著者
堀江 秀樹
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.109-113, 2011 (Released:2011-02-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

同一ビニールハウスで収穫したキュウリ果実中の糖含量について日ごとの変化を調査した.果実中にはグルコースとフルクトースがほぼ等量含まれていた.果実中のグルコース(およびフルクトース)の含量は,収穫日によって0.8~1.4%の間で変動した.果実中のグルコース含量と収穫前日の天候との関連が認められ,日照時間が短い場合や遮光処理した場合に,翌日収穫した果実中のグルコース含量が低下した.キュウリ果実中の糖含量は日々変動するため,キュウリの内部品質管理には果実中の糖含量を簡便・迅速に測定できるのが望ましい.そこで,使い捨て型のバイオセンサーである血糖センサーを用い,果実中のグルコースを測定することを試みた.血糖センサーを用いて得た結果は,キャピラリー電気泳動法で分析したグルコースのデータと高い正の相関を示した.試料の前処理は簡単で,結果を得るのに10分程度しか要しないので,血糖センサーを用いたこの方法は,キュウリ果実中のグルコースの迅速定量に非常に有効である.
著者
福地 信彦 本居 聡子 宇田川 雄二
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.277-281, 2004-09-15
参考文献数
18
被引用文献数
2

トマトにおける摘果処理と摘葉や葉面積を増やすための側枝利用などの整枝が、果実糖度と収量に与える影響を検討した。1果房当たりの着果個数を制限しても、総収量、上物収量は増えず、果実糖度の向上には結びつかなかった。摘葉や葉面積を増やすための側枝利用などの整枝を異にしても、総収量、上物収量に差はみられなかった。摘葉は果実糖度を低くし、各果房直下の側枝を利用し1果房当たりの葉数を増やすと、糖度の向上が図られた。
著者
高野 和夫 妹尾 知憲 海野 孝章 笹邊 幸男 多田 幹郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.137-143, 2007 (Released:2007-03-06)
参考文献数
14
被引用文献数
2 4

モモ果実の渋味の近赤外分光法による非破壊測定の方法について検討した.モモの渋味は果肉中の全ポリフェノール濃度と相関が高く,全ポリフェノール濃度が100 g当たり約110 mg以上で強い渋味を感じた.そこで,モモ果実中の全ポリフェノール濃度の推定を400~1100 nmの反射スペクトルから試みたが,誤差が大きく測定不可能と考えられた.しかし,モモのポリフェノールの主要な構成成分であるカテキンとクロロゲン酸水溶液の1100~2500 nmの透過スペクトルを解析すると,1664 nmと1730 nm付近に相関の高い波長域が存在した.そこで,モモ果実の1100~2500 nmの反射スペクトルによる解析を行ったところ,1720 nm付近に全ポリフェノール濃度と相関の高い波長域が存在し,重回帰分析による全ポリフェノール濃度の推定精度はSEP = 14.7 mg・100 g−1FWと比較的高かった.これらの結果から,1100~2500 nmの反射スペクトルを測定することによって,モモ果実の渋味を非破壊的に判別できる可能性が高いと考えられた.
著者
今給黎 征郎 白山 竜次 渡辺 剛史 上野 敬一郎 永吉 実孝 久松 完
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.51-59, 2017

<p>近年,量販店向けの花束加工用にニーズが高まっている切り花長70 cm程度のスプレーギクを"エコマム"と称し,"エコマム"を通年安定的に供給するための生産技術を検討した.現場に普及している直挿し栽培を用いて10 a当たり年4作で24万本出荷することを目標とし,1.効率生産に適した品種の条件,2.栽植様式,3.わい化剤処理による切り花重の改善効果について検討を行った.適品種の条件は,秋スプレーギクと一部作型に夏秋スプレーギクを供試して年4作型を行い,1作80日で栽培できる品種を探索した.その結果,伸長性,早生性(到花日数),揃い(生育・開花)が優れている品種が求められ,秋スプレーギクの'セレブレイト','ピサン'が該当した.ただし高温となる9月開花作型では,それらの特性に加え高温開花性が優れる夏秋スプレーギク品種を用いる必要があることがわかった.栽植様式については,慣行より通路を狭くすることで植付面積を広くとり,10 a当たり4万本から6万本まで栽植本数を増やして,切り花重や花数への影響を検討した.その結果,栽植本数を増やすことで切り花重や花数が減少するものの,通路側のマスを2本植え,内側のマスを1本植えにするなど,植付け方法を工夫することにより切り花重の揃いが向上した.わい化剤散布による切り花重の増加効果については,10 a当たり7万本程度の栽植本数で,過去に輪ギクで効果が認められている方法を応用し,電照打ち切り後にわい化剤を2回散布することで,切り花重が有意に増加し,20 g以上の切り花を6万本以上採花できた.これらの技術を利用することで,直挿し栽培による年4作で,慣行の2倍となる年間24万本のスプレーギクを出荷できることが実証された.</p>
著者
楊 学虎 冨永 茂人 平井 孝宜 久保 達也 山本 雅史
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.227-234, 2009
被引用文献数
2

タンカン果実の連年安定生産技術改善のための基礎的知見を得るために,'垂水1号'を供試して,果実発育,着色,果汁成分,砂じょうの発育および呼吸活性の時期別変化を調査した.果実は7~12月にかけて旺盛に肥大し,それには7~11月にかけての砂じょう重の増加が大きく寄与していた.12月以降,果実肥大は低下した.じょうのう当たりの砂じょう数は7月には収穫時とほぼ同数であった.砂じょう長は8~2月まで緩やかに増加した.砂じょうの呼吸活性は7~11月にかけて急速に減少し,11月以降はほぼ一定であった.果皮の着色は10月から始まったが,果肉の着色より遅れた.糖度(Brix)は10月から増加し,それは主要糖であるスクロースの増加によるものであった.グルコースとフルクトースの含量は低かったが,収穫直前にわずかに増加した.滴定酸含量は8月に最高値を示した後,12月まで急激に減少した.12月以降は1%前後で推移した.滴定酸含量は果汁中で90%以上を占めるクエン酸の変化と一致した.クエン酸以外にリンゴ酸が検出されたが,リンゴ酸含量は終始低かった.<br>
著者
池澤 和広 福元 伸一 遠城 道雄 吉田 理一郎 岩井 純夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.35-40, 2014
被引用文献数
4

湛水処理がサトイモ'大吉'の生育,収量および蒸散に及ぼす影響について,ポット栽培において検討した.湛水処理開始後約120日目の'大吉'の葉柄長は1.3~1.9倍に伸長し,地上部の生育が促進された.また,蒸散量も約2倍に増加した.収量は,畑地栽培用品種の'大吉'は親芋重が1.3~4.4倍,分球芋重が1.6~3.7倍と増収し,湛水栽培用品種の'田芋'同様,湛水栽培における適応性が高いことが示唆された.
著者
越智 靖文 伊東 正
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.43-48, 2012-01-15

果実内発芽し難い1系統と果実内発芽し易い2系統を供試材料とし, 果実内発芽と内生アブシジン酸含量の関係を明らかにするために,カリウム濃度の異なる3種の培養液(2.4,4.2および6.0me・L-1)で栽培した. その結果,果実内発芽し易い系統では,カリウム濃度の低下により1果当たりの種子数が明らかに減少した. しかし, 果実内発芽し難い系統では,カリウム濃度は種子収量に影響を与えなかった. 葉柄ならびに胎座部周辺の果汁中のカリウムイオン濃度は,果実内発芽し易い系統より果実内発芽し難い系統で高かった. 果実内発芽はカリウム施肥量の減少に伴い,果実内発芽し易い系統で増加したが,果実内発芽し難い系統では,いずれのカリウム濃度でも果実内発芽は認められなかった. 胎座部周辺の果汁中のABA含量は,カリウム施肥量の減少に伴い減少した. ABA濃度が異なる水溶液を用い,種子の発芽試験を行ったところ,果実内発芽し難い系統ではABA濃度の増加に伴い種子の発芽が著しく抑制された. 以上の結果から,カリウム施肥量の減少により胎座部周辺の果汁中のABA含量が減少し,その結果として果実内発芽が増加すること,また,果実内発芽し難い系統は,低いABA濃度閾値で種子の発芽抑制があらわれるものと推察された.
著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 大谷 翔子 安場 健一郎 田中 義行 吉田 裕一
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.261-266, 2015 (Released:2015-09-30)
参考文献数
12

生育段階の異なるシュートに対する温度条件がシュッコンカスミソウ‘アルタイル’の形態異常花序発生に及ぼす影響を検討した.シュート長20 cmから2週間15°Cに加温することで,8週間15°Cに加温した場合と同様に,形態異常花序発生が軽減された.2週間加温した個体の切り花長と切り花重は,8週間加温した個体よりも大きくなった.形態異常花序が発生するシュート長と頂芽における花芽分化段階との関係を調べたところ,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期に当たるシュート長が約1~20 cmから15日間の15°C加温で最も形態異常花序が抑制できた.形態異常花序に及ぼす低温の影響を明確にするため,異なる生育段階に対する低温遭遇(7°C)が形態異常花序発生に及ぼす影響を調査した.異なる生育段階に高温(15°C)に遭遇させた実験と同様に,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期までの低温遭遇が形態異常花序発生に大きく関与していた.以上のことから,摘心直後からがく片形成期の期間,株を低温に遭遇させないように温度管理することで,形態異常花序の発生を抑制でき,切り花形質も改善できると考えられた.
著者
阿部 弘 川勝 恭子 大友 英嗣 西島 隆明
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.267-273, 2016 (Released:2016-09-30)
参考文献数
9

エゾリンドウの4年生株における切り花収量の減少要因を明らかにするため,2年生株から4年生株において,塊茎の発達過程と花茎の発生について調査した.2年生株から3年生株にかけて主塊茎の生育は旺盛になり,副塊茎の多くがこの時期に形成された.3年生株から4年生株にかけては,主塊茎の木化が進んで生育が緩慢になる一方で,副塊茎の発達が旺盛になった.株齢による花茎の発生は主塊茎と副塊茎で異なる傾向を示した.3年生株では,主塊茎からの花茎の発生が旺盛であった.これに対して,4年生株では,旺盛に発達する副塊茎からの花茎の発生が盛んになったものの,主塊茎からの花茎の発生が減少することにより,株全体の花茎発生が減少した.主塊茎の頂芽は栄養芽として存続し,側生器官である花茎と副塊茎を分化し続けた.従って,4年生株における主塊茎の発達の停滞は,無限成長性を維持したまま起こると考えられた.
著者
柚木 秀雄 東 暁史 吉岡 正明 薬師寺 博
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.433-438, 2016 (Released:2016-12-31)
参考文献数
19
被引用文献数
1

ブドウ‘安芸クイーン’への環状はく皮処理が,果皮色ならびにアントシアニン合成関連遺伝子群の発現量に及ぼす影響を調査した.着色開始期(満開35日後)における主枝への環状はく皮処理により,果皮色が対照(無処理)区と比較して著しく向上した.また,環状はく皮処理により,主に7月中下旬~8月上旬におけるアントシアニン合成関連遺伝子群の発現量が対照区と比較して有意に増加し,成熟期間を通した累積発現量も増加した.また,アントシアニン含量と多くのアントシアニン合成関連遺伝子群の累積発現量との間に正の相関が認められた.以上のとおり,環状はく皮処理によって成熟期における果皮のアントシアニン合成関連遺伝子群の累積発現量が増加し,これによりアントシアニン合成が促進することが明らかとなった.また,多くの関連遺伝子の発現量が増加しはじめる着色開始期の環状はく皮処理が‘安芸クイーン’の着色向上に有効であることが示された.
著者
福島 啓吾 梶原 真二 石倉 聡 勝谷 範敏 後藤 丹十郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.177-184, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
33
被引用文献数
2

本実験は,吸水種子湿潤低温処理方法がトルコギキョウの生育および切り花形質に及ぼす影響を明らかにしようとした.無処理を対照とし,10°Cの暗黒条件下で5週間の低温処理を播種前または播種後に行う6処理区についてロゼット性の異なる‘キングオブスノー’と‘ロココマリン’を用いて比較検討した.低温処理終了から定植までの育苗は,日最低気温が21.0~25.5°Cの範囲で推移し平均23.0°C,日最高気温が26.0~43.5°Cの範囲で推移し平均37.2°Cの条件の下で実施した.抽苔,発蕾および開花率は,ロゼット性にかかわらず種子低温処理により無処理と比較して有意に高まったが,低温処理方法による差はなかった.ロゼット性の強い‘ロココマリン’において定植から抽苔,発蕾および開花までの日数は,無処理と比較して種子低温処理により有意に減少した.切り花形質は,両品種ともに種子低温処理各区に大きな差はなかった.以上から,高温期に育苗する作型では,種子低温処理を行うことが重要であり,処理方法は低温による生育促進効果に影響を及ぼさないことが明らかになった.
著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 小日置 佳世子 大谷 翔子 田中 義行 吉田 裕一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.161-167, 2014
被引用文献数
1

最低気温がシュッコンカスミソウ'アルタイル'の形態異常花序発生および切り花形質に及ぼす影響を調査した.形態異常花序を異常の特徴と程度に基づき3つのタイプ(1:茎が短いもの,2:2本の茎が癒着,3:ひどく湾曲し変形したもの)に分類した.形態異常花序の発生は初冬から早春にかけて増加した.軽度なタイプ1とタイプ2による形態異常は,開花時期に関係なくほぼ一定の割合で発生が認められたのに対して,切り花の外観を大きく損なうタイプ3は3月開花の個体で大幅に増加した.最低気温(7°C, 11°C, 15°C)が形態異常発生に及ぼす影響を調査したところ,タイプ3は最低気温が低いほど発生率が高かった.一方,切り花長,切り花重は最低気温が高いほど劣ることが明らかになり,形態異常花序発生を抑制したうえで,十分なボリュームの切り花を得るためには11°Cの加温が有効であると考えられた.栽培期間中の低温への積算遭遇時間とタイプ3の発生割合の関係を分析したところ,発蕾から開花までの積算低温遭遇時間と形態異常花序発生の間に相関は認められず,摘心から発蕾までの積算低温遭遇時間と形態異常花序発生との間には有意な相関が認められたことから,摘心から発蕾の期間における9°C以下の低温遭遇が重度の形態異常花序(タイプ3)の発生に関与することが示唆された.
著者
高橋 志津 鈴木 勝治 市村 一雄
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.87-92, 2016 (Released:2016-03-31)
参考文献数
20
被引用文献数
3

糖質とイソチアゾリン系抗菌剤を用いた後処理がダリア切り花の品質保持期間に及ぼす影響を調査した.ダリア‘黒蝶’切り花の品質保持期間に及ぼす影響は,抗菌剤を含む2.5%と5%のグルコースの後処理が有効で,相対新鮮重は5%で最も増加した.そこで,糖質濃度が5%となるように,抗菌剤を含むグルコース,スクロース,フルクトースおよびスクロース + フルクトースを用いた後処理を行ったところ,どの処理も品質保持期間をほぼ同様に延長し,相対新鮮重も増加した.その際,スクロース + フルクトースでは花弁の裏返る症状が少なかった.ダリア切り花8品種にこの処理を行ったところ,すべての品種において切り花の相対新鮮重が増加し,切り花の品質保持期間が延長された.
著者
今給黎 征郎 白山 竜次 渡辺 剛史 上野 敬一郎 永吉 実孝 久松 完
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.51-59, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
18

近年,量販店向けの花束加工用にニーズが高まっている切り花長70 cm程度のスプレーギクを“エコマム”と称し,“エコマム”を通年安定的に供給するための生産技術を検討した.現場に普及している直挿し栽培を用いて10 a当たり年4作で24万本出荷することを目標とし,1.効率生産に適した品種の条件,2.栽植様式,3.わい化剤処理による切り花重の改善効果について検討を行った.適品種の条件は,秋スプレーギクと一部作型に夏秋スプレーギクを供試して年4作型を行い,1作80日で栽培できる品種を探索した.その結果,伸長性,早生性(到花日数),揃い(生育・開花)が優れている品種が求められ,秋スプレーギクの‘セレブレイト’,‘ピサン’が該当した.ただし高温となる9月開花作型では,それらの特性に加え高温開花性が優れる夏秋スプレーギク品種を用いる必要があることがわかった.栽植様式については,慣行より通路を狭くすることで植付面積を広くとり,10 a当たり4万本から6万本まで栽植本数を増やして,切り花重や花数への影響を検討した.その結果,栽植本数を増やすことで切り花重や花数が減少するものの,通路側のマスを2本植え,内側のマスを1本植えにするなど,植付け方法を工夫することにより切り花重の揃いが向上した.わい化剤散布による切り花重の増加効果については,10 a当たり7万本程度の栽植本数で,過去に輪ギクで効果が認められている方法を応用し,電照打ち切り後にわい化剤を2回散布することで,切り花重が有意に増加し,20 g以上の切り花を6万本以上採花できた.これらの技術を利用することで,直挿し栽培による年4作で,慣行の2倍となる年間24万本のスプレーギクを出荷できることが実証された.
著者
黒島 学 市村 一雄 鈴木 亮子 生方 雅男
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.197-202, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
13
被引用文献数
2

エラータム系デルフィニウム切り花において,STS処理後の切り花の銀含量と花持ちの関係,STS処理時における小花の開花後日数とSTS処理効果の関係および前処理におけるスクロース添加の影響について調査した.エラータム系‘オーロラブルーインプ’切り花に0.1,0.2および0.25 mMのSTS溶液を様々な時間で処理した結果,処理直後における小花の銀含量が3 μmol・100 g–1 FW以上で花持ち期間が最も延長された.小花にこの値以上の銀が蓄積された切り花の花持ち期間は,STS処理濃度および処理時間に影響されなかった.小花にSTS処理効果を最大にする銀含量が蓄積されたとしても,処理時に離層が形成されたステージに達していた小花においては,STS処理効果を期待できないことが明らかとなった.エラータム系‘ブルーバード’切り花を0.2 mMのSTSに0,2および4%スクロースを組み合わせた溶液で処理した.その結果,4%スクロースを組み合わせた処理ではSTS単独処理に比べて処理後に開花した小花におけるアントシアニン含量の増加が認められ,花色の発色向上効果がみられた.10°Cで48時間の乾式輸送シミュレーション後においても,花色の発色向上効果がみられた.
著者
松本 和浩 藤田 知道 佐藤 早希 五十嵐 恵 初山 慶道 塩崎 雄之輔
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.211-217, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
20

3倍体で大型の黄色い果皮の品種である‘弘大みさき’を育成した.SSRマーカーを利用した遺伝子型解析の結果,本品種は‘ゴールデンデリシャス’ × ‘デリシャス’系の組み合わせで作出されたものと考えられた.育成地での収穫期は満開後約150日の10月上旬で,リンゴ黄色品種標準カラーチャートで2~3程度の果皮に青味が残る状態が収穫適期であることが明らかになった.果実は450 gを超える大果であり,糖度は12~14°,酸度は0.4%前後の甘酸適和の品種である.有袋栽培を行えば橙赤色の果皮の果実の生産も可能である.贈答用として活用でき着色管理の必要がない省力化品種として普及が期待される.
著者
小泉 丈晴 山崎 博子 大和 陽一 濱野 惠 高橋 邦芳 三浦 周行
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.205-208, 2002-09-15
被引用文献数
3

アスパラガス促成栽培における若茎の生育に及ぼす品種, 低温遭遇量, 株養成年数および性別の影響を検討した.曲がり症は, 低温遭遇にともない発生率が低下し, 曲がり症を発生した若茎に立枯病の病徴である導管褐変がみられなかったことから, 促成栽培における曲がり症は休眠覚醒が十分でないことにより発生すると推定された.2年生株の供試品種いずれにおいても, 販売可能若茎重および若茎収穫本数は低温遭遇量が多い区で増加した.'バイトル'および'ウェルカム'は, 低温遭遇量が少なくても曲がり症発生率が低下し, 販売可能若茎重および若茎収穫本数が増加し, 'グリーンタワー'および'スーパーウェルカム'より休眠が浅いと考えられた.'グリーンタワー'の1年生株の雄株および雌株並びに2年生株の雄株では, 曲がり症発生率および販売可能若茎重から判断すると, 伏せ込み開始時期は2年生株を用いた従来の栽培よりも約2週間の前進が可能であることが示された.
著者
越智 靖文 伊東 正
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.43-48, 2012 (Released:2012-02-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1

果実内発芽し難い1系統と果実内発芽し易い2系統を供試材料とし,果実内発芽と内生アブシジン酸含量の関係を明らかにするために,カリウム濃度の異なる3種の培養液(2.4, 4.2および6.0 me・L−1)で栽培した.その結果,果実内発芽し易い系統では,カリウム濃度の低下により1果当たりの種子数が明らかに減少した.しかし,果実内発芽し難い系統では,カリウム濃度は種子収量に影響を与えなかった.葉柄ならびに胎座部周辺の果汁中のカリウムイオン濃度は,果実内発芽し易い系統より果実内発芽し難い系統で高かった.果実内発芽はカリウム施肥量の減少に伴い,果実内発芽し易い系統で増加したが,果実内発芽し難い系統では,いずれのカリウム濃度でも果実内発芽は認められなかった.胎座部周辺の果汁中のABA含量は,カリウム施肥量の減少に伴い減少した.ABA濃度が異なる水溶液を用い,種子の発芽試験を行ったところ,果実内発芽し難い系統ではABA濃度の増加に伴い種子の発芽が著しく抑制された.以上の結果から,カリウム施肥量の減少により胎座部周辺の果汁中のABA含量が減少し,その結果として果実内発芽が増加すること,また,果実内発芽し難い系統は,低いABA濃度閾値で種子の発芽抑制があらわれるものと推察された.
著者
廣瀬 拓也 田中 満稔 松本 正明 濱田 和俊 尾形 凡生
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.275-282, 2016
被引用文献数
1

軟X線を照射した花粉を受粉してヒュウガナツの無核果形成を誘導する技術の有用性を,慣行法である四倍体の'カンキツ口之津41号'や'西内小夏'花粉の受粉と比較して評価した.ヒュウガナツの慣用受粉樹である'土佐文旦'と,'カンキツ口之津41号'および'西内小夏'の花粉に,500,1,000,2,000 Gyの軟X線照射して実験に用いた.<br>軟X線を照射した花粉の発芽率およびその花粉をネットで花粉遮断した'宿毛小夏'に人工受粉した時の収穫時の着果率は花粉品種にかかわらず照射線量が高くなるにつれ低下する傾向がみられた.完全種子は無照射の'土佐文旦','カンキツ口之津41号'および'西内小夏'花粉の受粉果では,それぞれ23.8個,0.4個および1.5個形成されたが,軟X線照射花粉を受粉すると,ほぼ消失した.種子長10 mmを超える大きな不完全種子も,無照射の'土佐文旦','カンキツ口之津41号'および'西内小夏'花粉の受粉果では1.5個,3.9個および2.3個形成されたが,500 Gyの軟X線照射花粉の受粉果では0.3個,0.2個および0.1個と減少し,1,000 Gy以上の軟X線照射花粉の受粉果では消失した.顕微鏡観察において,無照射の'カンキツ口之津41号'および'西内小夏'花粉を受粉した'ヒュウガナツ'果実では,一部の胚は受粉8週間後にも生存しているのに対して,軟X線照射'土佐文旦'花粉を受粉した'ヒュウガナツ'果実では健全な胚はまったく認められなかったことから,軟X線照射は種子の発達をより強く阻害するものと考えられた.軟X線照射花粉の受粉によりヒュウガナツ収穫果の果実重は小さくなった.ただし,この小果化は,高知県のヒュウガナツ市場で消費者が少核の小さな果実をより好むことから考えれば,果実の価値を大きく損なうものではない.以上の結果より,軟X線照射した花粉を受粉する方法は大きな不完全種子を残さない点において有用なヒュウガナツ無核化生産技術であり,照射線量は500~1,000 Gyが適当である.
著者
前田 敏 真野 隆司 広田 修
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.521-524, 2007 (Released:2007-10-24)
参考文献数
7

葉面散布では散布液が短時間に乾くので,葉は充分に溶液を吸うことが出来ない.葉からの吸収量の増加を目的に散布のかわりに一部の葉を水溶液に浸けて吸収量を計測した.なお,葉からの吸収はアポプラスト吸収であり,試験の単純化のために溶液の代わりに水を用いた. 葉面浸漬によって葉からの吸収量は顕著に増加した. また,葉面吸収の原動力の一部は蒸散にあると思われるので,蒸散と葉からの吸水との水分収支を同時測定した.穏やかに晴れた日には,まず蒸散が先行して高まり,吸水が後を追って増加し,夕方には,両者とも急減した.