著者
山崎 幸治
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A16, 2021 (Released:2021-10-01)

本発表では、ウィーン世界博物館に所蔵されているハインリッヒ・フォン・シーボルト(1852-1908)のアイヌ・コレクション(約80点)について報告する。発表では、彼のアイヌ・コレクションの特徴と、その特徴を形づくった要因について検討するとともに、彼の北海道調査の旅程の一部を共にしたり、道中で出会ったりした2人の外国人による記述を読み合わせることから見えてくる1878年当時の状況についても検討する。
著者
瀬口 典子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F10, 2021 (Released:2021-10-01)

日本の人類学は現在遺骨返還問題に直面しており、その背景には過去から現在に続く学問の植民地主義がある。文化人類学も自らの植民地主義を自覚すべきであると先住民から迫られている。本発表では、遺骨返還運動がきっかけとなって生まれた北米の先住民と人類学研究者との間の対話の実践、相互的な理解関係の構築と先住民コミュニティとの共同研究のありかたを検証し、日本における広義の人類学が進むべき未来を考えたい。
著者
田中 瑠莉
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D13, 2021 (Released:2021-10-01)

本発表では、京都市動物園の事例をもとに動物園の飼育動物(動物園動物)と人の関係について考察する。動物園において、それぞれの動物は「個」として扱われる一方で、動物を「擬人化」することは批判的に捉えられる。両者の差異に着目し、動物園の飼育動物を人と対等な存在として扱うことの内実と、飼育している個体との関係形成の根底にある規範について動物の人格に関する議論を参照し考察を試みる。
著者
百瀬 響
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.H06, 2021 (Released:2021-10-01)

2017~2019年まで、百瀬(代表者)と岩澤らは、樺太アイヌ(エンチウ)協会員と共に、「失われた」樺太アイヌ文化を復元・継承するための活動を行ってきた。国内外の博物館等に所蔵されている資料を協会員と共に調査し、物質文化の複製や舞踊の3D映像化による教育資料作成を試みた。以上の活動を通して、樺太アイヌ文化継承のための協働の試みを発表する
著者
岩谷 彩子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.46, 2009 (Released:2009-05-28)

占いは、予測不能な人間の生の謎に対して、日常的な秩序を越えた「他なるもの」を設定し、それまで生に与えられていた意味をいったん宙吊りにさせて新たに語りなおす技芸である。そこでは相談者の人生の別の意味が、物品と語りを用いて編みなおされていく。本報告では、インドの占い師と相談者との具体的な交渉の場を事例とし、生の謎解きとしての側面が合理的、あるいは倫理的な次元を超越する点について考察する。
著者
比嘉 理麻
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C18, 2021 (Released:2021-10-01)

本発表では、沖縄県名護市辺野古の基地建設の進行にともなって、熾烈化する抗議行動の最前線で、機動隊や海上保安庁の暴力により心身に傷を負い、抗議に行けなくなった人びとが、新たに勝負できる領域を模索するなかで見出した、<生き方としての基地反対運動>でも呼びうる動きを積極的に掬いあげる。現在生まれつつあるのは、狭義の政治運動におさまるものではなく、むしろ、政治の限界を踏み越えて、<生き方>と接続される基地反対運動である。本発表では、従来の「政治運動」で傷ついた人びとが、口にするようになった「これは、政治じゃない」という言葉に耳を傾け、基地反対運動を「非政治化」し、より広い領域を巻き込みながら、自らの<生き方>として展開する新たな基地反対-環境運動を理解することを目指す。
著者
川口 幸大 松本 尚之
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D18, 2020 (Released:2020-09-12)

アフリカ有数の都市ラゴスに暮らす中国系移住者と地元住民は、必ずしも互いに好印象を抱いているとは言い難いが、その関わりの端緒から双方の必要性は織り込み済みであった。よってそこでは、好むと好まざるとに関わらず両者の交わりを伴わざるをえず、手放しで称揚するほどの美談はないが、喧伝されているほど悲惨ではない、必要に迫られたやりとりが交わされている。
著者
村上 志保
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E20, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表では、習近平政権が宗教政策の柱として掲げている「宗教中国化」について、グローバル化とともに推移する民族・文化をめぐる解釈という視点から中国プロテスタントにおいて実際に生じている事例に基づき考察する。具体的には、活発なグローバル・アクターとなりつつある中国において、プロテスタント信者たちが経験し認識する「中国」が、「宗教中国化」示す「中国」とは大きく異なりつつある状況について議論する。
著者
二文字屋 脩
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.46, 2018 (Released:2018-05-22)

本発表は、タイ北部で唯一の遊動狩猟採集民と知られるムラブリ(the Mlabri)を事例に、脱狩猟採集民化を経験したポスト狩猟採集民に対する原始豊潤社会論の妥当性を検証するとともに、生産様式から議論されてきた原始豊潤社会論を、思考様式や交換様式といった視点から再考するものである。
著者
飯嶋 秀治
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E14, 2021 (Released:2021-10-01)

人類学的先行研究は感覚機能障害のサーヴェイがされている[Keating&Hadder2010]が日本の「視覚障害」の先行研究[廣瀬2005;泉水2017cf.亀井2008;戸田2016等]では、諸学問の間に分散し、①教育学のような今ここの「視覚障害」、②宗教民俗学のような異文化・異時代での異なった生の在り方、③美学や障害学のような今後の生を切り開く研究がある。2019年に27名の聞書きや参与観察を通じて得た人びとのあり方がどのような研究を開きうるのかを考える。
著者
大川 謙作
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.234, 2008 (Released:2008-05-27)

かつてのいわゆる「チベット旧社会」においては貴族(sku drag)が存在した。旧社会は1959年の新中国による「民主改革」によって大規模な構造転換を余儀なくされ、公的には貴族階級も消滅したかに見えたが、それから半世紀を経た今日においてもなお貴族集団は存続している。 本発表の目的はこの貴族の存続のロジックについて、先行研究を批判しつつ分析することであり、特に現代ラサでの日常会話を手がかりとしたい。
著者
片岡 樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D07, 2015 (Released:2015-05-13)

本報告は、タイ国における大乗系漢文経典を用いた読経方法、およびその知識の継承方法に関する調査の中間報告である。タイ国では漢文経典の読み方として最も普及しているのが、「五音」と俗称される特殊な人工言語によるものである。本報告では「五音」のタイ国での普及過程、および念仏会や寺廟儀礼での「五音」経典の用いられ方を検討することで、タイ国における漢文リテラシーの所在の一端を明らかにすることを試みる。
著者
永田 貴聖
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第51回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E09, 2017 (Released:2017-05-26)

本研究では、出自のナショナリティ・エスニシティを基盤として関係する側面だけでなく、移住先において、状況に応じて、移住先社会のマジョリティや他の移民と関係を構築することを明らかにする。本報告では、京都市・東九条地域を集住地域とする在日コリアン、日本人、フィリピン人移住者の関係形成、地域・多文化交流施設に集まるフィリピン人たちの同施設内での活動と地域の人びとと関係に焦点を当てる。
著者
立川 陽仁
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B15, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表では、北米、北西海岸先住民がおこなってきたポトラッチについて、2つの点を検討する。1つには、研究史は「ポトラッチとは何か」という問題にいかに対応してきたのか。もう1つは、研究史はポトラッチでおこなわれる経済行為をどう解釈してきたのか。
著者
松岡 秀明
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.27-27, 2009

ブラジルで布教している日本の新宗教である世界救世教の非日系信者が、自らが信じる宗教をブラジルの諸宗教のなかでどのように位置づけているかを検討する。
著者
関口 由彦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E15, 2015 (Released:2015-05-13)

本発表は、北海道日高地方におけるアイヌ民族の文化継承をめぐる動きを事例として、そこに浮かび上がる「血」、「系譜」、「地域」の観念を検討する。それぞれの観念の複雑な絡み合いが、直接的な人と人とのつながりに基づく「アイヌ」や「仲間」といった自己認識を生み出し、自己のエスニックな帰属が文書資料によって規定される「人種化」(=出自/血統にもとづく帰属集団の固定化)という現実に抗う様態を考察する。
著者
濱谷 真理子 藏本 龍介
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第53回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F19, 2019 (Released:2019-10-01)

南アジア・東南アジア社会においては、「布施(dāna、dānなど)」と呼ばれる実践がみられる。本分科会では、インド、ミャンマー、スリランカにおいて「布施」として行われるさまざまな贈与の事例について、そこにはどのような規範や倫理がみられるのか、そしてそれはどのような社会関係や経済制度をもたらしているのかを検討する。それによって、「人間はなぜ他者に与えるのか」という問題に新たな視点を提供することを目的とする。
著者
渡邉 麻理亜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E09, 2016 (Released:2016-04-23)

頭髪は、人体の頭部から離れると、「不浄」なものや「汚いもの」として扱われることが少なくない。しかし、中国の伝統医療や韓国の伝統医療では、頭髪は「血余」もしくは「血余炭」と呼ばれ、外用としても内服用としても使用される薬品として現代まで使用され続けている。本発表では「血余炭」と呼ばれる頭髪を炭化させた薬品としての側面に注目し、中国での使用状況を中心に頭髪の利用の多様性と特殊性について検討する。
著者
中村 八重
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F12, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表は韓国のレトロブームのなかで植民地遺産としての建築物がどのように位置づけられているのかを、建築物の観光化をめぐる現象の分析を通じて明らかにしようとするものである。植民地時代の衣装を新しいものとして消費することが若い世代で流行している。こうしたブームが、従来「生きた歴史教育の場」という役割が課せられていた植民地遺産をめぐる言説や現象に与える影響を検討する。
著者
中村 沙絵
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第53回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F23, 2019 (Released:2019-10-01)

人道主義が世界各地で展開し、多様な主体や局地的な実践形態をとりこみながら遂行されている。こうしたなか、贈与の効果によってその価値を測る世俗的贈与と、与える行為そのものに意味を付与する宗教的贈与のロジックが、同一の活動において同時に保持されるような混淆的な状況が出現し、研究の対象にもなっている。しかし人道主義と宗教が重なり合う領域がいかなる贈与のロジックによって成立しているか、それがいかなる経験や関係性の創出に寄与しているかについては、あまり問われてこなかった。本報告ではスリランカで人道主義的な介入と宗教的実践とが重なり合う領域としての社会奉仕実践、およびそこでの贈与行為に着目する。与え手・受け手のふるまいやロジック、ならびに与え手と受け手のあいだでとりむすばれる関係性のありようをみながら、こうした混淆的な贈与の実践がもたらす経験や社会性について検討する。