著者
春日 直樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.98, 2018 (Released:2018-05-22)

近年の人類学では、身体と精神、自然と文化、人間と非人間などの西洋近代的な二分法を批判する代替的なアプローチがいくつも提起されてきた。本発表ではメラネシアの主にパプアニューギニアの民族誌に依拠して、ローカル・ノレッジをつうじたあたらしい二分法を提起する。「みえるもの」「みえないもの」というそれによって、(1)「私」という意識と物理世界との関係を呈示し直し、(2)人間の記号活動と対称性の論理とを関連づけ、(3)「呪術」についての新解釈を提起する。
著者
荒木 亮
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.20, 2018 (Released:2018-05-22)

本発表は、インドネシアの地方都市・西ジャワ州バンドゥンの周辺に位置するスンダ人・ムスリムの村落(K村)にて行われている憑依儀礼(クダ・ルンピン〔kuda lumping〕)について報告する。そのうえで、かかる儀礼的慣習に対する、人々のイスラームという視点に基づいた語りを手掛かりに、村落社会の発展(近代化)とイスラーム化、さらには伝統復興といった現地の生活世界を素描する民族誌的な試みである。
著者
村津 蘭
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.21, 2018 (Released:2018-05-22)

本発表は、西アフリカのベナン共和国南部の新教会の悪魔祓いを受けた女性の事例を基に、「妖術師」が悪魔祓いの中で対処されることを通して、どのように「妖術師」として具現化するのかということを言説・身体・物質の観点から描きだす。さらに、不幸の原因を判じるための卜占と比較し、悪魔祓いが相談者側の力の増大につながっている点について議論する。
著者
吉野 晃
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.22, 2018 (Released:2018-05-22)

タイ北部の山地に居住するミエン(ヤオ)は、男性中心的な道教・法教的儀礼体系を保持してきたが、〈廟〉を作り、女性シャマンが儀礼を行う新しい宗教現象が起きている。この宗教現象における女性シャマンの活動履歴と、シャマン集団を統合する師弟関係・結縁儀礼について報告する。
著者
斎藤 俊介
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.174, 2018 (Released:2018-05-22)

本発表は、北部タイのコン・ムアン社会において行われる、母系親族を基調とした出自原理にしたがい形成される祖霊祭祀集団について報告するものである。それが理念的なクランであり、実際に系譜として辿れるリネージとは乖離しているという点に留意しつつも、同じ祖霊を祀る集団、すなわち同一の母系クランに帰属する集団単位の可変性と祖霊祭祀にまつわる実践のありようについて、北部タイの社会変容との相関から考察を加える。
著者
山本 恭子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.50, 2018 (Released:2018-05-22)

イザイホーは沖縄県久高島において12年に一度、行われてきた女性が神女に就任するための儀式である。そして神女は年間20以上行われる神行事を支える重要な役割を担ってきた。しかし、イザイホーを受けるものがいなくなり、1978年を最後に行われてない。現在イザイホーを受けた神女は最も若くても70才を越える。本研究ではイザイホーを受けた女性の生涯を振り返っての語りから、イザイホーが神女に与えたものについて考えた。
著者
ガザン
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.171, 2018 (Released:2018-05-22)

本発表では、東北チベット・アムド地域及び青海チベット村落社会における死の儀礼に関する幾つかの事例を取り上げながら、先ず、死の儀礼に対する準備作業、葬儀のプロセス、死に対する宗教者が果たす役割と世俗的社会集団による経済的支援などについて述べる。そうした上で、儀礼に見られるあの世へと導く主導者・聖人と葬儀に対する精神的や経済的に支援する俗人は一体どのような関係でつながっているか、そのつながりによって行う死の儀礼がつなぐ共同性について考察する。
著者
福浦 一男
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.19, 2018 (Released:2018-05-22)

上座部仏教・精霊信仰・霊媒術が混淆する伝統的な宗教性を保持する古都チェンマイでは近年、元来互いに異なる筈の母系祖霊崇拝と霊媒術が協同してひとつの儀礼を実践する事例が増加し、他方精霊信仰の歴史的な重要性を認めて霊媒との協同作業を実践する複数の上座部仏教僧が存在する。これらの事実は、社会変動が続く現代タイ社会において現地の伝統的な宗教性を再構成し、宗教職能者を相互に連関させる実践宗教の力を示している。
著者
宇田川 彩
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表は、アルゼンチン・ブエノスアイレスで行った現地調査に基づき、2011年に社交スポーツクラブで開催されたユダヤ・ブックフェアを主要な事例として、アーカイブが創るユダヤ人コミュニティについて論じる。アーカイブする単一の主体が存在せず、ローカルタームとしての「文化」的、「宗教」的なユダヤ性がパラレルに存在していることが、現代的な「コミュニティ」の在り方であることを指摘する。
著者
朱 藝
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.176, 2018 (Released:2018-05-22)

本分科会は、これまで交流の少なかった文化/社会人類学的なビジネスを対象とする研究と、ビジネス分野におけるエスノグラフィ実践とが相互に関わるための「コンタクト・ゾーン」を生み出すことを目的としている。主に、海外における日系企業や組織研究から見る人類学的アプローチの可能性と限界、ビジネスエスノグラファーから見るウェブデザインにおける文化的差違、企業へのエスノグラフィ導入・適合プロセスを議論する。
著者
大石 和世
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.3-3, 2008

朝鮮半島では、10代前半の男女が結婚、または、女児が結婚を前提として夫方の家に入ることがしばしばあった。このことは、旧韓末以降、国家、知識人らが朝鮮半島の住民を啓蒙する際に問題化した。したがって、婚姻に関して法的な規制が行われ、また、複数の新聞・雑誌媒体を通して近代的知識人によって、早婚の弊害についての啓蒙的な宣伝が行われた。さらに、朝鮮の早婚にかかわる調査、研究、小説などが生産された。このように、「早婚」という問題は、法と教育、学術、文学の言説の交差する場であった。
著者
梅津 綾子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第51回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C09, 2017 (Released:2017-05-26)

日本人ムスリムは近年、国際結婚、二世の誕生、および自発的な改宗などにより増加傾向にある。本発表では、とくに日本人女性ムスリムの、性差別的と批判されて久しいイスラーム言説の捉え方に着目する。そして自学、および日本や夫の母国といった個別社会のジェンダー観との関わりの中で、特定のイスラーム言説を受容・実践したり、あるいは拒絶したりする彼女たちの対処法を明らかにする。
著者
奥田 若菜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.108, 2012 (Released:2012-03-28)

本発表ではブラジル路上商人の二つの規範を考察する。「正しさの規範」と「善さの規範」の二つの領域は、矛盾することなく彼らの生活の中にある。二つの領域は使うべき場面が決められている。市場交換の場面で贈与交換を執拗に求めてはいけないし、贈与交換の場面で等価交換を頑なに主張することは批判を呼ぶ。「ねだり」「邪視」「物乞い」を事例に、二つの規範がぶつかり合う場面で生じる困惑を考察する。
著者
シャクルトン マイケル
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.129-129, 2008

心境は奈良県の笠間(かさま)村の1930年代に生まれた共同体です。最初から、主なメンバーは笠間の家族の者だから、他の共同体('ウgピア`など)の歴史とかなり違います。 長い間、心境が百人以上の障害者(特に「精神遅滞」がある人々)のホームにしてから、かなり有名になりました。この障害者は現在心境の共同体価値観を特に守っている者になりました。この発表は特に a) 七十年間のサーヴァイヴァルのための政略 b)「うち」と「そと」の気持ち c) フィールドワークの驚いたこと、などに関します。
著者
コーカー ケイトリン
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

舞踏は、土方巽を創始者とする日本固有の前衛的なパフォーマンスである。本発表の目的は、土方の弟子であった舞踏家たちがいかに舞踏を伝承するかを明らかにし、身体と言葉の関係を問い直すことである。舞踏は特殊な指導方法を用いる。それは、舞踊の知識を持たない者から踊りを引き出すことと、非現実なイメージをもって身体的状態を変化させることである。
著者
石井 美保
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.147-147, 2008

本分科会では、憑依・夢・癒し・出産・老いを事例として、身体の規範化と偶発性の間を揺らぐ〈身体-自己〉のあり方を多面的に検討する。身体変容の経験を形成する言語行為や、日常と非日常の臨界における間身体的な共同性の生成とその破綻に着眼することを通して、日常的な秩序のコードから外れつつも、他との関係性の中で独自の健全さを模索する〈身体-自己〉の可能性を提示したい。

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著者
井上 昭洋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第48回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.105, 2014 (Released:2014-05-11)

本発表の目的は、現在のハワイ人主権運動を19世紀後半から現在に至るハワイ人の抵抗の歴史の中に位置づけ、主権運動に内在する問題や困難性を考察することにある。1860年代のキリスト教徒による宗教運動、19世紀末の反併合請願運動、20世紀初頭の民族主義的な政治活動から、1970年代に始まる社会運動、1980年代後半以降の主権運動や先住民の権利を巡る訴訟問題に至るまで概観し、今日の主権運動について考える。
著者
山崎 幸治
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第45回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.37, 2011 (Released:2011-05-20)

本発表では、今後のアイヌを含めた文化人類学的日本研究の方法論開発に向けての素地を整えることを目的に、発表者のこれまでのアイヌ研究における実践から、現状における課題を提示し、今後の研究方法のあり方を展望する。日本の先住民族であるアイヌに関する研究の実践事例は、分科会副題『「日本人」がどのように日本を調査して日本語で語るか』に内包されている様々な問題を顕在化させよう。
著者
宮崎 あゆみ
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表では、日本の中学校における長期のエスノグラフィを基に、どのように生徒たちが、いわゆる「女性語」「男性語」から乖離した様々なジェンダー一人称を使用し、自らの多様な一人称実践に解釈を加え、非伝統的なジェンダー言語イデオロギーの意味空間を構築していたかについて分析する。言語の解釈に注目することで、ジェンダー言語イデオロギーがどのように複雑化し、シフトしているのかをつぶさに観察することができる。
著者
奥野 克巳
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.116, 2013 (Released:2013-05-27)

動物殺しは、一般に、人によって行われる動物殺しの面の問題検討に大きく傾いている。本分科会では、動物による動物殺し、動物による人殺し、人による人殺し、人の動物殺しを相互に比較検討することによって、動物殺しの論理と倫理について考察する。そのことは、動物殺しが人による動物殺しを中心に語られてきたことへの補正でもある。本分科会の目的は、動物殺しに関して、その人類学的な課題を浮かび上がらせることである。