著者
福山 正治
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.488, pp.31-40, 1994-04-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
10
被引用文献数
2

波動理論を用い時間, 距離空間上での交通密度分布特性を分析する手法を示す. 単独交差点での密度分布特性の考察により, 密度分布を規定する微分方程式の特性を調べる. さらに, 連続に定義される波を衝撃波 (疑似衝撃波) で近似し, 数値解法により密度分布を形成していく過程を示す. また, 疑似衝撃波の概念を用いたモデルの一般化を図り, 道路ネットワーク上での密度分布の分析を可能とするモデルを提示する. 特に, 需要の変化, 交通流の分岐を新たに取り入れている.
著者
柴田 久 土肥 真人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.674, pp.99-111, 2001-04-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
6
被引用文献数
5 4

本研究では多様化した景観研究の動向について, 研究目的に着目した系譜図を導出し, 景観論の変遷と今後進み得る研究の方向性について検討を行った. 調査対象は1960~98年までの土木, 建築, 造園, 都市計画分野で発表された審査付き論文492編であり, 論文数の推移より動向を把握する時代区分として揺藍, 初動, 発展, 拡充の4期を設定し, 考察を行った. この結果, 揺藍, 初動期における景観概念の論理化と意味解釈の二重性, また拡充期に活発化したテキスト景観と景観行政制度の課題, さらに住民参加型まちづくりに向けた景観論の可能性等について明らかにした.
著者
藤井 聡
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.667, pp.41-58, 2001-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
76
被引用文献数
6 17

本研究は, 交通問題は経済問題ではなく社会問題であるとの認識のもと, 社会的ジレンマの理論的枠組みの中で交通問題を捉え直すことで, その解消に向けての手掛かりを見いだすことを目的とする. 最初に, 土木計画のための社会的ジレンマの定義を提案するとともに, 過去の社会心理学, 社会学における実証研究から明らかにされているジレンマ解消策を概観する. そして, それらの交通問題への適応可能性に検討を加え, テストケースとして韓国ソウルの事例を挙げて, 社会的ジレンマの諸理論の現実的妥当性を確認する. それらの理論的検討を通じて, 交通問題の解消にあたってはロードプライシングや交通規制だけでなく, 人々の公共心を活性化することが必須であることを指摘し, そのための実務的, ならびに科学的研究努力が不可欠であることを主張する.
著者
橋詰 豊 塩井 幸武 毛呂 眞
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.694, pp.117-130, 2001-12-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
16

1994年三陸はるか沖地震における青森県八戸市の建物等の構造物被害, 水道被害と地盤の振動性状の関係を, 常時微動測定及び一次元重複反射理論に基づくモデル計算の結果を用いて検討した結果, 次のような相関関係が得られた. 1) 地盤振動のスペクトル形状はN値50程度の基盤より上の, ごく浅い地層の影響を強く反映している. 2) 水道被害は地盤のスペクトルや加速度レベルによる影響よりも主に傾斜地や切土・盛土等の人工的なものも含めた地層境の影響を受け易い. 3) 構造物の被害は, 地盤の卓越周期に影響され易い. これらの事より, 常時微動測定は構造物被害を推定するのに有効と考えられる.
著者
森杉 壽芳 林山 泰久
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.440, pp.71-80, 1992-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

本研究は, 現代的手法である費用便益分析を応用して, 明治・大正期鉄道網形成の国民経済的便益を計測することを試みた. 本研究の対象とする便益は, いわゆる直接効果である輸送時間・費用の節約のみならずその波及効果をも含み, 波及効果はGNPへの貢献である所得の増大効果のみならず, 鉄道網整備により便利になったことによる国民の福祉向上を貨幣タームで表現した福祉効果を計測している.
著者
小川 進 清原 徹也 阿部 忠行
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.520, pp.135-141, 1995-08-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
25
被引用文献数
3 4 8

街路景観の定量的評価をフラクタルにより試みた. 景観の評価は色彩と形態の2因子で行い, いずれもフラクタル次元を算定した. この結果, 街路景観のフラクタル次元は色彩と形態のいずれも自然景観よりも高く, かつフラクタル性 (相関係数) が低いことが判明した. さらに, CADにより環境調和を考慮した街路景観の修景設計を試みたが, フラクタル性は環境調和を定量的に評価しうる量と考えられる.
著者
浅枝 隆
出版者
土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
no.467, pp.p39-47, 1993-05
被引用文献数
4 5
著者
高橋 修 八谷 好高
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.713, pp.131-144, 2002-08-22 (Released:2010-08-24)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

空港着陸帯の地表面には, 航空機を安全に運用するために植生が施工されており, わが国においては, 植物種として主に芝草類の地被植物が用いられている. そして, その管理業務として年に数回の草刈りと刈り取った草の処分が行われている. 空港では植生の施工面積が広大であるため, 植生管理に要する費用が多大なものとなっている. 本研究では, わが国の空港全般における植生管理の実状を調査したうえで, 空港着陸帯における植生管理のコスト縮減を目的に, 空港緑地に適した植物種について検討を行った. その結果, 維持管理のコストを効率よく縮減させるには, 現在使用されている芝草類に固執することなく, 矮生でほふく性能に優れた植物種を新たに導入する必要があることを明らかにし, そのための有望植物種を具体的に見出した.
著者
細田 暁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.23-00037, 2023 (Released:2023-12-20)
参考文献数
12

山口県の品質確保システムにおける橋台のコンクリート施工記録を活用して,ひび割れ発生確率曲線を作成し,示方書に示される曲線との比較や考察を行った.示方書の曲線と比較し,明らかに左にシフトしたものが得られ,解析に用いた熱膨張係数が,山口県のコンクリート工場群で作製した供試体の計測から得られた熱膨張係数よりも大きいことによると考察した.実験で計測された熱膨張係数を用いて作成した曲線は示方書の曲線とほぼ重なることが確認された.コンクリート施工記録の全てのリフトのデータを用いた場合,正規分布を仮定して曲線を作成する際の引張強度,引張応力の変動係数が19%と既往の研究に比べて大きくなり,2010年以降のデータのみの場合の変動係数は12.5%と小さく,施工の基本事項の遵守が浸透したことで,品質が向上したと考察した.
著者
羽佐田 紘之 長谷川 大輔 本間 裕大 佐野 可寸志 大口 敬
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00347, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
28

目的地として訪問するだけの魅力を有する施設は,その整備効果を多角的に検証することが望まれている.本研究は,訪問に費やす移動費用を表すトラベルコストに基づいて,訪問移動が生じるのに必要な各施設の効用値や消費者余剰を算出し,目的地となる施設自体が有する価値を評価する手法を提案する.同時に,嗜好の異質性を考慮し,効用値が共通であるセグメントへの訪問者の分類も行う.ETC2.0データから構築した茨城県内の道の駅への訪問移動データへと適用し,訪問数は少ないものの有する価値の大きい道の駅の存在や,道の駅の魅力度向上に寄与する機能を明らかにした.提案手法は,inverse shortest paths problemモデルにより代替施設との競合関係の考慮が可能な新たなるトラベルコスト法と位置付けられる.
著者
金森 紘代 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00205, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
5

開始から70年以上が経過している地籍調査事業だが,その進捗率は52%にとどまり,残り138,361km2とされる地籍調査の全域完了に要する事業費や期間は明らかになっていない.本研究は,地籍調査の全域完了を見据えた事業計画策定の一助とするため,残る調査対象地域における事業費の試算を行うものである.試算手法としては,公開されているGISと固定資産に関するデータをもとに「地籍調査事業費積算基準書2022年版」に則り全国の残事業費を積算する.その結果,調査完了に必要な費用は約6.43兆円であり,現行の年間事業費ベースでは今後243年を要することが示された.そのうえで事業完了を現実のものとするための具体的な改善策について検討する.
著者
那須川 佳祐 升井 尋斗 車谷 麻緒
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00190, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
23

本論文では,鉄筋コンクリートの詳細なメゾスケールモデルの作成から,非線形メゾスケール解析までを行える方法を開発し,鉄筋コンクリートはりのメゾスケールにおける3次元破壊挙動をできるかぎり忠実に再現することを目的とする.メゾスケールモデルの作成では,異形鉄筋の3次元形状に加えて,ボロノイ分割法を利用して粗骨材の3次元形状と粒度分布を再現する.モルタルと粗骨材で構成されるコンクリート相には,異種材料を表現可能な損傷モデルを適用し,コンクリートのメゾスケールにおけるひび割れ進展挙動を再現する.曲げ破壊型およびせん断破壊型の鉄筋コンクリートはりの4点曲げ実験と同様の数値実験を行い,メゾスケールにおける複雑な3次元破壊挙動を再現するとともに,シミュレーション結果と実験結果が定量的に一致することを示す.
著者
栗原 幸也 高橋 圭一 相澤 敦武 中村 直樹 佐伯 昌之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00230, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
12

送電鉄塔の代表的な経年劣化事象の一つである基礎変位について,効率的かつ定量的な健全性評価を実施するため,傾斜計を用いたヘルスモニタリング手法の開発を進めている.現在,全国数十箇所の実設備にて傾斜角の変化量をモニタリングしているが,その閾値は設計用の有限要素解析コードを用いて暫定的に定めたものである.本論文では,現行の閾値の妥当性を確認するため,実規模の試験鉄塔を用いた強制基礎変位試験を行い,基礎変位と応力部材の傾斜変化の関係を確認した.また,基礎変位とひずみの関係を調べることで,傾斜変化の閾値における安全性を確認した.さらに,傾斜変化の最適な計測位置についても検討した.
著者
小野 一良
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:00471798)
巻号頁・発行日
vol.1959, no.62, pp.56-65, 1959-05-15 (Released:2010-08-24)
参考文献数
11

D51型機関車が8番片開き分岐器の分岐線を通過するときに機関車の各車軸のかたより, 分岐線または基本レールが受ける横圧力その他について計算ならびに測定を行つた。この結果を用いて機関車の乗り上り脱線に対する安全度ならびに分岐器の構造上の強度を検討し, またこの対策を論じた。
著者
浅井 信司 五艘 隆志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.22-00227, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
13

本論文においては,「質の高いインフラ」の実現による我が国建設関連企業の海外進出に関する研究という研究主題の一環として,筆者本人が2019年2月より2021年12月まで代表として従事したキルギスの日系建設関連現地法人の業務において実際に経験した,現地従業員の採用事例を整理し,課題を分析し,解決策を提示することを試みた. 具体的には,2017年12月にキルギスに工事関連の会社を設立した前後から,会社設立検討,決定までの経緯,従業員の採用基準・実績や育成方法,就業規則・給与等のデータ,事業活動内容と従業員の就業実績,能力開発等の実例を示し,収集したデータを体系的に整理し,課題を抽出・分析し,今後の日系現地法人の現地従業員の採用に関する具体的な手法を提示した.
著者
馬場 美智子 岡井 有佳 小原 雅人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.22-00160, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
19

木造住宅が密集し,細街路や袋小路の路地で構成される歴史的な市街地においては,大地震発生時の道路閉塞が消火活動に支障をきたし,大きな被害が発生する事が懸念される.本研究では,京都市内の上七軒通の周辺地区を対象に,無電柱化事業による防災効果を明らかにした.第一に,大地震発生時の道路閉塞による消防活動への影響と,無電柱化による防災効果を定量的に分析するための方法を構築した.次に,京都市無電柱化事業実施区間の中でも景観系事業が行われた対象地区において発生しうる大地震を想定して,無電柱化事業の消防活動への影響を実証的に分析し,無電柱化によって消火が困難となる区域が減少し防災効果があることが示された.
著者
稲垣 航大 久米山 幹太 石橋 澄子 谷口 守
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.23-00079, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
9

コンパクトシティを実現する上で政策に対する市民認知の重要性が指摘されている.そのような中,国土交通省の調査によるとコンパクトシティ政策に対する市民の自称認知は総じて低いことが示されている.そこで本研究では,市民のコンパクトシティ政策に対する内容を誤って認知していないか(誤認)について独自のアンケート調査を行った.分析の結果,1) 中山間地域からの撤退やタワーマンションの建設をコンパクトシティ政策だと高い割合で誤認されていること,2) 自称認知度が高いグループにおいて,むしろ誤認の割合が高くなることを明らかにした.自称認知度が高いグループは,行政に対する信頼も高いため,自治体がコンパクトシティ政策に関して提供している情報自体が誤認を招く内容になっている可能性があることに留意が必要である.
著者
田島 怜路 三輪 富生 鶴見 直樹 森川 高行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.23-00044, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
12

マップマッチングとは,位置測位誤差を含むプローブカーデータから,その車両の走行経路を特定する技術である.マップマッチングはプローブカーを活用した交通状況調査の前処理に位置づけられ,マップマッチングによって得たリンク旅行時間等は,交通情報として活用されている.本研究では,過去のプローブカーデータのマップマッチングから得られたリンク旅行時間情報を活用し,以降のマッチング候補経路の探索及び選択を行う.トリップごとにマップマッチングと蓄積情報の更新を繰り返すことで,蓄積データベースやマップマッチング精度の変化を分析する.分析の結果,混合ガウスモデルの考え方を援用した複数経路への情報の蓄積によって,交通情報が効率的に蓄積できる可能性が示された.
著者
安藤 慎悟 Golubchenko STANISLAVA 久米山 幹太 谷口 守
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.22-00283, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
15

近年地域活性化施策として注目される「関係人口」を拡大していくうえで,地域と関わりのない無関与者に対して行動変容を促すことができれば,その母数の多さから担い手不足解消への期待が高まる.そこで本研究では,全国の無関与者を対象に,関係人口へとステップアップする要因を明らかにする.その後,関係人口の中でも担い手としてより期待される訪問型関係人口への意向を示す者を11の人物像に分類し,人物像別に地域と関わるための改善要素を明示した.分析の結果,1)年齢の若い人や趣味・関心分野がある人はステップアップしやすいこと,2)公務員と時間的な余裕,夫婦世帯と同行者の理解などという人物像別に求める改善要素の傾向があること,3)移動や滞在費という金銭面に関しては人物像に関わらず負担に感じていることが明らかとなった.
著者
小野 健太 澤田 守 宮下 剛 玉越 隆史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.22-00310, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
19

本論文は,せん断力を受ける鋼I桁を対象として,道路橋示方書で定義される限界状態2について検討した結果を述べるものである.本研究では,まず鋼I桁のせん断載荷試験を行い,得られた荷重応答曲線上に限界状態2として扱える状態を位置づけるとともに,その状態における力学的特性を把握し,力学モデルを提示した.次に,提示した力学モデルを基本としてパラメトリック解析により得られた結果を分析することで,限界状態2として扱える状態の強度評価式を示した.提案した強度評価式は,パラメトリック解析との限定的な比較ではあるが,±6%の誤差で精度良く強度を推定しうることが確認出来た.