著者
竹口 祐二 鈴木 聡士
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00074, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
18

近年,我が国では高齢者の運転免許自主返納者が増加している.さらに,地方部では公共交通の衰退や生活施設の統廃合が著しく,高齢者にとって移動手段の確保は生活の質や定住性の確保に関わる深刻な問題となっている.そこで本研究では,徒歩,運転,被送迎,公共交通の選択可否に着目したカテゴライズを行い,外出状況,主観的健康感,主観的幸福感,定住意向といったQOL(Quality of Life)に関する評価指標の属性差異を分析した.さらに,分析の結果,主観的幸福感の低かった運転依存群を対象にその要因分析を行った他,クラスター分析を活用して移動手段属性と転出可能性との関係性を考察した.これらの分析から,地方部の高齢者のQOL向上や定住性確保に向けて,移動手段確保の重要性とその施策方向性検討に関する示唆を得た点が本研究の特長である.
著者
黄 宇成 川端 祐一郎 高野 裕久 宮沢 孝幸 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00047, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
6

COVID-19の感染拡大を踏まえ,度重なる緊急事態宣言が発令されたのにも関わらず,医療体制の緊迫,そして過度な自粛による経済の後退や社交の減少などの問題が存在する.また,COVID-19の危険性やワクチンの接種に対する正しい認識は広まっておらず,医療関係者の意見より,政府の見解や社会の空気が世論に大きく影響しているのが現状である.そこで本論文は,大阪府の医師に対しアンケート調査を実施し,236名分の回答から,COVID-19対応の医療現場にあるべき行政支援策,COVID-19の法的な位置づけの妥当性,そして新型コロナワクチンのリスクや医療関係者の接種への態度を,COVID-19治療経験の有無に分け,統計的に検証した.こうした知見は,都市・地域の活力増進や公衆衛生増進に向けた公的実践に資すると期待できる.
著者
松原 仁 屋比久 雄斗 西村 伊吹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00328, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
39

短繊維材を土に混合することで土の靭性を高めることができる.短繊維材には,鉱物繊維,人工繊維,天然繊維等があるが,繊維の経年劣化に伴う補強機能の低下が懸念される.したがって,繊維材の効果を持続させるためには,劣化を抑制できる新しい技術が必要である.本研究では,天然由来および人工の繊維を混合した砂試料に微生物を添加し,繊維材の劣化抑制効果について検討した.室内実験の結果,天然由来の繊維材を混合した砂試料において,繊維材表面・内部に多くの炭酸塩が析出し,繊維材を保護することが明らかとなった.また,炭酸塩の析出過程を明確化するために,反応拡散理論に基づく数値解析を実施したところ,天然由来の繊維で見られた保護作用には溶媒中の各種イオンの分散抑制が深く関与していることが明らかとなった.
著者
岡本 駿一 中田 弘太郎 長谷川 琢磨 野原 慎太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00277, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
27

放射性廃棄物の地層処分の安全評価では,放射性核種の岩石への収着による移行遅延を定量的に評価することが重要であり,トレーサー試験は評価方法の1つと考えられる.原位置トレーサー試験では,岩石の収着特性を直接評価できる利点がある一方で,割れ目内の流動場等の試験条件を完全に制御することは難しく,評価される収着特性への試験条件の依存性や妥当性に関する検討は十分でない.このため,本研究では,送液流量を変えた室内トレーサー試験を実施し,評価される収着特性の依存性と妥当性を評価した.その結果,岩石マトリクスの遅延係数は送液流量に関わらず同程度となり,バッチ試験の結果とも整合した.これは,原位置の試験環境が理解/制御できれば,原位置トレーサー試験においても安全評価に資する収着特性を評価できることを示唆する.
著者
羽田野 袈裟義 荒尾 慎司 野田 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00318, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
21

底流と越流が複合したゲートは底流方式と越流方式の利点を保ちながらそれぞれの方式が有する欠点を回避できる可能性があり,流域治水の面から期待される.しかしながらその定量的な評価を目指した研究の成果で設計に耐える十分なものはないようである.本研究では,現実で重要と考えられる流れの組合せとして底流(自由流出・潜り流出)と完全越流が複合したチェックゲートをすぎる流れについて,基礎的実験により水深と流量の間の関係を検討すると共に,底流と越流の流量を既往の研究成果を利用して個別に評価しその合計の流量を見積もることを試みた.得られた合計流量の計算値と実験値との比較から,流量の計算値は一定の水理条件の範囲内で実験結果と良好に一致することが示された.
著者
齋藤 正文 花立 麻衣子 伊藤 英恵
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00177, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
10

周防灘は瀬戸内海における最も広い海域であり,対岸距離が長く,入り組んだ湾形状が多く全体的には南向きの海岸であるため,台風時における高潮の影響を受けやすい.本研究では,周防灘に影響を与えた過去の台風と高潮による潮位偏差を整理し,大きな被害をもたらした高潮について,経験的台風モデルと非線形長波モデルによる再現計算を実施した.さらにT9918等の実際の台風経路を基本に平行移動による台風コースを幾通りも設定し,最大規模の高潮の推算を行った.周防灘沿岸方向の潮位偏差の発達と台風経路との傾向が明らかとなり,観測値の潮位偏差を元に最大規模の確率年についても検討した.
著者
有井 賢次 渡邊 学歩 武智 国加 清水 則一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.23-00002, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究は,既存橋梁の安全監視へのGNSS (Global Navigation Satellite System)による変位計測の適用性を明らかにすることを目的に,センサーの設置方法の工夫,長期計測の安定性,変位計測精度などを調査し,GNSS変位計測が橋梁の複雑な変位挙動把握の有効な手段になり得る可能性を考察するものである.本稿では,スタティック測位方式で取得した3次元変位データと種々のモニタリングデータとの比較により,載荷荷重に対する橋梁のたわみおよび温度変化に起因する比較的長期かつ周期的な三次元変形挙動に対して,必要な精度で計測可能であることを示すとともに,構造解析や計測データの解析結果に基づき,長期および短期の変位挙動把握の可能性に関する検討結果を報告する.
著者
楊 昊軒 貝沼 重信 鈴木 啓介 楊 沐野 豊田 雄介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00288, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
27

鋼道路橋において,溶射皮膜上に塗装が塗布され,重ね皮膜になる場合があるが,その重ね皮膜の耐久・防食特性については不明な点が多い.そこで,本研究ではAlとZnの溶射と重防食塗装の重ね皮膜部の耐久・防食特性を解明するために,クロスカット傷を導入した溶射単膜,および溶射と塗装の重ね皮膜部を有する鋼板試験体を用いて複合サイクル腐食促進試験を行った.また,重ね皮膜部の膨れ性状の測定,分極特性などの電気化学測定,SEM-EDXによる断面元素分析およびXRDによる生成物の同定分析を実施した.これらの結果から,溶射と塗装の重ね皮膜では,Al溶射の重ね皮膜がZn溶射に比べて早期に劣化し,耐久性が低下することなどを明らかにした.また,塩類に曝される腐食性の高い環境におけるAlとZnの溶射と塗装の重ね皮膜の劣化機構を示した.
著者
安藤 勝敏 須長 誠 三浦 重 関根 悦夫 鬼頭 誠 青木 一二三
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.536, pp.87-98, 1996-04-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

経済的で信頼性の高い土路盤上省力化軌道の開発実用化を目的として, 鉄筋コンクリート路盤を提案した. 本構造を北陸新幹線高崎~軽井沢間の現場に試験敷設し, 実物大規模の静的・動的載荷試験を実施した. その結果, 新幹線荷重に対し路盤の表面応力および鉄筋応力は耐久性の観点から低いレベルにあり, 動的繰返荷重による路盤の累積沈下も極めて小さいことが確認された.
著者
前田 良刀 落合 英俊 横田 康行
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.715, pp.107-115, 2002-09-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
15

本文は, 震度法による力学モデルと塑性論の上界定理に基礎をおく速度場法を用いて, 直接基礎の支持力特性を検討したものである. 本文で想定した破壊メカニズムをもとに, 荷重と地盤の傾斜を同時に考慮できる汎用性のある直接基礎の支持力式を提案した. そして, 荷重の傾斜と地盤の傾斜が支持力に与える影響について考察した. これから, 荷重傾斜角が支持力に与える影響は従来の研究と同様の傾向を示すが, 水平震度が大きくなると荷重傾斜角の影響を無視できなくなることを示した. このため, 現行の設計実務で用いられている直接基礎の支持力式は水平震度が小さい領域では問題とならないが, 水平震度が大きくなると支持力を過大評価する可能性を指摘した.
著者
高鍋 彩 白木 裕斗
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00270, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
15

本研究は,札幌市立小学校の教員と児童を対象にした質問紙調査により,エネルギー教育の実態,及び,エネルギー教育の方法と児童の省エネ行動,知識習得等との関係を明らかにした.教員向け質問紙調査の結果,すべての学校がエネルギー教育を実施していること,エネルギー教育の必要性を感じていることが確認された.児童向け質問紙調査の回答の平均の差を検定した結果,エネルギー教育に取り組んだ教科や実践方法と児童の省エネ行動,知識,関心との間に有意な関係があることが明らかとなった.学校内の再エネの有無やエネルギー教育の時数の多寡と児童の知識・関心等の間の関係は確認できなかった.今後のエネルギー教育では,時数を増やすのではなく,副教材の利用や能動的な授業の実施など,質の向上についての検討が必要と言える.
著者
北山 響 茶谷 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00216, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

自動車排出ガス規制による大気汚染物質の排出量削減に対する効果を調べるため,2000年から2019年におけるCO,NOxおよびHCの自動車排出量を推計し,規制の有無による違い,年減少傾向,将来予測による長期傾向の分析を行った.長期規制以降の規制を考慮した場合,規制を考慮しない場合よりも排出量の削減効果がCOとNOxで数倍,HCで2倍以下の割合で大きくなる一方,台数や走行距離の変化による排出量への影響は小さかった.排出量減少傾向は,CO,NOx,HCの順に,-4.4,-3.4,-5.0%/年であり,2030年までの予測値では,-3.1,-3.0,-3.3%/年であった.CO,NOx,HCの規制削減効果は,開始の早さと段階に違いはあるが,長期的に見ると差は見られなかった.
著者
松尾 智仁 瀧本 充輝 前川 鈴世 二村 綾美 嶋寺 光 近藤 明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00129, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
24

建材に使用されたアスベストは解体時等に大気中に飛散することが懸念されるため,行政等によるモニタリングが行われている.漏洩時の迅速な対応のためには,まず迅速なアスベスト検出手法が必要であるが,従来の方法には,技術者が顕微鏡観察によってアスベストを計数するため時間がかかるという課題がある.そこで本研究では,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた位相差顕微鏡画像からのアスベスト検出手法および同手法をベースにしたアスベスト計数手法を提案する.CNNの学習には解体現場等から採取された試料および実験室で作成した試料を用いた.学習したモデルは検証データに対して,検出精度では適合率と再現率で定義されるF値が0.83,計数精度では相対誤差が11%という好成績を示した.
著者
津田 悠人 吉田 郁政 中瀬 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00159, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
18

被害想定には大きな不確定性があり確定的に評価することは困難であるため,確率論的リスク評価が有効である.本研究では,落石対策のリスク評価に基づいた防護工の最適配置の意思決定のための支援手法の提案及びモデル地点の費用便益分析の例を示した.リスクは限界状態超過確率と影響度の積で定義した.実規模斜面落石実験より得られた到達位匿を対象に質点系解析による落石挙動の再現解析を実施し入力パラメタを決定し,落石の道路到達時のエネルギーに基づいた確率論的危険度評価を行った.防護工の初期建設費の総和に対する予算制約を設け,トータルコスト最小化に基づいた最適配置を示した.最後に,費用便益分析を行い,トータルコストが最小となる防護工の最適配置を示すだけではなく,予算制約内でリスク削減量を最大にする対策案を提示した.
著者
木下 尚宜 迫 美乃 福島 邦治 原 幹夫 吉武 勇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00122, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
9

ポストテンション方式PC橋におけるグラウト充填調査手法の一つとして広帯域超音波法(WUT)がしばしば用いられている.本研究ではWUTによるグラウト充填調査の精度向上のため,コンクリート中を伝播する弾性波の基礎的な特性を調べた.探触子から発信される波動の指向性を調べるため,三角柱状の供試体を用いて各種の実験を行った.その結果,指向角が20~45°の範囲では透過波が明瞭に確認されたが,45~90°の範囲では低減することがわかった.また,反射波のスペクトルピークは約60~90kHzであった.WUTによるグラウト充填調査に有意な反射波をとらえるためには,弾性波の基礎的伝播特性を踏まえ,指向角が45°以内となるような探触子間隔とする必要があることがわかった.
著者
藤田 素弘 篠原 将太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00050, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
11

本研究では,人口増加と人口減少が同時に進行している愛知県西部地域の名古屋市 20km 圏内のさまざまな都市において,子育て世代が満足する居住環境要因や必要とされる施策を検討するために,子育て世代を対象としたアンケート調査を行った.集計での満足度と重要度の分析では歩道の安全性が最も強い改善課題として挙げられた.重回帰分析の総合評価モデルからは地域の治安,歩道・公園の安全などが,地域の評判モデルからは街の景観が,転居意向モデルからは学校の教育レベル等の影響が大きいことがわかった.また人口指標や各評価項目の満足度による地域間比較では,社会増加率は満足度の交通利便性の項目と相関が高いが,出生率は自然の豊かさとの相関が高かった.以上のことはこの地域の今後の施策において配慮すべき事項として考えられた.
著者
清原 雄康 風間 基樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00303, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
23

火山灰質土であるしらすからなる野外盛土を2004年に作製してから2021年で18年が経過した.この間降雨時における体積含水率やサクションの変化,草木本類の有無が浸透挙動に及ぼす影響,貯留率や水分特性曲線による保水性の経年変化などを定量的に把握した.盛土表層付近では細粒分が顕著に減少,間隙比が増加し,内部でも植物根の侵入が生じていた.木本類が有る時の方が無い時より体積含水率は低めに推移し,降り始めから体積含水率が最大になるまでや表面流下が生じ始めるまでの所要時間,連続雨量は増加傾向で,葉面貯留の影響が生じた.断続的な降雨では表面流下に至るまでに時間を要した.盛土内部の貯留率は2018年以降で最大60%と2004年の最大80%より約20%低下し,水分特性曲線の履歴も保水性が低下する傾向に変化した.
著者
大場 雄登 松岡 馨 中西 克佳 岩波 基
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00286, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
20

都市部を中心に狭隘地での急速施工が要求される橋脚基礎工事があるが,従来工法では専有面積や工期の観点から実施が難しいのが現状である.そこで,上記に適した立坑構築技術の鋼製セグメント圧入工法を活用し,RC基礎を構築する工法に着目した.しかし,既存の鋼製セグメントは仮設地下壁の部材で,別途内部に本設RC基礎を構築する必要があり,合理化が望まれる構造であった.筆者らは,鋼製セグメントを本設RC基礎の本体構造における帯筋部材として評価する合成構造基礎とし,狭隘地に急速に基礎を構築する合理的な工法を提案した.本研究では,構造の具体化および,従来工法のRC基礎と提案した合成構造基礎の縮尺試験体を用いた正負交番載荷試験を実施し,従来工法のRC基礎と同等以上の耐震性能を合成構造基礎が有することを確認した.
著者
森河 由紀弘 佐藤 智範 前田 健一 篠田 裕重
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00208, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
41

今日まで多くの粘土瓦が使用されてきたが,近い将来には寿命を迎えた大量の廃棄瓦が発生する.また,粘土瓦を製造する際には不良品となる規格外瓦が一定量発生するが,これらの不要粘土瓦の再生原料以外のリサイクルはあまり進んでいない.そこで,本研究では規格外瓦を砕いたリサイクル材料である破砕瓦の構造物の裏込め材や裏埋め材としての適用性について,室内模型試験や実物大の現場試験により検討を行った.破砕瓦は軽量性や摩擦性が高いため,構造物に作用する水平土圧の低減効果を期待できることや,無補強でも高い支持力が期待できること,繊維補強材による支持力補強効果も期待できること,上載荷重の影響範囲は山砂とほぼ同様であることが明らかとなり,破砕瓦は裏込め材や裏埋め材として適用可能であることが分かった.
著者
向井 厚志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00152, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
7

福山港泊地において約2か月間の潮位観測を実施し,潮位変化に及ぼす局地気象学的な影響を調査した.福山港泊地は,瀬戸内海沿岸から内陸部に向けて約8.5km入り込んだ細長い水路である.この泊地では,局地気象学的な影響として,気圧変化に伴う吸い上げ効果の他,泊地奥方向の東風による吹き寄せ効果が観測された.台風接近時のような極端な気象条件の場合,これらの効果によって1mを超える海面上昇が生じる可能性がある.また,泊地では常時,周期42分程度の副振動が現れており,2021年9月の台風接近時には副振動によって約0.4mの海面上昇が生じた.これらのことから,満潮時に台風が接近する際には吸い上げ効果と吹き寄せ効果に加え,副振動による海面上昇が加わることで,平均海水面より潮位が3m以上上昇する可能性がある.