著者
児島 清秀 山田 彬雄 山本 雅史
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.335-339, 1994
被引用文献数
7 5

本実験ではバレンシアオレンジ果実の生長速度が高い秋期の果実を部分 (果芯, 種子, 果肉, アルベド,フラベド) に分けてアブシジン酸 (ABA) とインドール-3-酢酸 (IAA) を分析した. ABAとIAAは, 内部標準として<SUP>3</SUP>H-ABAと [<SUP>13</SUP>C<SUB>6</SUB>] IAAを使用し, ガスクロマトグラフィー電子捕獲型検出器と質量分析器(選択的イオンモニタリング) で測定した. 果肉と種子の重さは急激に増加したが, アルベドとフラベドの重さはゆるやかに増加した. 150DAB (開花盛期後の日数) に, 種子のABA濃度は大きなピーク (21nmol•g<SUP>-1</SUP>生重量) を示したが, 果肉は小さなピーク (5nmol•g<SUP>-1</SUP>生重量) であった. 種子中のIAA濃度は150DABまで減少したが, 他の分析した部分よりも高い濃度であった. 果芯部のIAA濃度は119DABにピークを示し, 果肉•アルベド•フラベドよりも高い濃度を保った. アルベド, フラベドは同程度の低いIAA濃度であった. 得られた部位別の植物ホルモン量より, 種子中のABAと同化物集積性や果芯部のIAAと維管束との関係, 果肉と果皮間のABAの非移動性, 部分別の植物ホルモン分析の必要性が示唆された.
著者
後藤 明彦 荒木 忠治
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.316-324, 1983
被引用文献数
1 10

サンボウカン果実のじょうのう果梗端部す上がり砂じょう及び中央部のゲル化及びす上がり砂じょうの化学組成を調べ, また, 光学顕微鏡による若干の観察を行った.<br>顕微鏡観察によると, 果梗端部す上がり砂じょうの砂じょう膜は著しく肥厚していたが, 中央部す上がり砂じょうの膜の肥厚は, それほど著しくなかった. また,PAS染色により, 砂じょう膜及び内部柔組織の細胞壁多糖類成分は, ゲル化及びす上がり砂じょうで増加していることが示された.<br>パルプ量, アルコール不溶性固形物 (AIS) 含量はす上がり砂じょうで健全砂じょうより高かった. 細胞壁多糖類については, ゲル化及びす上がり砂じょうで, 熱水, ヘミセルロース, セルロースの各画分が健全砂じょうより高かったが, シュウ酸塩画分の増加はわずかであった.<br>果梗端部す上がり砂じょうでは, 同部健全砂じょうに比べて, 遊離酸, フラボノイド, カロチノイド, RNAの含量は低く, 結合酸, ビタミンC, 全-N, AIS-N, アミノ-Nのそれは高く, 全糖は変らなかった. 中央部ゲル化砂じょうでは, これらの成分は全て健全砂じょうより低かった. しかし, 同部す上がり砂じょうでは, AIS-N, アミノ-Nはゲル化及び健全砂じょうより高く, また, 全糖, 結合酸, フラボノイド, カノチノイド, ビタミンC及び全-Nはゲル化砂じょうよりは高かったが,健全砂じょうよりは低かった. RNAはゲル化砂じょうとほぼ同じであり, 遊離酸は低かった.<br>無機成分 (粗灰分, Ca, Mg, K, Na) については, いずれも, 果梗端部す上がり砂じょうで健全砂じょうより高かった. 中央部ゲル化砂じょうでは, 健全砂じょうよりわずかに低かったが, す上がり砂じょうでは, ゲル化砂じょうに比べてCaが高く, Kが低かった.<br>これらの結果に基づき, サンボウカン果実砂じょうのゲル化及びす上がりの発現過程を考察した.
著者
霞 正一 鈴木 一典 郷内 武 野木 光子 山田 哲也 高津 康正
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.284-286, 2006-05-15
被引用文献数
1 1

キキョウ'五月雨紫'等の開花2〜5日前の花蕾子房を縦に8分割した子房片を外植体として,NAAとBAPの両方を添加したMS培地で培養すると不定芽が形成された.1mg・L^<-1>NAAと5mg・L^<-1>BAP添加区で最も不定芽形成率が高かった.この不定芽をMS培地に継代培養することで植物体が再生した.この植物体をポットで栽培した結果,再生個体の茎葉の形態,開花様相は親植物と同一であった.また,子房片からの不定芽形成率には品種間差異が認められた.
著者
山本 隆儀 宮本 健一 佐藤 嘉一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.101-108, 2005-03-15

かん水処理を施したオウトウ樹の微風条件下における葉面光合成光量子フラックスおよびみかけの光合成速度を多数測定した.この結果から, 葉温と気温を用いた葉面光合成光量子フラックスの重回帰推定式を得た.さらに, この3者と時期・時刻の要因を用いたみかけの光合成速度の重回帰推定式を得た.非冷却方式携帯型サーモグラフィ装置により, 側枝葉層の熱画像データを得た.この熱画像データと上記2つの重回帰式を結合することにより, 画素単位のみかけの光合成速度の値と葉面光合成光量子フラックスの値の推定計算, 両値の分布画像の表示およびデータ出力を極めて短時間内に可能にするシステムを作成した.
著者
仁宮 章夫 村田 芳行 多田 幹郎 下石 靖昭
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.321-323, 2003-07-15
被引用文献数
3 4

アラントインは,人体では抗炎症作用や抗潰瘍作用があり,植物中では窒素の貯蔵と輸送における重要な形態であると考えられている.'ツクネイモ'担根体中のウレイド,特に,アラントインの分析を行った.フエニルヒドラジンによる分光光度法によってウレイド(アラントインとアラントイン酸)を,HPLCによってアラントインのみを定量した.'ツクネイモ'の担根体には2.6mg・gFW^<-1>アラントインが含まれていたが,葉と茎からは検出できなかった.ヤマノイモ科に属する'ヤマトイモ','ナガイモ','ジネンジョ'にはアラントインがそれぞれ2.3,0.47,1.2 mg・gFW^<-1>含まれていた.しかし,ジャガイモとサツマイモには,0.1mg・gFW^<-1>以下のアラントイン量しかなく,サトイモの'石川早生'と京イモ'からは検出できなかった.なお,調べた全試料のアラントイン酸の含有量は無視できる量であった.
著者
須佐 寅三郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.194-221, 1934

本縣苹果在植品種の缺點と栽植上の缺陷から品種改良並に自家,他家交配研究の必要を感じ,昭和三年より繼績的に實驗を重ね.其内昭和四年より同八年迄の成績の概要を述べると次の如くである。<br> 1. 本縣主要苹果の花期は五月中旬より約三週間に亙る。印度が最も早く,國光が最も遲い。其期間は該年の花期好天なる時は短かく各品種の盛花期相接近する。之れに反し花期に低温又は降雨績く時は著しく其花期延長し各品種の盛花期を離す。同花期の良晶種を混植の要がある。<br> 2. 108品種中花粉の不良なるもの25種,中庸なるもの23種,花粉の發芽率60%以上を示すもの60種ある事が分つた。<br> 3. 雌蕋の雄蕋に對する長短と花粉能力又は受精との關係は未だ認めない。<br> 4. 花粉管放長の方向は性的親和力に影響を受くる事著しく強い。<br> 5. 苹果の花粉は攝氏13度内外の低温に於ても良く發芽す。<br> 6. 花粉管が伸長したる時降雨あれば著しき破裂現象を招來す。之れは受精作用に影響甚大なる事を推察す。<br> 7. 苹果の花粉は粉状乾燥状態にて貯藏すれば1ケ年以上發芽するものがある。<br> 8. 自家交配で自家不稔性の品種10種,弱自家結實性のもの9種,自家結實性と認め得るもの9種あつた。就中,主要品種では祝では殆んど自家不稔性で. 22%, 國光は稍自家結實性で3.07%, 紅玉は8.5%, 印度は10.05% なるが,ゴールドンヂリシヤスは16%, イングラムは33.16% の自家結實性ある事が分つた。之に反しデリシヤスは完全に自家不稔性である必す,紅玉,印度又はゴールドンデリシヤス,祝等と混植するを要すう。<br> 9. 他家交配25品種の平均結果率は22.76%で,自家交配28種平均結果率5.08% に比し約4倍半の結果率である。混植の必要が顯著である。<br> 10. 花時天候惡しき年に於ても他家交配試驗は顯著なる好結果を示した。故に花時寒濕なる氣候續く時は出來る丈人土交配を行ふか,又は花粉の媒介者昆蟲の集合を計る爲め果園の乾燥と氣温を高める事が有效であると思ふ。<br> 11. 他家交配に於て兩性器關が完全であ場合は相互嫌忌性は未だ判然と認められない。然し近親間に於ては相互嫌忌性があるかも知れない。<br> 12. 他家不結實は兩性機關が不能性であるか,何れか一方が不能的である場合に起るのが多いと思はれる。
著者
田中 孝幸 水谷 高幸 柴田 道夫 谷川 奈津 Parks Clifford R.
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.464-468, 2005-11-15
被引用文献数
2

これまでに, ハルサザンカCamellia×vernalis T. Tanaka et al.は, 形態, 染色体およびアイソザイム分析からサザンカとヤブツバキ間の交雑により成立したと報告されている.ツバキ属の葉緑体DNAは, 他の被子植物と同様に, 細胞質(母系)遺伝をすることが示されており, ハルサザンカにサザンカの葉緑体が存在すれば, サザンカがこれらの雑種の種子親であると考えられる.atpI atpH遺伝子領域のPCR産物は, サザンカおよびハルサザンカではすべて約800bpの位置に, ヤブツバキでは約1200bpの位置に単一のバンドを示した.これらの結果は, 1)一次雑種と推定されたハルサザンカ'凱旋'の種子親はサザンカである, 2)ヤブツバキへの戻し交雑第一世代と考えられるハルサザンカ三倍体品種群の種子親は'凱旋'と考えられる, さらに, 3)戻し交雑第二世代と考えられる'笑顔型'四倍体品種群の種子親はハルサザンカ三倍体品種群に由来する, ことを示唆している.ハルサザンカは, 平戸島にある古木の樹齢および1630年に出版された本の記録'鷹の爪'などから判断して約400年前にその起源があると推定されている.したがって, 本研究の結果, ハルサザンカの種子親は400年前に遡ってサザンカであると示唆された.
著者
中野 龍平 播磨 真志 小倉 恵実 井上 真輔 久保 康隆 稲葉 昭次
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.581-585, 2001-09-15
参考文献数
23
被引用文献数
15 27

カキ'西条'果実の軟化に対するエチレンの関与を明らかにするとともに, 果実のエチレン生合成に及ぼすCTSD脱渋に相当するCO_2処理と貯蔵中の湿度条件の影響を調査した.'西条'果実を>95%CO_2で16時間処理した後, 温度20℃湿度40&acd;60%の条件下で貯蔵すると, 収穫後2日(CO_2処理後1日)よりエチレン生成が検出され, 収穫後5日より軟化果実が多発した.1-methylcyclopropene(MCP)によりエチレンの作用を阻害すると, この急激な軟化は完全に抑えられた.CO_2処理を行わずに, 果実を低湿度下(40&acd;60%)および高湿度下(>95%)で貯蔵すると, 低湿度下で貯蔵した果実では収穫後2日よりエチレン生成の誘導と急激な軟化が観察された.高湿度下で貯蔵した果実ではエチレン生成・軟化発生とも収穫後10日まで抑えられた.一方, CO_2処理果実では, 高湿度下で貯蔵した場合でも収穫後2日よりエチレン生成とそれに伴う急激な軟化がみられた.以上より, '西条'果実の収穫後の軟化には, 水ストレスおよび脱渋処理に伴うCO_2ストレスによって誘導されるエチレンが関与していることが示された.
著者
太田 勝巳 鶴永 建治 細木 高志
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.216-218, 1998-03-15
被引用文献数
4 3

定植後から収穫終了時まで園試処方標準濃度液で水耕栽培したミニトマト'サンチェリーエキストラ'において, 夜間(午前1時&acd;午前5時)光照射した場合, 裂果の発生が制御可能かどうか検討した.裂果発生率は対照区では約10%であった.強光照射区(81.1μmol・s^<-1>・m^<-2> PAR)においては4%となったが, 弱光照射区(8.1μmol・s^<-1>・m^<-2> PAR)においては約8.5%であり, 対照区とほぼ同程度であった.強光照射区では午前4時における気孔の拡散抵抗は低下した.果柄の水分移動速度は強光照射処理時間中に低下し負の値を示したが, 一方, 葉柄の水分移動速度は正の値をとり, 水分が流入していることを示した.午前4時における強光照射区の葉の水ポテンシャルは対照区に比べ低下した.以上の結果より, 夜間に強光を照射した場合, 葉からの蒸散が生じることによって植物体内から水分が減少し, 果実への水分流入が抑制された結果, 裂果の発生が低減したものと考えられる.
著者
播磨 真志 中野 龍平 山本 貴司 小松 英雄 藤本 欣司 北野 欣信 久保 康隆 稲葉 昭次 富田 栄一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.251-257, 2001-03-15
被引用文献数
12 10

カキ'刀根早生'のハウス栽培果実の脱渋後の軟化発生の実態について調査し, その要因について検討した.1. 無脱渋, 樹上脱渋およびCTSD脱渋処理果実の日持ち性について検討したところ, 収穫日を基準とした果実の軟化様相には差がなかった.2. '刀根早生'ハウス栽培6園におけるCTSD脱渋後の軟化の発生は, 園地により大きな差が認められたが, 各園の軟化発生程度と根群分布, 葉中無機成分含量, 葉の水分ポテンシャルおよび根の呼吸活性には相関は認められなかった.3. 加温時期の異なるハウス栽培および露地栽培果実を経時的に採取しCTSD脱渋後の軟化様相を調査したところ, いずれの栽培法でも未熟な段階で収穫した果実では脱渋後, 急速に軟化した.満開後120日以降に収穫した果実では軟化の発生が一時的に少なくなった.この時期は露地果実では果実生長第II期から第III期への移行する時期と一致していた.4. 鉢植え個体を7&acd;10月にハウス内に搬入する高温処理は, 収穫後の果実軟化の割合を増加させた.以上より, ハウス栽培'刀根早生'では, 成熟期の高温が果実を「軟化しやすい」生理状態にすると考えられた.
著者
大川 勝徳 北嶋 純也
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.242-248, 1998-03-15
被引用文献数
4

クロユリ(Fritillaria camtschatcensis Ker-Gawl.)球根を栽培して, 出芽, 着葉, 開花および形成された新球などの形態的特徴を調査するとともに, その増殖を目的として球根に多数着生している小球状りん片を用いて, in vitro培養による子球形成に及ぼす温度, 光および植物ホルモンなどの影響を検討した.1. 球根を1995年11月上旬にポットに植え付け, ガラス室で栽培した結果, 葉は5&acd;6枚輪生し, 花は1本の茎から1&acd;2個で斜め下向きに咲いた.花蓋は広鐘形で平開しなかった.1996年7月下旬に球根を圃場から掘り上げ, その状態を調査した結果, 母球とそれに付着していた小球状りん片の大部分は腐敗していた.しかし2個の新球(約5g, 生体重)と子球を形成している6&acd;7個の小球状りん片が残存していた.2. 小球状りん片に子球を形成させるためin vitro培養した結果, 暗条件下で20℃が良い条件であった.3. 小球状りん片の子球形成率を高めるためin vitro培養した結果, NAA 0.1mg・liter^<-1>とEB 0.1 mg・liter^<-1>との併用が良好な条件であった.
著者
久松 完 腰岡 政二 大山 直美 Mander Lewis N.
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.527-533, 1999-05-15
被引用文献数
5 7

トルコギキョウのロゼット化と内生ジベレリンとのかかわりを明らかにするために, ロゼット化した実生に対する数種ジベレリンおよび前駆物質の影響ならびにロゼット化および非ロゼット化実生の内生ジベレリン含量を調査した.また, それらの開花に及ぼすジベレリン生合成阻害剤とGA_3の影響を調査した.その結果, ロゼット化した実生では初期13位水酸化経路上のGA_<53>より上流で生合成がブロックされている可能性が示された.また, ロゼット化および非ロゼット化実生にかかわらず, 葉と茎においてGA_<19>からGA_<20>に至る20位の酸化活性に違いがあることが示唆された.葉の伸展, 茎の伸長および花芽発達は活性型GAにより制御されているが, 花芽分化は制御されていない可能性が示された.
著者
新居 直祐 瀋 春香 小川 洋平 崔 世茂
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.411-414, 2004-09-15
被引用文献数
1 13

ビワの根の内皮側数層の皮層細胞にみられる細胞壁の内部生長と内皮細胞に形成されるカスパリー線の形成過程を検討した.根の横断面から観察して,皮層細胞の肥厚は細胞壁の内部生長とみられ,その拡大の最終段階ではラグビーボール状を呈した組織は細胞の半分程度を占有するまでに肥厚した.したがって,若い根では,内皮に接した1層目の皮層細胞の内部生長組織がネックレス状に1重のリングを形成した.根の齢が進むにつれて,内皮から2層目の皮層細胞にも細胞壁の内部生長が確認された.根の維管束の発達につれて,カスパリー線の自家蛍光が蛍光顕微鏡によって明瞭に観察できるようになった.二次維管束の発達とともに,細胞壁の内部生長を示した皮層組織と内皮組織の間に離脱帯が形成され,皮層が離脱する段階では内皮の細胞層数が増加し,カスパリー線も数層に増大した.また,根から皮層部が離脱する段階になると,内皮の外層はコルク様物質が蓄積するようになった.皮層細胞の細胞壁の内部生長と内皮のカスパリー線の形成過程の時間的差異からみて,皮層細胞の細胞壁の内部生長はカスパリー線と同様に,根からの水分や溶質の損出を防御するのに機能しているものと考えられる.
著者
杉浦 広幸 花田 薫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.432-438, 1998-05-15
被引用文献数
4 13

新潟県で特定の大輪ギク品種に発生した特異的な生育障害, すなわち草丈のわい化, 開花の1&acd;2週間の遅延, 花型の丁字型化などを起こすCSVdの性質を調査した.'ミスルトー'を用いた生物検定, およびRNAのポリアクリルアミドゲル電気泳動による解析の結果, 本症がCSVdによるものであると確定した.発病株から発生した冬至芽からのCSVdの無病化は, 2品種中1品種で認められ50&acd;61%の冬至芽が無病徴であった.汁液接種によるCSVdの伝染性については品種間差があり, 調査した10品種中, 5品種はCSVd抵抗性であった.土壌伝染性は認められなかった.塩基配列を解析した結果, 2か所でイギリス型と異なっていたが, 塩基数は同じであった.
著者
堀 裕
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.113-115, 1983 (Released:2007-07-05)
参考文献数
20
著者
ニミケットカイ ハタイティップ 上田 悦範 稲本 勝彦 土井 元章
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.148-153, 2006-03-15
被引用文献数
1

シュッコンカスミソウ(Gypsophila paniculata L.)'ブリストル・フェアリー'切り花に数種のアルコールを生け水に添加して与え,エステル化酵素(アルコールアセチルトランスフェラーゼ:AAT)の基質特異性について検討した.エタノール以外のアルコール処理により,それぞれ対応する酢酸エステルが生成されたことから,これらの外生的に与えたアルコールがAATの触媒作用により内生アセチルCoAと反応しうることが示された.イソアミルアルコールの処理によりイソ吉草酸イソアミルの生成が促進され,結果としてシュッコンカスミソウ花序の悪臭原因物質であるメチル酪酸の発散量が低下した.芳香族アルコールであるベンジルアルコールや2-フェニルエチルアルコールにも同様の効果があった.細胞抽出液中のAAT活性は,シス-3-ヘキセン-1-オールおよび1-ヘキサノールに対して最も反応性が高く,一方エタノールに対する反応性が最も低く,invitroにおけるAATの基質特異性がin vivoの基質特異性と同一の傾向にあった.また,細胞抽出液におけるAATの活性は小花がつぼみの段階ですでに高く,開花段階で低くなった.以上の結果から,シュッコンカスミソウ花序において揮発性のエステル発散量を限定している要因は,基質となるアルコールの欠乏であることが示唆された.
著者
杉浦 俊彦 横沢 正幸
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.72-78, 2004-01-15
被引用文献数
14 44

リンゴおよびウンシュウミカンの栽培環境に対する地球温暖化の影響を年平均気温の変動から推定した.果樹栽培に有利な年平均気温として解析対象とした温度域はリンゴでは6〜14℃およびこれよりやや狭い7〜13℃,ウンシュウミカンでは15〜18℃である.将来の気候の予測データとしては「気候変化メッシュデータ(日本)」を用い,約10×10 km単位のメッシュで解析を行った.その結果,リンゴ,ウンシュウミカンとも栽培に有利な温度帯は年次を追うごとに北上することが予想された.リンゴでは,2060年代には東北中部の平野部までが現在よりも栽培しにくい気候となる可能性が示唆され,東北北部の平野部など現在のリンゴ主力産地の多くが,暖地リンゴの産地と同等の気温になる,一方,北海道はほとんどの地域で栽培しやすくなる可能性が示唆された.ウンシュウミカンでも2060年代には現在の主力産地の多くが現在よりも栽培しにくい気候となる可能性が示唆されるとともに西南暖地の内陸部,日本海および南東北の沿岸部など現在,栽培に不向きな地域で栽培が可能になることが予想された.以上のように地球温暖化は今世紀半ばまでにわが国のリンゴおよびウンシュウミカンの栽培環境を大きく変化させる規模のものである可能性が示された.
著者
新美 芳二 中野 優 牧 健一郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.919-925, 1996-03-15
被引用文献数
5 11

リーガルユリ (<I>Littttm regale</I>) の強健な性質をヒメサユリ (<I>L. rubellum</I>) に導入することを目的として,両種間で相互交雑を行った.<BR>1.リーガルユリ×ヒメサユリにおいては, 開花当日の柱頭受粉により低率 (3.3%)ながら有胚種子が得られた. しかし, それらの種子はバーミキュライトおよび試験管内に播種しても発芽しなかった. リーガルユリ×ヒメサユリの雑種実生は受粉30~60日後に胚珠培養を行うことにより得られ, その頻度は5.3~6.7%であった.<BR>2.ヒメサユリ×リーガルユリにおいては, 開花当日の柱頭受粉では受粉後に花粉管が花柱内で伸長を停止し, 受精が起こらなかった. しかし, 開花2~5日後に柱頭受粉を行うことにより花粉管伸長が促進され,開花5日後の受粉では胚形成が確認された. 花柱切断受粉は胚形成に効果がなかった. 開花5日後の受粉により得られた胚は, 胚珠培養を行っても救出することができなかった.<BR>3.リーガルユリ×ヒメサユリから得られた個体の雑種性はrDNA分析により確認された. 調査したすべての雑種は二倍体であり, 花粉稔性は3%以下であった. 雑種個体の花色は淡桃色であった. また, 二重咲きの花をもつ雑種も1系統得られた.
著者
倉橋 孝夫 松本 敏一 板村 裕之
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.63-67, 2005-01-15
参考文献数
15
被引用文献数
5 13

収穫初期から終期のカキ&lsquo;西条&rsquo;の果実を用いて, 収穫時期別の軟化発生程度と1-MCPおよびエチレン吸収剤を用いた脱渋中の軟化防止と脱渋後の日持ち性向上効果を検討した. その結果, 無処理区の脱渋完了時の軟化発生は, 収穫初期の10月1日収穫果で78.1%と最も高く, 収穫時期が遅れるのに伴って徐々に低下し, 収穫盛期の10月22日と29日収穫果ではほとんど認められなかったが, 収穫終期の収穫果では50.0%と再び増加した. 脱渋時のドライアイス封入48時間後の袋内エチレン濃度は, 収穫初期の10月1日収穫果が最も高く, 収穫時期が遅くなるにつれて低下した. また, 1-MCP処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の軟化発生は抑えられたが, 収穫終期の抑制効果は低かった. 収穫盛期の日持ち期間は1-MCP処理により無処理区と比較して約6日間延長できた. さらに, エチレン吸収剤処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の果実軟化は抑えることができたが, 脱渋後の日持ち期間は延長できなかった.
著者
倉橋 孝夫 松本 敏一 板村 裕之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.63-67, 2005-01-15
被引用文献数
5 13

収穫初期から終期のカキ'西条'の果実を用いて, 収穫時期別の軟化発生程度と1-MCPおよびエチレン吸収剤を用いた脱渋中の軟化防止と脱渋後の日持ち性向上効果を検討した. その結果, 無処理区の脱渋完了時の軟化発生は, 収穫初期の10月1日収穫果で78.1%と最も高く, 収穫時期が遅れるのに伴って徐々に低下し, 収穫盛期の10月22日と29日収穫果ではほとんど認められなかったが, 収穫終期の収穫果では50.0%と再び増加した. 脱渋時のドライアイス封入48時間後の袋内エチレン濃度は, 収穫初期の10月1日収穫果が最も高く, 収穫時期が遅くなるにつれて低下した. また, 1-MCP処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の軟化発生は抑えられたが, 収穫終期の抑制効果は低かった. 収穫盛期の日持ち期間は1-MCP処理により無処理区と比較して約6日間延長できた. さらに, エチレン吸収剤処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の果実軟化は抑えることができたが, 脱渋後の日持ち期間は延長できなかった.