著者
山川 祥秀 清水 均 櫛田 忠衛
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.454-460, 1982 (Released:2007-07-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

‘甲州’ブドウの昭和55年の味なし果と健全果について, 果実の粒径及び粒重と, 主要成分である糖と酸の経時的変化を調べて, 次の結果を得た.1. 味なし果の粒径と粒重の増加曲線は成熟過程中, 健全果とほとんど同じ形を示した. ただし, 味なし果の方が粒径, 粒重ともに終始わずかに大きい値を示した.2. 味なし果の糖度は9月初めの着色の時期までは健全果と全く同じ上昇を示したが, その後は上昇が止った. 健全果はその後も順調な上昇を示し, 収穫期には18~19%まで上昇し, 味なし果との差は6~7%に達した.3. pH の変化については, 味なし果はゆっくりとした直線的な上昇傾向を示したが, 健全果は典型的なS字曲線を示した.4. 還元糖は幼緑果期を除けば上記糖度の場合と同様であった.5. 滴定酸度は8月上旬に味なし果で5.00g/100ml, 健全果で5.15g/100mlの最高に達し, 以後急減して, 収穫期には逆転し, 味なし果0.95g/100ml, 健全果0.86g/100mlとなった.6. ブドウ糖と果糖の総量の変化は還元糖の場合と同様であったが, 収穫期に味なし果ではブドウ糖5.2%, 果糖5.7%, 健全果ではブドウ糖8.4%, 果糖9.4%となった. また, G/F値は成熟初期は1で, 9月初めになって1を割り, 収穫期に味なし果で0.92, 健全果で0.89となった.7. 酒石酸とリンゴ酸の総量の変化は滴定酸度の変化と同様であったが, 成熟初期では酒石酸よりもリンゴ酸が多く, 両酸とも味なし果の方が健全果よりも少なかった. しかし, 収穫期にはリンゴ酸よりも酒石酸が多く, 味なし果では健全果よりわずかにリンゴ酸が多く, 酒石酸は少なかった. また, 結合型の酸の割合を計算し, 味なし果で17.4%, 健全果で24.6%の値を得た.‘甲州’の味なし果樹の外見的生育経過と収穫量は健全果樹とほとんど違いはなく, 強いて言えば, 味なし果実の方がわずかに着色が劣る程度であった. しかし, 成分的には味なし果の言葉が示すとおり, 糖分が極端に低く, 酸が高く, ‘水っぽい’ものであって, この変化は着色の始まる9月になって突然に起こるものである.
著者
和田 光生 池田 英男 松下 健司 神原 晃 平井 宏昭 阿部 一博
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.51-58, 2006 (Released:2006-02-21)
参考文献数
32
被引用文献数
7 22

トマトを 2 月から 8 月まで毎月10日に播種し,NFT ベッドで一段栽培した.一番花開花10日後より遮光率 0%(対照区),30%(弱遮光),55%(中遮光)および83%(強遮光)の寒冷紗で被覆することによって遮光処理を開始し,果実の収量と品質を調査した.7 月から 9 月までは給液する培養液を25℃に冷却した.7 月から 9 月までは給液する培養液を25℃に冷却した. 遮光率が増加するにつれて,1 果重が減少して全果実収量は低下した.全果実収量は播種月ごとに果実発達期の平均日積算日射量によって直線で回帰された.回帰分析の結果から,果実発達期の平均気温が19℃から27℃に高まった場合,平均日積算日射量 1 MJ・m−2 の減少に伴う収量低下量は,84から100 g/株に増加することが示された.対照区の可販果収量は 2 月播種で最も高く,4 月から 7 月播種では裂果の発生によって有意に低下した.裂果の発生は遮光によって有意に抑制された.平均気温が25℃を超えた場合には,日平均積算日射量を 5~6 MJ・m−2 程度まで低下させる遮光によって,可販果収量は増加する効果が認められた.夏季高温時に収穫される果実は滴定酸含量が高かった.遮光によって,果実の糖度は低下し,滴定酸含量は増加する傾向が認められた.
著者
松原 陽一 苅込 卓也 生田 稔 堀 廣孝 石川 枝津子 原田 隆
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.297-302, 1996-09-15
被引用文献数
2 7

リンゴ苗の育成におけるarbuscular菌根(AM)菌[<I>GtσmusetZtnicαtum</I>(GE)および<I>GigasPoramargaritα</I>(GM)]の利用について検討するため,リンゴ(iN4aluspttmitaMill,var.dom.esticaSchneid.)の8品種('旭','祝,紅玉','ゴールデンデリシャス','スターキングデリシャス','ふじ','陸奥','幽レッドゴールド')およびミツバカイドウ(MαttcssieboldiiRehd.)の実生の生長に及ぼすAM菌接種の影響について調査した.<BR>接種8週間後,AM菌の感染は全ての品種•菌種の組合せにおいてみられた.リンゴの9品種における感染部位率(1個体の根系における感染部位の割合)は,GE接種区では31.7%('ゴールデンデリシャス')-50.5%('紅玉')に達し,GM接種区では24.0%(ミツバカイドウ)-50.7%('スターキングデリシャス')となった.GE感染個体では,草丈,地上部および根の乾物重は,全ての品種において無接種個体のそれを大きく上回った.GE感染個体では,ゴールデンデリシャス'およびミツバカイドウを除く他のものにおいて,それらの値が無接種個体を大きく上回った.両菌種において,共生関係成立による生長促進効果は'旭で最も大きく現れた.感染植物体の地上部および根におけるリン濃度は,菌種に関わらず,無接種個体のそれより顕著に高かった,この場合,その差は地上部より根において大きかった.<BR>このように,AM菌(GEおよびGM)の感染および共生関係成立による植物体生長促進効果が数種リンゴの実生において認められたことから,リンゴ苗の育成過程において,AM菌接種による健苗の育成が期待される.
著者
中村 俊一郎 寺西 武夫 青木 美珠代
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.461-467, 1982
被引用文献数
3 8

セルリー種子の発芽促進に対するベンジルアデニン(BA), ジベレリン(GA<sub>3</sub>又はGA<sub>4</sub>)及びポリエチレングリコール(PEG)6000溶液処理の効果を調査した. またホウレンソウ種子ではPEG処理の発芽促進効果とともに, 処理後の乾燥貯蔵の可能性を調査した.<br>1. セルリー種子は20°Cを越えると発芽率が低下した. 発芽促進剤としてはBAが有効で, GA<sub>4</sub>も効果があるが, GA<sub>3</sub>は無効であった.BAとGA<sub>4</sub>とを併用すると最も有効であった.<br>2. セルリー種子はPEG処理によって発芽速度が早まり, 又25及び30°Cでの発芽率が上昇した.<br>3. 処理期間は7日間でも大きな効果が見られたが, 14日間処理すれば効果は更に増大した.<br>4. 処理温度は, 種子ロットによって, 15°Cが好適な場合と, 20°Cが好適な場合とがあった.<br>5. PEG処理中に光線を与えることによって, 処理効果が増大した.<br>6. PEG溶液中にBAを加えることによって処理効果が増大した. しかしGA<sub>4</sub>を加えても効果の増大は見られなかった.<br>7. ホウレンソウ種子もPEG処理によって発芽速度が早まり, 30°Cでは発芽率も増大した.<br>8. ホウレンソウ種子をPEG処理後, 7日ないし14日間貯蔵した時, 発芽率の低下は見られず, 発芽速度の減少も僅少にとどまった.
著者
渡邉 慎一 中野 有加 岡野 邦夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.725-732, 2001-11-15
被引用文献数
6 7

ガラス温室内でスイカを土耕栽培し, 立体栽培および地ばい栽培における個体当たりの総葉面積と果実重の関係について検討した.1. 'ハニー・シャルマン', '吉野', '早生天竜'の3品種を用いて仕立て本数を1本または2本として立体栽培(3月播き6月どり栽培)を行ったところ, いずれの品種においても個体当たりの総葉面積と果実重の間には高い正の相関関係が認められた.2. '早生天竜'を用いて仕立て本数1&acd;3本で立体栽培および地ばい栽培(8月播き11月どり栽培)を行ったところ, 立体栽培, 地ばい栽培のいずれにおいても個体当たりの総葉面積と果実重の間には高い正の相関関係が認められた.3. 立体栽培と地ばい栽培を比較すると, 個体当たりの総葉面積が同じ場合でも, 立体栽培区の果実は地ばい栽培区より明らかに小かった.4. 果実糖度に対する誘引法や個体当たりの総葉面積の影響は小さかった.5. 以上の結果, スイカの果実重は基本的に個体当たりの総葉面積によって決定されるが, それに加えて受光態勢も関与していることが示唆された.
著者
吉村 不二男 川村 容三
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.47-54, 1960

1. 1955年および1957年12月から翌年3月中旬までの間に一定期間ずつ順にモモ(岡山早生)の幼苗をガラス室に搬入し,或はモモ(岡山早生)およびカキ(平核無)の幼苗をビニールで覆い,人為的に昼間(午前8時30分~午後4時30分,8時間)のみ高温に遭わせ,春季の展芽,伸長,生育の状況を比較観察した。因みにその場合,気温は自然状態にくらベて日最高気温で10.0~13.3°C高かつた。なお別に日陰においた区(昼間の気温で自然状態より2.0~4.0°C低い)および1月上旬に5日或は7日間低温処理(-1~0°C)した区を設けた。<br>2.冬季の昼温の高低はモモの自発休眠の完了を妨げ或は促がす,殊に昼高温の発生する時期が初冬であると,自発休眠が不完全になり易く,晩冬であると展芽,伸長が促がされ生育がよい。また1月に5日或は7日間低温処理するとその自発休眠の完了が促がされ,春季の生育が著しくよくなる。なお昼夜を通じて行なう温暖処理(8~16°C)は昼間のみ高温で温暖処理(22~26°C)するよりも自発休眠を不完全にする程度が著しい。<br>3. カキでは冬季間の昼温の高低がその自発休眠の完了を妨げも促がしもしない。しかし昼温が高いと,頂部の1~2芽が枯死して春季にそれ以下の芽が展芽するが,発芽後の生育は至極旺盛である。また1月に7日間低温処理するとその生育が抑制される。<br>4. 従つて高知ではモモにとつて12月, 1月の昼温はやや高過ぎ,夜温も常時低いことが望ましい。しかしカキにとつて冬季の気温は不適当とはいえない。
著者
村上 賢治 木村 学 松原 幸子
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.773-778, 1995
被引用文献数
2 2

サトイモ (<I>Colocasia esculenta</I> Schott) 品種'えぐいも'のカルスから単離したプロトプラストの培養および植物体再生技術を開発した.<BR>1. プロトプラスト培養の材料に適した柔らかいカルスは, 黄化茎の切片を30g•liter<SUP>-1</SUP>ショ糖, 2mg•liter<SUP>-1</SUP>,4-D+2mg•liter<SUP>-1</SUP>2ipおよび2g•liter<SUP>-1</SUP>ジェランガムを添加したMS培地で培養することにより誘導した. このカルスは, 同組成の新しい培地に継代培養すると増殖を続けた.<BR>2. プロトプラストは, カルスを振とう培養して得られた懸濁培養細胞を酵素処理することにより, 容易に単離された. 酵素液の組成は, 1g•liter<SUP>-1</SUP>ペクトリアーゼY-23+5g•liter<SUP>-1</SUP>セルラーゼオノズカRS+5mM MES+5mM CaCl<SUB>2</SUB>•2H<SUB>2</SUB>O+0.5Mマニトールとした.<BR>3. プロトプラストの培養は, 1/2濃度のMS無機塩, Kao and Michayluk (1975) の有機物に, 種々の濃度のNAA, BA, 2ip, 0.1Mグルコースおよび0.3Mマニトールを添加した液体培地で行った. これらのうち2mg•liter<SUP>-1</SUP>BAを添加した培地でプロトプラストを培養すると多くのコロニーが形成された.<BR>4. プロトプラスト由来のコロニーを0.2mg•liter<SUP>-1</SUP>NAA+2mg•liter<SUP>-1</SUP>BAを添加したMS固体培地 (2g•liter<SUP>-1</SUP>ジェランガムで固化) に移植すると,コロニーからカルスが形成され, 同組成の培地でさらに継代培養すると苗条が再生した. この苗条を切取り,ホルモン無添加のMS固体培地 (2g•liter<SUP>-1</SUP>ジェランガムで固化) で培養すると発根した.<BR>本研究で開発されたサトイモのプロトプラスト培養技術は, 今後再分化率の向上などを図ることによって,細胞融合や遺伝子導入を利用した新品種育成のための,有効な基礎技術となり得ると考えられた.
著者
萩屋 薫
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.81-86, 1952
被引用文献数
2

(1) すいりの生理機構を明かにするため二十日大根を用い肥大生長に伴うすの發現經過を調査した。<br>(2) すの發現は肥大した大根に於て通導組織に遠い部分の木部柔組織の大形細胞に先ず糖の消失が見られ, ついでそのあたりの細胞に破生的及び離生的に生じた組織空洞が發現し, それが次第に擴大されてすとなる。すは木部柔組織に限られてあらわれる特徴を持つている。<br>(3) 根身内の可溶性物質の含量を中心部, 周縁部, 中間部について調査したるに, 一般にすの入つた部分の柔組織は他の部分に比してそれが低くなつており, 又全般的にすの甚しいものほどその含量が低下している事が認められた。<br>(4) すは葉長•葉數•根重•根徑等が急激に増加しT/R 率は低下し, のちこれ等が略一定に落付いて來た前後に發現し, 又この時期には柔組織の細胞の大さやその數が最大點に達し, 可溶性物質の含量は最低を示す。然してすは發現し始めると短期間に或限度まで急速に進行するがそれ以後はあまり増加しない。<br>(5) すの甚しいものは大體根重•根徑が大なる個體に多く, T/R 率が大なるものはすの發現が少い。又すの入つたものは柔組織細胞の數や大さが大きい。<br>(6) すの發現の第一歩は當該部柔組織細胞の老化にあると考えられ, それは主として根の肥大に伴う急激な細胞の生長によりその内容物の含度が低下し, 加うるに通導組織からの養分補給に支障を來たし一種の饑餓状態になるためと考えられる。
著者
高野 泰吉
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.152-157, 1966
被引用文献数
1

本実験はすいり発生経過について生理解剖的変化を観察した。<br>TTC 反応による肥大根組織の活力診断によれば, 道管列から離れた部分に生理的活性の低い細胞分裂能力を失なつた巨大柔細胞が存在する。すいりが進行するにつれて, 換言すれば組織の老化にともなつてTTC反応も弱まる。「す」の発現が肉眼的にみとめにくいとき, TTC反応ですいり始めを見いだすことができる。<br>すいりの発生経過は生理的活性が弱まり, 中葉ペクチンの脱エステル化や低分子化がおこり, 蛋白様物質の変成や分解も関与して, 離生的に間隙を形成し, それが拡大されて「す」となる。<br>これらの解剖的観察においてTTC反応による組織の活力診断のほか, ヒドロキシラミン-鉄反応によるペクチン質の存在形態の判別と位相差顕微鏡による微細構造の観察とは従来の知見に見解を付加することに大変役立つた。
著者
伊藤 三郎 松尾 友明 飯伏 雄二 玉利 信人
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.107-113, 1987
被引用文献数
1 4

熱帯•亜熱帯性果実の有効利用を目的としている一連の研究の中で, グアバの葉•果実に多く含まれているポリフェノールの消長と特性を検討した.<br>1. ポリフェノールの消長を調べる目的には, Peri とPompei の分別定量法による分析が有用であることが分かった.<br>2. グアバの幼果は100g当たり約600mgの総ポリフェノールを含むが, その約68%は縮合型タンニンが占めていた. また, 果実の生育に伴って急激に減少することが明らかとなった.<br>3. プロアントシアニジン量も果実重の増加とともに顕著に減少した.<br>4. GPC分析により, 高分子ポリフェノールが主に減少することが分かった.<br>5. グアバ葉 (8月3日採取のもの) には, 果実に比べて約10倍量のポリフェノールが含まれていたが, その84%が縮合型タンニンであった.<br>6. HPLCにより, 幼果と成葉の抽出物より (+)-カテキンと (+)-ガロカテキンを同定した.<br>以上の結果から, グアバの幼果及び葉に含まれるポリフェノールの大部分がフラバン系のポリフェノール, 特に, (+)-カテキンと (+)-ガロカテキンから成る縮合型タンニン (プロアントシアニジン•ヘテロポリマー)であることが推定された.
著者
劉 政安 青木 宣明 伊藤 憲弘 坂田 祐介
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.818-825, 2002-11-15
被引用文献数
6 2

中国ボタン品種群の中原品種グループから9品種と, 対照品種として日本ボタン'連鶴'の合計10品種を供試し, 花芽分化・形成過程と促成能力について調査した.調査開始の6月下旬にはすべての品種においてがく片が観察され, 花芽分化の開始が確認された.その後の中国ボタンの花芽形成パターンは, (1) : 花芽分化スピードが早く, 夏季に花芽形成のスピードが鈍ることなく順調に進み, 10月上旬に雌ずい形成が完了するグループ('白鶴臥雪'など3品種), (2) : 花芽分化スピードが中程度で, 10月中旬に雌ずい形成が完了するグループ('珊瑚台'など3品種), (3)花芽分化スピードが遅く, 雌ずい形成は11月上旬にほぼ完了するグループ('錦綉球'など3品種)の3つに分類できた.促成栽培における中国ボタンの萌芽率は低温期間が4週間と短くても100%を示したが, 日本ボタン'連鶴'は極端に低下した.また, 中国ボタン'白鶴臥雪'は低温期間が短くても開花率は比較的高かった.開花の見られた中国ボタン品種における開花はすべての処理区で年内に終了した.年内促成には, 80%以上の開花率を示した'白鶴臥雪', '鳳丹', '淑女装'の3品種が適すると考えられる.
著者
荒木 直幸 古田 貴音 小原 隆由 山内 直樹 執行 正義
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.230-235, 2003-05-15
被引用文献数
1 2

ワケギ5品種から構成される9系統(ウイルスフリー系統;広島1号〜広島9号)を用いて,16通りのプライマー組み合わせについて,AFLP分析を行い,品種・系統識別の可能性を検討した.ワケギのAFLP分析には,16通りのプライマー組み合わせのうち12通りが有効で,用いた9系統において総数678本のピークが観察された.ワケギ栽培系統を識別するために利用できる11種類のAFLPマーカー(総数の1.62%)が得られた.これらのマーカーの有無により,広島1号('下関')と広島2号('寒知らず'早生系)との識別は不可能であったが,他の系続開の識別は可能であった.ワケギの祖先種であるネギおよびシャロットを用いて,同じ12プライマー組み合わせに関する分析を行ったところ,ワケギ9系統から得られた総ピーク698本は,26.3%がネギに, 23.5%がシャロットにそれぞれ由来していると考えられた.さらに,11種類のワケギAFLPマーカーに関しては,5種類がネギに,3種類がシャロットにそれぞれ由来していることが推定された.これらの結果は,ネギとシャロットがワケギの祖先種であるとするこれまでの報告を支持するものであった.本研究で得られたAFLPマーカーは,ワケギ栽培系統の識別に利用可能で,異品種もしくは異系統の混同防止に役立つものと考えられる.
著者
杉山 直儀 高橋 和彦 李 柄〓
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.186-194, 1967
被引用文献数
2

1. 塩化ビニル透明無滴, 厚さ0.1と0.05mm, 同有滴0.1mm, ポリエチレン0.1および0.05mmの5種類のフィルムを用いてトンネルを作り, その中の気温および地温を測定した結果, 次のような現象が認められた。<br>日中の気温や地温は無滴ビニルのほうが有滴ビニルやポリエチレンよりも高かつた。夜間の気温は曇天や雨天ではフィルム間に差はなく, 外気温よりも高かつたが, 晴天の夜はポリエチレンのほうがビニルより低くなり, しかもトンネル内がしばしば外気温よりも低くなつた。フィルムの厚さの影響はビニル無滴では認められたが, ポリエチレンの日中の気温地温にはほとんど認められなかつた。<br>2. 水滴のつかない条件で比較すると, 無滴ビニルと有滴ビニルの間の温度差はなくなる。フィルムの水滴の付着状態が日中のトンネル内の温度に影響を与えることが大きいと考えられる。<br>無滴ビニルとポリエチレンとの差は水滴がつかない状態でもなくならない。<br>3. フィルムの熱伝導度の差は無滴ビニルの日中の温度に対する影響を除いてはそれほど大きくはないようである。<br>4. 塩化ビニルとポリエチレンの光線の波長別透過率を比較すると, 可視部および赤外部の約6μまでの範囲ではほとんど差がないが, 6μ以上の長波長部に対してはビニルの透過率は低く, ポリエチレンは高かつた。この差がトンネル内の温度に影響し, ポリエチレンがビニルよりも夜間低温になる主な原因となつていると考えられる。<br>5. 晴れた夜にトンネル内の気温がしばしば外気温よりも低くなる現象について若干の考察を加えた。
著者
小杉 清 吉田 重幸
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.123-126, 1954
被引用文献数
2 2

1. The flower buds in <i>Daphne odora</i> appear in the terminal buds on current shoots, and the time of flower bud differentiation in Tokyo was at the beginning of July in 1950.<br> 2. In <i>Osmanthus aurantiacus</i>, the flower bud formation occurrs in the lateral buds on curre shoot, and the time of flower bud differentiate, in Kagawaprefecture was at the beginning August in 1953.
著者
甲村 浩之 長久 逸 原田 隆
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.51-59, 1994
被引用文献数
6 11

アスパラガス (<I>Asparagus officinalis</I> L.) 優良株の組織からの多芽集塊および多芽集塊からの不定胚形成を利用した大量増殖培養系の確立について検討し, その可能性を実証するとともに基礎的知見を得た.<BR>1.アスパラガスの品種'ヒロシマグリーン' (2n=30) の若茎の茎頂を, アンシミドール10mg•liter<SUP>-1</SUP>およびショ糖30g•liter<SUP>-1</SUP>を添加したMS液体培地を用いて, 回転培養法により培養するとコンパクトな多芽集塊を誘導することができた. この多芽集塊は,1か月ごとの継代培養により増殖を繰り返し2年間維持されており, この間カルス化および染色体数の変化は認められなかった. また, 多芽集塊は, 本実験に用いた他の品種•系統においても同様な方法により容易に誘導することができた.<BR>2.多芽集塊を直径約2mmの大きさに分割して2,4-D 10<SUP>-5</SUP>Mを添加したMS寒天培地に移植すると, 容易にカルスを形成し, 発達した不定胚を含む embryogenic callusも10~20%の率で誘導することができた. これらのembryogenic callusの頂端の部分を分離し, 同じ培地で2週間ごとに継代培養すると, 安定的に不定胚を形成するembryogenic cell lineが得られ, 現在までに約1年間 (24回以上の継代培養) 不定胚形成能力を維持し続けている.<BR>3.多芽集塊は継代培養を行わず3~6か月間同じ培地で回転培養を続けると表面に球状胚と考えられる集塊組織を多数形成し, これらを2,4-D 10<SUP>-5</SUP>Mを添加したMS寒天培地に移植すると, 30%以上の高率で容易にembryogenic caUusを誘導することができた.<BR>4.多芽集塊から不定胚を形成させる培養系において再生した植物体約2000株については, アルビノやわい化などの異常は認められず, 染色体数 (15株観察) の倍化変異も認められなかった.<BR>以上の結果から, アスパラガスの多芽集塊誘導とそれに続く不定胚形成を利用した大量増殖システムは, 育種や栽培などの促進と改善のための有効な手段になると考えられる.
著者
岩田 隆 杉浦 弘隆 白幡 啓一
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.224-230, 1982
被引用文献数
5 6 3

エダマメは収穫後の食味•外観の劣化が速いが, 莢を離さずに, 全値物体 (全株) をホリエチレン袋に密封する"葉付ぎ包装"によって品質が保持されることをさきに報告した. 本報はその効果を確認するとともに, 効果の発現に関係する諸要因を検討したものてある.<br>品種は'白山ダダチャマメ'を用い, 全株を0.03mmの低密度ポリエチレン袋に密封し, 20°Cに保持するのを葉付き包装の基本とした. 対照区は莢を有孔ポリエチレン袋に詰めた. 食味変化の目安としては全糖含量及び遊離アミノ酸指標 (ニンヒドリンに反応する80%アルコール抽出物) の変化を用いた.<br>莢の外観は, 対照区が20°C4~5日で変色し, 商品性が失われたのに対し, 0.03mmポリエチレン袋の葉付き包装では1週間以上よく緑色を保持した. 0.04mmでも同様であり, 0.06mmの袋では若干劣ったが対照区よりはるかに勝った. 全体を針孔包装したものは対照区より良好であったが, 密封包装に比べ劣化が速かった.25°Cにおいても葉付き包装の外観保持効果は明らかで, ライナー包装も有効であった.<br>対照区の糖及びアミノ酸は1~2日で急減したが, それらの減少は葉付き密封包装によって顕著に抑制された. また葉付き有孔包装によっても抑制されたが, 密封包装には及ばなかった. 根を切除した株, あるいは莢及び葉を付けた枝の密封は, 全植物体の密封に比べ効果が不確実であった. 葉身を全部切除した株ては著しく効果が減じ, 各葉身の1/2を切除した株ては効果が半減した. しおれた葉の株では, 葉付き包装による成分保持効果が減少した. 葉付き針孔包装もある程度の効果を示したが, 密封包装より劣った.<br>葉付き包装は豆の硬化抑制にもある程度有効であった. 袋内のガス濃度は, O<sub>2</sub>が12%, CO<sub>2</sub>が5%程度であり, 0.06mmの袋でもほぼ同水準であり, 温和なCA条件であった. このため, 莢のみを密封したときにみられるガス障害を回避できるものと思われた.
著者
松添 直隆 山口 雅篤 川信 修治 渡部 由香 東 華枝 坂田 祐介
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.138-145, 1999-01-15
被引用文献数
9 24

本邦の6品種およびバングラデシュの8品種・系統のナス(Solanum melongena L.)を供試して, 果実への暗黒処理が果色および果皮のアントシアニン組成に与える影響を調査した.本邦の栽培品種と'Singhnath'の果色は"紫みの黒", 'KL purple'と'Borka'は"暗い赤みの紫"および'Uttara'は"くすんだ赤紫"であった, SL系統のうち'SL 28', 'SL 32'および'SL 50'は"黄緑"と"緑"の縞に一部"赤紫"の着色, 'SL 65'は"黄緑"に一部"赤紫"の着色がみられた.'早生米国大丸'以外の品種・系統の果皮の主要アントシアニンはdelphinidin 3-p-coumaroylrhamnosylglucoside-5-glucoside (Nasunin)で, その含有率は69.1&acd;87.7であった.一方, '早生米国大丸'の主要アントシアニンはdelphinidin 3-rhamnosylglucosideで, その含有率は79.5%であった.暗黒処理により, '早生米国大丸'の果色は"暗い赤紫"になったが, 果皮のアントシアニン組成は対照区と違いがなかった.また, 暗黒処理により, '千両2号', '庄屋大長'および'Borka'は"黄みの白"に一部"赤みの紫"を含む果色に, そして'SL 50'は"黄みの白"に一部"灰黄赤"を含む果色に変化したが, 果皮の主要アントシアニンの含有率には変化は認められなかった.'久留米長', '十市', '御幸千成', 'KL purple', 'SL 28', 'SL 32'および'SL 65'は暗黒処理下では果皮におけるアントシアニン系色素の発現は認められなかった.
著者
川上 繁 五十嵐 幸雄
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.45-60, 1943

1. 梅と杏に關して, 主として低温障害の見地より花粉の發芽試驗を行つた。<br>2. 開花期の早い梅性梅の中には白加賀、甲州最小の如く暖地に比して, 低温地方にて發芽率の不良なる品種あり, 其の原因は低温, 降水等に基く事が尠らずと認めた。<br>3. 花粉の發芽適温は15°C付近にあり。0°Cにては全然發芽せず, 1.5~3にて發芽可能であつた。<br>4. 花蕾の發育程度に依る花粉の發芽率の差異は, 天候良好なる場合には開花日より2日過位まで良好にして, 4日過に至れば極めて不良となつた。<br>5. 蕋咲花, 雌蕋不完全花, 花柱變色花等の外見上に認められる障害の原因の一部は低温に基くものと認められるが, 露地に於ける此の如花蕾の花粉は發芽成績が必ずしも不良でなかつた。<br>6. 枝條, 花蕾, 及び花粉を人工的に低温處理して障害状態を觀察し, 花粉の發芽試驗を行つた。其の結果は成熟せる花粉は耐寒性強く, 開葯前の花粉は耐寒性が極めて弱き事を認めた。<br>7. 著しき低温を伴はざる場合にても降水後の露地の花蕾は花粉の發芽極めて不良であつた。<br>8. 人工にて低温處理せる成熟花粉は人工交配にて高い結實歩合を示した。
著者
市村 一雄 川端 善彦 岸本 真幸 後藤 理恵 山田 邦夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.292-298, 2003-07-15
被引用文献数
10 37

道管閉塞と糖質の不足がどの程度バラ切り花の花持ちが短い要因となっているか検討するため,'ソニア'切り花を200mg・liter^<-1>8-ヒドロキシキノリン硫酸塩(HQS),20g・liter^<-1>'スクロースおよびHQSとスクロースを組合わせた溶液で処理した.切り花は23℃,相対湿度70%,12時間日長,光強度10μmol・m^<-2>・s^<-1>の条件下で保持した.どの薬剤も花持ちを延長させたか,スクロース単独処理の方がHQS処理よりも花待ち延長効果が高かった.スクロース処理はHQS処理よりも花弁の展開を促進し,切り花の新鮮重の低下とブルーイングの発生を抑制した.茎の水通導性は,スクロース処理により収穫後2日目以降急激に低下した.それに対して,HQSおよびスクロースとHQSを組み合わせた処理では収穫直後とほぼ同じ値で推移した.茎の細菌数はどの区においても次第に増加した.スクロース単独処理は細菌数の増加を促進したが,HQSおよびスクロースとHQSを組み合わせた処理は細菌数の増加を抑制した.花弁中のグルコース,フルクトースおよびスクロース濃度はスクロースおよびスクロースとHQSを組み合わせた処理により,HQS処理よりもはるかに高く維持された.以上の結果より,本実験条件下においては可溶性糖質の供給不足のほうが道管閉塞よりもバラ'ソニア'切り花の品質を低下させる重大な原因であることが示唆された.
著者
坂田 好輝 杉山 充啓 小原 隆由 森下 昌三
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.135-140, 2006-03-15

台木品種がキュウリ穂木のうどんこ病抵抗性に及ぼす影響を明らかにするため,台木用品種そのもののうどんこ病抵抗性,また,抵抗性のレベルの異なる台木品種に接ぎ木されたキュウリ穂木の抵抗性について評価した.近年発表されたブルームレス台木'ときわパワーZ'および'ホワイトパワー'は,子葉から第10本葉に至るまで,20℃程度の冷温から26℃,加温ハウスレベルの適温条件まで,高いレベルのうどんこ病抵抗性を示した.PPMR-1は,成育が進むにつれ,高度な抵抗性を示した.従来から利用されているブルームレス台木'ひかりパワーG'及びブルーム台木の'新土佐'は罹病性であり,'ひかりパワーG'はより激しく罹病した.うどんこ病抵抗性が異なる台木を用いた場合にも接ぎ木されたキュウリ穂木の子葉の抵抗性には有意な差異はなく,幼苗期においては台木品種が抵抗性に及ぼす影響はないまたは小さいと考えられた.一方,接ぎ木キュウリの成育に伴い,PPMR-1あるいは'新土佐'に接ぎ木された穂木(第5本葉,あるいは17本葉)は,うどんこ病に対して抵抗性あるいは耐性を増した.うどんこ病に高度な抵抗性を有する'ときわパワーZ'および'ホワイトパワー'を台木に用いた場合には,キュウリ穂木が抵抗性になることはなかった.ブルームレス台木の'ひかりパワーG'は穂木の抵抗性を弱めた.これらの結果から,台木品種は穂木のうどんこ病に対する抵抗性または耐性を変え,PPMR-1のような抵抗性または耐性を付与することのできるカボチャ台木品種を利用することにより,うどんこ病被害を軽減できることが示唆された.