著者
清野 純史 三浦 房紀 瀧本 浩一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.537, pp.233-244, 1996
被引用文献数
9

本研究では, 個体個々の動きのみならず群集の全体的挙動をも把握することが可能な個別要素法 (DEM) を用いた群集避難行動シミュレーション手法の提案を行った. そして, 被災時の地下街のような閉鎖空間からの避難行動に対する基礎的な考察として, 避難中の人間が部屋から通路あるいは階段へ移動する場合の群集の動きや, 個々に働く力などの時間的, 空間的変化ついて検討を行った. さらに, 滞留現象に関する理論式を密度関数で表現し, この関数のパラメータをDEMによるシミュレーションによって避難人数, 群集密度, 幅員, 歩行速度などの関数で表現した. これにより, 対象空間全体, あるいはその空間の特定め地点における避難者の行動を時々刻々追跡できるとともに, 群集の流動状況の把握が可能となった.
著者
小林 潔司 上田 孝行
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.744, pp.15-27, 2003-10-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
56
被引用文献数
5 9

本稿では, 伝統的な工業経済学, 信頼性工学における修繕・補修モデルの考え方を述べ, インフラストラクチャ・マネジメントヘの適用可能性について言及する. インフラストラクチャ・マネジメント問題のプロトタイプを一般的な確率インパルス制御モデルとして定式化し, その基本的な解法を示す. また, その特殊型として離散型確率動的計画モデルを定式化するとともに, その活用方法を示す. さらに, IMの高度化のために必要となる研究課題, 中でもプロジェクト会計システム, 制度的メカニズム設計に関わる研究課題の重要性について考察し, 本特集論文の位置づけと今後の研究の方向性についてとりまとめる.
著者
福田 大輔 吉野 広郷 屋井 鉄雄 プラセティヨ イルワン
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.737, pp.211-221, 2003-07-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
26
被引用文献数
2 1 7

“休日には労働の制約が無く, 個人は, 平日には行うことのできないアクティビティを時間や予算の制約下で行うことができる”という考えに基づき, アクティビティ間のトレード・オフ関係に着目して, 休日の活動時間価値を推定する方法を体系的に提示した. まず, 時間制約, 予算制約下の最適化行動モデルにおいて, 各アクティビティの限界効用が異なる場合が生じることに注目し, 時間配分モデル, 活動選択モデルという2種類の行動モデルを導出した. 次に, 仮想データを用いた数値実験を通じて, モデルのパラメータ推定上の諸特性を明らかした. 最後に, 活動時間価値の推定方法と信頼性評価の方法について述べ, その数値実験例を示した.
著者
高橋 浩一 松本 伸 大河内 保彦 龍岡 文夫
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.777, pp.53-58, 2004-12-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
5
被引用文献数
4

りんかい線大井町駅部は, 用地上の制約から, シールドトンネルのセグメントの一部を撤去し, 隣接する立坑間を地中開削し, 接合して構築した. この際下部シールドトンネルが, 水圧300kN/m2を超える東京礫層に位置するため, 止水対策が最重要視された. 工期上の制限から, 薬液注入工法を採用し, 注入を1次, 2次, 補足注入の三段階とし万全を図るとともに, 注入効果を比抵抗トモグラフィ等で確認した. 確認試験結果は注入の良好性を示し, 補足注入も1次注入の1/10以下であった. さらに, 漏水のリスク低減のためのディープウェルを計画し, 三次元浸透流解析で事前検討を行なった. その結果, 大きな漏水もなく, ウェルの水位低下量, 地表面沈下等も予測と矛盾のない範囲で安全な施工が達成された.
著者
⼤⽯ 裕介 広上 新 新出 孝政 ⽥上 直樹 古村 孝志 今村 ⽂彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.24, pp.23-24001, 2023 (Released:2023-12-04)
参考文献数
11

津波避難時の車使用は原則禁止されているが,東日本大震災では車避難により助かった事例もあり検討課題となっている.本研究では車避難があった場合の被災状況予測と,減災に向けた交通制御の検討を,リアルタイムの交通状況を起点に行う手法を検討した.本手法では,商用車プローブデータと道路監視カメラからの断面交通量データにより交通状況をリアルタイムにシミュレーションする.再現された交通状況を初期値とした避難車両の動きの予測を,津波浸水予測と組合せることで,車両の被災地点と台数を算出する.名古屋市臨海部への想定南海トラフ巨大地震による津波に本手法を適用し,車避難台数の増加に対する被災台数の加速度的な増加傾向を確認し,湾岸部からの交通流を優先させる信号制御や津波浸水域外からの車避難抑制による減災効果を確認した.
著者
中村 栄治 小池 則満
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.24, pp.23-24002, 2023 (Released:2023-12-04)
参考文献数
9

大規模地震が発生した場合,名古屋駅周辺地区において,対向人流の交錯による人流交通の閉塞を防ぐための対策として,主要な徒歩による帰宅経路となるすべての歩道を一方通行化することの有効性を,シミュレーションにより量的に評価した.地震による停電により交通信号は無灯火となり,横断歩道では車両より歩行者が優先して通行する条件でシミュレーションを行った.当該地区の都市再生安全確保計画で記された徒歩帰宅者数を基準値とした場合,基準値の 6 倍までの徒歩帰宅者数であれば,一方通行化した避難経路においては人流交通の閉塞を防ぐことができることが明らかになった.この上限値は,歩道上の花壇や建築物による歩道の狭窄,および人流の合流により決まることがわかった.
著者
林 康啓 今井 淳次郎 吉塚 守 鈴木 雅行 重田 佳幸 中川 浩二
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.756, pp.61-74, 2004-03-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

火山噴火による地殻変動や地震などの自然災害が原因でトンネルに変状が発生する場合がある. このような変状が発生した場合には, 既往の基準を参考として各々のトンネルにおいて対応されてきており, 復旧対策工選定のための判断基準の整理が望まれている. 本研究では, 自然災害における復旧対策工選定基準の策定に寄与することを目的として, 有珠山噴火により被害を受けた洞爺トンネルの変状事例を整理・分析した. また, 既往の基準と洞爺トンネルにおける復旧対策工選定基準を比較することで自然災害における復旧対策工選定基準の特徴を整理した.
著者
竹田 京子 佐藤 靖彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.23-00078, 2023 (Released:2023-12-20)
参考文献数
42

本研究では,繰返し移動輪荷重を受ける道路橋鉄筋コンクリート床版の破壊機構に基づいた疲労寿命予測法の構築を目的として,まず,破壊形式を整理して3つに分類し,破壊形式に応じた疲労寿命評価を行う必要性を示した.その後,実験的手法によりRC床版のはり状化部材の疲労破壊機構に基づく残存せん断耐力低下モデルの構築を行った.さらに,配力筋比,圧縮強度,支持条件の差異を考慮したせん断耐力式とS-N曲線式からなる疲労寿命予測法を提案し,輪荷重走行試験における一定荷重および階段状漸増荷重の評価,RCおよびPC床版の疲労寿命評価を可能とした.過去の輪荷重走行試験の実験データとの比較により,提案する疲労寿命予測法の適用性を確認した.
著者
田中 皓介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.22-00356, 2023 (Released:2023-12-20)
参考文献数
27

日本においては公共事業に否定的な世論の存在が指摘されている.多発する豪雨などの災害対策のみならず,より高度な社会的インフラストラクチャーの構築が求められるが,その際には世論の支持を得て公共事業を実施していく必要がある.一方で,諸外国に目を向けると,多くの先進国において公共事業費は増加傾向にある一方で,日本の減少傾向は特徴的なものである.本研究の目的は,米国および英国との比較から,日本における公共事業に対する世論の特徴を明らかにすることである.各国首都に在住の各310サンプルを対象としたアンケート調査を行った.分析の結果,日本の世論の特徴として,非効率さや事業のムダといった否定的論点の関連や,政府や建設企業に対する信頼の低さとの関連が明らかとなった.
著者
内堀 大輔 渡邊 一旭 櫻田 洋介 荒武 淳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.23-00129, 2023 (Released:2023-12-20)
参考文献数
22

地下構造物の長期的な保全のために,通信用マンホールの点検作業を効率的かつ安全に行うことができる自律飛行 UAV(Unmanned Aerial Vehicle)を開発した.地下空間でUAVを自律飛行させるために,レーザと超音波による距離計測センサおよびカメラを用いたUAVの自己位置の推定方法と,推定した自己位置情報を用いた飛行方法を構築した.また,マンホールのような狭小空間の飛行に適したUAVのガード構造を検討した.実寸大マンホールにおけるUAVの飛行検証の結果,地上からマンホールの内部への入孔,マンホール躯体部での移動と画像撮影,マンホールからの出孔,着陸までの一連の飛行動作を完全自動で実現し,点検用の画像が撮影できることを確認した.これにより,点検員はマンホールに入ることなくUAVの撮影画像を用いて点検を行うことができる.
著者
古川 全太郎 笠間 清伸 片山 遥平 秋本 哲平 上野 一彦 堤 彩人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.23-00105, 2023 (Released:2023-12-20)
参考文献数
29

本論文では,浸透固化処理した砂質土を対象に実施された非排水中空ねじりせん断試験結果をもとに,地震時の液状化による構造物被害予測プログラム(FLIP)を用いて地震応答解析を行う際に必要な液状化パラメータを,浸透固化処理土の一軸圧縮強さから適切に設定する方法を示した.加えて,浸透固化処理工法で背後地盤を液状化対策した岸壁を対象にモンテカルロシミュレーションを行い,浸透固化処理部の一軸圧縮強さの空間的ばらつきが岸壁の地震時残留変位に与える影響を確率統計的に分析した.さらに,解析結果を浸透固化処理後の地盤調査に活用することを目的として,調査数に依存して生じる統計的推定誤差を考慮し,岸壁の地震時残留水平変位について信頼性水準に従って要求性能を照査する手法を提案した.
著者
浅枝 隆 田中 規夫 谷本 勝利 Tilak PRIYADARSHANA Jagath MANATUNGE
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.670, pp.73-82, 2001-02-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
23

水生植物は被捕食者に対し捕食者からの隠れ場を提供し, 捕食者の行動に影響を与えるため, 動物プランクトン食魚 (モツゴ) の捕食ならびに遊泳行動を, 餌 (ミジンコ) の密度変化 (0.5, 1, 2, 5, 10, 25 prey・1-1) と沈水型人工植生の密度変化 (350, 700, 1400, 2100, 2800 stems・m-2) のもとで, 実験により調べた. 遊泳速度は抱腹の程度に大きく関係し, かつ餌の密度が増えると減少する, 最大捕食率は平均餌間隔に大きく依存し, それとともに変化する. 植生密度が徐々に増加すると, 植生がない場合に比べて捕食者の捕食効率が減少する. 捕食率と遊泳速度は平均植生間隔と魚の体長の比で良く表現できる. 捕食ならびに遊泳活動は, 魚の1回の移動距離である体長の0.7倍付近で急激に減少することが判明した.
著者
松本 泰尚 Michael J. GRIFFIN
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.703, pp.185-201, 2002-04-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
33

鉛直全身振動暴露時の人体の動的応答特性の解明のため, 被験者を用いた振動実験及び人体動的応答のモデル化を行った. 駆動面で測定した立位及び座位における人体の動質量は, 振動数5~6Hzで最も顕著な共振特性を示した. この主共振振動数域において, 特に腰椎部で脊柱の曲げ振動が発生していることを, 駆動面から身体部位への振動伝達率の測定結果から明らかにした. 立位の場合は腰椎部で軸方向の変形も顕著であったのに対し, 座位の場合は脊柱の軸方向変形はほとんど見られなかった. モデルによる主共振発生メカニズムに関する検討の結果, 立位・座位ともに腹部内臓の鉛直運動の寄与が大きく, 座位の場合は臀部及び大腿部の鉛直方向の変形も動質量主共振の主な要因であることが認められた.
著者
毛利 光男 馬場 直紀 青木 陽士 平澤 卓也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00045, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
19

本研究は,実機による枯葉剤ダイオキシン汚染土壌の実証試験において土壌洗浄の浄化性能を定量的に評価したものである.サイクロンによるダイオキシン除去率は67~87%(平均79.2%)であったが,後段のフローテーションによって除去率は91~97%(平均94.0%)へ大きく向上した.土壌洗浄によって16,000pg-TEQ/gまでの汚染土壌から住宅地(300),緑地・公園(600),商業地・工業地(1,200)のいずれかの基準を満足する浄化土を実際に産出できることを実証した.回収される浄化産物(浄化土+粗粒分)の割合は元土壌の59~74%(平均65%),濃縮残渣の割合は26~41%(平均35%)であり十分な減容化効果が認められた.濃縮残渣の濃縮倍率は1.3~3.8の範囲にあり平均は2.4であった.
著者
保田 敬一 井口 進
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00300, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
15

インフラシステム海外展開を推進していく上で本邦企業受注額を確保・増加させていくことは目標達成のためにも重要である.近年の国際協力に関するインフラ輸出競合国の援助状況を鑑みると,STEPや質の高いインフラ整備をはじめとする日本の円借款の方針も周辺の環境変化にうまく対応しているとは言い難いのが現状である.本研究では,円借款事業の本邦企業受注状況を整理する.そして橋梁を対象にプロジェクトの内訳を調査した後,STEPの適用状況を整理し,インフラ輸出の実績を伸ばしていくための方策について考察する.
著者
丸山 記美雄 上野 千草
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00136, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
17

本研究の目的は,アスファルト混合物が水の存在や凍結融解が作用することで受ける影響を実験に基づいて定量的に評価することにある.室内試験によって,アスファルト混合物は水が浸透し凍結融解作用を受けることで,骨材飛散やひび割れに対する抵抗性が低下することを確認した.さらに,その影響程度を定量的に評価した結果,凍結融解作用が及ぼす影響は水分の含浸のみが及ぼす影響と比べても大きなものであると評価された.また,凍結融解作用はアスファルト混合物の空隙を増加させるが,アスファルトモルタル内部に元々存在する空隙を拡大させるだけでなく,骨材とアスファルトモルタルの境界面に沿って新たに空隙を形成しながら進行することや,混合物の骨材粒度や使用するアスファルトの種類によって凍結融解抵抗性が異なるなどの知見も得られた.
著者
大原 涼平 下村 匠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00062, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
36

シラン系表面含浸材を用いたひび割れ補修による水分浸透抑制効果を把握するため,シラン系表面含浸材を塗布したひび割れを有する供試体を屋外暴露し,質量の経時変化を測定した.その結果,ひび割れを有する供試体にシラン系表面含浸材を塗布した場合,ひび割れによる吸水の促進を抑制することが明らかとなった.また,温湿度の変動・降雨・ひび割れの影響を考慮したコンクリートの水分移動解析を用いた検討より,シラン系表面含浸材を用いたひび割れ補修による水分浸透抑制効果は含浸部の吸水の抑制と乾燥・吸湿時の水分移動の低減であることを明らかにした.
著者
瀬木 俊輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00140, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
25

本研究は,建設産業の役割を明示的に考慮した動学的確率的一般均衡モデルの定式化を行い,国土の災害リスクと,建設産業の最適な規模(資本ストックや雇用者数)の関係を分析する.分析の結果,以下の知見が得られる.長期にわたり災害に見舞われていない平常時において,災害リスクの存在が建設産業の最適規模を増やすかどうかは,家計のリスク回避性向に依存する.リスク回避性向が高い場合には,平常時の建設産業の最適規模は増え,リスク回避性向が低い場合には,最適規模は減る.日本においては,災害保険のリスクプレミアムの高さを考慮すると,災害リスクの存在は,平常時における建設産業の最適規模を増やすと考えられる.災害リスクの向上が顕在化したときには,可能な限り速やかに,建設産業の規模を最適な水準まで拡大すべきである.
著者
河野 達仁 嶌 万希音 祢津 知広 水谷 大二郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00030, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
32

各自治体には財政制約があり,社会基盤維持補修費が高くなると,他の支出を圧迫する影響や追加的財政収入により生じる死荷重といった公的資金の限界費用(MCF)を考慮する必要がある.本研究では,内生的に変化するMCFを考慮して橋梁の補修施策の動学的最適化を行う.数値分析の結果,1)MCFが低い状況では予防保全の割合が高く,MCFが大きいと事後保全のみの施策が最適となる.2)時間割引率が高いと事後保全のみが最適であり,時間割引率が低いとMCFが低いと予防保全と事後保全の組合せが最適である.3)劣化した橋梁が多い場合,早期補修を行う必要があり,将来世代の効用が現世代よりも高くなる.4)ライフサイクルコスト最小化施策はMCF>1の状況の施策と異なり厚生損失を生むことを示す.
著者
宮﨑 友裕 森田 哲夫 木之下 僚太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00166, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
10

本研究では,DMOによる観光満足度調査の際,来訪前の期待度を合わせて収集・分析することで,DMOが自地域の代表的な観光施設の評価・改善点の把握につなげることを試行した.調査では道の駅の各機能について,来訪者の事前の期待度と来訪時の満足度,総合満足度を各5段階で収集した.集計・分析の結果から,「道の駅」来訪者の期待度の強い項目として駐車場・トイレ・物産品販売を得た.道の駅総合満足度を目的変数とした重回帰分析による満足度モデルでは,駐車場の満足度と期待度の差分を有意な説明変数として得た.来訪者は駐車場に関して事前に道の駅の他の機能に比べ強く意識している可能性が示された.期待度が大きい項目では,事前の情報提供の改良等により総合満足度を向上できると考える.