著者
上澤 和也 上原 伸夫 伊藤 清孝 清水 得夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.867-872, 2001-12-05
被引用文献数
2 9

研究室で充填した自作カラム(4.6mm i.d.× 50mm)を用いるイオン対逆相分配高速液体クロマトグラフィーにより, 鉄及び鋼中の微量ホウ素を直接定量した.自作カラムはスラリー法によりHPLC用ODS(C_<18>)充填剤(粒径5μm)0.7gを充填して作製した.鉄鋼試料を塩酸-硝酸で分解し, リン酸と硫酸を加えて蒸発乾固した後, 希塩酸に溶解した.この分解溶液から適量を分取し, 7.5×10^<-3>mol dm^<-3> 1, 8-ジヒドロキシナフタレン-3, 6-ジスルホン酸(クロモトロープ酸)溶液2.5cm^3, 0.275mol dm^<-3>エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム溶液2.5cm^3及び0.5mol dm^<-3>臭化オクチルトリメチルアンモニウム溶液を含む1.0mol dm^<-3>酢酸緩衝液(pH4.8)2.5cm^3を加えてから水で25cm^3に定容とする.この溶液から200mm^3を自作カラムを装着した高速液体クロマトグラフに注入する.溶離液には5.0×10^<-2>mol kg^<-1>臭化オクチルトリメチルアンモニウム, 5.0×10^<-3>mol kg^<-1>リン酸緩衝液(pH8.0)を含む水-メタノールの混合溶液(45 : 55w/w)を用いた.検出波長を350nm, 流量を1.0cm^3 min^<-1>としてHPLC測定を行った.ピーク高さに基づく検量線はホウ素濃度が10^<-8>mol dm^<-3>レベルにおいて直線性を示し, 空試験値(n=5)の標準偏差の3倍と定義した検出限界(3σ)は1.3×10^<-9>mol dm^<-3>であった.本法を鉄鋼認証標準物質(日本鉄鋼連盟)等に適用し, 保証値あるいは参考値(0.2〜50ppm)とよく一致する定量値を得た.
著者
松本 嘉夫 白井 道子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.608-611, 1963-07-05 (Released:2010-05-25)
参考文献数
1
被引用文献数
3 1

ロ紙上でCr3+のスポットにフェロシアン化カリウム溶液(たとえば5%水溶液)を噴霧すると,噴霧直後は少しも呈色しないが約3時間後には顕著な黄色を呈し,それが数日間安定であり,また水溶液中においてもCr3+にフェロシアン化カリウムを加えると溶液の色調が徐々に変化し,3時間後には液は橙黄色を呈することがわかったので,ペーパークロマトグラフィーを用いてCr3+の定性分析を行なう方法を研究した.展開剤は田村らの研究による溶媒系を用い,呈色試薬として前記のフェロシアン化カリウムを用いてごく普通の陽イオンおよびCrO42-からCr3+を区別する実験を行なった結果,クロマトグラムの位置および呈色の相違を利用してCr3+を区別確認することができた.本方法によるCr3+の確認限界量は約5μgであり,クロム酸に変化させてジフェニルカルバジドで呈色させる従来の方法に比して感度においてやや劣るが操作は簡単,呈色は安定で信頼性がある.
著者
阿部 教恩 星野 仁 壹岐 伸彦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.493-499, 2015-07-05 (Released:2015-08-05)
参考文献数
25
被引用文献数
2

チアカリックス[4]アレーン-p-テトラスルホン酸(TCAS)は,pH 6.5付近の水溶液中でTb(III)とほとんど錯形成しないが,TCASの架橋硫黄と親和性の高いCd(II)を加えると,自発的にCd2Tb2(TCAS)2錯体を形成しエネルギー移動発光を示す.そこで本錯体の形成を用いCd(II)の発光定量法を開発した.Cd(II)の検出限界(S/N=3)は2.08 nM(0.23 ppb)という良好な値であった.さらに,本法を米試料中Cd定量へ適用した.酸分解後の米試料に含まれるリン酸イオンはキレートディスクによって除去,また,Cu(II)はイミノ二酢酸によってマスキングし,妨害を除去した.前処理,定量操作を行ったときのCd検出限界は,1 gの米試料を分解して本操作を施したとすると米中12.2 ppbのCdに相当する.これは国内基準値0.4 ppmと比べ十分に低い値である.実際に,認証値(Cd: 0.548 ppm)付きの米標準試料を測定したところ0.564 ppmという良好な結果が得られた.
著者
芦沢 峻 春山 慣二 長沢 規矩夫 森本 良雄
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.11-16, 1964
被引用文献数
4

ポロニウム(<SUP>210</SUP>Po)を1<I>N</I>硝酸溶液からジチゾン四塩化炭素溶液で抽出後,有機相に濃硝酸を加え,蒸発分解する.硝酸溶液を測定ざら上で蒸発乾固する.ガスフロー比例計数装置またはガイガーミュラー計数装置を用いてアルファー放射能を測定する.ピッチブレンドを標準にして試料中のポロニウムを定量する.ポロニウムの抽出条件を酸性,アルカリ性溶液で検討した.多量の銅,水銀,ビスマス,テルルなどからの抽出法を確立した.塩酸より硝酸,硫酸溶液から抽出するほうがよい.放射能測定効率,抽出率,蒸発乾固などに伴うバラツキを測定した.分析結果の変動係数は10%であり,分析所要時間は2時間である.
著者
応和 尚 日色 和夫 田中 孝
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.878-883, 1972-07-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3 4

海水中のppbオーダーのカドミウムの原子吸光定量法を確立した.海水中の微量カドミウムを濃縮するため,第1段階には共沈濃縮法を,第2段階には溶媒抽出法を採用した.海水試料2lに塩化ストロンチウムと炭酸アンモニウムを加えてカドミウムを炭酸ストロンチウムとともに共沈させたのち,沈殿を炉別洗浄後,塩酸に溶かし,pHを7に調節してジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(DDTC)を加えメチルイソブチルケトン(MIBK)で抽出し,有機相の原子吸光測定を行なう.マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウムの炭酸塩でカドミウムの共沈を検討し,カドミウムの共沈濃縮には炭酸ストロンチウムが最適であり,溶液量100mlに対し100mgのストロンチウム量で,その回収率はほぼ100%であった.カドミウムの原子吸光定量に対し,ストロンチウムの妨害は最も小さい.炭酸アンモニウムの使用量としては,溶液100mlにつき20%溶液5mlを採用した.炭酸ストロンチウムの沈殿の洗浄法は温水で3回がよく,沈殿の溶解法は,濾紙をビーカー内壁に広げ希塩酸で沈殿を洗い落とし,濃塩酸で溶解する方法が最良である.沈殿を溶解した塩酸溶液,およびこの溶液からDDTCとMIBKで抽出した有機相について検量線を作成したところ,最初の溶液量2l中のカドミウム濃度それぞれ10~100ppb,および1~10ppbの範囲内で直線の検量線が得られた.後者の場合の感度は,吸光率1%あたりの濃度として0.1ppbである.大量の塩化ナトリウムの存在は検量線作成に影響を与えない.炭酸ストロンチウムの沈殿を塩酸に溶解させ,アンモニア水で中和するとき,pH 8以上になると白沈が生成する.この沈殿生成は緩衝溶液を用いてpHを7に調節することによって防止できる.本法で模擬海水中の0.5~8.0ppbのカドミウムを定量し,回収率はほぼ100%であった.また瀬戸内海と日本海の海水実試料中のカドミウムを定量し,約0.1~10ppbの値を得た.本法によって大量の海水試料中の微量カドミウムを効果的に短時間内に濃縮し,高感度で定量することができる.
著者
安井 隆雄 馬場 嘉信
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.413-419, 2015-06-05 (Released:2015-07-07)
参考文献数
27
被引用文献数
4

ナノバイオデバイスによる単一分子・単一細胞計測技術の開発が,従来の発症後診断・治療に基づく医療から発症前診断・発症予測に基づく予防・先制医療へとパラダイムシフトを起こしている.本稿では,ナノバイオデバイスのうち,ナノピラー,ナノボール,ナノファイバー,ナノワイヤを用いた単一デオキシリボ核酸(DNA)解析,量子ドットによる単一細胞解析とiPS細胞再生医療のための量子ドットin vivoイメージングの成果について解説する.
著者
橋詰 源蔵 萩野 友治 小林 正光
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.287-292, 1958

縮合リン酸塩のうちとくに無定形物質を含みやすいもの,すなわちNaPO<SUB>3</SUB>-Na<SUB>5</SUB>P<SUB>3</SUB>O<SUB>10</SUB>系のX-ray Diffractometer(X線回折計)による定量分析法を検討した.<BR>NaPO<SUB>3</SUB>-Na<SUB>5</SUB>P<SUB>3</SUB>O<SUB>10</SUB>系では,無定形状態のものを加熟処理することにより結晶性のNaPO<SUB>3</SUB>とNa<SUB>5</SUB>P<SUB>3</SUB>O<SUB>10</SUB>の混合物が得られ,その結果組成を内部標準物質法(Internal Standard Method)で決定することにより原試料の推定あるいは晶質管理の一手段とするものである.<BR>結晶形は安定性,処理の容易さ,回折線の強度などを考慮してNaPO<SUB>3</SUB>(I)およびNa<SUB>5</SUB>P<SUB>3</SUB>O<SUB>10</SUB>(I)を選び,したがって加熟処理は500~550℃でおこない,また標準物質(Intemal Standard)としては,あまり適当なものとはいえないがCaSO<SUB>4</SUB>・1/2H<SUB>2</SUB>0をもちいた.測定値の再現性は±5%程度であった.加熱処理時間を検討した結果,NaPO<SUB>3</SUB>(I)は結晶化速度が大凄く,500℃1時間程度で十分な精度を期待で選るが,Na<SUB>5</SUB>P<SUB>3</SUB>O<SUB>10</SUB>(I)は2時間以上,とくにその量が少ないほど長時間加熟することの必要性をみとめた.なお二,三の実例について応用し興味深い結果を得た.
著者
高瀬 つぎ子 高貝 慶隆
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.521-526, 2013-06-05 (Released:2013-06-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

The nuclear accident of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station scattered radioactive cesium, following the Tohoku earthquake on March 11, 2011. In the present work, alternative radioactivity data obtained from NaI(Tl) scintillation analyzers and a Ge semi-conductor detector were compared and evaluated with respect to the correlation of those values, the accuracies and the sensitivities using as an actual agricultural product, brown rice which was contaminated by Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident.
著者
小川 禎一郎
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.201-207, 1993-04-05
参考文献数
25
被引用文献数
3 2

レーザー多光子イオン化法により吸光性分子を選択的にイオン化し, 電気電導度測定により高感度に検出することができる.溶液中や固体表面の吸光性試料にレーザーを集光照射して多光子イオン化の機構を調べ, それをもとに分析手法の最適化を行った.無極性溶媒中の吸光性分子の超高感度分析ではpptレベルの検出感度を得た.固体表面での光イオン化では単分子層の1%程度の検出感度を得た.液表面を利用すれば極性溶媒についてもpptレベルの検出感度が得られる.この手法は高速液体クロマトグラフ検出器としても利用できることを示した.これらの結果よりレーザー多光子イオン化法が有用な機器分析法であると結論した.
著者
吉田 勤 内山 茂久 武口 裕 宮本 啓二 宮田 淳 戸次 加奈江 稲葉 洋平 中込 秀樹 欅田 尚樹
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.55-63, 2015-01-05 (Released:2015-01-31)
参考文献数
14

Gaseous chemical compounds such as carbonyls, volatile organic compounds (VOC), acid gases, basic gases, and ozone were measured in indoor and outdoor air of 40 houses throughout Sapporo city in the winter (January to March, 2012 and 2013) and summer (July to September, 2012) using four kinds of diffusive samplers. Almost all compounds in indoor air were present at higher levels in the summer than in the winter. The indoor concentrations of acetaldehyde and p-dichlorobenzene exceeded the Health, Labour and Welfare, Japan guideline in three and two houses, respectively. The mean concentrations of formaldehyde were 27 μg m−3 in the summer and 17 μg m−3 in the winter, and showed that the summer concentration was 1.6-fold higher than that in the winter. Nitrogen dioxide was present in extremely high concentrations in the winter, and it was suggested that the sources of nitrogen dioxide in indoor air are kerosene heaters, unvented gas stoves and heaters. Formic acid was generated by combustion because the nitrogen dioxide concentration in indoor air was well correlated with the formic acid concentration (correlation coefficient = 0.947). In outdoor air, the negative correlation between nitrogen dioxide and ozone was observed during the winter. It was suggested that the reaction of nitric oxide and ozone may influence the formation of nitrogen dioxide.
著者
吉村 長蔵 藤野 隆由^[○!R]
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.48-53, 1984-01-05
被引用文献数
1 2

ヘキサフルオロケイ酸とN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)との固体付加物を標準試薬として用い,モリブデンの非水雷緯度滴定を検討した.DMF中における滴定曲線には,モリブデン(VI):H_2SiF_6=2:1と1:1のイオン対生成反応と考えられる結合比に明りょうな屈折点が得られ,モリブデン(VI)の直接滴定が可能である.併せて,弧光光度法でも2:1の結合比の反応点が得られた.又,実際分析への応用として二硫化モリブデンを合む潤滑油を対象にして,電導度滴定を行った結果,迅速にモリブデンの定量ができた.
著者
鈴木 雅登 安川 智之 珠玖 仁 末永 智一
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1189-1195, 2005-12-05
被引用文献数
2 10

微生物の膜損傷に起因した生死状態に基づき分離が可能なチップデバイスを作製した.微生物に作用する誘電泳動力の差を利用し, 生菌の捕捉(そく)と膜損傷を与えた菌の排出を行った.微生物分離チップは凹凸を有するバンドを配列させたcastellated型の透明電極(ITO)基板, 直線流路パターン(幅2mm, 長さ35mm)を有したシリコンスペーサ, 入口と出口を備えたアクリル板から構成されている.無処理の大腸菌と熱処理した大腸菌をLive/Dead蛍光染色し, 200mMスクロース水溶液中に混合させた.大腸菌を流量440μm/sでチップへ導入し, 挙動を蛍光顕微鏡で観察した.ITO基板に正弦波(100kHz, 20 Vpeak-peak)を印加すると, 大腸菌に正の誘電泳動が作用し電極間に捕捉された.周波数を7MHzに切り替えると, 死んでいる大腸菌への正の誘電泳動力が弱まり, 電極から解放されチップから排出された.このチップを利用すると簡便で迅速な大腸菌の生死分離ができる.
著者
森 定雄 高山 森 後藤 幸孝 永田 公俊 絹川 明男 宝崎 達也 矢部 政実 高田 かな子 杉本 剛 清水 優 長島 功 長谷川 昭 仙波 俊裕 大島 伸光 前川 敏彦 杉谷 初雄 大関 博 中橋 計治 日比 清勝 大谷 肇 中村 茂夫 杉浦 健児 田中 鍛 荻原 誠司 勝野 保夫 大久保 哲雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.95-101, 1996-01-05
被引用文献数
10 6

SEC専門部会傘下26測定機関でサイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の分子量の共同測定を行った.試料はポリスチレン(PS)4種類, ポリメタクリル酸メチル(PMMA)2種類である.較正曲線作成用標準試料を配布し, 試料溶液の濃度, 注入量を規定するとともに, クロマトグラムベ-スラインの引き方を統一し, 又較正曲線は3次近似とした.その結果, かけ離れた数値を棄却した場合の相対標準偏差(RSD)はPSでは数平均分子量で13.7〜15.8%, 重量平均分子量で5.0〜5.8%.PMMAではそれぞれ11.9〜13.3%, 10.9〜11.3%であった.前回のラウンド口ビンテストと比較し, RSDが改善された様子は認められなかったが, 測定条件の不備による, 大きくかけ離れたデータがなくなった意義は大きい.RSDが改善されなかった理由の一つはベースラインに引き方の統一が完全でなかったことである.異なる検出器を使用した場合, 又異なるメーカーの標準試料を用いた場合, RSDが大きくなるようである.
著者
藤野 治 松井 正和
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.241-246, 1982-05-05
被引用文献数
1

炭素チューブをアトマイザーに用いたときのイッテルビウムのフレームレス原子吸光分析について基礎的検討を行いリン酸塩鉱物へ適用した.本法により検量線を作成した結果(10〜40)ppbの範囲で直線となった.一酸化二窒素-アセチレン炎に比較し,感度は約150倍高いことを示した.又共存塩類はイッテルビウム(35ppb)の(10^2〜10^3)倍にかけてほとんどの元素が干渉を示さなかった.しかし高濃度のカルシウムとリンが同時に共存すると,イッテルビウムの原子化速度は速くなり.ピーク吸光度が増大した.ゼノタイムやモナズ石試料は硫酸に溶解,希釈し,そのまま炭素チューブアトマイザーに入れて直接定量を行った.得られた含有値は誘導結合高周波プラズマ(ICP)発光分光分析による結果と極めてよく一致した.又アパタイト鉱物は硝酸に溶解後,10M過塩素酸において,0.1M ジ-2-エチルヘキシルリン酸-シクロヘキサン系で抽出分離し,有機相中のイッテルビウムを測定,定量した.
著者
原 茂樹 松尾 博 熊丸 尚宏
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.503-507, 1986-06-05
被引用文献数
2 3

金,白金をクロロ錯イオンとした試料溶液にヨウ化カリウム溶液並びにテトラデシルジメチルベンジルアンモニウム(ゼフィラミン)溶液を加えると,金(III),白金(IV)はそれぞれヨード錯イオンとしてゼフィラミンとイオン対を形成し,クロロホルムによって定量的に抽出される.この溶媒抽出系を利用する金,白金の同時黒鉛炉原子吸光定量法について検討した.水相/有機相の体積比(V_w/V_o)が15ml/2mlの場合,水相中のヨウ化カリウム濃度を0.06〜0.25M,又,ゼフィラミン濃度を5×10^<-4>〜4×10^<-3>Mに保てば,金(III)又は白金(IV)は4M塩酸酸性からpH11付近までの検討範囲において定量的に抽出される.検量線は水相中の金(III)の濃度が1.0μg/15ml(67ng/ml),白金(IV)の濃度が20μg/15ml(1.3μg/ml)までの簡囲で直線性を示し,1%吸収感度は金について0.21ng/ml,白金については7.9ng/mlであった.金(III)を0.25μg,白金(IV)を10μg含む水相について10回の繰り返し実験によって求めた相対標準偏差は金について2.3%,白金については2.4%であった.金(III)に対する銅(II)の干渉は抽出時に水相中に1,10-フェナントロリンを添加することにより,又,白金(IV)に対するクロム(VI),マンガン(VII),ヨウ素酸,過ヨウ素酸の各イオンの干渉はヒドロキシルアンモニウムの添加により,それぞれ除去することができた.本法を銀-白金-金合金試料中の金,白金の定量に応用し,満足な結果を得た.
著者
高尾 雄二 李 虎哲 有薗 幸司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.589-593, 1999-06-05
被引用文献数
6 12

水中の内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)を簡便かつ高感度に分析することを目的とし, 同相マイクロ抽出(SPME)法とオンカラムシリル化法を組み合わせた手法を試みた. 水中のビスフェノールA(BPA)をSPMEファイバーに吸着させた後, GCの気化室内でBPAを脱離させカラム先端部に濃縮した. 続いて, ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)をマイクロシリンジで注入し, BPAをシリル化し, MS検出器で検出した. オンカラムシリル化した場合には通常のSPME法と比較して, 目的物質のシリル化体のピーク面積は20倍程度に増大し, 高感度に検出できることが分かった. 但し, 測定の度にSPMEファイバー固定用のエポキシ樹脂からBPAが極微量脱離するため, 定量限界は1ppbと以前報告した通常のSPME法と同レベルであった.
著者
長尾 誠也 鈴木 康弘 中口 譲 妹尾 宗明 平木 敬三
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.335-342, 1997-05-05
被引用文献数
22 18

天然水の腐植物質は微量元素及び疎水性有害有機物のキャリヤー又はトリハロメタンの前駆物質と考えられている.天然水をグラスファイバーフィルターで濾過後, 三次元分光蛍光光度計により腐植物質の蛍光特性を測定する方法の妥当性を検討した.天然水の化学特性のうち, 腐植物質の蛍光スペクトルに影響を及ぼす腐植物質濃度, pH及びイオン強度について検討した結果, 陸水(腐植物質濃度0.5〜10mgl^<-1>, pH6〜9,イオン強度0.04M以下)及び海水(イオン強度0.75M)に適用可能であることが分かった.本測定法を河川水, 湖水, 湖底及び海底たい積物間げき水に適用した結果, これらの天然水腐植物質の三次元励起-蛍光スペクトルには, 土壌フルボ酸に相当するピークが検出された.
著者
高 雲華 本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1065-1082, 1996-12-05
被引用文献数
16 11

水溶液でのイオン性界面活性剤の定量について研究した.発色反応試薬系としては, 酸性染料のテトラブロモフェノールフタレインエチルエステル(TBPE), 陰イオン性アゾ染料のメチルオレンジ系及びフェニルアゾフェノール系試薬について検討した.これらの試薬陰イオンを用いて陽イオン界面活性剤とのイオン会合定数及び陽, 陰イオン界面活性剤間のイオン会合定数を求め, 反応性について考察した.これらのイオン会合反応に基づき, バッチ法による吸光光度定量, フローインジェクション吸光光度定量, 光度滴定について検討した.特に新しい試みとして, イオン会合滴定法について詳細な検討を行った.イオン会合滴定における滴定曲線を, 試料イオンと滴定イオン間のイオン会合定数, 指示薬とのイオン会合定数を用いてシミュレーションし, 微分による滴定終点と当量点との整合性について考察した.本滴定法では, 10^<-6>Mまでの陽イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤が定量できる.又, 実際試料の滴定結果は二相滴定法のJIS法及び溶媒抽出吸光光度法とよく一致した.
著者
芳本 有史 西本 ゆかり 石原 千津子 川崎 英也 荒川 隆一
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.95-100, 2009-02-05

高速液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)を用いて分析を行う際に,様々な汚染物質のイオンが検出される場合がある.このことは,LC/MSの高精度な定性・定量分析を困難にする.汚染物質の混入を防ぐには,汚染物質の同定とそのイオンの出所を知っておく必要がある.今回,著者らはLC/MSで使用するバイアルとセプタム,そして濾過用膜フィルターに着目した.LC/MS及びMS^n分析により,幾つかの汚染物質を同定し,その原因を特定した.