著者
木村 忠正
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.76-76, 2009

本報告では、まず、地域SNSをコミュニティネットワークの文脈に定位し、社会関係資本と情報ネットワークとの関係という観点から分析を行う。さらに、今後の研究発展に向け、数理社会学的社会的ネットワーク分析(SNA:social network analysis)ではなく、John Barnes、Clyde Mitchellら、文化的意味、質的分析を含みこんだマンチェスター派の研究を改めて検討する。
著者
大川 真由子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第45回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.11, 2011 (Released:2011-05-20)

本発表は、本国の植民地化活動に伴い属領の東アフリカに移住したのち、脱植民地化の過程のなかで本国に帰還した入植型帰還移民、アフリカ系オマーン人にとっての帰還およびその後の実践に着目することで、彼らの歴史認識を明らかにすることを目的としている。東アフリカでのオマーン人の歴史を残す作業のなかで彼らが元移住先をどのように語っているのかをみたうえで、その認識を形成する歴史、社会的諸要因について考察する。
著者
矢島 妙子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.116, 2018 (Released:2018-05-22)

高知の「よさこい祭り」が、1992年に札幌に伝播して「YOSAKOIソーラン祭り」となり、その後、全国に同様な「よさこい系」祭りが誕生した。グローバリゼーションの時代であるが、各地の「よさこい系」祭りが、祭りとしてその土地で確固たるものとなったとき、それが、自分たちの文化となる。伝播型の祭りは、本家も影響を受けながら、また、本家性が曖昧となり、正確さを欠きながらも展開し、各地の文化となり、継承される。
著者
根本 達
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第44回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.10, 2010 (Released:2010-12-20)

インドのマハラシュトラ州ナーグプール市では、仏教徒たちによる「不可触民」解放運動が行われている。この運動を始めたのは、「不可触民の父」と呼ばれるアンベードカル(1891-1956)であり、1956年、30万人以上とされる「不可触民」とともに、ヒンドゥー教から仏教へ集団改宗した。仏教徒たちは、アンベードカルの死後も解放運動に取り組み、1968年以降は、日本人仏教僧である佐々井秀嶺(1935-)が指導者として活動している。
著者
諸 昭喜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 The 56th Annual Meeting of the Japanese Society of Cultural Anthropology 日本文化人類学会第56回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A05, 2022 (Released:2022-09-13)

月経問題は、韓国でフェミニズム議論と女性の性・リプロダクション健康権の問題として取り上げられている。低所得層の女子中学生が、靴のインソールを生理用品として使った事件が引き金となり、月経権の議論が巻き起こった。また、生理用ナプキンに発癌性物質が検出された事態が女性の健康権問題につながった。このような一連の事件は、女性の健康に対する認識、制度などに対する議論を巻き起こしている。
著者
池田 光穂
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第51回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B16, 2017 (Released:2017-05-26)

この発表では、ラテンアメリカ(とりわけ中央アメリカ)における人種=民族カテゴリーに関するエスノグラフィーやエスノヒストリーを再検討しつつ、私自身がその地を訪れてきた際に参照してきた文献にもとづく知識が私のフィールド経験とどのように交錯してきたのかについて考察する。
著者
松尾 香奈
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第57回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B14, 2023 (Released:2023-06-19)

これまでろう者は、日本手話第一言語話者のみを指すとされてきた。だが実際には、日本語対応手話や混成手話を使用する人びとも「ろう者」として生きている。本発表では、従来研究で捨象されてきた日本語対応手話話者「ろう者」に注目する。「ろう者」と聴者の接触時、「ろう者」はトラブルによる不利益が生じたとしても黙認することがあるが、この受け流しを戦略的排除として分析し、新しい抵抗のあり方を提示する。
著者
渡邉 暁子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E20, 2015 (Released:2015-05-13)

本発表は、アラブ首長国連邦(UAE)とカタル首長国という2つの湾岸アラブ諸国において、カトリックからイスラームに改宗したフィリピン人、とりわけ女性家事労働者と国際結婚者を対象にする。国籍、社会階層、宗教、文化等の違いがヒエラルキーとして人びとを「分断」する両国社会のなかで、キリスト教国フィリピンからの移民労働者たちの改宗を契機とする親密なつながりの変容を描き出す。
著者
松川 恭子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D10, 2021 (Released:2021-10-01)

本報告では、主にクウェートで行った調査で得られたデータを中心に、湾岸アラブ諸国におけるインド系移民第二世代の教育戦略を考察する。彼ら/彼女たちの選択は、湾岸アラブ諸国における国民中心の公教育制度や高等教育の発展(海外分校の参入など)、インド政府の在外インド人政策、第一世代の思惑などの要素を背景としつつ、トランスナショナルな視野のもとで行われていることを明らかにする。
著者
松川 恭子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D22, 2020 (Released:2020-09-12)

湾岸アラブ諸国において、外国人移民労働者は自国よりも高い賃金、整備されたインフラを享受できるが、市民権・永住権の取得が非常に困難である。本発表は、労働ビザを継続的に更新して滞在を続ける移民労働者の子どもとして湾岸諸国で生まれた2世が高等教育を受けるために渡った「故国」インドで「インド生まれのインド人」と出会い、「湾岸アラブ諸国生まれのインド人」して自らをどのように捉え直しているのかを考察する。
著者
長坂 格
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D09, 2021 (Released:2021-10-01)

イタリア、およびフィリピンでの調査にもとづき、イタリア在住のフィリピン系第1.5世代移住者たちのイタリア、フィリピン、そして他国に広がりつつある実際上の、そして想像上の社会圏を、「社会生活の舵取り(social navigation)」[Vigh 2009]として描写し、併せてそれを彼ら/彼女らを取り巻く、絶えず変化する社会環境との関連で考察する。
著者
新本 万里子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.1, 2013 (Released:2013-05-27)

生理用品(ナプキンなど西洋起源の経血処置の道具)の受容による月経のケガレ観の変容を、パプアニューギニア・アベラム社会を事例に明らかにすることを目的とする。月経小屋があった当時、作物の栽培に危険な月経中の女性は可視化されていた。生理用品の受容によって、月経は、女性個人のものとなった。月経が作物の栽培に危険なものであるという感覚が希薄化し、当該社会の月経のケガレ観は変容していると考えられる。
著者
李 婧
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第57回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A14, 2023 (Released:2023-06-19)

コロナ禍において人々の行動が制限されるため、地域行事の開催も政策などを通じて制限されている。その一方で、人々はこの危機に際してレジリエンスを発揮して柔軟に対応している。本発表で取り上げる東京都王子の「狐の行列」という地域行事はその一例である。本発表の目的は、コロナ禍における「狐の行列」をめぐる新たな取り組みに焦点を当てながら、地域行事がいかなるレジリエンスを発揮するのかを明らかにすることである。
著者
井上 瞳
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第57回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B11, 2023 (Released:2023-06-19)

本発表では、性暴力被害にあった人びとへのグループ形式の聞き取り調査からえられたデータをもとに、医療のモデルから取りこぼされてきた当事者の「生活世界」を、医療人類学と現象学という二つの学問分野から領域横断的に考察するものである。具体的には、当事者によって生きられた性暴力の「その後の世界」に着目し、そこで性暴力にあった人びとがどのように周囲の他者との社会的な関係性を構築、応答しているかを明らかにする。
著者
大戸 朋子 吉田 悠 東條 直也 新井田 統
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D10, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表は、子育て期にある母親とKDDI総合研究所との共創プロジェクトを事例とし、母親にとってのサードプレイスとはどのような場所なのかを検討したものである。Oldenburgはサードプレイスを、社会的な立場や役割から解放された“私”に戻れる場所だと捉えているが、今回のプロトタイプでは、子育て期の母親にとってのサードプレイスとは、“母親としての私”が満たされる場所であることが明らかとなった。
著者
大戸 朋子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.180, 2018 (Released:2018-05-22)

本発表では、アカデミックな人類学的フィールド調査の訓練を受けた後、企業が運営している「研究所」(企業研究所)に雇用されているエスノグラファである発表者(大戸)を通して、日本国内の研究所で行われているビジネスエスノグラフィの実践が、企業組織文化との絶えざる交渉の結果として、また、文化人類学的エスノグラフィを企業組織に導入・適合させようとする諸実践の産物として流動的に形成され続けていることを明らかにする。さらに、ビジネスエスノグラフィが、伝統的なエスノグラフィの型をなぞるだけではなく、新技術(360度カメラやVRゴーグルなど)の導入や使用検討を行うなど、新たなエスノグラフィの試みを積極的・実験的に行っていることをなどについて、具体的な事例を提示する。
著者
福井 栄二郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.G16, 2021 (Released:2021-10-01)

近年の人格論はストラザーンのdividual/individualという議論をいかに乗り越えるかという点に焦点が当てられており、そのなかでバード=デイヴィッドらは「状況的人格」という概念を提起している。本発表はこれを手がかりに、ヴァヌアツ・アネイチュム島における死の場面の事例を考察し、ストラザーンの議論の限界を指摘する。そして状況的人格の特徴を「二人称的」であることとし、その学術的意義を再考する。
著者
西 真如
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F00, 2021 (Released:2021-10-01)

私たちは、意図するかしないかに関わらず、日常生活においていつも誰かや何かを心配し、係り合いになってしまっている。本分科会では、ケアフェミニズムおよび関連する人類学の近年の議論を参照するとともに、ケアの実践における非人間(non-human)の役割を探求する。またそのことを通して、他者との具体的な関係性に立脚した民族誌研究の地平をおしひろげるとともに、関係論的な思考の限界についても検討する。
著者
黄 蘊
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.141, 2018 (Released:2018-05-22)

本報告は、マレーシアとシンガポールの上座仏教徒たちのインド仏教聖地巡礼について、その背景、意義、その行為に隠されている意味について分析することを目的とする。本報告は、マレーシアとシンガポールの上座仏教徒はどういう目的、何をめざしてインドの仏教聖地に赴いているのかを考察し、またそこからこの両国における上座仏教はどのような過程を経て自己完成に向かっているもしくは向かおうとしているのかを明らかにしていきたい。
著者
鈴木 和歌奈
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.H08, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表は、幹細胞を使った再生医療プロジェクトにおける多様な時間性に焦点をあて、アクターネットワーク理論で見過ごされて来た時間やリズム、ケアについて考察することを目指す。細胞の時間、社会的な時間、病気の時間などにどのようにプロジェクトが関わっているかについて「先取りの作業(Clarke forthcoming)」の概念をもとに、分析を行う。