著者
西本 裕美 藤森 真一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.22-00209, 2023 (Released:2023-08-20)
参考文献数
14

長期気候緩和シナリオは大規模な温室効果ガス削減策の評価などで極めて重要な役割を果たしているが,その妥当性や実現可能性についてはこれまで評価されていない.本研究は,シナリオの各指標の変化率及び変化速度の分布に着目して,歴史的推移と対比させながら評価する手法を提示し,エネルギー強度,炭素強度,電化率の3指標について,同手法を適用した.エネルギー強度は過去の経験の範囲内であったが,電化率と炭素強度は気候制約の厳しい将来シナリオで過去の経験の範囲から外れる部分が4~5割あった.
著者
福丸 大智 赤松 良久 新谷 哲也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.22-00234, 2023 (Released:2023-08-20)
参考文献数
19

本研究では,中小河川における流域一貫の即時的かつ高精度な河川水位予測実現に向けて,深層学習を用いた河川水位予測モデルを構築し,入出力層に用いるデータの種類および入出力層の構造が異なる複数の計算条件で比較することによって,モデルの高度化について検討した.その結果,集水域内全地点の雨量および水位変化を入力層に用いて集水域内全地点の水位を同時予測するモデルにおいて,ハイドログラフの時系列全体の再現性を表すNash係数がほとんどの水位観測所で0.9以上,ピーク水位の誤差率は10%以下を示し,ピーク水位発生時刻の遅れも他の条件に比べて軽減した.したがって,このモデルを用いることにより,3時間先の流域全体の河川水位をより高精度に予測可能であることが示された.
著者
岩崎 英治 仲井 大樹 山本 寧音
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.23-00035, 2023 (Released:2023-08-20)
参考文献数
12

鋼トラス橋は,他の橋梁形式に比べて,構造冗長性は高くなく,主構部材の損傷により橋梁全体の構造安定性を損なう恐れがある.一方,鋼トラス橋は多くの骨組部材で構成されているため,腐食損傷の発生パターンは多様であり,損傷部位の力学的な合理性に基づいた定量的な健全性の診断方法は確立していない.トラス橋の斜材の断面は,鋼板のすみ肉溶接や部分溶け込み溶接により構成することが多く,溶接部に腐食減肉を生じると分離することがある.そして,腐食切れの範囲が長くなると,圧縮斜材では構成する板の局部座屈を生じる可能性がある.そこで,圧縮斜材の柱としての全体座屈と斜材を構成する板の局部座屈の連成座屈強度による健全性レベルの分類を示す.また,腐食切れ部を含んだ板の座屈強度式,および連成座屈評価式を提案する.
著者
小峯 秀雄 王 海龍 龍原 毅 園田 真帆 村田 航大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.23-00059, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
4

高レベル放射性廃棄物地層処分事業(以下,HLW処分事業)の社会的認知は低く,事業推進に対する国民の理解が得られにくい.HLW処分事業は,巨大な地下施設建設が主体であり,土木工学が寄与できる国家的プロジェクトである.そこで本研究は,土木工学の観点から,学生を対象としたブレインストーミングを実施し,HLW処分事業に関して若者が知的興味を持つ事項や疑問点を抽出した.そして,それらを参照しながらHLW処分事業の認知と地層処分の技術的成立性の理解に資する教育教材の作成を行った.また,市民や次世代へ伝承するための科学コミュニケーターの育成と対話方法の在り方を探求した.これらの成果を高校生を対象に試行的に実践し,HLW処分事業に対する認知の効果が認められた.
著者
安保 秀範 大澤 高浩 葛 平蘭 高橋 章 山岸 勝俊 櫻澤 裕紀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00257, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
26

近年,人工衛星SARデータの活用については社会インフラ設備の維持管理などへの研究が進んでいるものの,恒久散乱点が得られやすいロックフィルダムにおいても,PSInSAR解析による恒久散乱点の変位の計測精度が十分に検証されているとは言い難い.本論文では,既に安定期にあるもののここ数年でも年間最大1cm程度変位しており,外部変形量を連続計測しているロックフィルダムを対象に,Sentinel-1 SARデータを活用したPSInSAR解析を実施し,測量値と解析結果を比較することにより,人工衛星SARデータから把握できる変位の精度を検証するとともに,ロックフィルダムの保守管理への適用性について考察した.ロックフィルダム外部変形の測量値と解析結果の比較により,PSInSAR解析によりmmオーダーの高い精度で計測できることが検証され,保守管理に人工衛星SARデータが活用できる可能性があることを示した.
著者
國井 大輔 喜多 秀行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00211, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
18

過疎地域における生活の足を確保するため,コミュニティバスからタクシーや自家用車を活用した互助的な個別輸送サービスへの転換を図る自治体が増加しているが,もともと人口が少ない過疎地域においては,個別輸送サービスの採算性と利便性を同時に確保することは容易でなく,自治体からの公的支出は年々増加し,現状のままでは立ち行かなくなりつつある状況も見受けられる.本研究では,それらの課題を解決すべく,先に提案したタクシーとボランティア輸送を一体的に運営する公共交通サービスの仕組み「準交通空白地有償運送(仮称)」の社会実装にむけて,法制度上・運用上の課題を洗い出すとともに,課題解決のための対応策を提案した.
著者
杉本 悠真 山口 隆司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00329, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
15

橋梁の主桁接合部に非突出型高力ボルトエンドプレート接合を適用する場合,接合部強度と剛性向上の観点から水平リブの設置が必要となる.しかし,桁断面や水平リブ諸元が接合部強度と剛性の向上に寄与するメカニズムは明らかにできているとは言い難い.本研究は主桁断面,水平リブ板厚を変化させたパラメトリック解析を実施し,これらのパラメータが接合部の強度と剛性に与える影響について検討している.解析の結果,水平リブを考慮した桁の断面二次モーメント,下フランジ板厚およびエンドプレート板厚が,接合部剛性に特に影響を与えることがわかった.また,フランジ断面積が小さく,ウェブ断面積が大きい桁で接合部強度が大きくなる傾向があることを明らかにした.最後に,主部材剛性を確保するための水平リブ板厚の算出法を提案した.
著者
酒井 高良 涌井 優尚 赤松 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00341, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究では,超大規模離散空間におけるFujita-Ogawa (FO)モデルの効率的数値解法を提案する.具体的にはまず,FOモデルにおける主体の確定的選択行動をランダム効用理論(ロジット・モデル)に基づき一般化した確率的FOモデルを提示する.続いて,この確率的FOモデルの等価最適化問題を導出し,さらにその問題が,企業の立地分布を決定するマスター問題と,家計の居住地・勤務地分布を決定するサブ問題とに階層分解できることを明らかにする.ここで,サブ問題はエントロピー正則化付きの最適輸送問題,マスター問題は制約条件付き非凸計画問題の数理構造を持つ.これらの数理構造を活かし,サブ問題に対してはバランシング法を,マスター問題に対しては加速勾配法を適用する階層的最適化アルゴリズムを構築する.
著者
涌井 優尚 酒井 高良 赤松 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00301, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
20

本研究では,一起点多終点ネットワークにおける経路選択DUE配分の効率的解法を開発した.具体的には,まず待ち行列にpoint queueを仮定したうえで,DUE配分を線形相補性問題として定式化した.そしてこの問題と等価な最適化問題に対し,大規模問題に適用可能な効率的アルゴリズムを提案した.数値実験を通して提案解法は,既存研究における数値計算例を大幅に上回る規模の巨大ネットワークに対しても,素朴な解法の100倍から1000倍程度以上の計算効率を誇り,かつきわめて高精度な均衡解が計算できることが示された.
著者
五三 裕太 福島 秀哉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00025, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
37

本稿は,河川管理と地域再生の連携推進に向けた計画概念「河川文化アプローチ」の実践課題に対応するため,日本の「かわまちづくり」施策における河川管理施設の計画検討プロセスの特徴を明らかにすることを目的とし,河川利用推進を図る護岸改修が計画された肱川かわまちづくり第1期計画での整備内容の議論の特徴を分析した.研究の結果,肱川かわまちづくりの関係者の特徴を示し,協議会・ワークショップを通じた整備内容の検討経緯と各関係者の意見の関係を明らかにした.以上から,日本の「かわまちづくり」における計画検討初期段階での河川利用の状況に詳しい主体の参画,および地域住民の河川に対する関心が高いタイミングでの計画検討の展開の重要性を示し,「河川文化アプローチ」の実践展開で留意すべき関係者の特徴と地域特性を指摘した.
著者
宮里 心一 深田 宰史 田中 泰司 花岡 大伸 伊藤 始 鈴木 啓悟 杉谷 真司 宇津 徳浩 井林 康 津田 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.F5-0089, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
56

市町村は多くのインフラを管理しているが,そのメンテナンスに苦労している.特に北陸地方のコンクリート構造物では,塩害やASRによる劣化が生じやすく,早急な対応が望まれる.このような背景を踏まえて本稿では,地元の大学・高専教員が連携して,市町村が管理する道路橋を対象にした,メンテナンスの合理化に向けた支援について論ずる.はじめに,新潟県上越地区・富山県・石川県・福井県の41市町に対してヒアリング調査を実施し,課題とニーズを抽出した.次に,これらを改善すべく,コンクリート橋に対する点検・診断・措置の手順案を策定し,また技術展示会を開催し,さらに実橋を用いた補修効果の評価に取り掛かった.以上により,市町村の実情を起点とした,官学連携による道路橋の維持管理の合理化に向けた実績とその評価を整理した.
著者
池田 隆太郎 柴田 久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00089, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
15

本研究では,大分県津久見川における河川激甚災害対策特別緊急事業を事例として,基本構想から現場施工までに至る事業プロセスを詳述するとともに景観配慮の実現方策について考察した.その結果,1) 事業早期段階における整備・管理主体間の地域の実情を踏まえた目標設定と共有の場づくり,2) 管理者による景観設計方針を引継ぐシステムとともに監修業務にあたれる人的体制,3) 都市との一体的整備を念頭におきながら自由度の高い交付金を激特事業の工期に重ね合わせて取得・活用する工夫が,激特事業等の災害対策事業における景観配慮を実現させる有効な戦略として挙げられた.
著者
出村 嘉史 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.779, pp.779_95-779_104, 2005 (Released:2006-04-07)
参考文献数
40
被引用文献数
1

本研究は, 京都東山の麓にあたる浄土寺・鹿ヶ谷・若王子地域を対象として, 近代化によって変容した景域の形成過程を明らかにするものである. 古地図や絵図, 文書や過去の出版物などの史料と, 地形の分析をもとに, 地域の構成が遷移する様子とその要因を考察した. その結果, 広い田園地帯と山裾に独立して並ぶ社寺を結ぶ限られた道による近世の原形は, 大正11年頃に始まる住居開発の時期に大きく変容したことが分かった. 明治23年の琵琶湖疏水分線の挿入はその重要な基盤であった. 住居地域の開発時には, 住み始めた住人による直接的空間創造と価値の発見に促進されて, かつてより山裾に存在する歴史的領域と, 散策性を得た水辺を含む住宅地の領域の二層構造で特徴付けられる一つの景域へと成長した.
著者
天野 光三 西田 一彦 渡辺 武 玉野 富雄 中村 博司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.2000, no.660, pp.101-110, 2000
被引用文献数
1

近世の城郭における石垣構造の技術的頂点に位置するものとして徳川期初期での大坂城石垣がある. 石垣形状での2次元的曲線および3次元的曲面にみられる構造美や構造形式としての力学的合理性からみて, 城郭石垣は世界的に他に例をみない極めて優れたものである. 本研究では, 歴史遺産としての徳川期大坂城城郭石垣をその構造に着目して土木史的研究を行った. まず, 現場調査と文献調査により過去の崩壊事例を明らかにした. 次に, これらの歴史データの分析をもとに抽出した石垣構造形式の力学的合理性に関して, 平面および断面形状に着目した実証的研究を行った. その中で, 石垣構造の安定性評価法として, 石垣構造比および石垣はらみ出し指数といった工学指標について提案した.
著者
澤田 純男 土岐 憲三 飛田 哲男
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.598, pp.287-298, 1998-07-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1

墓石の転倒に関する研究は古くから行われているが, 墓石の回転現象と地震動特性との関係を明らかにした研究はほとんど見当たらない. そこで本研究では, 強震時の直方剛体の動的挙動, 特にその鉛直軸まわりの回転挙動が生じる原因を, 振動台模型実験及び3次元DEM解析を通して検討した. 直方剛体の回転挙動は, 振動の卓越する方向に回転する挙動と, 入力波の粒子軌跡が回転することによって剛体が逆方向に回転する挙動の2つに分類できることがわかった. さらに, 三陸はるか沖地震の際に回転した墓石の極く近傍で観測された加速度記録を用いてその回転挙動を再現した. これらの検討の結果, 特殊な場合を除けば, 墓石の回転方向は地震動の加速度粒子軌跡の回転の逆方向を表わしていると結論された.
著者
櫻井 春輔 田村 富雄 山地 宏志 Halvor KJORHOLT
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.474, pp.57-65, 1993-09-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
39
被引用文献数
1

欧米では既に多くの岩盤内高圧ガス貯蔵の実績があるが, わが国では鉱業におけるわずかの例を除きほとんどない. 本論文では, 文献に顕われる海外の岩盤内高圧ガス貯蔵の実績を紹介するとともに, 漏気防止工の概念を整理し, 若干の考察を行った. さらに, 神岡鉱山におけるエアレシーバの漏気防止工を紹介し, わが国においても地質条件等を十分に吟味することで, 高圧ガス貯蔵が可能であることを示す.
著者
丹保 憲仁
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.552, pp.1-10, 1996-11-22 (Released:2010-08-24)
参考文献数
16
被引用文献数
2
著者
桑原 弥寿雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:00471798)
巻号頁・発行日
vol.1962, no.78, pp.16-41, 1962 (Released:2009-12-18)

著者は多年路線選定の業務および研究に従事し, 国鉄在職中, 選定を研究しまたは担当した路線の延長は, わが国の内外を通じて, 20000 km に近く, その後, 多少高速自動車道の路線選定にも関係した。本論文はこの経験にもとづき, 路線選定の主体をなす勾配の選定について, 基礎的理論の抽出ならびに選定技術の体系化を試みたものである。基礎理論として, まず最初に路線の価値を構成する要素と条件をあげ, ついで路線の価値比較に関する在来の諸方法について論じ, その批判にたって新たに線路運転抵抗図なるものを提案し, 選定技術に対する応用を論じた。勾配選定に関する基礎的な考察は路線の勾配を形成する要素の中から, 始終点間の高低差, 勾配の長さ, 強度および配列, 最高点, 最低点の高さなどに着目し, 経過地の地形に対する適合方法を述べたものである。また幹線経路の比較, 全国主要幹線の勾配改良について研究し, 勾配選定の具体的研究例を示した。なお, 以上の路線勾配選定に関する研究は, 理論的には, 道路, 特に高速自動車道の路線選定に応用し得るものである。
著者
菅原 操
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.353, pp.1-10, 1985-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
28
被引用文献数
2