生体機能の理解〉〈バイタルサイン測定の目的の理解〉〈血圧測定方法の基本的原理の理解〉〈血圧測定に関する科学的判断に基づく援助〉〈血圧測定を受ける患者の心情に配慮したかかわり方〉〈血圧測定時に患者に触れることの意味の理解〉〈電子血圧計の原理と特性の理解〉の7つが明らかになった。結論:血圧測定に関する知識・技術を1~2年次だけでなく,3~4年次の臨地実習前および卒業前に再度学習し評価する新たな教育方法の必要性やリフレクションの有用性が示され,教育プログラム開発に貢献できる可能性が示唆された。
著者
西田 千夏
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.2_211-2_219, 2020-06-20 (Released:2020-06-20)
参考文献数
24

目的:本研究は,発達支援を要する子どもとその親への看護実践に看護師の内省が関与する過程を明らかにし,看護への示唆を得ることを目的とする。方法:発達支援を要する子どもに関わる看護師への半構成的面接から,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析を行った。結果:看護師は【発達特性を踏まえた子どもへの理解と対応】と【親を尊重し力を引き出す対応】を実践していた。この実践は,【自分の性格や生活体験と対象者との関係への内省】【看護師としての自分の特徴への内省】によって,【実践のための知識を得る】【親の立場に立つ】【子どもが主体となること】といった動機が現れることによってなされていた。結論:内省によって,自分と対象者の共通点,看護師の陥りやすい傾向,および自分の得意・不得意に気づき,それを自己受容できることで,対象者を主体とした看護実践になり得ることが示唆された。
著者
中村 和代
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1_141-1_148, 2013-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
22

目的:新人看護師の精神的支援策として臨床心理士がグループカウンセリング(以下,G.C.)を行い効果や影響について検討した。 方法:2006年5月と9月にG.C.を行い,調査に同意した5月63人,9月64人を解析対象とした。気分・感情状態は日本語版POMS短縮版で調査し,G.C.後に主観的評価12項目,9月は5月G.C.以降の同僚との支援状況4項目を調査した。対象者を健全群,要注意群,受診考慮群に分類し,3群間で比較した。 結果:5月・9月ともに,G.C.後は健全群が有意に増加していた。主観的評価では「自己の振り返りができた」他3項目,同僚との支援状況では「2.悩みや苦痛などへは自分なりに対処できている」「3.悩みや苦痛などが共有できがんばれている」で,それぞれ健全群が有意に高値であった。 結論:G.C.は,新人看護師の精神的支援策として効果的であることが示唆されたが,受診考慮群ではさらに個別支援が望まれる。
著者
廣田 美里 松葉 祥一 橋本 健志
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.2_13-2_23, 2016-06-20 (Released:2017-01-27)
参考文献数
23

本研究は,うつ病をもつ夫と生きる妻の体験を記述し,うつ病患者の妻に対するケアへの示唆をうることを目的とした。うつ病と診断された夫の妻2名に対し,非構成的インタビューを行い,得られた語りをPatricia Bennerの解釈学的アプローチを用いて分析した。分析の結果,妻は夫がうつ病をもつことで,夫婦間のコミュニケーションの変容を体験していた。妻はうつ状態の夫といるとき,夫の症状と同様の身体的感覚を受けていた。これはMaurice Merleau-Pontyが提唱した間身体的次元でのコミュニケーションの影響であると考えられた。この間身体的な体験が,夫を理解することに重要な意味をもっていた。そして,妻は夫のうつ病症状,および医療者や親戚等が期待する妻の行動を意識するがゆえに,自己に非常に自覚的になっていた。妻は経験を重ねながら,知的理解と間身体的理解を通して妻なりに夫を理解し,自らのあり方を見出していた。
著者
濱田 真由美 佐々木 美喜 住谷 ゆかり 鈴木 健太 仁昌寺 貴子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.5_875-5_889, 2018-12-20 (Released:2018-12-21)
参考文献数
75

目的:授乳を行う母親の体験に関する質的研究結果を統合する。方法:質的研究40件を抽出し,メタ・サマリーを行った。結果:授乳に必要とされる自律性を発揮する体験,意思をもって授乳方法を選択する体験,母乳を与えようと努力する体験,母乳に母子関係を投影する体験,母乳に「母親」を投影する体験,断乳・卒乳・離乳と折り合いをつける体験,授乳に対する否定的体験,支援に満足した体験,支援に不満を抱いた体験の9トピックと30の結果に統合された。出現頻度が高かった結果(effect sizes 20~38%)は,母乳育児や搾乳に伴う身体的・精神的苦痛,「母親」としての自己価値が揺るがされる体験,母親の自律性や意思を示す体験であった。結論:母乳を与えることに伴う母親の身体的・精神的苦痛や自己価値が揺るがされる問題状況に取組み,母親の自律性や意思を尊重した支援創出に向けた研究が必要である。
著者
柏原 貴子 鈴木 恭子 植田 和美 瀬尾 クニ子 野島 良子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.2_25-2_32, 1981-06-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
15

死と臨死患者の看護に対する看護婦の態度を明らかにするために,臨床の看護婦244名を対象に質問紙調査を行ない,看護婦の臨死患者の看護経験と,(1)看護婦自身の死に対する態度,(2)患者の死に対する態度,(3)臨死患者の看護に対する態度,との関係を検討した。 結果:看護婦は,(1)死に対して不安で憂うつなイメージを抱いており,(2)臨死患者に病名を悟られないようにふるまい,(3)患者とともに死と死にゆくことについて語り合おうとしていない。 また,臨死患者の看護経験が増すにつれて,看護婦は,(1)死をありのままに見つめ,(2)臨死患者に対して病名を悟られないようにふるまい,(3)臨死患者が「私は死ぬのではないか」などと口にした時,コトバや行為によって否定する傾向があるといえる。
著者
法橋 尚宏 太田 浩子 林 綺婷 和辻 雄仁
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.2_159-2_175, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
32

エスノグラフィックリサーチは,“エスノグラフィックインタビューと参加観察を主とするフィールドワーク(現地調査)によって,イーミックとエティックな視点から対象の生活世界で起きている現象や文化を記述する方法論”である。これは方法のトライアンギュレーションであり,フォーマルインタビュー,インフォーマルインタビュー,参加観察,質問紙調査,既存の書籍・文献・ウェブサイト資料の収集,写真撮影,映像撮影などを行う。データ収集と分析を繰り返しながら,問いや仮説を精緻化する。信用可能性,確認可能性,脈絡に応じた意味,反復的パターン形成,飽和,転用可能性などを質的評価基準として,信憑性を保証する。すべてのデータは定性化してフィールドノーツに記述し,コーディングを行い,コードの類似性と相違性の観点からカテゴリー化した後,テーマにそってストーリー化して報告書にまとめる。
著者
部谷 知佐恵 岡田 摩理 泊 祐子 赤羽根 章子 遠渡 絹代 市川 百香里 叶谷 由佳 濵田 裕子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20211206162, (Released:2022-08-03)
参考文献数
33

目的:全国の小児の訪問看護を行う訪問看護ステーション(以下,訪問St.)において診療報酬を算定できないサービスの実態と算定の必要があると考えるサービスについて明らかにする。方法:全国の小児利用者のいる訪問St.に診療報酬を算定できないサービスの実施状況と必要性に関する質問紙調査を行い,455か所の訪問St.の記述統計および自由記述の内容分析を行った。結果:診療報酬を算定できないサービスは78.7%の訪問St.で実施されており,実施による小児のメリットは【状態が変化しやすい小児の体調悪化のリスク回避ができる】【状況の変化に合わせて小児の成長発達が促進できる】【医療的ケア児と家族の生活が安定する】【小児と家族の状況に応じた支援体制が構築できる】があった。結論:多くの訪問St.が,診療報酬の算定ができなくても小児にとってのメリットがあることでサービスを提供しており,算定の必要性を感じていた。
著者
村上 美華 前田 ひとみ
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1_133-1_139, 2010-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
26

本研究の目的は,新人看護師の職業性ストレスを測定する尺度を開発することである。まず,2006年1月と2007年1月に就職後10 ヶ月目の新人看護師を対象に尺度原案を作成するための調査を行った。文章完成法により得られた記述を内容分析し,23項目5件法の質問紙を作成した。次に,3県の施設に勤務する新人看護師383名を対象に,就職後6~7ヶ月目である2007年9月~ 10月に質問紙調査を行い,尺度項目の選定とCES-D及びSEとの相関から信頼性と妥当性を検討した。因子分析の結果, 16項目3因子が精選され,『職場環境』『看護実践』『自己成長』と命名した。尺度全体のCronbach’s α係数は0.860であり,抑うつ自己評価尺度とは正の相関,自尊感情尺度とは負の相関が認められた。以上の結果から,本尺度の信頼性と妥当性は概ね確保されており,実用可能な尺度であると判断できる。
著者
眞鍋 えみ子 小松 光代 岡山 寧子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1_123-1_131, 2014-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
23

【目的】 看護学士課程卒業後,同一医療機関で勤務する看護職34名を対象に3年間の〈職務ストレッサー〉と〈心理的ストレス反応〉の変化とその関連要因を検討した。 【方法】 就業12,24,36か月目の時期に自記式質問紙調査を行い,内容は属性のほかに〈職務ストレッサー〉〈ストレス対処行動〉〈情緒的支援〉〈心理的ストレス反応〉であった。 【結果】 1年目では「看護能力不足」によるストレッサーを認知し,そのストレッサーが強いほど「個人的達成感の低下」を示した。2年目では,「上司との関係」に関するストレッサーは「個人的達成感の低下」を助長する一方で,「同僚」や「医師」に関するストレッサーは「個人的達成感の低下」を抑制していた。2年目までは,接近型問題対処行動をとるほど「脱人格化」の行動傾向は少なくなった。 【考察】 ストレッサーやストレス対処行動の質の変化や行動傾向にあわせた支援の重要性,とくに1年目は看護実践能力の向上,2年目は人間関係調整能力の習得支援の必要性が示唆された。
著者
中野 沙織 岩佐 幸恵 岸田 佐智
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.2_283-2_296, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
26

目的:ベテラン看護師が獲得した働き続ける上での「心の強さ」の構造を明らかにする。方法:勤続年数20年以上の看護師9名に半構造化面接を行い,データを木下のM-GTAで分析した。結果:「心の強さ」には,周りに追いつくための努力ができる力,失敗を繰り返さないように努力ができる力,ポジティブな思考ができる力,自分の気持ちを調整する力,自分に合った方法で心身の健康管理ができる力,良い人間関係を構築する力,看護師としての責任を果たそうとする力,より良い看護を目指し自分ができる看護を探求する力,自分に合う働き方を選択する力があった。彼らは就業前より周りに追いつくための努力ができる力を獲得しており,その力は他の全ての「心の強さ」の獲得に影響し,職業を継続する中で維持・強化されていた。結論:看護師の職業継続には,周りに追いつくための努力ができる力を維持・強化する支援的な職場環境が重要であると示唆された。
著者
内田 史江 谷垣 靜子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1_35-1_43, 2017-04-20 (Released:2017-06-09)
参考文献数
36

本研究は,在宅療養がん患者の折り合いを支えるため,訪問看護師によって行われている看護支援の内容に着目し,よりよい看護支援方法を考察するための研究である。5名の看護師を対象としてフォーカス・グループ・インタビューを実施した。結果,在宅療養がん患者の折り合いを支える看護支援を説明する3個のコアカテゴリーが導き出された。それは,【自分らしい生き方を支える】支援を始点として,【がんとともに生きる生活を支える】支援と【支援環境の調整により在宅生活を支える】支援を相互に関連させるという構造が明らかとなった。在宅療養がん患者の折り合いを支えるには,【自分らしい生き方を支える】ことを根底に看護支援を行うことの重要性が示唆された。
著者
岡田 ゆみ
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.2_73-2_79, 2006-06-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究は,断酒会に通う長期断酒中のアルコール依存症者が,どのように断酒への意識を築いているのかを明らかにすることを目的とした。対象は,5年以上断酒している6人とし,参加観察と面接調査を行い質的帰納的に分析した。 分析の結果,長期断酒体験で築かれた断酒への意識には,10のサブカテゴリーを含む3つのカテゴリー『定めた決まりで酒を断つ』『断酒を絶えず誓う』『断酒によって生まれる新たな意識』が抽出された。3つのカテゴリーは,仲間や家族など周囲の存在が背景にある中で,それぞれが相互に影響し合いながら繰り返される意識であった。また,長期断酒者が『定めた決まりで酒を断つ』意識の中で,必ずしも飲酒の危機に結び付いていない不安定な感情にも,あらかめじ定めておいた行動を早くとりながら断酒生活を維持していた事については,看護職者がアルコール依存症者の断酒を理解し,必要な支援を検討する上で示唆を得たといえる。
著者
田中 聡美 布施 淳子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20211025145, (Released:2022-03-25)
参考文献数
32

目的:病院に勤務している看護師の職務に対する幸福感に影響を及ぼす要因について調査し,リテンションマネジメントに関する示唆を得ることを目的とした。方法:看護師41名に対して自記式質問紙調査を,13名に対しては半構造化面接を実施しデータを収集しテキストマイニング分析を行った。結果:職務に対して幸福と回答した看護師は,患者から感謝されることで自分のしていることに心理的報酬を得ながら自信を持ち,家族や患者との社会的な人間関係を築きながら就業継続のモチベーションを高めていた。職務に対して不幸と回答した看護師の認識は,幸福に関する記述数の少ない外部変数を主要因とせず,上司の部下に対する態度や言動が関連していることが示唆された。結論:今後は,日本の看護師に焦点をあてつつ,幸福感に影響を及ぼす要因の構成要素に対して量的研究による信頼性妥当性の検証,実証調査が一層求められる。
著者
佐藤 美紀子 百田 武司
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20210908154, (Released:2022-06-06)
参考文献数
88

目的:脳卒中後のアパシーに関する研究の動向,実態,予防・改善が期待できる介入方法を明らかにした。方法:PubMed,医学中央雑誌から抽出した75文献を分類,要約,記述した。結果:内容は「レビュー」9件,「発症メカニズム」14件,「治療」14件,「評価スケール」7件,「実態」12件,「関連要因」15件,「メタアナリシス」2件,「介入研究」2件に分類された。近年,質の高い研究が行われつつあったが,実態と介入方法に関する科学的根拠は十分に構築されていなかった。アパシー発症率は4割弱,発症には「脳卒中発症回数」「うつ」「認知機能障害」が関連した。脳病変部位,脳卒中病型,年齢,脳卒中発症後の時間,臨床的アウトカムの重症度との関連については知見が一致していなかった。予防・改善が期待できる介入方法として,脳卒中再発予防,認知行動療法,問題解決プロセスの促進,行動活性化が見出された。結論:実態解明,介入方法の確立が求められる。
著者
大西 みさ 足立 はるゑ 中村 小百合
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1_83-1_89, 2004-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
50

本研究の目的は,糖尿病患者の指尖のSMBG穿刺痛を軽減する為に考案した氷冷法について,血糖自己測定法(SMBG)としての有効性と妥当性を検討することである。氷冷法とは,冷蔵庫で保管した2℃氷水に指を15又は20秒間浸して穿刺する指尖採血法である。対象は,A病院の糖尿病患者50名と健常人(医療スタッフ)20名であり,従来法と氷冷法を比較し,以下の結果を得た。1)氷冷法は冷却作用から痛覚が消失し従来法よりも糖尿病患者(p<0.01),健常人(p<0.001)共に痛み閾値が上昇した。2)氷冷法は一定の血液量が確保でき,従来法と同様に血糖値の誤差がほとんどなく,SMBGの妥当性に問題はなかった。このことから,氷冷法は指尖の穿刺痛が軽減できる新しいSMBG方法であり,穿刺痛による負担を軽減できることから糖尿病患者のQOL向上に貢献できる可能性が示唆された。