著者
李 進才 趙 習コウ 松井 鋳一郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.372-379, 2001-05-15
被引用文献数
7 5

遮光率60%の温室で育てたSlc. Estella JewelとCym. Sazanamiを10月21日に直射日光(最大日射0.61kW・m^<-2>)にさらし, また, 両植物種を5月から10月まで遮光率30%(強光区), 60%(対照区)および90%(弱光区)で栽培し, 葉中の抗酸化酵素活性と色素含量の変化について調べた.1. CAM植物のCattleyaの抗酸化酵素活性はC_3植物のCymbidiumに比べて著しく低く, 前者は昼間, 後者は夜の始まりで高まる傾向がみられた.直射光処理により, CattleyaのSOD活性は著しく低下したが, APX活性はわずかに, CAT活性は著しく増加した.これに対して, CymbidiumのSODとCAT活性は顕著に, APX活性はわずかに減少した.2. 強光下の栽培1か月後, CattleyaのSODとCAT活性は著しく低下し, その後実験終了時まで対照区より低かったが, CATは活性が回復する傾向を示した.CymbidiumではSODとAPX活性は3か月まで低下を続け, CAT活性は実験終了時でも低かった.一方, 弱光下ではCattleyaのSODを除き, 両植物種の3酵素活性は対照区の植物に比べ遮光栽培中高い活性を維持した.3. 葉中のクロロフィル含量は両植物種ともに遮光率が低い区ほど少なく, さらにこれら3酵素活性と高い相関関係を示した.強光区のCattleyaではクロロフィルa/b比とβ-カロテン含量が遮光栽培1か月後著しく低下したが, 3か月後対照区と同等に回復した.Cymbidiumでは強光によるそれらの低下は少なかった.弱光栽培1か月後, クロロフィルとβ-カロテン含量の増加はCymbidiumでは著しく, Cattleyaでは少なかった.その後はいずれも対照区との差が縮まった.以上の結果から, CattleyaはCymbidiumより強光への積極的適応性を有するが, 両植物種とも強光への順化が一般に困難で, 弱光への順化は相対的に容易であると考えられる.
著者
斎藤 岳士 福田 直也 西村 繁夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.392-398, 2006-09-15
参考文献数
30
被引用文献数
8

NFTを用いた養液栽培トマトにおいて,異なる塩ストレスの処理開始時期,処理期間および栽植密度が,義液栽培トマトの果実収量ならびに果実品質に及ぼす影響について調査した.塩ストレス処理は,培養液にNaClを添加し,ECを8.0dS・m^<-1>に調節することによって行った.NaClを添加しない対照区は,EC 2.5dS・m^<-1>とした.平均果実重量は,塩ストレス処理を行わなかった場合と比較して,塩ストレス処理を開花後の果実生育の全期間に行うと約49%,前半のみの処理で約73%,後半のみの処理で約63%となった.可溶性固形物含量(Brix%)は,対照区で6.1,全期間処理で9.7,前期処理で7.9,後期処理で8.6となった.尻腐れ果発生率は,全期間処理と前期処理で30%以上であったのに対して,対照区では0%,後期処理では16%であった.果実生育期の中後半から塩ストレス処理を開始することで,対照区より品質が向上し,全期間処理より収量が増加し,尻腐れ果発生率も低くなった.また,塩ストレス処理下では,低栽植密度区(1m^2当たり6.7個体)と比較して中栽植密度区(1m^2当たり8.3個体),高栽植密度区(1m^2当たり9.5個体)において大きな品質低下を伴わずに,単位面積あたりの収量が増加した.
著者
小森 貞男 副島 淳一 工藤 和典 京谷 英壽 阿部 和幸 古藤田 信博 小松 宏光 伊藤 祐司 別所 英男
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.880-889, 1998-11-15
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

前報で設定した各S遺伝子型に対応した品種・系統を利用して,栽培品種を中心により広範に品種・系統のS遺伝子型の解析を試みた.その結果15種類のS遺伝子型のうち(S_Jb, S_Je)および(S_Je, S_Jd)型を除く13種類で品種との対応が以下のように明らかになった.下線を付したものが,今回新たにS遺伝子型が判明した品種・系統である.[table]
著者
三木 泰治
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.8-25, 1935 (Released:2007-05-31)
参考文献数
3

1. 梨の果肉中の石細胞の發育過程及之が大小分布等に就き日本梨を材料として觀察研究する所があつた。2. 日本梨の石細胞は開花又は授粉後10日内外にして柔細胞中に形成せられ, 其後急速に發達し, 40-55日にして其彈性を失ひ收縮し, 爲に周圍の柔細胞を牽引して放射状を呈せしむる。3. 石細胞膜は發現後急激に肥厚し, 60-70日にして最高の厚さに達し, 其後は成熟期に至るに從ひ少しく其厚度を減ずる。日本梨の品種に依り其發育過程及成熟果に於ける石細胞膜の厚度を異にする。4. 日本梨の品種に依り果心の中央を通ずる横斷面及縱斷面に於ける石細胞群の分布密度及大小石細胞群の混合比率を異にする。此事は日本梨の果實の品質を決定する上に於て相當考慮すべき重要事項の一に屬する。
著者
高樹 英明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.416-423, 2001-07-15
参考文献数
20
被引用文献数
2 8

山菜アマドコロP. odoratum Druce var. pluriflorum Ohwiの種子の発芽様式, 休眠型, 休眠打破に関して検討した.収穫後まもない種子を10月に播種して戸外で育てた場合, 翌夏になって発芽(発根)したが, 芽の地表への出現と展葉が見られたのは翌々春の4月であった.発芽が起こるためには種子が前もって低温湿潤処理される必要があったので, 種子休眠(幼根休眠)の存在が認められたが, その休眠は5℃, 60日間処理でほぼ完全に打破された.また, 種子への5mMエテホン処理は幼根休眠打破の弱い効果を示した.幼根休眠打破後の発芽適温は17&acd;25℃であった.種子の低温処理を, 種子を取り出す前の果実に対して行うより, 取り出した種子に対して行うほうが, 発芽促進効果が大きかった.果実から取り出した種子を低温湿潤処理前に1週間程度風乾させても発芽に影響はみられなかった.幼根休眠打破処理後, 発芽適温下に置いた種子の発芽とその後の生長活動は90日後には停滞した.これは幼芽が休眠(上胚軸休眠)に入ったためと考えられる.幼芽が生長を再開してシュートが地表に現れ, 緑葉を展開するためには再度低温経過を必要としたので, アマドコロ種子の休眠型はBartonとSchroeder(1942)が報告したdouble dormancyに似ていた.アマドコロの上胚軸休眠打破後の地表へのシュートの抽出適温は17&acd;29℃であった.シュートの地表への抽出は, 幼根休眠打破後の温暖期間(21℃)と上胚軸休眠打破のための5℃処理期間の長さに大きく影響され, どちらかの期間を120日とし, 他方を90日にした場合に, シュートの地表への抽出が比較的早く, また高い率で起こった.
著者
倉橋 孝夫 持田 圭介 小畠 正至
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.262-266, 2002-03-15
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

カキ'西条'の抑制栽培の技術を確立するために, 蛍光ランプを用いて, 10a当たりの設置密度を500灯, 250灯, 125灯と無処理区を設定し, 8月27日&acd;12月8日まで日長時間が17時間±1時間になるようにして長日処理の効果と適正な電照ランプ密度について調べた.光強度の異なる長日処理を行うと, 光強度の強い区ほど葉色(SPAD値)が濃く, 新梢の二次生長量が多く, 落葉時期が遅れた.さらに, 果皮色の進行は光強度の強い区ほど遅く, 果皮色が3以上になるのは, 無処理区が11月上旬であったが, 電照区は11月下旬であった.また, 果肉硬度は光強度が強い区ほど硬く, 屈折計示度は低かった.以上より, カキ'西条'に長日処理を行うことによって, 果実の成熟が遅れ, 栄養生長は盛んになると考えられた.また, カキ'西条'の抑制栽培で適正なランプ設置密度は, 成熟遅延効果があり, 果実糖度の低下が少ない125灯/10aで, 樹冠表面PFDは1.5μmol・m^<-2>・sec^<-1>程度であると考えられた.
著者
藤澤 弘幸 高原 利雄 緒方 達志
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.719-721, 2001-11-15
参考文献数
9
被引用文献数
6 10

カンキツ'清見'の貯蔵中に発生する果皮障害を防止する目的で, 貯蔵前の乾燥予措処理の影響および長期貯蔵に適する貯蔵温・湿度環境を検討した.乾燥予措の程度が強いほど, 果皮が斑点状に褐色する果皮障害が著しく発生した.貯蔵温度1℃では低温によるピッティングが発生し, 12℃では貯蔵早期から果皮障害が発生した.貯蔵温度を5, 6℃とした場合に障害発生が少なく, 貯蔵環境を高湿度とすることにより障害は顕著に抑制された.'清見'果実は, 予措を施さず, 温度6℃, 相対湿度98%以上の環境に貯蔵することにより, 5ヶ月以上の長期間にわたり果皮障害を免れて貯蔵することが可能であった.
著者
村元 政雄 大塚 富一
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.267-271, 1942

1. 苹果紅玉の腋花芽の分化期を知り併せて頂花芽の分化期と比較を行ふため, 農林省園藝試驗場東北支場に於て, 昭和16年8月6日より9月6日迄に7囘, 新梢の腋芽及び2年枝上の短果枝の頂芽を毎囘約40個採收して檢鏡した。<br>2. 腋花芽は當地方に於ては最初分化初期を認めるのは8月5日頃で, 頂芽より約半旬遲れてゐる。<br>3. 腋花芽の9月上旬迄の發達程度は頂花芽に比し, 約5~10日位宛遲れてゐる。<br>4. 腋花芽, 頂花芽共第I, II期の分化期間の長さは約25日で第III, IV期を略同一のやうに考察される。
著者
坂本 隆行 早田 保義 河塚 寛 坂本 宏司 西村 修 増田 秀樹 筬島 豊
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.388-390, 2002-05-15
被引用文献数
1 6

含硫化合物の検出に適した炎光光度検出器(FPD)装着のSniffing-GCを用いたGC-におい嗅ぎ法により, メロンの香気成分中における含硫化合物並びにその匂い特性を調査した.メロン'ミヤビ'の香気成分中から9個の含硫化合物を検出し, 5個を同定した.3-(methylthio)propyl acetateの相対含量が19.47と最も多く, 次いでethyl (methylthio)acetate, ethyl 3-(methylthio)propionateおよび2-(methylthio)ethyl acetateだった.3-methylthio-1-propanolは同定された化合物の中で0.27と最も低い値であった.その他の未同定の含硫化合物は上記5成分に比べ極めて低い値であった.Sniffing-GCで3-(methylthio)propyl acetateおよびethyl (methylthio)acetateはそれぞれ甘みの入った青臭みおよびキュウリ様の青臭みを有し, その匂いは強かった.2-(methylthio)ethyl acetateは高濃度で検出されたが, GC-におい嗅ぎ法では感知されなかった.ethyl 3-(methylthio)propionateはフルーティーな青臭みを有したが, その匂いは弱かった.3-methylthio-1-propanolおよび他の4成分の匂いは感知されなかった.以上から, ミヤビの香気形成に, 3-(methylthio)propyl acetateおよびethyl(methythio)acetateが青臭みを与える成分として重要であることが明らかとなった.
著者
近泉 惣次郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.149-155, 2000-03-15
参考文献数
9
被引用文献数
1 8

'アンコール'果の果面に発現するコハン症の発現機構を明らかにした.1. コハン症の発現は果皮組織のエージングと密接な関係を有しており, 果径が4cm以上になる9月から10月の2ヶ月間に発現するが, その場合4月開花の果実に発現し, 7月開花の果実には発現しなかった.この症状は果実の陽光面に発現するが, 日陰面では発現が見られなかった.この陽光面の果面温度は38℃以上の高温となっており, この温度が4&acd;5時間続くとコハン症が発現した.そこでハウスのアーチ部を遮熱資材で被覆し, 果面温度を30℃以下に保ったところコハン症の発現はかなり軽減された.2. コハン症発現部をみると, 油胞組織の果皮表面部に小さな亀裂が生じており, この部分から精油成分の漏出が認められた.この漏出精油成分は果皮の柔細胞を破壊し緑色の斑点症状を誘起した.その後この緑色斑点は時間の経過につれ黄色ないしは褐色に変色しコルク化した.'アンコール'果実から抽出した1油胞相当量の精油成分を人為的に果皮に注入したところ, 自然に発現するコハン症と同様の斑点症状の発現が認められた.
著者
寺岸 明彦 神原 嘉男 小野 浩
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.386-390, 1998-05-15
参考文献数
8
被引用文献数
5 2

1. 非循環閉鎖型養液栽培システムにおける1株当たりの吸液量は, 培養液の濃度がEC 1.2 dS/mの区で5月中旬からEC 1.8 dS/mの区よりも多くなり, 7月下旬には約1.8 liter/株/日に達した.2. 穂木の低温貯蔵の有無および貯蔵日数は挿し木苗の成苗率には影響を及ぼしたが, 定植後の新梢伸長および最下段着果節には影響を及ぼさなかった.3. 挿し木に用いる穂木径が太い方が下位節からの着果が認められた.4. EC 2.4 dS/mとして育苗し, 栽培中のECも2.4 dS/mとした区では約2節目から着果した.5. ファイトトロン内の明期を10時間または14時間として育苗し, 最下段着果節を比較しても差はなかった.
著者
久保 達也 木原 武士 平林 利郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.305-310, 2002-05-15
参考文献数
23
被引用文献数
11

ヒ酸鉛処理がナツダイダイ(Citrus natsudaidai Hayata)砂じょうのクエン酸シンターゼ(CS), NAD依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(NAD-IDH)およびホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)活性に及ぼす影響について調査した.6月4日および7月2日の2回, 樹全体にヒ酸鉛処理を行うことによって, 9月上旬から1月にかけて明らかに砂じょうにおけるクエン酸蓄積が抑制された.ヒ酸鉛処理によって, CS活性は7月下旬から11月にかけて増大し, またNAD-IDH活性は8月上旬以降増大した.しかしヒ酸鉛はPEPC活性には影響しなかった.これらのことから, ヒ酸鉛処理によってTCAサイクルの回転は促進されるが, TCAサイクルへの基質補充量は変化しないために.結果としてミトコンドリアから液胞へのクエン酸輸送量が低下し, クエン酸蓄積が抑制されると考えられた.
著者
山下 裕之 堀内 昭作 平 知明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.249-255, 1993 (Released:2008-05-15)
参考文献数
16
被引用文献数
3 7

本研究は4倍性品種と2倍性品種を用いて交配を行い,その雑種個体獲得効率の低い原因を明らかにするとともに,3倍体作出の効率を高めるための胚培養を行った.交配親には4倍性品種の'巨峰と'マスカット•オブ•アレキサンドリア4倍体および2倍性品種の'マスカット•オブ•アレキサンドリア'と'ジュライ•マスカット'を用いた.1.交配により得られた種子の発芽率,胚形成率および胚乳の発育は自然受粉から得た種子と比べて著しく劣っていた.特に2倍体を種子親にしたものにおいて顕著であった.2.2倍体を種子親にした場合の種子の生育は,自然受粉の種子より勝り,逆に4倍体を種子親にした場合は劣っていた.一方,交配後9週間目における2倍体を種子親にした胚の大きさは,自然受粉の胚と比較してその発達程度に著しい差異は認められなかったが4倍体を種子親にした場合には自然受粉の胚に比べて著しく劣った.3.交配60~70日に胚を無菌的に摘出し,MSの基本培地に麦芽抽出物500mg•liter-1を添加した培地に植え付けた.3倍性胚を発芽させ,その後生長させることに成功した.4.実生個体の根端を観察したところ,57本の染色体が認められ,3倍体であることが確認された.5.ブドウの4倍体と2倍体を交配して3倍体を育成する場合,4倍体を種子親にする方が効率的である事が示唆された.
著者
杉浦 俊彦 黒田 治之 伊藤 大雄 本條 均
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.380-384, 2001-05-15
参考文献数
11
被引用文献数
1 4

特殊な形状から近赤外分光分析法による糖度測定の実用化が遅れているブドウ果実について, 比重と糖度との相関関係の有無を検討した.供試した果房の比重は, 水を使わずに体積が測定できる音響式体積計を利用して測定した.それぞれの果房の糖度は全果粒を採取して搾汁し, 屈折糖度計で求めた.1. '巨峰'の果房における比重と糖度の関係は収穫年次や産地が異なっても安定し, 同一直線上にのった.2. '巨峰'の比重と糖度の関係は16°Brix程度から23°Brix程度の広い範囲で高い相関係数(r=0.981<SUP>***</SUP>)が得られ, また回帰線の実測値と推定値の誤差(標準誤差)は0.35°Brixと低くかった.3. 'キャンベルアーリー', 'ネオマスカット'および'甲州'における果房の比重と糖度の間にも高い相関が認められた.4. 比重と糖度の間における回帰直線の傾きには品種間で有意な差はみられなかった.5. 以上の結果から, 比重測定によるブドウ果房の非破壊糖度測定の可能性が示唆され, また比重測定に音響式体積計が活用できる可能性が示唆された.
著者
山本 雅史 久保 達也 冨永 茂人
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.372-378, 2006 (Released:2006-09-25)
参考文献数
32
被引用文献数
14 52

カンキツにおける自家不和合性は結実不良の原因となることもあるが,単為結果性が備わった場合には無核果の生産につながる重要な形質である.そのため,本研究では主としてわが国原産のカンキツ類65種・品種(以下,品種と略)を供試して,その自家不和合性について解明するとともに,血縁関係のある自家不和合性品種間の交雑不和合性についても検定した.なお,不和合性は花柱内の花粉管伸長によって検定した.レモンは自家和合性であった.ブンタンでは 6 品種すべて,ブンタン類縁種では11品種中 7 品種,ダイダイおよびその類縁種では 6 品種中 2 品種,スイートオレンジおよびその類縁種では 5 品種中‘ありあけ’のみの 1 品種,ユズおよびその類縁種では 5 品種中ヒュウガナツのみの 1 品種,マンダリンおよびその類縁種では28品種中14品種が自家不和合性であった.キンカン類縁のシキキツおよび分類上の位置が不詳の辺塚ダイダイは自家和合性であった.すなわち,本研究で供試したカンキツ全65品種中31品種が自家不和合性であった.交雑不和合性はクレメンティンとその後代である‘ありあけ’との正逆交雑でのみ認められ,両者の不和合性に関する遺伝子型が一致していると推定できた.
著者
向井 啓雄 高木 敏彦 手島 洋二 鈴木 鐵男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.479-485, 1996-12-15
被引用文献数
5 7

秋季にウンシュウミカン樹に強度と弱度の水ストレス処理(それぞれWS-s区およびWS-m区とする)を行い,果実各部位における糖含量を測定した.<BR>水ストレス処理により果皮と果汁の糖,特に還元糖が増加した.果皮においては特にフルクトースの増加が顕著であった.これらのことは水ストレスの程度が強い方が著しかった.<BR>WS-s区では果汁,果皮ともスクロースの増加の抑制が認められた.11月26日においてWS-s区の果皮の糖含量はWS-m区のそれよりも低い傾向であった.<BR>果梗部の方が果頂部に比べて糖含量は低いが,還元糖の比率が高かった.この傾向は水ストレス処理を行っても変化しなかった.<BR>果実部位やストレスの程度にかかわらず,水ストレス処理によって還元糖の増加が認められた.このことは蓄積部位でのスクロースの分解によるものなのか,あるいは転流段階での分解なのかについては今後の検討課題である.
著者
西沢 隆
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.559-564, 1992
被引用文献数
2

無加温のビニルハウス内で育てた一季成り性イチゴ'ダナー'を, 8月23日, 10月23日および11月23日に, 24°/22°C (昼/夜) •16時間日長のチェンバ内に移して育てた.<BR>1.8月23日に株をチェンバ内に移した場合, 葉柄長は上位葉ほど増加した. これは葉柄長当たりの表皮細胞数 (細胞数) が増加したためであった. しかし,葉柄の平均表皮細胞長 (細胞長) は上位葉ほど減少した.<BR>2.10月23日と11月23日に株をチェンバ内に移した揚合にも, 葉柄長は上位葉ほど増加したが, 8月23日に株を移した場合に比べると短かった.<BR>3.11月23日から3°C•暗黒条件下で42日間低温処理した後にチェンバ内に移した場合, 低温処理しなかった場合に比べてどの葉位でも葉柄長が増加した. この際, チェンバ内に移してから伸長する最初の3葉では,葉柄長の増加は, 主として細胞長が増加したことによるものであった. しかし, その後に伸長した葉では細胞数増加の関与もみられ, それは上位葉にいくにつれて大きくなった.<BR>4.以上の結果から, 栄養生長期から休眠期にかけてイチゴの株を高温•長日条件下で育てると, 展開する葉の葉柄の細胞長と細胞数は, 以下のように変化すると推察される.<BR>(1) 株が栄養生長期にある場合, 高温•長日条件下に移してから展開する葉の葉柄は, 上位葉ほど長くなる. この結果は葉柄の細胞数が増加することによるものである.<BR>(2) 秋には株がしだいに休眠状態になる. これと並行してクラウン内で生長中の葉柄の細胞分裂が短日•低温条件下で大きく抑制される.<BR>(3) 休眠期の株では, 葉が出葉期近くまで生長している場合, 低温処理は主として細胞長を増加させる.しかし, 葉柄が活発な細胞分裂期にある場合, 低温処理は主として細胞数を増加させる.
著者
鈴木 鉄男 金子 衛 鳥潟 博高 八田 洋章
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.37-44, 1968

温州ミカンの水分不足度をあらわす指標として, 葉の飽和水分不足度 (W.S.D.) をとりあげ, その日変化, 季節変化をほ場栽植と鉢植えミカンについて実測し, さらに気象要因, 土壌水分との関係について調査を行なつた。<br>1. 夏期における葉のW.S.D.の日変化は, 日の出とともに上昇し, 12時にピークを示し, 以後下降して18時に最低となつた。冬期の日変化は夏期とほぼ同様の傾向を示したが, その動きは小さかつた。<br>2. 葉のW.S.D.の季節変化は, 冬期は1月上旬以降の低温と寒風によつて急上昇し, 2月上旬にピークを作り, 以後3月下旬までは次第に下降した。春期は4月中は低い値で経過したが, 5月上旬は春先の乾燥と新しようほう出などの関係で急上昇して一つのピークを作り, その後は6月上旬にかけてやや下降した。夏期は高温, 乾燥とあいまつて7月上旬から8月下旬にかけて高い値を示し, とくに8月上旬は顕著で最高のピークを形成した。秋期は9月中は比較的高い値で経過したが, 10月上旬からは次第に下降した。<br>3. 冬半期と夏半期における葉のW.S.D.と各気象要因との相関関係をみたところ, 冬半期のW.S.D.は気温, 地温, 降水量, 飽差とそれぞれ高い負の相関を示し, 夏半期のW.S.D.は気温, 地温, 飽差と高い正の相関を示した。<br>4. 秋期から冬期にかけて, 風に当てた場合の葉のW.S.D.の変化をみたところ, 風速が増すにつれてW. S.D.は上昇し, また風に当てた時間が長いほどW.S.D. は上昇した。さらに枝しよう内の蒸騰流の速度は, 風に当てることによつて明らかに大となり, 土壌が乾燥するにつれて流速は低下した。<br>5. 土壌含水量の変化と葉のW.S.D.の関係をみた結果, 夏期は両者の間に高い負の相関があり, 曲線回帰方程式によつて葉のW.S.D.から土壌含水量が推測できた。なお, 土壌水分がほ場容水量~水分当量の間にある時はW.S.D.の変化は緩慢であつたが, 水分当量以上に土壌が乾燥するとW.S.D.は次第に上昇し, その後は乾燥にともなつて急上昇した。W.S.D.が8%になると葉に干害徴候があらわれ, 10%に達すると果実の外観にも干害徴候が出始めた。冬期においては土壌含水量とW.S.D.の相関は認められず, 冬期に葉のW.S.D.が上昇するのはむしろ気象要因によるところが大きいようである。
著者
立石 亮 井上 弘明 山木 昭平
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.586-592, 2001-09-15
被引用文献数
3 17

アボカド果実の軟化における各種グリコシダーゼの役割についてはほとんど知られていない.そこで, アボカド果実の軟化に伴う数種のグリコシダーゼ活性を測定した.β-ガラクトシダーゼ, α-L-アラビノフラノシダーゼおよびβ-グルコシダーゼ活性は果実の成熟に伴って上昇し, 特に, β-ガラクトシダーゼ活性の変動は果実の軟化と一致した.疎水性クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマトグラフィーによってβ-ガラクトシダーゼは3つのアイソフォームに分画され, これらをAV-GALI, AV-GAL IIおよびAV-GAL IIIとした.AV-GALIおよびAV-GALII活性は, 果実の追熟中のどのステージからも検出され, また, ほとんど変化しなかったのに対して, AV-GAL III活性は, 採取後4日目の果実ではじめて検出され, 果実の軟化に伴って増大した.アボカド果実の細胞壁から調整した4つの多糖類画分に対しての各アイソフォームの反応特性を調べたところ, AV-GALIおよびAV-GAL IIと比較してAV-GAL IIIはグアニジンチオシアン酸塩(GTC)可溶性の多糖類から, D-ガラクトース単糖を効果的に遊離した.AV-GAL Iは4つの多糖類画分のどれからも, D-ガラクトースを遊離することはできなかった.従って, アボカド果実における3つのβ-ガラクトシダーゼアイソフォームのうち, AV-GAL IIIがアボカド果実の軟化に最も重要な役割を果たしていると考えられる.
著者
間苧谷 徹 町田 裕
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.41-48, 1980
被引用文献数
6 15

本実験は, 夏季の土壌乾燥が, ウンシュウミカンの果実品質に及ぼす影響を検討し, 更に, はち植え幼木の実験で示した既報(14)のかん水開始時の ψ<sub>max</sub> を, ほ場の樹で再検討した.<br>1. 9月1日の ψ<sub>max</sub> と1果重(果径), 屈折計示度及び遊離酸含量との間には, 9月7日及び12月6日の採取果とも高い相関関係が認められた. 9月と12月とで, ψ<sub>max</sub> と屈折計示度の直線は -14bar 前後で交差し, ψ<sub>max</sub> が -14bar より低下した樹では, 12月の屈折計示度の方が9月より低下した. これに対して, 9月と12月の遊離酸含量の間には, 平行移動に似た関係が存在した.<br>2. 9月1日の ψ<sub>max</sub> と12月6日の果実比重との間には, ψ<sub>max</sub> -11bar 前後を屈曲点に2種類の曲線関係が存在した. すなわち, ψ<sub>max</sub> が -11bar 前後までは,ψ<sub>max</sub> の低下に伴い果実比重は小さくなったが, ψ<sub>max</sub> がそれ以下になると, 逆に果実比重は増加していった.<br>3. 9月1日の ψ<sub>max</sub> と12月6日の果皮の着色程度との関係は余り密接でなく, 両者の間を直線関係とみなして相関係数を求めると, -0.7410であった.<br>4. 果実品質を余り低下させないですむ限界のかん水開始時の ψ<sub>max</sub> は -7bar 以上であり, ψ<sub>max</sub> をそれ以下にしない水管理が重要である. 出来れば, ψ<sub>max</sub> が-5.5bar 前後でかん水することが望ましい.<br>5. ψ<sub>max</sub> が -5.5bar に低下した後, 3mm/day のかん水で, ψ<sub>max</sub> を -5bar 前後に維持出来た. また, このかん水量で適湿区と近似した品質の果実が生産出来た.