著者
魚住 郁子 山田 紀代美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.5_35-5_43, 2014

目的:青年期にある看護学生の発達課題である自我同一性の様相を明らかにすることと,自我同一性と友人とのかかわりを検討することである。<br>方法:同一県内の看護学生を対象とし,宮下(1987),榎本(2003,pp.60-72)らが作成した尺度,対象者の属性などで構成した質問紙による調査研究を実施した。そのうち214名を分析対象とした。<br>結果:本研究における看護学生の自我同一性を示すREIS:Ⅴの値は,他学部の女学生と類似しており,自我同一性の獲得が困難になっている状況を示唆していた。さらに,自我同一性と有意な相関が認められた10項目から,多重共線性を考慮し,友人に対する感情である【信頼・安定】【不安・懸念】【独立】【葛藤】を含んだ6項目との間で重回帰分析を実施した。本研究における看護学生の自我同一性には,友人への【信頼・安定】【独立】の感情が強い影響を与えていることが明らかになった。
著者
伊山 聡子 前田 ひとみ 松本 智晴 南家 貴美代 児玉 栄一
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.4_769-4_777, 2020-09-20 (Released:2020-09-20)
参考文献数
12

本研究は,2016年の熊本地震を経験した医療機関の被害状況の特徴や診療体制,支援体制への影響をもとに,災害時の業務継続に必要な取り組みを考察することを目的とした。熊本地震被害の大きかった地域で,病床数100床以上の病院の看護部長と医療設備担当者を対象に半構造化面接法によるデータ収集を行った。①震災による診療・看護への影響,②施設のライフライン,建築・医療設備の被害状況,③災害対策マニュアルとBCPの活用状況,④医療スタッフへの対応と健康管理について分析した。災害時の業務継続に向けた取り組むべき対策として,医療設備や地域性を考慮した「使える災害対策マニュアル・BCPの作成」,「災害に対する社会が持つ脆弱性を考慮した防災教育・訓練の実施」,「業務継続に伴う職員の健康管理対策および平常時の地域・広域施設との連携の強化」の重要性が示された。
著者
曽山 小織 吉田 和枝 米田 昌代
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1_139-1_150, 2015

子育てする母親とそれを支援する祖父母との間には,子育て方法に関する世代間相違があると指摘されている。本研究の目的は,祖母の子育て経験と孫育てに対する意識との関連を明らかにすることである。調査方法は無記名自記式質問紙調査であった。妊婦の母親651名に調査票を配布して,有効回答数は180名であった。分析は単純集計とχ<sup>2</sup>検定を用いた。対象の平均年齢は57.1±5.5歳で,祖母の子育て経験と孫育てに対する意識との間に関連が認められたのは,おしゃぶりの使用,沐浴後の湯冷ましの使用,離乳食を大人が噛み砕いて子どもに与えること,果汁開始や断乳の時期,三歳児神話,または性別役割分業意識であった。赤ちゃんが泣きやまないときの粉ミルクの使用に対する意識と祖母の子育て経験との間には関連が認められなかったが,初孫か初孫以外かとの間には関連が認められ,孫の誕生が粉ミルク使用に対する意識を変化すると示唆される。
著者
中野 雅子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.4_109-4_121, 2003-09-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
29

アトピー性皮膚炎患者の皮膚の自己管理を支援する目的で,中等症から重症の男女の患者59名に対し,スキンケア指導を試みた。 さらに指導前と指導後の調査によって,指導の有効性と指導内容の5つの要素 『洗浄回数』 『洗浄時の力の入れ具合』 『石鹸の使用』 『綿タオルの使用』 『洗顔にかける時間』 と皮膚症状改善の関連について分析した。 (1)5つの要素全てが有意に日常生活動作に定着した (p<.001)。 (2)皮膚症状は83%が 「改善」,17%が 「非改善」 であった。 (3) 『力』 と 『時間』 は他の要素より日常生活動作への定着率が低いが,症状改善に有意に関連した。 (4)対象者の76%が指導を受容した。 以上から,スキンケア指導は,口頭での説明で伝わりにくい要素 『力』 『時間』 を伝えることができ,生活の場で再現しやすく患者の自己管理の意識を支えると考えられる。
著者
泊 祐子 岡田 摩理 遠渡 絹代 市川 百香里 部谷 知佐恵 濵田 裕子 叶谷 由佳 赤羽根 章子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20210123121, (Released:2021-07-09)
参考文献数
23

目的:医療的ケアのある重症児を看ている小児専門訪問看護ステーションの専門的役割と機能を明らかにすることである。今後,小児の訪問を新たに始める場合の準備の目安や,重症児と家族をケアする看護師の指針となると考えられる。方法:小児を専門としている訪問看護ステーション5か所の看護管理者5人にインタビューを行い,質的に分析を行った。結果:小児専門訪問看護ステーションは,【重症児の特徴をふまえた高度なケアの実施】と【家族全体の生活を支える援助】から成る『重症児と家族を支える小児専門訪問看護の役割』をもち,その土台には『小児専門としての役割を果たすための訪問看護ステーションの機能』として【小児在宅のプロの育成】と【家族のニーズに応える体制づくり】があった。結論:小児専門訪問看護の教育的機能と相談機能を推進することは,小児の訪問看護の拡大と質の向上につながると考えられる。
著者
沖中 由美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.4_649-4_656, 2017

本研究の目的は,ひとりで暮らす要支援・要介護高齢者がどのように老いを生きているのかを明らかにすることである。13名を対象に半構造化面接法によりデータ収集し,質的記述的に分析した。ひとりで暮らす要支援・要介護高齢者は,〈配偶者との離別による喪失感と自由〉〈日常的な緊張と不安〉〈子どもの考え次第でいずれは家を出る覚悟〉〈昔なじみの人がいなくなりケアスタッフがいまの支え〉という【老いとともにひとりで暮らす自由と孤独と緊張感】を抱き,〈衰えゆく身体と健康は自分で護る〉〈自分に見合った活動をする〉〈老いを生きぬく力がある〉〈老いに立ち向かわず受けいれる〉ことにより【老いてもいまの自分にできることを試し続ける】という老いの生き方をしていた。したがって,ひとりで暮らす要支援・要介護高齢者の人生経験に基づく老いを生きる力を通して,自らの役割を認識し,人生を肯定的に価値づけられるよう支援することが重要である。
著者
深井 喜代子 大名門 裕子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.3_47-3_55, 1992

注射や採血などの針刺し時に生じる痛み(注射痛)を訴える患者に対処するために,三種類の看護的除痛技術実施中に,手背部痛点分布密度がどのように変化するかを調べた。被験者には88人の健康な学生(男27人,女61人,18-37才)を選んだ。痛点はタングステン製の刺激毛(直径140μm)を用いて測定した。反対側の手背マッサージにより,男の48.1%,女の60.7%で痛点数が減0少したが,男の48.1%,女の32.7%で逆に増加した。同側手背の蒸しタオルによる温罨法では,痛点は著しく減少し(男77.8%,女85.2%),氷嚢と冷やしたタオルによる冷罨法では,効果は更に大きかった(男85.2%,女91.8%)。以上の結果から罨法は注射痛に有効であること,またマッサージも一部の例では効果的であることが明らかになった。更にこのような看護的除痛のメカニズムについても考察した。
著者
小倉 能理子 阿部 テル子 齋藤 久美子 石岡 薫 一戸 とも子 工藤 せい子 西沢 義子 會津 桂子 安杖 優子 小林 朱実
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.2_75-2_83, 2009-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
25

看護職者の患者指導に関する教育的機能を高めるための教育プログラムおよび教育・指導技能評価ツール開発にむけて,その基礎資料を得るために看護職者の患者指導に対する考えと実施の実態を調査した。その結果,看護職者は,患者指導を重要と考えているが実施は十分ではないことが示された。中でも,患者とともに指導を進めること,指導を計画的に行うために事前に調整が必要なことが行動につながっていなかった。指導形態では,指導計画の立案が不十分であることが把握された。それは,学習理論をふくむ教育方法に関する知識・技術が不十分であることが一因と考えられた。以上のことから,現職看護職者の患者指導に関する教育的機能を高めるためには,教育方法の理論・技術に関する基礎知識,教育の基本原理などの項目を看護基礎教育あるいは新人教育プログラムに盛り込む必要があると考えられた。
著者
林 裕栄
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.2_23-2_34, 2009-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
19

本研究の目的は,訪問看護師の精神障害者への援助における困難を明らかにすることである。研究方法は,M-GTAを用いた。研究参加者は,2カ所の訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師9名に対して主にインタビュー調査を行った。調査期間は、2002年11月から2003年8月および2005年8月から10月であった。 在宅精神障害者の訪問看護の困難は,[契約遂行の困難][在宅での援助の困難][関係者との連携の困難][看護師同士で支え合うことの困難]の四つのカテゴリーで構成された。 看護師の抱える困難を解消するには,訪問看護師への教育や,利用者,訪問看護師,病院側の三者の合意形成が必要である。そして看護師が継続した,安定的な援助を行うためには,何よりもまず訪問看護制度やケアマネジメントシステムの体系化・明確化が図られる必要がある。これにより初めて訪問看護師が自立した援助を行うことができることになる。
著者
安藤 満代 谷 多江子 小笠原 映子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1_101-1_106, 2011-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
25

本研究は,精神障害者のスピリチュアリティ,気分,および患者にとっての病気の意味について調べた。入院中の患者13名が1回約60分の面接に参加した。面接者は精神看護学の教員だった。患者は,スピリチュアリティを測定するためのFACIT-Spと気分を測定するためのPOMSに回答し,「病気の意味」について語った。内容分析のためにFACIT-Spの得点によって患者を高低群に分けた。気分については,標準と比較して「抑うつ感」が高く,「活力」が低かった。FACIT-Sp高群からは「病気への肯定的認知と人生の受容」「満足感のある生活」「病気の原因探索と対応」「過去の振り返り」が,FACIT-Sp低群からは「家族への負担感」「病気のつらい症状や治療」「社会的な不利」「人生の再構築」が抽出された。これより,スピリチュアリティが低い患者に対してはスピリチュアリティ向上のための介入が必要かもしれない。
著者
沼田 華織 工藤 せい子 津島 律
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1_63-1_72, 1990-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
13

貧血患者(WHOの基準でHb値,男性13.0g/dl未満,女性12.0g/dl未満)男女16名に対して前屈位洗髪を行いVital signs(脈拍,呼吸,血圧)に与える影響を貧血のない患者男女17名を対照として比較した。 洗髪は,38℃,40℃温湯で,洗髪車を用い病室で行った。体位は,椅子に腰かけ前屈坐位で,洗髪時間は1人8分で,テープレコーダーに吹き込み一定時間で行い,終了後10分までVital signsを測定した。この結果,脈拍・呼吸はともにt検定で有意な変化はなく,38℃,40℃温度間でも有意差はなかった。最高血圧では,貧血患者が40℃で0分(施行直前)に比べ8分,10分,18分に有意に上昇した。最低血圧は,両群とも38℃で0分に比べ8分,10分,18分に有意に上昇した。両血圧とも温度間の有意差はなかった。 今回,38℃,40℃の温湯は,貧血患者に対して影響はなかった。しかし,貧血患者に対しては,貧血の程度によっては,仰臥位洗髪の方法で施行した方が安全と考えた。
著者
吉成 舞 江守 陽子 川口 孝泰
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20181130044, (Released:2019-04-12)
参考文献数
20

本研究の目的は,性周期における嗅覚感受性の変化およびにおいに対する嗜好の変化を明らかにすることであった。研究対象は,嗅覚機能が正常で,性周期の安定した20歳代の成熟期女性36名とした。方法は,嗅覚測定用基準臭であるT&Tオルファクトメーターを用い,成熟女性の黄体期と卵胞期の2時期で嗅覚検査を実施した。また,においの種類に対する嗜好性についても調査した。その結果,イソ吉草酸(C5H10O2)において,卵胞期よりも黄体期で検知閾値が有意に低く(p< .05),嗅覚感受性が高いことが示唆された。イソ吉草酸は腐敗臭や,ひとの体臭に近いにおいとされるものである。また,黄体期では基準臭A(C8H10O)のにおいを好むものは,Aのにおいが嫌いであるものに比べ,認知閾値が有意に高く(p< .05),嗅覚感受性が低いといえた。その他のにおいでは性周期による嗅覚感受性の変化は認められなかった。