著者
藏本 龍介
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第53回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F22, 2019 (Released:2019-10-01)

本発表では、ミャンマーの「自然法」瞑想センターを事例として、仏道修行/布教事業/社会福祉事業が渾然一体となった「布施行」の実態を分析する。そして「布施」というロジックに貫かれたこのセンターにおいては、「布施経済」とでも呼びうる独特な経済制度がみられることを示す。
著者
神本 秀爾
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第44回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.24, 2010 (Released:2010-12-20)

ジャマイカのラスタファリ運動は、エチオピア皇帝ハイレ・セラシエを救世主とする「真のキリスト教」を自称する。運動は同時にアフリカ性の積極的肯定とともにアフリカ大陸への帰還を要求してもいる。本発表は、エチオピア・アフリカ黒人国際会議派ラスタファリアンを対象として、宗派内部において救済とアフリカ性の積極的肯定が「アフリカ回帰主義」「聖書主義」によって正当化される過程を明らかにする。
著者
浜田 明範
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第51回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C20, 2017 (Released:2017-05-26)

ガーナ南部の仕立屋は2年強の修行の後に、卒業パーティーを経て一人前と認められる。この卒業パーティーは結婚式などの他のパーティーと部分的につながれているのだが、新たに承認される仕立屋は、このパーティーの特徴を巧みに利用する。仕立屋は、未来の花嫁の姿を先取りし、未来の顧客の衣装を先取りした衣装を身に着けることで、自らとその衣装をポスト多元的なものとして提示し、自らの技術を示すのである。
著者
澤井 充生
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E21, 2020 (Released:2020-09-12)

中国国内では2016年頃から一部の極左勢力がムスリム少数民族の優遇政策(ハラール食品の認証・監督)や宗教活動(清真寺の改築、イスラーム服の着用、イスラーム学校)などに対する誹謗中傷をメディアに発信し、その結果、イスラモフォビアを意図的に拡散する言説空間が誕生している。本発表では中国国内に蔓延するイスラモフォビアの背景・経緯・影響を習近平が提唱した「宗教中国化」と関連づけて分析し、その問題点を解明する。
著者
秦 兆雄
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第51回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B15, 2017 (Released:2017-05-26)

中国は今後どのような大国として発展し、世界にどのような影響を及ぼすかなどについては、世界の人々にとって強い関心を引く大問題である。しかし、この問題に対して、人類学者はほとんど議論をせず、従来の村落社会や少数民族などのミクロ研究にとどまっている。この問題意識をもって、本発表は主に改革開放以後急速に広がる儒教復興の動きについてフィールド調査資料に基づいて中国社会の現状を分析し、その行方を展望する。
著者
関 一敏
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A10, 2020 (Released:2020-09-12)

(1)呪術・宗教・科学という古典的主題は、それぞれの活動を担う人物からの離床度で測定できること(科学>宗教>呪術)。(2)うち宗教の人物像は「預言者」「修行者」「老賢者」に整理できること(ウェバー、キュング)。(3)呪術研究の課題は「呪者になる」「呪力のモノ化」「半分の真面目さ」にあること(モース)。以上をふまえて、呪者の人物像問題を深めてみたい。
著者
伊藤 河聞 畠山 祥 藤賀 樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F14, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表の目的は、タイ北部に暮らすムラブリを事例に、個人の自律性と他者との協同性をめぐる理念と実践を明らかにすることである。さらに、定住化を契機とする社会関係の質的変化を念頭に、ある程度の経済力や政治力を持つことで、図らずも従来の平等主義的な社会関係を崩しうる者の苦悩を明らかにすることである。
著者
河西 瑛里子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.166, 2008 (Released:2008-05-27)

キリスト教到来以前のヨーロッパにおける信仰の復興運動、ネオペイガニズムを通して、伝統の創出について考える。本運動は、外部からは創られた伝統とされるが、当事者は過去との連続性を主張し、「本物」の信仰の復興をめざしている。その一方で、北米やオーストラリアの先住民族の文化を積極的に取り入れている。ここでは、とりわけドルイドの実践を取り上げ、彼らがなぜ「伝統」を復興させようとしているのか、考えてみたい。
著者
甲田 烈
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A03, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表では、比較思想の方法により、日本の近・現代哲学に着目し、仏教と通底するアニミズムの思想的可能性について考察する。そのさいに参照するのは井上円了(1858-1919)における「活物」の概念である。それは人間もそれを分有する世界そのものの働きを意味し、また生きとしいけるものの往還を意味することから、現代の哲学・人類学におけるアニミズムの再評価と重なるであろう。ここから、「往還存在論」を構想することができる。
著者
長沼 さやか
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.107, 2013 (Released:2013-05-27)

本分科会では、沖縄、台湾、韓国、中国、タイのフィールドから個別具体的な漁村形成の事例を報告する。その際にとくに注目するのは、水上/陸上の他集団との社会・経済的関係と、国家など近代的公権力の影響(定住化政策、漁業開発、干拓事業など)である。これらを通地域的に比較するなかで、これまで移動から定住に至る一方向的なプロセスにおいて、分けて論じられてきた移動/定住漁民のあり方が、移動と定住の両方向的な動きにおけるバリエーションとして現われていることを実証する。
著者
山田 仁史
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B14, 2015 (Released:2015-05-13)

人類とさまざまな仕方で、長く付き合ってきた犬。ヨーロッパ中世でも、犬は猟犬、番犬、愛玩犬、野犬などとして人間とともに、あるいは人間の近くに生きてきた。本発表は、そうした犬のさまざまなあり方のうち、食肉としての犬をとりあげ、その諸相を論じることを通じて、動物全般と人間との関係、および犬の特殊性をあらためて考え直すことを目的とする。
著者
生井 達也
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A14, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表では、ある程度決まった成員によって定期的にライブ・パフォーマンスが繰り返されている小規模ライブハウスにおいて、同じ出演者と客という組み合わせでもライブの盛り上がりや評価が〈その場〉によって異なるという点を取り上げ、そのような〈その場〉を立ち上がらせる差異がどのように作られているのかを検討する。
著者
登 久希子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.78, 2018 (Released:2018-05-22)

本発表は2000年代初頭から現代美術の文脈で注目をあつめてきた「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」や「ソーシャル・プラクティス」と呼ばれるような「社会性」を指向する芸術実践を事例に、芸術と非芸術としての日常生活(life)のあいだにいかなる《境界的領域》が生起し得るのかを人類学的に考察するものである。
著者
渕上 恭子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.H09, 2015 (Released:2015-05-13)

中国同胞(朝鮮族)代理母による韓国人不妊夫婦相手の代理出産において、従来主流であったホストマザー型代理出産に代わって、近年、韓国人の不妊夫婦の夫が、中国同胞代理母の所に赴き、性交渉を行って子どもを産ませた後、DNA鑑定を行ってその子を認知する形態のものに変わってきている。その理由を、韓国の代理出産をめぐる文化伝統と、韓中両国の生殖市場を取り巻く近年の法的・社会経済的状況の変化に照らして考察する。
著者
岸上 伸啓
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.146, 2008 (Released:2008-05-27)

本報告では、狩猟採集をめぐる「生業」概念や「生業」としての狩猟採集活動に関する研究アプローチがどのように展開されてきたかを整理、検討する。そのうえで、極北地域の狩猟採集民(先住民)の生業活動の一般的な特徴とイヌイットのシロイルカ猟の諸特徴を検討し、イヌイットの狩猟採集活動にかかわる生業モデルを提案する。報告者は、このモデルの汎用性を主張する。

1 0 0 0 OA マナと聖霊

著者
石森 大知
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.171, 2008 (Released:2008-05-27)

マナをめぐる議論は、19世紀末のコドリントンによる報告以来、大変な蓄積がある。しかし、太平洋の人々がキリスト教徒となった現在でも、マナは伝統的信仰の象徴として扱われる一方、同概念とキリスト教的価値観との関連性は不問にされてきた。そこで本発表では、ソロモン諸島の事例に依拠し、マナは、聖霊とも結びつき、名詞的または実体的な「超自然的力」と認識されていることを明らかにするとともに、その社会・歴史的背景について考察をおこなう。
著者
松本 尚之
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F08, 2015 (Released:2015-05-13)

本発表では 、在日アフリカ人の間で2000年を前後して隆盛を極めた服飾ビジネスについて、特にナイジェリア出身者の事例を通して報告する。対象とするビジネスは、アメリカのポピュラー文化(ヒップホップ)の流行を背景として生まれたもので、彼らが携わるエスニック・ビジネスのなかでも日本人を対象とした点に特徴がある。服飾ビジネスの概要と変遷を論じ、ポピュラー文化のグローカル化と移民の関係について考察を行いたい。
著者
大門 碧
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A04, 2016 (Released:2016-04-22)

発表者自身が、自分の子どもを連れてフィールドワークに向かった際に生じた困難を、フィールドワークという活動が強いる受動性から分析する。「子どもをもつ」ことは、もうひとつの受動性を引き受けることへとつながり、(女性の)フィールドワーカーは二重の受動性を生きることに困難を感じる。しかしこの困難さを脱する手がかりを見つけるのもまたフィールドにおいてなのである。
著者
田中 雅一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.6, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表では、日本人の女性セックスワーカーへのインタビュー・データをもとに、客と恋人の区別に注目することで、セックスワークという仕事の性格について考察する。2012年11月までに行ったセックスワーカー11人へのインタビューをもとに、セックスワーカーの恋人観、恋人と客とを区別するような行為や言説、客が恋人になる過程や葛藤を明らかにする。これによってこれまでのセックスワーク論批判を吟味する。
著者
太田 好信
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第45回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.100, 2011 (Released:2011-05-20)

本発表は、生涯をとおして先住民言語に深い関心を寄せ、自らもその習得に努めた芸術家ジャン・シャルロー(Jean Charlot, 1898-1979)の作品―とくに、彼がホノルル市に残したフレスコ壁画―を紹介し、彼の芸術活動の中核となっていた思想は何だったのか、という疑問に答える。そして、その解答を模索する中から、文化人類学においても文化を考察する際に有意義と思われる視点を導きだしたい。