著者
中村 栄子 石渡 孔実子 並木 博
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.845-847, 1990-12-05
被引用文献数
4 5

After removal of anionic surfactants by an ion-exchange technique, cationic surfactants were extracted as their chlorides into chloroform. Ion pairs of the cationic surfactants and Disulphine Blue formed in the chloroform phase were measured spectrophotometrically as follows : A 50 ml of a sample solution containing cationic surfactants (above 1μg as Zephiramine) is passed through an anion-exchange column (Amberlite IRA-401,15 ml) at a rate of 1 ml/ min and the column is washed with 50 ml of 50% methanol. Five milliliters of sodium chloride solution (10%) and l0 ml of chloroform are added to the eluate. The mixture is then shaken for 1 min to extract cationic surfactants into chloroform. The chloroform phase is shaken for 1 min with a mixture of 10 ml of citrate buffer solution (0.1 M, pH 5), 5 ml of sodium sulfate solution (0.4 M) and 1.5 ml of Disulphine Blue solution (1.17×10^<-4> M). The absorbance of the chloroform phase is measured at 628 nm. Cationlc surfactants in water above 20 μg/l could be determined by the proposed method.
著者
中村 利廣 貴家 恕夫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.29, no.12, pp.824-829, 1980-12-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
11
被引用文献数
1 3

粉末X線回折法を用いて,従来正確な定量法のなかった亜鉛末中の酸化亜鉛の定量方法を検討した.亜鉛末中の酸化亜鉛と同じ半値幅になるように加熱結晶化された標準酸化亜鉛を用いて検量線を作成することにより,結晶化度の差に原因する誤差を取り除いた.更に,加熱結晶化する方法と粉砕して結晶化度を低くする方法で調製した酸化亜鉛について,格子ひずみ量を比較して,加熱結晶化した酸化亜鉛のほうが,亜鉛末中の酸化亜鉛に近く,検量線作成用標準物質として適していることを見いだした.この標準酸化亜鉛を用いて,標準添加法で酸化亜鉛(1.9~5.9)%の試料を定量した.定量下限は0.27%,定量値3.9%のときの変動係数は5.8%であった.
著者
半戸 里江 安保 充 大久保 明
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.695-699, 2003-09-05
被引用文献数
1 5

本研究では,最適かつ詳細な分析手法の確立に加え,環境化学的視点から実試料の測定を実施し,分析値を解析することで,更に新たな知見を得ることを目的とした.海水中内分泌撹乱化学物質の定量に関して,簡便な方法でより正確な測定値を算出するために,固相抽出剤のコンディショニング法や溶出法の改良を行った.コンディショニング法に関して,実験に用いる水に由来する汚染を防ぐ目的で,水を使用しないコンディショニング法を考案した.この方法と従来法(精製水を使用するコンディショニング法)の回収率の差は1%以内であった.溶出法に関して,従来法よりも回収率が良く,ばらつきも少ないアセトン,ジクロロメタン,ヘキサンを順に通液する溶出法を提案した.実試料として,東京湾と千葉県沖の黒潮流域の海面表層水を測定した.東京湾ではノニルフェノール(mix)とビスフェノールAが数十〜百数十ng/lで検出された.千葉県沖での測定の結果,幾つかの測定対象物質が検出されたが,東京湾と比較して10分の1以下の濃度であった.
著者
井上 嘉則 上茶谷 若 山本 敦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.79-92, 2014
被引用文献数
5

親水性基材に両性イオン型化合物であるスルホベタイン及びジアリルアミン─マレイン酸共重合体(DAM)を導入した新規な保水性分離剤を調製し,水溶性化合物に対する抽出・分離特性を調べた.これらの保水性分離剤はイオン交換樹脂と同等の保水能力を示し,アセトニトリル中から水溶性化合物を効率よく抽出可能であった.特に,DAM導入分離剤はグルコースや配糖体も定量的に固相抽出可能であった.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりDAM導入分離剤の保持特性を調べたところ,水溶性化合物の保持(Log <i>k</i>)はLog <i>P</i><sub>o/w</sub>と良好な相関を示し,水和層への分配を主相互作用とすることを明らかとした.イオン性化合物は静電相互作用が加味されて保持されるが,溶離条件により静電相互作用の発現度合いを調節可能であった.さらに,DAMを混合した繊維状吸着剤も調製し,固相抽出剤としてだけでなく,大気中水溶性臭気成分の吸着剤としても有用であることを実証した.
著者
松下 浩二 関口 裕之 瀬戸 康雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.83-88, 2005 (Released:2005-04-08)
参考文献数
17
被引用文献数
24 28

The detection performance of a portable surface acoustic wave sensor array chemical agent detector (JCAD, BAE Systems) was investigated with nerve gases, blister agents, and blood agents. The vapors of sarin, soman, tabun and lewisite 1 (low level) were recognized as “NERV (nerve agent)” after about 10 sec of sampling, and the detection limits were about 30, 50, 100 and 300 mg/m3, respectively. The vapors of mustard gas and lewisite 1 (high level) were recognized as “BL (blister agent)” after about 10 sec sampling, and the detection limit for mustard gas was about 40 mg/m3. The gases of hydrogen cyanide and cyanogen chloride were recognized as “BLOD (blood agent)” after about 2 min sampling, and the detection limits were about 30 and 1000 mg/m3, respectively. Many solvents, such as methanol, dichloromethane and ammonia, were also recognized as chemical-warfare agents.
著者
山本 行隆 大堺 利行 千田 貢
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.655-660, 1990
被引用文献数
4 12

ニトロベンゼン(イオノフォア,ビス[(ベンゾ-15-クラウン-5)-4'-イルメチル]=ピメレート)/水(NB(BB15C5)/W)界面はK<SUP>+</SUP>及びNa<SUP>+</SUP>イオンに対し,アンペロメトリー型イオン選択性電極(ISE)として作動する.K<SUP>+</SUP>及びNa<SUP>+</SUP>イオンは,両イオンの半波電位が十分離れているので,一つの電極でそれらのイオンを同時に定量できる.このNB(BB15C5)/W界面を親水性の透析膜で覆った実用的なISEを作製した.この膜被覆センサーはK<SUP>+</SUP>-Na<SUP>+</SUP>イオンセンサーとして作動する.このセンサーは,作製操作が非常に簡便であり,作製後30日間安定な応答値を与えた.又,油水界面が直接試験溶液に接しないので,電極界面の安定性を向上させると共に,食品などの実用分析において高分子物質,固形物などの妨害を避けることができる.二,三の食品について試みたところ所期の結果を得た.
著者
佐藤 しのぶ 原口 和也 早川 真奈 冨永 和宏 竹中 繁織
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.437-443, 2017-06-05 (Released:2017-07-12)
参考文献数
26

テロメラーゼの触媒活性因子であるhuman telomerase reverse transcriptase(hTERT)遺伝子のプロモータ領域のメチル化パターンががんの進行と深くかかわっていることが報告されている.したがってこのプロモータ領域のメチル化パターンが検出できれば,がんの早期発見の手法として発展できると期待される.著者らは,hTERT遺伝子のプロモータ領域中の五つのCpGサイトを含む24塩基をターゲットとし,10種類のプローブDNAを有するマルチ電極チップを作製した.このチップを用いた電気化学的ハイブリダイゼーションアッセイ(Electrochemical hybridization assay, EHA)によってhTERT遺伝子のメチル化パターンによる口腔がん診断を試みた.ここでは,病院での簡易診断を目指して口腔がん,白板症,健常者から得られた口腔ぬぐい液を用いて,ゲノムを採取し,亜硫酸処理したのち,メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応(Methylation-specific polymerase chain reaction, MSP)を行った.得られたMSP産物をEHAにより評価したところ,サンプルのメチル化頻度とがんの進行度に相関が示された.白板症,健常者を含むすべてのサンプルからメチル化頻度の高いDNAプローブに対する電気シグナルのReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線を用いて口腔がんの正診断率を算出したところ,91% であった.
著者
神原 富民 高橋 玲爾 石井 猛
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.10, no.12, pp.30R-37R, 1961

最近のポーラログラフィーの進歩について特筆大書すべきことは,創始者のHeyrovsky教授が1959年度のノーベル化学賞を受けられたことである.第2回国際ポーラログラフ会議は1959年夏Londonで開催され,そのときのProceedingsはI.S.Longmuirの編集によりPergamon Pressから出版されたが,本総説に多数の交献が引用されているように,ポーラログラフィーの新しい傾向を知るのに,きわめて重要な存在である。英国のポーラログラフ学会の活躍も注目に値し,J.Polarographic Societyが刊行されており,日本では電気化学協会ポーラログラフ委員会が解散して,日本ポーラログラフ学会が生まれ,その活動は新段階に入ったが,その学会誌「ポーラログラフィー」には重要な論文が多い.特に強調すべきことは,舘教授を委員長とする原案作製委員会が作成した「ポーラログラフ分析法通則」の原案が発表されたことで,この通則はポーラログラフ分析上,いわば法的拘束力をもつものであり,またその解説もすぐれており,今回若干の修正をへてJIS K0111(1961)として採択された.このような標準化の作業は,学界,業界に貢献するところ大きく,今後とも関連分野において推進されることであろう.
著者
鈴木 康弘 杉田 律子 鈴木 真一 丸茂 義輝
出版者
日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.825-830, 1997
参考文献数
25
被引用文献数
7 14

ひき逃げ事件で重要な物的証拠となる自動車用フロントガラスの微細片について, これに含まれる微量不純物をICP-MSで定量し, 分析値の比較によるガラス片相互の異同識別を試みた.マイクロ波加熱分解装置を利用して, 5mg以下のガラス片を粉砕せずに迅速に分解する条件を検討した.分析操作は以下のとおりである。試料約10mgを精ひょうしでテフロン製密閉容器に移し, フッ化水素酸及び過塩素酸各0.5mlを加えた後, マイクロ波加熱によりガラス片を完全に分解した.これに硝酸2ml及び内標準として10μg/mlのPd溶液0.1mlを加え, イオン交換蒸留水で25mlに希釈して測定用試料溶液を調製した.異同識別に有効な不純物として, Co, Rb, Sr, Zr, Ba, La及びCeの7元素が検出された.本法によるNIST標準試料の分析値は, CoとZrを除いて保証値と良好な一致を示した.本法を実際のフロントガラスの分析に応用したところ, 同一試料内での分析値の変動は異なる試料間の差異と比較して十分に小さく, 分析値の比較はガラス片相互の異同識別に有効であった.
著者
甲斐 雅亮 坂本 靖浩 三浦 哲朗 大倉 洋甫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.329-332, 1986-03-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

A high performance liquid chromatographic method is described for the determination of antipain which is a protease inhibitor and also a possible therapeutic drug for muscular destrophy. Antipain was converted to the fluorescent derivative by reaction with benzoin, a fluorogenic reagent for guanidino group. The derivative was then determined on a reversed phase column with isocratic elution within 15 min by using fluorescence detector. The detection limit of antipain in mouse serum was 0.42μg/ml, which corresponds to the amount of 240 pg (400 fmol) in an injection volume of 100μ1 at a signal to noise ratio of 2. The calibration graph for the compound was linear up to at least a concentration of 30 μg/ml in the serum. The proposed method was simple, rapid and sensitive enough to permit the quantification of antipain in as little as 40 μl of mouse serum dosed with the compound.
著者
谷 英典
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.109-116, 2019-02-05 (Released:2019-03-05)
参考文献数
23

遺伝情報を担うDNA/RNAは,すべての生命体において最も基礎となる分子であり,生体試料中のDNA/RNAを分析する技術は医療・環境・食品分野等の幅広い分野において欠かすことのできない重要なツールとなっている.しかしながら,従来の手法には問題点が多いため,これらの問題点を克服する新規分析技術が望まれていた.本稿では,ある種の蛍光色素が核酸のグアニン塩基と相互作用することにより蛍光が消光する現象を利用した,DNA/RNA定量法の開発とその応用及びDNA/RNAに作用する酵素であるヘリカーゼ活性測定法の開発と,その応用について紹介する.さらには,近年著しく注目を集めているタンパク質に翻訳されないRNA: ノンコーディングRNA研究への研究を見据えた,修飾核酸を利用した次世代型の細胞内RNA生成・分解速度測定法の開発とその応用についても併せて紹介する.これらの分析技術を駆使することで,生体分子解析技術の応用及び複雑な生命現象への理解がより一層進むと期待される.
著者
高橋 忠伸 紅林 佑希 大坪 忠宗 池田 潔 南 彰 鈴木 隆
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.689-701, 2016-12-05 (Released:2017-01-12)
参考文献数
67

インフルエンザA型及びB型ウイルスや一部のパラミクソウイルスは,ウイルス受容体のシアル酸を糖鎖末端から切断する酵素「シアリダーゼ」を持つ.これらのウイルスの感染細胞上には,ウイルス遺伝子に由来するシアリダーゼが豊富に発現する.著者らが開発したシアリダーゼ蛍光イメージング剤「BTP3-Neu5Ac」は,シアリダーゼ活性の存在部位を組織化学的に蛍光染色する.BTP3-Neu5Acを利用することで,ウイルス抗体や細胞の固定化操作を必要とせずに,これらのウイルス感染細胞を簡便迅速に蛍光イメージングできる.さらに,インフルエンザ治療薬であるシアリダーゼ阻害剤をBTP3-Neu5Acと併用することで,薬剤耐性化インフルエンザウイルスの感染細胞を選択的に蛍光イメージングして,薬剤耐性化ウイルス株を高効率に単離することができる.本稿では,BTP3-Neu5Acを利用したウイルス感染細胞の蛍光イメージングについて概説する.
著者
村野 健太郎 水落 元之 鵜野 伊津志 福山 力 若松 伸司
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.32, no.10, pp.620-625, 1983 (Released:2010-01-18)
参考文献数
9
被引用文献数
4 2

ポリテトラフルオロエチレン濾紙を装着した連続サンプラーで関東地方上空の大気粒子状物質を捕集し,水溶性成分を抽出し,イオンクロマトグラフィーで分析した.上空には主に塩化物イオン,硝酸イオン,硫酸イオン,アンモニウムイオンが存在し, 5分間の短時間サンプリングで分析可能なため,地域的な汚染が明らかになり,光化学スモッグ発生の他のパラメーター,オゾンとの相関が議論できた.硝酸イオン,硫酸イオンは光化学反応によって生成するが,硫酸イオンはオゾンと正の相関があり,アンモニウムイオンも硫酸イオンの対イオンとなるため,オゾンと正の相関があった.イオンバランスの測定により,硫酸イオンが硫酸アンモニウムの形で存在することが明らかとなった.
著者
木下 英明
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.71-74, 2005 (Released:2005-04-08)
参考文献数
7
被引用文献数
1

The anodic steady-state current by a sulfhydryl compound in concentrations about 10 μM at a dialysis membrane covered phthalocyanine-embedded carbon paste electrode (mCoPCPE) completely vanished after the addition of N -ethylmaleimide (NEM) in double concentrations of the sulfhydryl compounds. The concentrations of reduced glutathione (GSH) in whole blood and serum were determined by measuring the current decrease at 150 mV after the addition of NEM in blood solutions of pH 6.8. This method has the advantage of eliminating the procedures for deproteinization. The correlation coefficients between the GSH concentration determined in this method and those by a spectrometric measurement were 0.98 and 0.90 for 10 whole blood and 15 serum samples, respectively
著者
佐々木 由比 南 豪
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.519-529, 2018-09-05 (Released:2018-10-04)
参考文献数
42
被引用文献数
1

ケモセンサはミクロな分子認識現象を,光学変化を使って読み出すことができる分子サイズのセンサであるが,天然由来の分子認識材料のような高選択性の実現は容易でない.ケモセンサアレイは,これまで欠点とされた人工レセプタの交差応答性を活用したセンシングシステムであり,パターン認識に基づいて多成分の同時検出が可能である.迅速かつ正確な検出を行える当該システムは有用であるが,その構築には,標的種に合わせて数多くのケモセンサを,有機合成化学的アプローチに基づいて作製していかなければならない.著者らは,合成的労力を軽減しながら,少ないケモセンサ数で多くの標的種の分析が行える手法の開発に取り組んでいる.すなわち,ケモセンサの分子内/分子間会合を巧みに制御し,程よい選択性と交差応答性を生み出すことで,たとえ体液や夾(きょう)雑物中に含まれる標的種の検出であったとしても使用可能なケモセンサアレイを提案している.簡易に作製されるケモセンサアレイは,多くの場面で有用な分析ツールとなり,超分子センサの実践応用に向けた第一歩となるであろう.
著者
梅沢 純夫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.8, no.7, pp.471-484, 1959-07-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
37

有機化合物の構造決定の古典的例を思いだしてみると,インジゴ(染料)の構造を決定したA. v. Baeyer (1883年)の輝かしい業績には約18年の歳月がついやされている.しかもなお,Baeyerの提出したシス-型の構造式は,X線分析による結果から訂正されてトランス-型の式におきかえられ(1928年),さらにR. Kuhn (1932年)1)は四極イオン式を提出し,これが一般に承認されることになった.この式が近時の電子説,共鳴の概念にもとづいて考究されたものであることはもちろんである.
著者
山本 淳 橋本 清澄 畑中 久勝 金田 吉男 大路 正雄 日笠 譲
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.T5-T9, 1979-02-05
被引用文献数
1

銅化カドミウムカラム還元法を用いて,水道水及び原水中の硝酸塩の日常分析を行うには,まず還元操作の迅速化が要求される.エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA,0.08%)及び塩酸(試薬特級の0.125mlを水でうすめて1lとしたもの)を含む溶液50mlで1日1回活性化すれば,繰り返し5回の試行で(96〜110)%の還元効率が得られた.この条件での硝酸態窒素(以後NO_3-Nと略記)の4及び20μgの添加回収率は(88〜105)%と良好であり,又定量精度のよいサリチル酸ナトリウム法に匹敵する精度を示した.この改良で,10本のカラムを用いると,1日50件の検査が可能となった.一方,カドミウム及び銅のみを含む実験排水の処理は,硫酸第一鉄七水和物30g/l1を用いて鉄共沈法でよい結果を得た.EDTA-重金属キレート含有排水処理には,硫化ナトリウム法及び過マンガン酸カリウム酸化-鉄共沈法を工夫して適用してみたところ,後者はより簡便であるうえ,カドミウム,銅,マンガン及び鉄の残存濃度が排水基準をはるかに下回る濃度にまで処理できた.
著者
小汲 佳祐 藤巻 康人 中川 貴文 松尾 豊
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.647-651, 2018-11-05 (Released:2018-12-07)
参考文献数
17

In organic semiconductor materials, investigating the energy levels is very important. For example, the combination of the donor’s and acceptor’s energy levels affects the performance of organic solar cells (OSCs). The HOMO and LUMO levels are generally determined by cyclic voltammetry or differential plus voltammetry, which require the solution state. However, these methods are influenced by the purity, solvent, solubility, vibration, and temperature. In this work, we employed photoemission yield spectroscopy and UV-vis-NIR spectroscopy in the thin-film state to measure the energy levels of magnesium porphyrin derivatives for OSCs. The results explained that the energy levels were correlated with a substituent introduced in the porphyrin core. In the case of electron-withdrawing substituent porphyrin, the HOMO and LUMO levels were lowest and the HOMO-LUMO gap was narrowest. On the other hand, electron-donating substituent porphyrin showed high-energy levels and a wide energy band gap. It is noteworthy that the energy levels were lower and the band gaps were narrower in the thin-film state compared with the solution state. This result explains that strong π-stacking derived from intermolecular interaction in thin films. We concluded that measurements of the energy levels in thin film state by PYS and UV-vis-NIR spectroscopy are beneficial for investigating organic semiconductor materials.
著者
平野 四蔵 貴家 恕夫 田淵 清
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.10, no.13, pp.1361-1367, 1961-12-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

X線回折計の工業分析化学への応用の一つとして,黄銅を硝酸に溶解し蒸発乾固して硝酸塩としたのち,400~500℃で熱分解し,これを900℃前後の温度に加熱して,酸化銅,酸化亜鉛の完全な結晶体とした.X線回折計によって再現性よく定量する方法について検討した結果,900℃で加熱して作った酸化物をメノウ乳鉢で約30分間粉砕して,回折線の強度として回折ピークの面積(半価幅×高さ)を用いると精度よく定量でき,分析値の再現性は±2%位であった.黄銅の標準試料の値と本法による定量値とはよく一致した.