著者
中条 利明 片岡 正治 山内 勧 葦澤 正義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.339-343, 1972
被引用文献数
5

鉢植えの5年生の富有カキについて, 8月上旬~9月中旬 (果実肥大の第II期と第III期の初期) における夜温および昼夜恒温の処理が, 果実の肥大ならびに品質に及ぼす影響を調べた.<br>1. 8月3日~9月21日の夜温処理 (150°, 20°, 25°および30°C) における, 処理終了時の果重は, 30°Cでとくに劣つた以外は各区の間で, はなはだしい相違がなかつた. 果皮の着色は25°Cおよび30°C区でいちじるしく進み, 淡黄緑色を呈し, クロロフィル含量は少なく, その傾向はとくに25°C区でいちじるしかった. 可溶性固形物含量もこれらの区で多かつた. しかし, これらの果実を11月10日に収穫すると, 果重, 果色および可溶性固形物含量の点よりみて, 形質の最もすぐれたのは25°C区であり, 最も劣つたのは30°C区であつた.<br>2. 8月6日~9月18日の間, 昼夜恒温の処理 (15°, 20°, 25°および30°C) をした結果, 処理終了時の果重および果皮の着色度は15°C区で最もすぐれ, ついで, 20°, 25°, および30°C区の順となつた. とくに30°C区では果重がいちじるしく劣り, 果皮も緑色であつた. 可溶性固形物含量も30°C区で最も劣つた以外に, 各区の間でいちじるしい相違がなかつた. 全糖に対する非還元糖の含量割合は, 処理温度の上昇につれて増加した. 10月25日の採取時には, 果重, 果色, かつ斑の発現, 可溶性固形物含量および全糖含量の点よりみて, 果実の形質は20°C区で最もすぐれ, 30°C区で最も劣つた.
著者
川俣 恵利
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.15-23, 1976
被引用文献数
1

当場果樹園に栽植中のナシに光化学スモッグによる被害と思われる症状が見られたので, その被害症状について環境バクロ室で発生した被害を参考にして調べた.<br>1. ナシの徒長枝上の生育旺盛な葉にクロロシス, 褐変およびネクロシス (壊死) の症状が認められた.<br>2. 被害を受けた葉は全クロロフィル, クロロフィルbが著しく減少した. また, 軽症葉ではデンプンが蓄積し, 被害が進行するにつれデンプンは徐々に崩壊した.<br>3. 軽症葉ではO<sub>3</sub>吸収量は著しく増加したが, CO<sub>2</sub>放出量はやや増加した程度で, RQは健全葉より低かつた. 重症葉でもO<sub>2</sub>吸収量は増加したが, CO<sub>2</sub>放出量が減少したため, RQは健全葉の1/2程度であつた.<br>4. 被害葉の無機成分含量は全般的に減少しており, なかでもNおよびMgは軽症でも著しく減少していた. しかし, 重症になるとP, K, Mgはあまり変化がみられなかつたのに対し, NとCaは減少が続いた.<br>5. 被害により著しく減少したRQと全クロロフィル, クロロフィルaおよびbとの間には極めて高い正の相関がみられた. またNと全クロロフィル, Caと全クロロフィル, NとRQ, CaとRQとの間にも0.1%レベルの正の高い相関が認められた.<br>6. 被害症状はオゾンないしPANによるものと類似しているように思われたが, 東京の光化学スモッグは亜硫酸ガスおよび粉じんが多く含まれ, 一酸化炭素や窒素酸化物が低い傾向にあり, 光化学反応のメカニズムが解明されていない現状では, 原因物質について明らかな確証を得るまでには至らなかつた.
著者
稲葉 昭次 山本 努 伊東 卓爾 中村 怜之輔
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.132-138, 1980
被引用文献数
2 3

トマトの樹上成熟果実と追熟果実の成熟様相と食味の比較を行った.'強力五光'については成熟の様相を, また'強力東光'についてはそれに加えて食味面からの検討も行った.<br>mature green stage からの追熟果実の炭酸ガス排出量及びエチレン発生量は,'強力五光'果実では全期間を通じて樹上成熟果実より低く,'強力東光'果実では成熟の開始に伴う増加が遅れた. turning 及び pink stage からの追熟果実では, いずれの品種ともに樹上成熟果実と大差は認められなかった.<br>'強力東光'果実の遊離のABA含量は, mature green stage からの追熟では, 成熟期間中ほとんど増加しなかったが, turning stage 以後の追熟では樹上成熟よりもむしろ多くなった.<br>full ripe stage における食味テストでは, 果色についてはいずれの熟度からの追熟果実も樹上成熟果実と差はなかったが, 肉質, 風味, 甘味及び酸味の評価は mature green stage からり追熟果実は明らかに樹上成熟果実よりも劣っていた. turning stage からの追熟果実では,酸味の評価のみが樹上成熟果実より劣っていたが, pink stage からのものではすべての面でまったく差は認められなかった. このような甘酸味の食味評価の差異は, 果肉部のグルコース及びフラクトース含量ならびにゼリー部のクエン酸含量における差異とよく一致していた.<br>以上のことより, トマト果実は内的及び食味構成面からみて, mature green stage では追熟に対する条件がまだ十分には整っておらず, turning stage になるとそれらがほぼ完全に整うように思われた.
著者
小杉 清
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.50-54, 1953

(1) 1951年及び1952年に東京に於いて, つばぎ4品腫-はぐほう(早), しらたま(早), わびすけ(中), 赤色八重 (晩) 及びさざんか1種の花芽分化期並びに花芽の発育経過を調べた。<br>(2) つばき及びさざんかの花芽分化期は, 6月中旬~7月上旬で, 早生種は晩生種より多少早く分化したが, その差異は比較的少かつた。<br>(3) 花芽の発育は, 胚珠の形成期までは早, 中, 晩の差異が比較的少かつたが, 花粉の形成期に於いて大きく差異が認められた。<br>(4) 開花始は, しらたま10月8日, はくほう10月18日, わびすけ12月9日, 赤色八重3月28日, さざんか11月10日であつた。
著者
伴野 潔 林 真二 田辺 賢二
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.15-25, 1985
被引用文献数
6 21

ニホンナシの花芽形成の機構を探る目的で, 花芽の着きにくい品種'新水'及び着きやすい品種'豊水'を用いて, 新梢上における花芽形成と新梢の各部位における栄養成分並びに内生生長調節物質との関係について比較検討した.<br>1. '豊水'では6月30日にほぼ新梢生長が停止したのに対し, '新水'では'豊水'よりも20日遅れ7月20日に停止した.<br>2. '豊水'の腋芽では, 新梢生長停止後急速に節数が増加し, 花芽が分化•発達した. 一方, '新水'の腋芽では'豊水'よりも20日遅れて7月30日に花芽分化の徴候がみられたが, その後の分化•発達はほとんど認められなかった. また, 最終的な花芽形成率は'新水'で15.5%, '豊水'で79.0%であった.<br>3. 両品種の腋芽において, 全窒素含量にはほとんど差異は認められなかったが, 全糖含量, でんぷん含量及び C/N 率は'新水'の方が'豊水'よりも高く推移した.<br>4. '新水'の茎頂では'豊水'に比べ, 特に生長の盛んな時期にIAA含量及びジベレリン含量が高かった.<br>5. '豊水'の腋芽では, 生育期間を通して'新水'よりもジベレリン含量及びABA含量が低く, 逆にサイトカイニン含量が高かった.<br>以上の結果から, ニホンナシの花芽形成は芽において12枚のりん片が形成された後, 節数が急速に増加するかどうかによって決定されること, さらにこの過程には内生生長調節物質が密接に関連しており, そのうちでも特にジベレリンとサイトカイニンが重要な役割を果たすものと推察される.
著者
勝谷 範敏 池田 好伸
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.121-131, 1997-06-15
被引用文献数
10 7

デルフィニウムを毎月上旬に播種し,定植後は年間を通じて無加温室で栽培し,開花反応の季節的変動を調べた.また,花芽形成過程を観察し,分化と抽台の関係などを検討した.さらに,ファイトトロン内で温度が抽台および開花に及ぼす影響,ならびに自然日長条件で加温栽培した時の抽台に関する品種の特性を検討した.<BR>1.無加温ハウスで栽培すると,デルフィニウムの花芽分化はほぼ周年にわたって認められ,広い温度域で分化した.播種から花芽分化までの期間は,定植後から高温となる時期は短く,定植後から気温が低下する時期は長くなり,花芽分化は高温によって著しく促進された.<BR>2.20°C以上の高温では幼若期が短縮され展開葉が5枚になると抽台を開始したが,15°Cでは幼若期が著しく延長されるとともに,ほぼ半数は抽台しないでロゼット状態となった.<BR>3.節数と小花数の相関は高く,定植後から高温となる3~7月播種は低節位で小花が分化し,小花数が少ない貧弱な花穂であった.定植後から低温となる8~2月播種では節数が多く,小花数の多いすぐれた切り花が得られた.<BR>4.低温は花芽分化を誘導するバーナリゼーションとしてではなく,ロゼット打破として作用した.すなわち,生長活性が回復して高くなり,生育できる低温の限界温度を拡大させるものとして作用した.<BR>5.デルフィニウムは花芽分化に伴って抽台を開始し,抽台時にほぼ小花数が決定されるので,品質の劣る早期抽台苗を早期に判別することができる.<BR>6.冬季に自然日長で加温栽培すると,品種によってはロゼット化する株が多く発生し,ロゼット化すると抽台が遅れるとともに,後になって抽台した花穂は奇形化して商品性がなくなった.
著者
小林 伸雄 竹内 理恵子 半田 高 高柳 謙治
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.611-616, 1995-12-15
被引用文献数
8 12

本研究では, 一般にDNA抽出が困難とされる木本性植物のツツジ属からのDNA抽出について検討を加えた後, 最近多くの植物で利用されているRAPD (Random Amplified Polymorphic DNA) 法を用いたツツジ品種の同定を試みた.<BR>ツツジ亜属の種群および同亜属を母種とするッッジ品種ではSDS法およびCTAB法によるDNA抽出が困難であったが, 改変CTAB法では全種からDNA抽出が可能であった.<BR>RAPD分析では, 100種のプライマーについて検索したところ, 16種で鮮明な多型バンドが得られ, 特に多くの多型を検出できた2種のプライマー (OPK-19, 20) を品種同定に用いた. 江戸キリシマ (9品種) およびクルメツツジ (14品種) の品種群では, これらのプライマーで得られた多型バンドにより, すべての供試品種を識別できた. また, サツキ品種では'晃山'とその枝変わり品種との識別が可能であった.以上のような結果から, ツツジ品種の同定技術としてRAPD法を適用できることが示唆された.
著者
古平 栄一 森 源治郎 竹内 麻里子 今西 英雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.373-380, 1996-09-15
被引用文献数
5 2

1.<I>Allium unifolium</I>の第1花序の分化は,無加温ハウスでは11月中旬に茎頂で始まり,12月中旬には小花原基形成期,翌年の1月中旬には第1小花が内雄ずい形成期,2月上旬には雌ずい形成期に進み,4月上•中旬に開花した.また,第1花序を着けている茎軸の下位3~4の葉えきのえき芽の茎頂にも花序を分化したが,これは第1花序より約1~2週間遅れて開花した.<BR>2.10月上旬にりん茎を植え付けた後,最低20°Cの加温室で栽培すると,一部の株で開花が見られず,開花しても花茎長が著しく短かったが,無加温室あるいは最低10°Cの加温室で栽培すると,すべての株が正常に開花した.<BR>3.8月1日から9°,15°,20°,25°および30°Cと温度条件を変えて2ヵ月間貯蔵したりん茎の第1花序の発育は低温区ほど進んでいた.これらのりん茎を最低夜温10°Cの加温室で栽培したところ,低温区ほど開花は早くなったが,開花花序数は少なくなった.<BR>4.貯蔵開始を1ヵ月早め7月5日から5°,10°,および15°Cの温度を組み合わせて3ヵ月間貯蔵したところ,貯蔵終了時の花芽の発育段階は10°Cに連続しておいた区が最も進み,開花も早かった.<BR>5.ハウス内で栽培した株から収穫したりん茎を用いて10°Cで3ヵ月間貯蔵したのち,最低夜温を10°Cに維持したハウス内で栽培すると,開花は12月下旬まで早まった.
著者
小西 国義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.286-293, 1975
被引用文献数
3 6

秋季長日条件下で伸長中のキク苗に低温処理を与え, その後種々の温度のもとで栽培して, 生長とくに伸長生長と開花におよぼす影響を調べた.<br>発根した'岡山平和'のさし芽苗を1~3°Cで, 0, 10, 20, 40日間処理して定植し, 摘心ののち短日として日最低夜温を5°, 10°, 15°, 20°Cとして栽培した. その結果は, 低夜温では無低温苗および低温処理期間の短い苗はロゼツト状になつたが, 処理期間の長い苗は比較的によく伸長し, 開花した. 高夜温で栽培した場合は, 低温処理期間の長い苗はもちろん, 無低温苗もよく伸長して開花した.<br>'宇宙船', '玉織姫'について, 1~3°C•40日間の低温処理をして, 無処理苗とともに夜温5°, 10°, 1°5, 20°Cで栽培した結果は'岡山平和'の場合とほぼ同様であつた.<br>これらの結果から, 秋冬季のキクは低温を経験することによつてその後の生長•開花可能な温度範囲が拡大し, より低い温度でもよく開花するようになることが結論できる.
著者
岩間 誠造 岩井 茂松
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.249-256, 1954

(1) 秋キクの各品種の感温性及び感光性を知つて, 栽培上の参考に資せんとして, 1952年にはまず代表的な17品種を供試した。試験方法は, 標高 360m の長野と, 同じく 850m の長村の二ケ所で, 標高差を利用して気温の相異するようにし, 5月5日定植して7月1日より一般遮光方法によつて, 日長を10時間に制限した短日20日間, 30日間夫々継続した両短日区と, 無処理の自然日長区の3区を設けた。<br>(2) 生育調査結果では, 定植前, 処理前に於ける草丈, 葉枚数とでは栽培地, 処理区, 品種間に差はみられなかつた。<br>(3) 同じ秋キクも, 立波, 信濃川, 白馬の3品種は, 遮光有無にかかわらず花芽分化し, 日長条件には影響されない。一方その他の14品種は, 日長時間が14時間30分以下の日長条件となると, 花芽形成をするが, 品種間に遅速があり, 新東亜, ピンク東亜, 新月友, みのり, の4品種は比較的早い品種群のようである。<br>(4) 花芽の発育は, 花芽形成のときと同様で立波, 信濃川, 白馬の3品種は, 温度条件のみに支配され, 気温の低い地帯では開花期は遅れる。<br>一方他の14品種は, 13時間30分以下の日長時間で花芽の発育 stage は進むが, この場合ただ日長条件のみならず温度条件の影響もうけるようである。即ち新東亜, ピンク東亜, 新月友, みのりの4品種は比較的高温状態でも, 短日条件下であれば花芽は発育する。<br>また, 岡山平和, ラスター, H. コイド, 白サギ, むらくも, 玉織姫, 国の光, 紅潮, 紅秋, 初がすみ, の10品種は, 短日条件でも高温状態では, 花芽の発育は緩慢となる。<br>(5) 短日20日程度では, 花芽の不完全分化, いわゆる柳芽発生が多く, 実用的にこの程度の短期間の遮光で順調に開花する品種は見当らなかつた。<br>短期短日条件下では花芽発育程度の如何によつて柳芽発生も相異し, この花芽の第二相の発育も, 日長及び温度条件で左右される。<br>(6) 秋キクの品種の早晩性は, 花芽分化及び開花が, 温度条件にのみ左右される品種群では, 栽培地の気温に支配される。一方花芽分化, 開化が日長及び温度条件に左右される品種群では, 短日条件による花芽分化の早晩によるものでなく, 分化後開花までの所要日数で決るようである。<br>また, 遮光栽培には所要期間のなるべく短い品種を, とり入れた方が合理的のようである。<br>(7) 供試品種をその感温性及び感光性で分類するとつぎのようになるであろう。<br>I 温度型品種: 花芽分化及び開花が, 日長条件に影響をうけないで, 温度条件にのみ支配される品種群, 立波, 信濃川, 白馬。<br>II 日長型品種: 短日下 (花芽分化=14.5時間以下, 花芽発育=13.5時間) で, 花芽分化, 開花の行われる品種群。<br>(1) 日長型であつて, この場合比較的高温条件でも花芽が発育し, 開花期が促進される品種。新東亜, ピンク東亜, みのり, 新月友。<br>(2) 日長型であつて, この場合比較的高温条件だと花芽の発育は緩慢となつて, 開花期が遅延する品種。岡山平和, ラスター, H. コイド, 白サギ, むらくも, 初がすみ, 玉織姫, 国の光, 紅潮, 紅秋。
著者
景山 詳弘 小西 国義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.905-911, 1996-03-15
被引用文献数
5 2

切り花ギクの養液栽培法を確立する目的で, 輪ギクタイプの'秀芳の力'を用いて, 窒素施肥基準曲線による培養液管理法を試みた.<BR>1.本実験に用いた窒素施肥基準曲線は, 以前の研究の結果から作成したものであり, 窒素吸収曲線を基礎として, 生体重の増加速度に基づいた生長曲線との関連から, 栄養生長を抑えるように修正したものである (第1図).<BR>2.窒素施肥基準曲線に沿って1週間毎に窒素を施肥した区を1.0倍区とし, この区の施肥量の0.8倍量および0.6倍量を施肥する区を設けた. また, 1週間毎に培養液の窒素濃度を修正して100ppmに維持する区も設けた. いずれの区も窒素以外の肥料要素は別に施肥し, それぞれ不足しないような濃度に保った.<BR>3.'秀芳の力'を7月4日に挿し芽し, 湛液式の水耕装置に植え付け2本仕立てとして栽培し, 11月9日に収穫した. 栽培はビニルハウス内で行い, 日最低気温16°C以上とした.<BR>4.キクは1.0倍区と0.8倍区で正常に生育開花し,商品価値のある切り花となった. 0.6倍区では生育が悪く貧弱な切り花となった. 100ppm維持区では, 栄養生長がおう盛になりすぎ, 花と葉のバランスが悪くなって, 切り花品質が低下した.<BR>5.窒素施肥基準曲線に基づいて施肥した3区では,窒素はそれぞれの施肥直後の2~3日以内ですべて吸収されたので, この方法は一種の窒素供給制限法である. また, 100ppm維持区の総窒素吸収量は, 1.0倍区の総吸収量の1.41倍であった.<BR>6.この施肥曲線に沿って施肥していく場合, 窒素施肥量を100とした窒素以外の多量要素の施肥量の割合はP=10~15, K=100~120, Ca=35~40, Mg=8~10が適当である.<BR>特許出願この論文の一部は「切り花ギクの養液栽培方法」として巴バルブ株式会社 (大阪府) から平成5年12月18日に特許出願されている.
著者
細木 高志 木村 大輔 長谷川 隆一 長廻 智美 西本 香織 太田 勝巳 杉山 万里 春木 和久
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.393-400, 1997-09-15
被引用文献数
5 5

RAPD法により14のボタン (<I>Paeonia suffruticosa</I>)品種, キボタン (<I>P. lutea</I>) およびシャクヤク (<I>P. lac-tiflora</I>) 品種および種間交雑5品種の識別を試みた.40種の10merのプライマーを試験した結果, 11種で多型マーカーとして有効な108本のDNAバンドを増幅した. これらのマーカーにより21種•品種が区別でき相互間の類似値が求められた.<BR>その結果, ボタン品種はシャクヤク品種やキボタンと明らかに区別できた. またボタンとキボタンとの種間交雑品種である'金閣', '金鶏', '金晃'およびシャクヤク×'金晃'の'オリエンタルゴールド'の類似値はボタン品種との中間の値を示した. ボタン品種の内, 江戸時代に静岡県から島根県に導入された獅子頭は, 明治時代に大阪府を起源とする他の品種と比べて類似値が低かった. 親子関係にあるボタン品種は両親または片親と高い類似値を示した. RAPDによる品種の類似関係は形態による分類と部分的に一致したが, 花弁のアントシアニジンによる分類とは一致しなかった.
著者
古平 栄一 森 源治郎 今西 英雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.891-897, 1996-03-15
被引用文献数
6 2

アリウム•コワニーの無加温ハウス栽培における生育, 開花習性を明らかにするとともに, 開花に及ぼすりん茎の貯蔵温度および栽培温度の影響について調べた.<BR>りん茎を入手した6月中旬には, りん茎内に3枚の未展開葉が形成されており, 生長点は7月上旬までに葉を1枚分化した後, 葉の分化を停止した. 茎頂は9月中旬に生殖生長に移行し, 第1花序を分化した. この花序は, 10月上旬に小花原基形成期, 11月中旬に外•内雄ずい形成期, 12月上旬に雌ずい形成期に達し, 翌年の2月中旬に開花した. また, 第2花序は, 10月中旬に茎軸の最上位葉の葉えきから仮軸分枝した茎軸の茎頂に分化し, 翌年の3月上旬に開花した.<BR>7月1日から10月1日まで温度条件を15°, 20°,25°および30°Cと変えて乾燥貯蔵すると, りん茎の第1花序の発育は15°Cおよび20°Cで最も促され,25°Cではこれらよりやや遅れた. また, 8月1日から9°, 15°, 20°, 25°および30°Cで貯蔵した場合にも同様の傾向が認められた. 7月1日, 8月1日両貯蔵開始処理ともに, 30°C区では過半数のりん茎が花芽未分化にとどまった.<BR>これら種々の温度区で貯蔵したりん茎を10月1日に植え付け, 最低10°Cの加温室で栽培した結果, 7月1日貯蔵開始処理では, 20°, 25°および30°Cの各温度区では大部分のりん茎が開花したが, 15°C区では開花率が低かった. しかし, 8月1日貯蔵開始処理では9°~30°Cの温度下で開花が認められた. 両貯蔵開始処理ともに, 貯蔵温度が低い区ほど開花が促進されたが, 1りん茎当たりの開花花序数は減少した.<BR>栽培時の夜温20°C区では, 10°C区に比べて第1花序, 第2花序いずれも開花期は促進されたが, 開花時の花茎が短く, 小花数が少なくなった.
著者
長谷川 耕二郎 中島 芳和
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.291-299, 1991
被引用文献数
4 6

着花の少ない'西条'と'前川次郎'の7年生樹を供試し, 側枝を針金の被覆線で結縛処理を行い, 結実や果実品質ならびに翌春の着花促進に及ぼす影響について調査した. なお, 合成サイトカイニンであるKT-30 {N(2一クロルー4ピリジル) -N-フェニルウレア} を夏季に芽に塗布し, 翌春の着花に及ぼす影響についても併せて調査した.<BR>1.6月10日の側枝結縛処理により, 当年の'西条'および'前川次郎'の結実は顕著に増加した. 6月10日および7月1日の処理により, '西条'では果実が大きくなり着色が増進した. また'前川次郎'では果実の着色が増進するとともに糖度が高くなった.<BR>2.6月10日の側枝結縛処理により, 翌春の着花数が'西条'では約3倍, '前川次郎'では約10倍となった.7月1日の処理区でも着花が増加したが6月10日処理区に比べると少なかった. 6月10日結縛処理により当年の'西条'の夏枝の発生が抑制され, また6月10日および7月1日の結縛処理により'西条'および'前川次郎'の翌春の新しょう生長が抑制された.<BR>3.結縛処理により, '西条'および'前川次郎'の当年ならびに翌年の収量が増加した, 特に着果数の多かった6月10日結縛区の増収効果がいちじるしかった.<BR>4.KT-30の芽への塗布処理では, 翌春における着花数が増加することはなく, 対照区と同程度であった.
著者
寧 波 久保 康隆 稲葉 昭次 中村 怜之輔
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.703-710, 1991
被引用文献数
2 4

チュウゴクナシ'鴨梨'の樹上および収穫後の成熟特性をニホンナシ'二十世紀'およびセイヨウナシ'ラ•フランス'と対比しながら調べた.<BR>呼吸活性は3種類とも樹上成熟に伴って増加した.収穫後の呼吸活性は'鴨梨'と'ラ•フランス'では, 収穫熟度にかかわらずクライマクテリック•パターンを示したが, '二十世紀'では, ノンクライマクテリック•パターンであった. 樹上成熟果のエチレン生成は, '鴨梨'では収穫期における落果直前, 'ラ•フランス'では成熟期の後半頃に始まったが, '二十世紀'では過熟になってもみられなかった. 収穫果実のエチレン生成は, '鴨梨'と'ラ•フランス'では明確に認められ, ACC含量とEFE活性もエチレン生成と同調した変化様相を示した. 特に'鴨梨'のエチレン生成量は極めて多く, 最も多量の場合には380nl/g•hrにも達した. また, 収穫時期が早いほど追熟中のエチレン生成量も多い傾向があった.一方, '二十世紀'では樹上ではある程度のACC含量の蓄積がみられたが, EFE活性が低く, エチレン生成は樹上でも収穫後もほとんどみられなかった.<BR>樹上成熟に伴うデンプンの急減と糖含量の増加は3種類ともみられたが, 糖組成は異なり, '鴨梨'と'ラ•フランスは樹上成熟期間を通じて終始果糖含量が最も高かったが, '二十世紀'ではショ糖含量が成熟期間中急増して最も高くなった.<BR>樹上成熟に伴う有機酸含量は, 'ラ•フランス'でリンゴ酸が急増したこと以外にはあまり変化がなかった. 収穫後は, '鴨梨'ではリンゴ酸含量が追熟中一度増加した後減少したが, 'ラ•フランス'では漸減傾向を示した.<BR>果肉硬度はいずれの品種とも樹上では減少し, 特に'ラ•フランス'では著しかった. 収穫後は, '鴨梨'では追熟中に果肉硬度はほとんど減少せず, 収穫時点の硬度を保持していたが, '二十世紀'では漸減し, 'ラ•フランス'では追熟とともに急減した.<BR>以上を総合すると'鴨梨'果実の成熟特性は多量のエチレンを生成するにもかかわらず, 果肉硬度の保持が良好であるという点で, 特徴づけられる.
著者
月 徳 今西 英雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.662-667, 1989
被引用文献数
1

1. ダッチアイリス品種'ブルー•マジック'を供試し, エチレンの処理時期を変えて, りん茎の発芽と開花に対する効果を調べた.<br>2. 6月中旬から30°Cで貯蔵した7及び9cm球を16週まで4週ごとにとりだし, エチレン処理後20°Cで置床し発芽試験を行うとともに, 低温処理 (9°C, 9週間)後20°Cで栽培して開花調査を行った. その結果, エチレンによる発芽促進効果は貯蔵4週後までのりん茎でわずかに認められるのみであったのに対し, 7cm球では4週間以上貯蔵したもので, 9cm球では貯蔵期間の長さに関係なくエチレン処理によりほとんどが開花した.<br>3. 5月中旬から経時的に株を掘り上げ, 2週間乾燥した後のりん茎に対し, エチレン処理の効果を調べた結果, りん茎が休眠中であった早期の掘り上げ球では, エチレンはわずかに発芽促進効果を示したが, 開花率を高める効果をほとんど示さず, りん茎の休眠が浅くなった遅い時期の掘り上げ球では, 開花率を高める顕著な効果を示した.<br>4. 地上部が黄変を開始した5月29日の早掘り球と適期の6月26日掘り球について, 掘り上げ後の室温貯蔵期間を変え, エチレンの効果をみた. 5月29日掘り球では室温貯蔵4週後のエチレン処理により花芽分化率は100%になったが, 6月26日掘り球では翌日のエチレン処理でも95%に達した.<br>5. 以上の結果, エチレンは休眠打破よりも, むしろ開花率を高めるのに顕著な効果を示すことが分った. すなわち, りん茎は高温を受けて休眠が打破され, さらにエチレン処理を受けて速やかに成熟期に移行し, 低温処理後花芽を形成するものと思われる.
著者
山川 祥秀
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.470-478, 1988
被引用文献数
1

ブドウ'シャルドンネ'及び'カベルネ•ソービニオン'のウイルスフリー樹とウイルス汚染樹の果粒の重さと大きさ, 果汁成分の経時的変化を, 1983年 (4年生樹) と1984年 (5年生樹) の2か年にわたり比較調査し, 次の結果を得た.<br>1. ウイルスフリー樹及びウイルス汚染樹の果粒は,'シャルドンネ'では9月中旬最大に達し, その値は両年ともほぼ同じで, 果粒重は2.0g, 果粒径は13.8mmであった。果房重はウイルスフリー樹では着粒数が多いため220g, ウイルス汚染樹は160gであった. 'カベルネ•ソービニオン'では10月初旬最大に達し, その値は両年ともほぼ同じで, 果粒重は1.6g, 果粒径は12.2mmで, 果房重はウイルスフリー樹は230g, ウイルス汚染樹は170gであった.<br>2. 果汁糖度, グルコース及びフラクトース含量は,'シャルドンネ'では9月下旬最大に達し, 1984年のウイルスフリー樹で22.5度 (グルコース10.6%, フラクトース11.0%) で, ウイルス汚染樹で17.2度 (グルコース8.0%, フラクトース8.3%) であった. 'カベルネ•ソービニオン'では10月初旬最大に達し, 1984年のウイルスフリー樹で21.0度 (グルコース9.8%, フラクトース10.2%) で, ウイルス汚染樹で17.2度 (グルコース7.8%, フラクトース8.1%) であった.<br>3. 1984年の完熟期における果汁酸度, 酒石酸及びリンゴ酸含量は, 'シャルドンネ'ではウイルスフリー樹0.76g/100ml (酒石酸0.60%, リンゴ酸0.30%), ウイルス汚染樹0.60g/100ml (酒石酸0.45%, リンゴ酸0.35%) であった. 'カベルネ•ソービニオン'ではウイルスフリー樹0.68g/100ml (酒石酸0.45%, リンゴ酸0.30%), ウイルス汚染樹0.78g/100ml (酒石酸0.60%, リンゴ酸0.35%) であった.<br>4. 'シャルドンネ'について, ウイルスフリー樹で造ったワインは'シャルドンネ'らしい品種特有の香りが強く, 酸味も適当で全体に調和がとれて高品質であった. 'カベルネ•ソービニオン'について, ウイルスフリー樹で造った1984年産ワインは'カベルネ•ソービニオン'らしい品種特有の香りが強く, 調和のとれた上品さを持ち, 酸味と渋味も充分あり高品質が期待できた.
著者
宮崎 義光
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.142-146, 1960

1. 3月25日播種の玉レタス(グレートレークス)の地上部の生長は,5月24日よりやや急激となり6月3日より結球初期(6月13日)までが最も旺盛である。一方葉数の増加は5月24日より6月3日までが最高で結球期に入るとその増加度は漸次低下する。<br> 2. 6月3日の体内生理条件をそれ以前と比べると,葉の含水量,比電導度は減少し,粉末比重,修正濃度は増加しているが,6月13日と比べると前2者はほとんど変化なく,後2者はともに減少している。<br> 3.含水量は生育初期には葉位の上昇につれ減少し結球期には上位葉ほど含水量が大となつているが,これら含水量の葉位別勾配の転換は6月3日に行なわれている。<br> 4.粉末比重は生育初期には葉位の上昇に伴なつて著しく増大し,生育の進むにつれてその葉位別勾配はゆるやかになり,6月21日には外葉部では葉位の上昇に件なつて増加し,球葉外部では葉位の上るにつれてやや減少し球葉内部では著しく増大している。<br> 5.修正濃度は生育初期には上葉位ほど低く,結球期には葉位の上昇に伴なつて増加し,特に球葉部での増加が著しい。<br> 6.比電導度は全生育期間を通じて葉位の上昇につれて低下している。しかし結球充実期の外葉部では値がやや増加し葉位差が少なくなつている。<br> 7. SC/RIは5月24日より6月21日まで葉位の上昇につれて急減しているが,結球期には外葉部の値がやや増加し球葉部の値が減少している。<br> 8.以上の結果から玉レタスでは,生育の進行,結球開始,結球の充実に伴なつて著しい生理的変化が招来され各葉における同化物質の生成・蓄積・転流が起つているが,6月3日には葉内に可溶性物質の著しい蓄積が起り同時にロぜット内部の葉の形成・生長が盛んになつているのでこの時期が結球開始期と考えられる。
著者
赤尾 勝一郎 久保田 収治 林田 至人
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.31-38, 1978
被引用文献数
6 13

春季新生器官の形成に果す樹体内貯蔵窒素としての秋肥施用窒素の役割を明らかにするために, ポット植11年生結実樹2本を供試し, 1974年11月18日もしくは1975年3月1日に <sup>15</sup>N (10atom%) 標識の硝酸カルシウに (Nとして11.4g) を施用したのち, 春葉の展葉のほぼ完了した6月中旬まで樹体内における標識窒素の追跡を行ない, 次のような結果を得た.<br>1. 収穫前21日に与えた秋肥窒素の収穫時の結果枝葉, 未結果枝葉, 果皮あるいは果肉中の全窒素に占める割合は 11.5%, 11.3%, 2.6%, 3.3% であり, 果実に流入する秋肥窒素の量は葉に比べて, かなり低いといえた.<br>2. 掘り上げ解体時までの施用窒素の吸収率は秋肥41.4%, 春肥 25.1% であった.<br>3. 掘り上げ解体時における <sup>15</sup>N 寄与率から春季新生器官に含まれる全窒素量のうち, 約 28% は秋肥窒素に由来し, 約 17% は春肥窒素に由来したものであることが明らかとなった.<br>4. 春季新生器官の形成に供せられた窒素のうち, 約30% は冬期間1年葉に貯えられていたものと推定された.<br>5. 2月26日から5月15日までの間, 1年葉中の全窒素含有率はほとんど変化しないのに対して, <sup>15</sup>N 濃度は確実に上昇しており, このことは冬期間, 1年葉以外の器官に貯えられていた窒素が春季に1年葉を経由して転流したためと理解され, その量は春季新生器官中に含まれる全窒素量の約 25% に相当した.
著者
黒井 伊作
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.301-306, 1985
被引用文献数
5 11

ブドウ'巨峰'のガラス室栽植樹並びに1芽挿しを用い, 石灰窒素 (CaCN<sub>2</sub>として55%含有) の20%温水浸出液及びH<sub>2</sub>CN<sub>2</sub>塗布処理が芽の休眠打破に及ぼす効果を試験した.<br>CaCN<sub>2</sub>をカラス室栽植樹に塗布した春先の発芽状況は12月, 1月, 2月の各処理区で, それぞれ16日, 9日, 5日の発芽促進となり, 休眠の深い時期の処理で発芽促進効果が高く, これまでの実験結果と一致した. 3% H<sub>2</sub>CN<sub>2</sub>処理区では同じ時期の処理で, それぞれ15日, 7日, 4日の発芽促進となり, CaCN<sub>2</sub>区と同じ傾向の休眠打破効果が認められた.<br>一方, 切り枝の挿し木実験では, 12月中の置床でCaCN<sub>2</sub>並びに0.5%及び1% H<sub>2</sub>CN<sub>2</sub>処理区は2~4日の発芽促進であった. 挿し木における発芽促進程度は栽植樹に比較してはるかに低く, また, 挿し木では2% H<sub>2</sub>CN<sub>2</sub>以上の濃度では薬害による枯死芽がみられ, 有効濃度は栽植樹の1/3~1/6でよかった. これらのことは, 切り枝による強い創傷効果が休眠を浅くしたためと考えられた.切り枝の休眠を完了した2月下旬では, CaCN<sub>2</sub>及び1%H<sub>2</sub>CN<sub>2</sub>処理区においても薬害が発生した.<br>本実験の結果からH<sub>2</sub>CN<sub>2</sub>はブドウ'巨峰'の休眠打破にCaCN<sub>2</sub>と同様な効果があった. このことは石灰窒素水浸出液の休眠打破作用の主体が, CaCN<sub>2</sub>の部分的加水分解によって活性型のH<sub>2</sub>NCNを生じ, cyanide ion(CN<sup>-</sup>)として作用することを示唆する.