著者
深井 誠一 辻 恵太
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.447-452, 2004-09-15
被引用文献数
2 5

四種のアジア原産トランペットユリ(Liliumcentifolium centifolium, L. sargentiae, L. wallichianum, and L. regale 'Album')をシンテッポウユリ(L. × formolongi)品種ホワイトランサーに花柱切断法で交配した.子房胚珠培養法と胚培養を行い雑種植物体の獲得数を比較した.いずれの交配組合せでも子房胚珠培養法でより多くの交雑植物が得られた. rDNAのPCR-RFLP分析により,幼植物の雑種性が確認された.得られた交雑植物は,いずれも白色トランペット型の花をつけ,花粉稔性は低かった.
著者
杉山 慶太 菅野 紹雄 森下 昌三 岩永 喜裕
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.108-116, 1999-01-15
被引用文献数
1

耐裂果性スイカの果皮特性を明らかにすることを目的として, 果皮の硬い品種と柔らかい品種の果皮の組織・細胞構造を調査した.また, 果皮の柔らかい栽培品種'紅こだま', 果皮の硬さが中程度の品種'嘉宝', アフリカ西部から導入した野生種で果皮の硬い系統'Africa 22857'など, およびその交雑後代を材料として果皮の硬さの遺伝と組織・細胞構造との関係を調べた.1. 果皮の硬い品種, F_2, BC_1個体は, 果皮の柔らかい品種, F_2, BC_1個体に比べて緑色組織が厚い傾向があった.また, 表皮から約2000μmまでの細胞は小さくて丸味があり, 単位面積当たりの細胞数が多いことが明らかとなった.緑色組織の内側に存在する厚壁細胞は果皮の硬い品種, F_2, BC_1個体では層状に厚く存在し, 一方果皮の柔らかい品種, F_2, BC_1個体では観察されないかまたは層数が少なかった.2. 細胞壁の厚さと果皮の硬さとの関係は認められなかった.3. '紅こだま'と'Africa 22857'を交雑親とし, このF_1, F_2およびBC_1の果皮硬度を調査したところ, 果皮の硬さは柔らかい側に部分優性遺伝した.4. 果皮の組織・細胞構造は遺伝的特性であり, 果皮の硬い'Africa 22857'の組織・細胞構造がF_2, BC_1個体からも観察された.
著者
礒崎 真英 小西 信幸 黒木 誠 野村 保明 田中 一久
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.354-363, 2004-07-15
被引用文献数
5 10

慣行的なかけ流し方式のロックウールシステム(慣行区)と、我々が開発した培養液をできる限り栽培系外への廃棄量を減らすロックウールシステム(改良区)を用いて、トマト'ハウス桃太郎'の9段穫り栽培を行った。改良区の栽培系外への廃液量は慣行区の9.8%で、大幅に廃液量が削減された。各成分の廃棄量も著しく削減され、削減率はNO3-N 93%、P 99%、K 98%、Ca 87%、Mg 89%、NH4-N 99%であった。改良区の茎長、茎重、葉重および収量は慣行区のそれらと差異がなかったが、茎径は慣行区よりやや細くなり、3果房より上位の果房の平均果実収穫日が3-7日遅れた。改良区では、培地中のCa、Mg、S、Bは、慣行区より2-3倍高い濃度で推移したのに対して、Pは栽培全期間を通して、Kは栽培前半において、それぞれ慣行区より低い濃度で推移した。このPおよびK濃度の低下が茎径が細くなり果実収穫日が遅れた要因の一つであると考えられるので、給液の最適PおよびK濃度についてはさらに検討する必要がある。また、Na濃度は、慣行区では20mg・lier-1前後で推移したのに対して、改良区では栽培後半から次第に上昇し、栽培終了時には135mg・lier-1に達した。今後、改良ロックウールシステムでのトマトの生育・果実収量と原水のNa濃度との関係について明らかにする必要がある。
著者
山本 雅史 奥代 直巳 松本 亮司
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.785-789, 1992
被引用文献数
3 6

カンキツにおけるやくの退化性は,ウンシュウミカンの細胞質を持つ品種を種子親にした場合にのみ出現するとされてきたが,'アンコール'を種子親にし,数品種を花粉親とした交雑実生群においてもやくの退化性を示す実生が出現することが明らかになった.<BR>'アンコール'を種子親に用いた場合,ポンカンを花粉親とするとやく退化性の実生は出現しなかったが,'ミネオラ','マーコット'および'セミノール'を花粉親にした時には,それぞれ61個体中8個体,43個体中10個体および26個体中7個体はやくが退化していた.清見'×'アンコールレの約半数の実生はやくが退化していた.これらの結果から,やく退化性の遺伝子に関して,ポンカンは優性ホモ,'アンコール','ミネオラ','マーコット'および'セミノール'は,ヘテロであると推定できた.また,'ミネオラ'の遺伝子型は分離比から見て他のヘテロ品種とは異なるのではないかと思われた.<BR>謝辞本稿のこ校閲をいただいた大阪府立大学教授河瀬憲次博士に感謝の意を表します.
著者
小森 貞男 副島 淳一 伊藤 祐司 別所 英男 阿部 和幸 古藤田 信博
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.569-577, 1999-05-15
被引用文献数
2

日本で栽培されているリンゴ主要品種の不和合性遺伝子型を交雑試験によって決定する目的で, まず果樹試験場リンゴ支場育成の2品種'はつあき'および'いわかみ'の戻し交雑実生群を用いて実験を行った.'はつあき'戻し交雑実生群には'はつあき'の親である'紅玉'と'ゴールデン・デリシャス'を, 'いわかみ'戻し交雑実生群には'ふじ'と'紅玉'をそれぞれ交雑し, 各交雑組合せごとに和合 : 不和合の分離比を調査することにより, 'ゴールデン・デリシャス'と'紅玉', 'ふじ'と'紅玉'のS遺伝子の共有状態を推定した.その結果'紅玉'と'ゴールデン・デリシャス'はS遺伝子を共有していなとが明らかとなった.一方'ふじ'と'紅玉'はS遺伝子を1つ共有していることが判明した.
著者
河鰭 実之 韓 尚憲 崎山 亮三
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.480-484, 2002-07-15
被引用文献数
3 10

果実による水の蓄積が糖の蓄積と濃度に与える影響をトマト'Brehem's Solid Red'と'81L1204-2'果実において評価しようとした.開花14日後で直径30-35mmの果実を選び, これをアクリル製のパイプで覆って肥大生長を機械的に抑制した.この処理によって開花35日後の果実新鮮重は対照果実の30から40%となった.乾物の果実あたりの蓄積も抑制されが, 乾物率は処理によって増加した.このことは, 糖の流入よりも水の流入の方が処理によって強く抑制され, さらにそれらの流入が独立に変動しうることを示唆した.処理果, 非処理果いずれもフルクトースとグルコールが主要な糖で, スクロースは非常に少ないか検出できなかった.ヘキソース(フルクトース+グルコース)濃度は, 'Brehem's Solid Red'では処理果の方が非処理果より有意に高かったが, '81L1204-2'では有意差は認められなかった.短期間の肥大抑制効果をみるため, 果実を直径30-35mmの果実をアクリル製の容器で覆い, さらに果実と容器の間の隙間をガラスビーズで埋めた.この処理によって果実の肥大は直ちに抑制された.5日間の処理の間, 乾物率はほとんど変化しなかった.ヘキソース濃度は, 非処理果ではほぼ一定だったのに対し, 処理果では, はじめのうちは増加し, その後増加はみられなくなった.糖濃度の変化は, 乾物率の変化とは一致せず, 果実に流入した糖が不溶性の炭水化物ではなく水溶性の糖として優先的に蓄積した可能性が考えられた.
著者
池田 英男 田上 恵子 福田 直也
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.839-844, 1996 (Released:2008-05-15)
参考文献数
15
被引用文献数
2

培養液を流動させない水耕法である培養液静置法(パッシブ水耕) は, 栽培中の培養液管理が不要とされるが, 栽培法は十分には確立していない、本研究においては, 栽培装置を地表面下に設置して春, 秋にそれぞれ施与培養液の濃度を変えてメロンを栽培し, 好適培養液濃度を検討した.メロンは本栽培法で良く生育し, 十分に大きな果実が収穫できたが, メロン植物体の生育や果実の収量,品質からみた好適培養液の濃度は, 栽培時期によって異なった. 春作では園試処方標準濃度の3倍でのみ高糖度の果実が得られたが, 秋作では培養液の濃度の影響は少なかった. 栽培装置を地表面下に設置したために, 根圏の温度は気温の高くなる夏では比較的低く,冬は逆にあまり低下せず, 日変化も少なかった. 本装置は, 簡易な水耕法として, メロン生産には有効であると考えられた.
著者
安木 三郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.52-58, 1984
被引用文献数
1 3

従来, ランの胚あるいは子房培養により幼植物を得るには, 受粉•受精後の胚, あるいはそれを含む子房を無菌培養するという方法が行われてきた. それは, ラン科植物では一般に, 受粉後に胚珠形成が開始されるためと, 受粉後で受精前の胚珠を培養する場合, 試験管内受精させる必要性があるためである. また, 一般にランでは, 受粉から受精まで数ケ月を要する.<br>本実験では, ドリティスを用いて, 受粉後20, 40, 60日目の未発達な胚珠, あるいは胚珠を含む子房をそれぞれ無菌培養し, 幼植物を得ることに成功し, ランの種子繁殖で最も一般的に行われている完熟種子の無菌培養法と比較して, 受粉から幼植物を得るまでの期間が約150日短縮された. また, 受精前に胚珠または子房の無菌培養を開始しても, 受粉していればランの幼植物 (2<i>n</i>) が得られ, 受精が培養中試験管内でも起こり得ることが分かった.<br>子房培養の場合, 受粉後40日目の子房を材料とし,1.0ppm NAAを含む培地を用いることにより安定して多量の幼植物が得られた. 子房は滅菌後両端をナイフで切り取り, 先端 (花弁の付いていた方) を下に向けて培地に置床した. 胚珠培養の場合, 子房を切り開き, 胚珠を取り出して材料とした. 受粉後60日目の胚珠を10ppmNAA, あるいは10ppm BAとココナツ溶液25%を含む培地で培養することにより多くのプロトコーム及び幼植物が得られた. また胚珠培養の場合, 幼植物を多量に得るには, ココナツ溶液 (35%) かショ糖 (2%) が不可欠であることが分かった.<br>本実験により, ドリティスにおいては, 受粉後60~65日に受精が起こるが, それより前の受粉後20, 40, 60日目の子房, あるいは胚珠を培養することにより幼植物が得られることが確認された.
著者
高尾 保之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.778-784, 1998-09-15
被引用文献数
3 4

ホウレンソウの夜間照明について, 施設栽培における生育, 抽だいへの影響を検討した.また, 夜間照明下における品種の限界照度を推定した.1. 照度が高いと草丈, 葉数は増加し, 葉は小型化した.また, 5月播種は11月播種にくらべ照度に対する草丈の増加が少なく, 低照度(2&acd;3lx)から葉長の減少や葉数の増加がおこった.2. 1&acd;25lxの照明下では照度が高いほど抽だい, 開花が促進された.11月播種においては, 'おかめ'など5月播種に用いられる品種の抽だい開始照度は高かった.3. 'パレード'など11月播種の適品種では, 限界照度は3&acd;5lxであった.また, 'おかめ'など5月播種に用いられる品種の限界照度は2&acd;3lxであったが, 'トニック'などの晩抽性品種を加えると13lxと高くなった.
著者
田中 政信 中島 寿亀 森 欣也
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.162-168, 2003-03-15
被引用文献数
3 6 6

サトイモ葉柄用品種育成のための効率的選抜法を確立するために、シュウ酸カルシウム結晶の形成過程、発生時期および組織内分布について検討した。シュウ酸カルシウム結晶は、極めて若いステージの実生の胚軸や葉柄組織の結晶細胞中に、短い針状結晶や砂粒状結晶として出現した。細胞の分化に伴い、これらの結晶は細胞の中央部で、一方は柱状の束晶へ、他方は金平糖状の集晶へと分化した。束晶細胞はその形態的特長から、大型で不整形の非防御的束晶細胞と細長いキュウリ様で、細胞の一方の先端に乳頭状突起を有する防御的束晶細胞とに区別された。また、防御的束晶はわずかな刺激によって崩壊し、多数の針状結晶を細胞外へ飛散させる特性を有していた。実生の幼苗では、非防御的束晶細胞がまず出現し、その後、やや遅れて防御的束晶細胞が出現した。集晶は植物体の生長が比較的進んだ時期から出現した。播種後約60日目に葉柄中の束晶細胞密度は安定した。サトイモの各器官における束晶細胞の分布は、葉身が最も高密度であり、葉柄、球茎の順に低密度となった。また、外部組織は内部組織に比べ束晶及び集晶細胞の分布密度が高くなった。結晶細胞の密度は各器官の通気組織や表皮の近傍の柔組織、細胞分裂の盛んな組織で高くなった。また、結晶細胞の密度は、若い組織が高く、古い組織が低かった。
著者
小西 国義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.107-113, 1980
被引用文献数
5 9 9

キクの普通株及び無低温株に種々の処理を加えて親株とし, 長日下で育成した苗を摘心後15°C•短日に移して茎の伸長と発らい状態を調べ, ロゼット化つまり生長活性低下の誘因を検討した.<br>数年間にわたって無低温(15°C以上)条件下にあったキクは, 継続して低い生長活性を示し, 15°C•短日に移されると, 一部の例外を除いて, 常にロゼット状になった.<br>冬に低温を受けた普通苗は秋まで高い生長活性を示し, 10~11月になって活性が低下した. 活性の低いキクも20°C以上の温度ではよく伸長し, 25°Cではよく発らいした.<br>夏を無高温 (15°C) で, つぎの冬を無低温 (10°C以上) で経過したキクは, 翌年夏まで高い生長活性を示したが, その冬に低温を受けたものより早く活性が低くなった.<br>冬低温を受けた株に, 春及び初夏に高温を与えても生長活性は低下しなかった. キクはいったん低温を受けて長期間生育してのち, 数か月にわたる比較的長期間の高温を受けると生長活性が低下するものと思われる. その際, 低照度が活性低下に促進的に作用する.
著者
岡本 章秀 池田 廣 須藤 憲一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.270-272, 2006-05-15
被引用文献数
1

常緑性ツツジ(種子親)と,キレンゲツツジ(花粉親)との交雑について,花粉親として優れる交雑母本の選定を試みた.キンゲツツジ個体間の各交雑阻害原因および交雑能力の変異を調査するため,キレンゲツツジ9個体の花粉を供試し,マルバサツキ1個体に交雑した.その結果,受精率,種子数/果,白子率,生存率および交雑能力について,キレンゲツツジ個体間に有意差が認められた.キレンゲツツジ遺伝資源番号27026136および27026139を用いた交雑では他を用いた場合に比べて,交雑花当たりの生存可能な実生数が多かった.以上から,花粉親に用いるキレンゲツツジ個体を選定することは,常緑性ツツジ×キレンゲツツジの実生獲得において重要であることが示唆された.
著者
中村 三七郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.305-317, 1935
被引用文献数
1 3

(1) 本實驗に於て根端の採取は3月11日に着手し, 10月21日迄2週間毎に17囘行へり。新梢伸長測定は5月3日に開始し, 10月18日迄1週間毎に行へり。<br>(2) 夏橙の根群の活動は4月上旬に初まり, 5月上旬より7月下旬迄最も旺盛にして, 8月に至れば殆ど衰へ, 9月下旬より10月にかけて再び活動す。概して雨期に盛んなり。新梢は5月中下旬に伸長し, 以後伸長を止め, 8月下旬より9月下旬にかけて秋芽伸長す。<br>(3) 柿はやゝ遲れて5月下旬に至り根群活動を始め, 10月下旬には甚だ衰へたり。梅雨期に盛んにして8月に衰へ, 9月下旬やゝ旺となる。新梢は5月中旬, 7月下旬及び9月上旬を中心として2-3週間伸長し, 伸長速度も5月7月, 9月の順に盛んなり。<br>(4) 枇杷の根群は3月11日には既に活動状態に入り, 10月下旬迄も活動を續く。7月上旬最盛にして, 8月に至り衰ふ。新梢は5月中旬, 7月中旬, 8月下旬より9月上旬にかけ, 各2-3週間伸長し, 5月に於て伸長速度最大なれど, 概して絶えず伸長するものの如し。<br>(5) 梨の根群は5月上旬活動期に入り, 8月上旬迄繼續す, 新梢は7月上旬迄に全伸長の殆ど總てを終る。<br>(6) 以上の結果より考察するに各果樹の根群は梅雨期及び其前後に於て活動盛んなれども, 新梢は一般に雨期に於て伸長緩慢にして, 梨は梅雨初期に於ては伸長盛んなれども終期に近付くに從ひ伸長緩やかとなる。<br>(7) 根群の活動期と新梢伸長期は明かに交互となる。
著者
山川 祥秀 清水 均 櫛田 忠衛
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.454-460, 1982
被引用文献数
5 1

'甲州'ブドウの昭和55年の味なし果と健全果について, 果実の粒径及び粒重と, 主要成分である糖と酸の経時的変化を調べて, 次の結果を得た.<br>1. 味なし果の粒径と粒重の増加曲線は成熟過程中, 健全果とほとんど同じ形を示した. ただし, 味なし果の方が粒径, 粒重ともに終始わずかに大きい値を示した.<br>2. 味なし果の糖度は9月初めの着色の時期までは健全果と全く同じ上昇を示したが, その後は上昇が止った. 健全果はその後も順調な上昇を示し, 収穫期には18~19%まで上昇し, 味なし果との差は6~7%に達した.<br>3. pH の変化については, 味なし果はゆっくりとした直線的な上昇傾向を示したが, 健全果は典型的なS字曲線を示した.<br>4. 還元糖は幼緑果期を除けば上記糖度の場合と同様であった.<br>5. 滴定酸度は8月上旬に味なし果で5.00g/100m<i>l</i>, 健全果で5.15g/100m<i>l</i>の最高に達し, 以後急減して, 収穫期には逆転し, 味なし果0.95g/100m<i>l</i>, 健全果0.86g/100m<i>l</i>となった.<br>6. ブドウ糖と果糖の総量の変化は還元糖の場合と同様であったが, 収穫期に味なし果ではブドウ糖5.2%, 果糖5.7%, 健全果ではブドウ糖8.4%, 果糖9.4%となった. また, G/F値は成熟初期は1で, 9月初めになって1を割り, 収穫期に味なし果で0.92, 健全果で0.89となった.<br>7. 酒石酸とリンゴ酸の総量の変化は滴定酸度の変化と同様であったが, 成熟初期では酒石酸よりもリンゴ酸が多く, 両酸とも味なし果の方が健全果よりも少なかった. しかし, 収穫期にはリンゴ酸よりも酒石酸が多く, 味なし果では健全果よりわずかにリンゴ酸が多く, 酒石酸は少なかった. また, 結合型の酸の割合を計算し, 味なし果で17.4%, 健全果で24.6%の値を得た.<br>'甲州'の味なし果樹の外見的生育経過と収穫量は健全果樹とほとんど違いはなく, 強いて言えば, 味なし果実の方がわずかに着色が劣る程度であった. しかし, 成分的には味なし果の言葉が示すとおり, 糖分が極端に低く, 酸が高く, '水っぽい'ものであって, この変化は着色の始まる9月になって突然に起こるものである.
著者
立花 吉茂
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.409-416, 1976
被引用文献数
2

1. ムクゲの54栄養系の花型を調査し, その外部形態から次の3群•9型に分類した.<br>I. 一重咲群 (25系統)<br>I-a 細弁型 (7系統)<br>I-b 中弁型 (13系統)<br>I-c 広弁型 (5系統)<br>II. 半八重咲群 (20系統)<br>II-a 祇園守型 (ぎおんまもり) (4系統)<br>II-b 花笠型 (はながさ) (7系統)<br>II-c バラ型 (9系統)<br>III. 八重咲群 (9系統)<br>III-a 乱れ咲型 (みだれ) (2系統)<br>III-b 菊咲型 (きく) (3系統)<br>III-c ポンポン咲型 (4系統)<br>2. 一重咲群は, つねに基本数 (5) の花弁の花を持つもの9系統, 5ないし6枚の花弁の花を持つもの12系統, 8ないし11枚の花弁の花を持つもの4系統からなる. 花弁数が, 基本数の2倍に達しても, 同じ大きさの花弁が一列に並ぶため外観上は一重咲である. この群の花の大きさはもつとも変異に富み, 直径7.6cmから13.3cmまで連続した (第1表, 第1,2,3および6図).<br>3. 半八重咲の花は, 内弁が外弁よりも小さいものである. 内弁が小さく, 数の少ないものをII-a (祇園守型), 内弁数の多いものをII-b (花笠型) とした. II-c(バラ型) は, 内弁がやや大きく, 雌ずいの弁化が加わつている系統もあつた. II-aは一重咲同様にねん性があり, II-bはあまり結実を見ず, II-cはまつたく不ねん性で結実しない (第2表, 第4,5図).<br>4. 八重咲群の花は, 外弁と内弁がほぼ同じ大きさのものである. III-a (乱れ咲型) は, 花柱の弁化した花が全体の約1/3を占め, III-b (菊咲型) は, 花弁が小さくて, 多少規則的に配列し, 花柱の弁化した花は全体の1/2~2/3に達した. III-c (ポンポン咲型) は, 小球形で花弁はもつとも小さいが, 花弁数はもつとも多く, 花柱の弁化はすべての花に及んだ. III-c型のいくつかの系統には貫生花が存在し, これらの花は70枚以上の花弁数があつた (第3表, 第7,8図).
著者
Phuong Pham Thi Minh 一色 司郎 田代 洋丞
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.236-242, 2006-05-15
被引用文献数
1

ヴィエトナムのシャロットを遺伝資源として評価するために、北部、中部および南部から集めた系統の遺伝的変異を調べた。これらの系統を佐賀大学のプラスチックハウスで栽培し、形態および生理的形質を調査した。また、RAPD法で全DNAの多型を、PCR-RFLP法で葉緑体およびミトコンドリアDNAの多型を分析した。北部の系統はすべて、葉が開張性で、暗緑色であり、抽苔が遅く、球根形成が早かった。球根の皮の色は、球根形成時には白かったが、収穫後には褐色になった。中部と南部の系統はすべて、葉が半開張性で、若い葉は黄緑色であったが、成葉は暗緑色になり、抽苔が早く、球根形成が遅かった。球根の皮の色は、球根形成の始めにはピンクであったが、成熟すると赤くなった。RAPD分析の結果にもとづいて系統間の遺伝的距離を計算し、デンドログラムを作成した結果、供試した系統は二つのグループに分かれた。一つは北部の系統からなり、他のグループは南部と中部の系統からなっていた。PCR-RFLP分析の結果、供試したすべての系統の葉緑体およびミトコンドリアDNAは、用いた制限酵素すべてで同じバンドパターンを示し、これらの系統は同様な細胞質を持つと考えられた。以上の結果から、ヴィエトナムには遺伝的に異なる二種類(北部型と南部型)のシャロットが存在することが明らかになった。これらが持つ異なる特性は熱帯および亜熱帯のシャロット、タマネギおよびワケギの育種に利用できると考えられる。
著者
土井 元章 虎太 有里 馬庭 弘和 今西 英雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.740-746, 2001-11-15
参考文献数
9
被引用文献数
1 3

フリージア木子の長期貯蔵法が開花時期と切り花品質に及ぼす影響について, 'コート・ダ・ジュール'を用いて検討した.低温貯蔵は, その時期に関わらず, 二階球形成を誘導し, 植え付け後の萌芽率を低下させ, 萌芽後のシュートの生育を抑制した.これに対して, 木子をネット袋に入れて30℃で高温貯蔵すると, 貯蔵期間が長くなるに伴って球の乾燥による枯死(硬化)球の割合が増加するものの, 大木子(平均球重2.6g)を用いれば2月上旬までの貯蔵ではほとんど枯死球は発生せず, 高い萌芽率と旺盛なシュート生育が得られる木子を供給することができた.これらの高温貯蔵球では, 低温貯蔵球に比べて開花が遅れ, かつより長く重い切り花が得られた.これは, 高温貯蔵した木子の植え付け時の茎頂部における分化葉数の増加と茎頂直径の減少による植え付け後の幼若期間の増加によるものと考えられた.中&acd;小木子の高温貯蔵には, 球の乾燥を防止する目的で有孔ポリエチレン袋包装が有効で, 2月上旬まで高い開花能力を有する木子を貯蔵することができた.2月1日に植え付けた木子からは6月上中旬までに十分に市場性のある切り花が生産された.
著者
國分 尚 安藤 敏夫 光山 修司 渡辺 均 塚本 達也 Marchesi Eduardo
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.26-39, 2002-01-15
被引用文献数
1 1

南米ウルグアイの102地点から採集したPetunia axillarisの種子より植物を育て, 園芸的に重要と考えられる3つの花器形質と7つの栄養器官形質を計測し, その変異幅を調査して, 有用と考えられる形質の集中する地域を抽出した.両形質の多くについて, 亜種axillaris, 亜種parodiiおよび2種の中間型の間に有意差がみられた.各群落は株の高さ, 株の幅, 開花時の側枝数の3形質を用いたクラスター分析により次の6つの形態型に分類できた.1)直立・高性, 2)中間型, 3)コンパクト, 4)粗放, 5)小型・ほふく性, 6)大型・ほふく性.これらの形態型と自生地の環境, 特に河岸, 海岸の群落について考察し, また種内分類群との関連についても述べた.さらに園芸的に利用可能と思われる形質をもつ群落とその育種における有用性について考察した.
著者
松井 年行 奥田 延幸 小杉 祐介
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.499-503, 2002-07-15
被引用文献数
1

カイラン20品種の遺伝的関係を12種類の12塩基プライマーと, それら2種類のプライマーを組み合わせて用いたRAPD法により検討した.DNAフィンガープリントの多型性によってカイランの品種は3グループに分類された.第1グループは9品種で, 'Large leaf kailaan'(圓葉白花)の様な白花で縮葉の品種群(8品種)並びに白花か黄花である'Nanjing huanghua (huang)'(南京黄花(黄))の品種群(1品種)を含んでいた.第2グループは6品種で, 'Huanghualenye'(黄花)の様な黄花で濃緑葉の品種群(2品種)と'Huanghuagelin'(黄花格林)の様な黄花で淡緑の品種群(4品種)に分類された.第3グループは5品種で, 白花か黄花の品種の'Nanjing huanghua (bai)'(南京黄花(白))と'Hei'(黒)や'Small leaf kailaan'(尖葉白花)の様な白花で平滑葉の品種群(4品種)に分類された.また, 白花カイランが中国本土から台湾へ広がる過程で, 黄花カイランへ分岐したことが示唆された.
著者
桝田 正治 瀧口 武 松原 幸子
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.641-648, 1989
被引用文献数
12 12

水耕トマトの5段摘心栽培において摘心後に培養液濃度を高め養液成分の濃度変化および果実収量と品質について調査した. また苗齢の違いと養液成分の濃度変化の関連性についても検討した.<br>1. 定植から摘心までは園試1/2倍濃度で栽培したが, この間のEC値, 硝酸態窒素, カリ, リン濃度は常に低下し, カルシウムとマグネシウム濃度は比較的安定していた. 摘心後に培養液を同じ1/2倍濃度に更新するとカリとリンを除いてどの成分濃度も上昇傾向に変わり,EC値も常に上昇した. カリ濃度の変化は小さかったが,リン濃度の変化は大ぎく培養液補給時にゼロになることもしぼしぼあった. 園試標準濃度ではリンを除いてすべての成分濃度が上昇した. また園試3/2倍濃度と高くすると成分濃度の変化域はさらに大きくなった.<br>2. 異なる苗齢において園試1/2倍濃度の変化を調べたところ, 硝酸態窒素, カルシウムについては70日苗で低下し, 105日苗で安定し, 125日苗で上昇した, カリとリンの濃度はどの苗齢でも低下する傾向にあった. マグネシウム濃度は70日苗で安定していたが, 105日苗と125日苗では上昇した. 成分(n′)と水(w′)の吸収量から算出した値(n′/w′)は硝酸態窒素, カルシウムおよびマグネシウムで苗齢の小さいときには当初の培養液濃度より高く, 苗齢の大きいときは低くなった. リンとカリのn′/w′は苗齢に関係なくほぼ一定で培養液濃度より常に高かった.<br>3. 摘心後に培養液を園試3/2倍濃度(EC2.9)まで高めると, 1/2倍濃度および標準濃度に比べて果実のBrix および滴定酸度が高まった. この場合, 果実収量は若干低下したが, 裂果や尻ぐされ果の発生は少なくなった. 以上の結果より, 摘心後に培養液濃度を高めれば収量に大きな影響を及ぼす事なく果実の品質を高め得るものと推察された.