著者
石川 俊介
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.42, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表では、長野県諏訪地域のケーブルテレビ局A社を事例に、ローカルメディアが地元の祭りに「当事者」として深く関わっていることについて論じる。発表者はA社の番組制作課にアルバイトとして関わりながらフィールド調査を行った。その中でA社が氏子である視聴者のニーズに即した番組制作を行っていること、氏子たちもそのサービスを祭りの一部として認識していることが明らかになった。
著者
清水 高志
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A16, 2016 (Released:2016-04-22)

ストラザーンの『部分的つながり』が切り拓く思想的な展望を、二十一世紀の哲学の諸動向と同種の問題意識を孕んだものとして捉え直す。彼女が集団の全体という「一」と、その部分としての「多」を自明なものとして想定せず、媒体的なモノ=道具が集団形成に果たしている能動的な機能と、その変容を重視していることの意味を哲学的に考察する。
著者
内山田 康
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A15, 2016 (Released:2016-04-22)

全てを階層的な関係の中に包摂する全体論的な構造から逃れる先住民の女神がいる。この南インドの女神は、ある女性の非業の死から単独の神として生まれた。女神はヒンドゥー寺院の象徴的階層構造に取り込まれて穢れた部分を排除される。だが全体からは予測できない飛躍の中で排除された部分から意味が生み出される。系列と系列を横切って創発が起こり、全体論的な構造が部分化する過程を記述した後、部分と全体の関係を再考する。
著者
黒崎 岳大
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.213, 2009 (Released:2009-05-28)

米国信託統治領下のマーシャル諸島では、各地の離島で日本の青年団をモデルとした「クミ」と呼ばれる協働組織が形成された。同組織は、70年代には政治等の分野において強い影響力を見せたものの、90年代以降は急激に消滅していった。本発表では「クミ」という組織を巡る歴史的変遷を通じて、マーシャル人にとっての日本統治時代に対する過度に理想化された憧憬と急激に進む米国化に対する抵抗の関係について検討していく。
著者
飯高 伸五
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.211, 2009 (Released:2009-05-28)

日本統治下南洋群島の「島民」は帝国臣民とは明確に異なる存在と規定され、日本国籍を付与されなかった一方で、公学校における日本語や修身の授業、青年団の組織化などを通じて文化的同化の対象とされた。本分科会では日本統治下で「島民」が文化的同化をいかに受容したのか、戦後のアメリカ統治期から国家形成期にかけて日本統治経験をいかに解釈、再解釈していったのかを検討する。
著者
飯高 伸五
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.214, 2009 (Released:2009-05-28)

日本統治下のパラオでは既存の年齢集団を包摂しつつ、青年団が組織された。男子の青年団は、道路建設をはじめとする勤労奉仕、体育デーなどの文化イベントへの参加を求められた。当時の勤労奉仕や体育デーを歌った歌からは、パラオの人々が、統治政策の一環として組織された青年団の活動を、植民地統治以前に行われていた村落間の交流活動など、年齢集団の活動と連続するものとして解釈したことが読み取れる。
著者
青柳 孝洋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.76, 2008 (Released:2008-05-27)

本発表は、イスラーム社会における歌の受容と生産をとりあげる。特にナシード・ディーニーと称されるイスラーム的宗教歌謡ジャンルについて、主に2007年8月~10月の2ヶ月間にシリアで行った現地調査を基に論じる。 伝統的にはアッラーへの信仰を促すような内容のものが宗教歌謡では一般的であった。しかし近年、現代的な要請を受けてその内容は広がりを見せてきている。
著者
東 賢太朗
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.43, 2009 (Released:2009-05-28)

本分科会では、人類学(者)がフィールドで出会う謎と秘密、不思議と驚き、すなわち「ミステリー」の魅力と可能性について議論を展開する。具体的には、人類学とフィクション(ミステリー、ファンタジー、SF)との関係、フィールドワークのプロセスにおけるフィクションとリアリティ、そして調査対象自体に内在するミステリーといった問題系に着目する。
著者
東 賢太朗
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.44, 2009 (Released:2009-05-28)

人類学のフィールドにおいて、「わかる」ための努力がなされる一方で、「わからない」ことが必ず残されていく。そのような解き明かされない「謎」の持つリアリティについて、本発表では考察する。フィクションの諸ジャンルでは、非現実や非日常の要素がリアリティの表現として効果的に用いられるのに対し、人類学には民族誌のもつ虚構性に対する批判が向けられる。両ジャンルの並置と比較から議論を展開したい。
著者
小西 信義
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.41, 2013 (Released:2013-05-27)

除排雪に関わるリスクは豪雪過疎地域では切実な課題である。この課題に対し、人びとがどのように対応しているかを明らかにするため、岩見沢市美流渡地区で経験的観察を行った。その結果、人びとは自然環境や個体を取り巻く状況に応じ、個体または集団の行動戦略を採っていることが明らかとなった。さらに、これらの行動戦略が互恵性に基づく活動であることを検討し、豪雪過疎地域における課題解決に寄与していることを指摘する。
著者
ベル 裕紀
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第48回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.81, 2014 (Released:2014-05-11)

韓国は、非熟練労働者の海外からの受け入れを行っている。この制度の下では事業所の変更が厳しく制限され、移住労働者にとっては、韓国人支援団体とのネットワークが、劣悪な労働条件や賃金未払、時には暴力から逃れるために、必要不可欠である。このネットワークを通じての移住労働者の集中とその結果生じたを支援団体の機能不全を解決するために、互助組織が形成されていった過程をカンボジア人の事例を通じて見ていく。
著者
出口 雅敏
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.159, 2009 (Released:2009-05-28)

サウンドデモは政治的表現を祝祭的次元において発信することで、一定の成功を収めてきた。だが近年は、警察や機動隊の過剰警備に包囲されがちである。こうした状況において、直接行動の現場を支配する「戦闘機約」に働きかけ、それを覆すような祝祭的戦術の駆使もみとめられ始めた。本発表では、サウンドデモの祝祭的次元についての検討を通じて、現代社会における示威行動の文化とその表現型式の特質について考察する。
著者
渡部 瑞希
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第45回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.117, 2011 (Released:2011-05-20)

カトマンズの観光市場における宝飾商人の間では、商品の品質・相場に関する情報が非対称であるにも関わらず、騙しの告発は稀で顧客関係も維持されている。本発表では、こうした状況がいかにして可能であるかに関し、買い手による情報探索と、市場に情報を提供する人々の情報操作を詳細にみていくことで明らかにする。
著者
田中 雅一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.67, 2012 (Released:2012-03-28)

本発表の目的は、セックスワーカーたちのインタビューをもとに、彼女たちが男性客に対してどのような態度をとるのかという問いについて考察し、これまでの感情労働研究を批判的に検討することである。一般にセックスワーカーと客との間には絶対的な上下関係があるとみなされてきた。このため叱りつける、といった行為は想定されてはいなかった。その意味を探ることで女性たちのエイジェンシーの特質に迫りたい。
著者
高倉 浩樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.91, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表は、東日本大震災によって被災した人類学者としての経験をふまえて、震災にかかわるサルベージ人類学の必要性と、その理論的根拠、そこから見えてくる社会的実践の豊かなひろがりを論じるとともに、その実施に必要な調査体制についての展望について述べるものである。
著者
今井 彬暁
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.26, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表では、ベトナムの西北地方に位置するサパと呼ばれる観光地において形成されている民族間分業の様態を描き出し、そこでのモン族の立ち位置を彼らの労働表象に着目しつつ説明する。サパでは複数の民族が観光産業に携わっているが、経済活動に付与する価値付けは民族によって異なることを労働表象の民族的差異から説明し、そのことが民族間分業におけるモン族の現在の立ち位置を決定する要因となっていることを主張する。
著者
大石 高典
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.158, 2012 (Released:2012-03-28)

アフリカ熱帯林の狩猟採集民の社会は、徹底した分配により、平等主義を規範とする社会として描かれてきた。本発表では、換金作物栽培を開始したカメルーン東南部の狩猟採集民バカが、集団内部の経済的不平等や貨幣経済の流入にともなう社会変化をどのように認識し、対応しているのかについて、最近変化が見られるようになった呪術・邪術に関わる言説や行動に着目して検討する。