著者
阿部 貴弘 山岸 祐子 鈴木 杏子 菊原 綾乃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00264, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
9

東京都青梅市を流れる多摩川は,かつては筏流しや渡し船,現在でも子供の川遊びやカヌー,ボルダリングなど,生活や生業,レクリエーションの場として盛んに利用されてきた.そうした利用を反映して,多摩川及び多摩川沿いの地形地物には,地名とは異なる多数の呼び名が付けられてきた. 本研究では,こうした呼び名について,文献調査やヒアリング調査に基づき網羅的に抽出するとともに,それらを対象物,由来,呼称者の視点から分類・整理した.さらに,各視点から相互にクロス分析を行い,呼び名の特徴を明らかにした.そのうえで,名付けの動機に着目した分析から,呼び名の意義を明らかにした.これらは,呼び名を通した河川特性の理解はもとより,今後の河川利用の促進や人々と河川との関係の再構築にも資する研究成果である.
著者
吉田 護 柿本 竜治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00210, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
41

本研究では,避難行動と関連する変数群の因果関係をDAG(Directed Acyclic Graph)を用いて構造化し,構築したDAGに基づいて,令和2年7月豪雨で被災した熊本県人吉市の住民を対象に避難行動調査を実施,避難の備えや災害関連情報の取得による避難行動への因果効果を推計した.結果として,避難の備えの中で,居住地の浸水想定の認識や指定緊急避難場所までの道のりの確認,避難行動計画の検討が早期の立退避難に寄与していたことが明らかとなった.また,災害関連情報の中では,防災河川・気象情報や避難情報の取得による避難行動への因果効果は確認されなかったが,早期の呼びかけ情報の取得は立退避難に大きく寄与していたことが明らかとなった.
著者
大井 啓史 江戸 元希 有村 幹治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00200, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
8

近年,交通渋滞対策検討に交通渋滞の緩和効果や周囲の交通流への影響を把握できるミクロ交通シミュレーションが活用されている.本研究では交通渋滞が恒常的に発生している札幌新川IC周辺交差点を対象として,3年度にわたり実施された社会実験から得られたデータとミクロ交通シミュレーションの活用により信号現示パターンの最適化を行った.社会実験データから現況再現性を高めたシミュレーションモデルを構築し,そのモデルを用いた最適信号現示パターンの検討・抽出を行った.抽出した信号現示パターンの実現のため現地にて再度社会実験を試行し,交通シミュレーションによる事後評価を行った.以上の結果より,社会実験データと交通シミュレーションを活用した交通渋滞対策最適化検討の有用性を確認した.
著者
橋本 真基 日比野 直彦 森地 茂
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00182, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
19

働き方改革の推進,新型コロナウイルス感染症拡大を背景に,テレワークが急速に進展し,通勤行動が大きく変化した.この行動変化を把握することは,今後の鉄道サービスを検討する上では重要であるものの,実行動に基づく定量的な分析は少なく,実態が明らかにされていない.そこで,本研究では,筆者らの先行研究を踏まえ,自動改札データを用い,鉄道利用者の通勤行動の変化を分析する.コロナの影響により,対象路線をほぼ毎日利用していた約86万人のうち,約8万人が在宅テレワークに,約8万人が利用頻度を大きく減少させたことを明らかにした.また,OD別の変化,通勤頻度と定期券利用の関係,性・年齢階層別の変化,出発時間帯の変化,定期券保有と立ち寄り行動との関係等についても定量的に明らかにしている.
著者
神山 藍
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00070, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
58

本研究では『土佐日記』を対象として,楫取が航海のために捉える風景を用の風景とし,紀貫之が和歌を詠むために捉える風景を美の風景として,それぞれの風景に対する認識を探り,用の風景と美の風景の関係性を探った.その結果,用と美の風景は,ほぼ同時に同空間の環境下であっても確認できるが,有する知識によって異なる風景として認識される.この時,一方が他方を認識することは難しい関係にあり,美的な立場から用の風景を捉える場合,多くの用の風景が見過されることが指摘できる.また,美の風景として享受されても,その本来の姿や意味とは異なって表現されることがあるという事実は,美的な立場から用の風景を辿ることの難しさを示すと言える.
著者
喜多 秀行 國井 大輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00046, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
13

過疎地域における生活の足を確保するため,コミュニティバスからタクシーや自家用車を活用した互助的な個別輸送サービスへの転換を図る自治体が増加しているが,もともと人口が少ない過疎地域においては,個別輸送サービスの採算性と利便性を同時に確保することは容易でなく,自治体からの公的支出は年々増加し,現状のままでは立ち行かなくなりつつある状況も見受けられる.そこで本研究では,タクシーとボランティア輸送を一体的に運営する新たな公共交通サービスの仕組み「準交通空白地有償運送(仮称)」を提案する.いくつかのサービス特性と地域特性を想定し,運行形態や運賃に関する施策が採算性に及ぼす影響について分析した結果,制度面での制約等はあるものの,一定の条件下ではサービスが成立する可能性が確認できた.
著者
小俣 元美 原野 崇 佐藤 啓輔 横山 楓 片山 慎太朗 定金 乾一郎 小池 淳司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00023, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
10

本稿では,道路整備のストック効果把握の一環として,空間的応用一般均衡(SCGE)モデルを用いて,最初の開通から半世紀を経た全国の高規格幹線道路整備が地域経済に与えた長期的な効果とその変遷を検証する.分析の結果からは,これまでに段階的にネットワーク整備がなされた結果として,付加価値額変化では,関東・甲信越から中国地方にかけての本州エリアを中心に大きな効果が帰着している傾向にあることが分かり,このような地域の産業活動の日本経済全体の成長への貢献が確認された.一方,便益をみると,全国に広く正の効果が帰着しており,国土の均衡ある発展に高規格幹線道路が貢献していることが確認できた.
著者
西村 伊吹 松原 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00292, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
24

護岸背後盛土の外部流出を防止するために盛土表面を防砂シートで被う工法がある一方で,防砂シート劣化に伴う土砂の吸い出し現象が少なからず報告されている.また,埋設されたシートを施工後に視認することは困難であることから,シートの劣化状態を共用時であっても評価できるツールの開発が求められる.本研究では,防砂シートの劣化を予測・評価しうる数理モデルを反応拡散理論に基づいて定式化し,実験値との比較解析を通じて本モデルの妥当性を検証した.結果として,本モデルによる解は実験結果に近い値を示すことが分かり,実環境を想定した解析例では,防砂シートが加水分解反応によって劣化する可能性を見出した.これらのことから,本手法は防砂シートの経年劣化を予測・評価するためのツールとして有効である可能性がある.
著者
新谷 聡 末政 直晃 水谷 崇亮 西村 真二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00287, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
15

最近の港湾の基礎構造物では,大口径の鋼管杭が採用されているが,これには先端抵抗力の設計において閉塞の状況が影響を及ぼすため不確実性が高いという課題がある.そこで,鋼管杭に代わり杭先端から杭頭に向かい拡径する形状のテーパー杭に着目した.テーパー杭は,打込み過程において地盤を押し拡げ,周面摩擦力を増加させる効果が報告されている.しかしながら,大口径テーパー杭に関してはこれまで充分な知見がないため,その特性を把握するために載荷試験を実施した.その結果,大口径テーパー杭においても打込み過程において地盤を押し拡げ,周面摩擦力を増加させる効果があることが確かめられた.
著者
上野 耕平 里見 知昭 高橋 弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00251, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
16

軟弱な災害発生土を被災地から搬出する際に,高吸水性ポリマーを添加して流動性を低減させる手法が注目されている.搬出された災害発生土は改良され地盤材料に再利用されることが望ましいが,内包される高吸水性ポリマーの吸水膨張が改良土の耐久性に及ぼす影響は明らかにされていない.本研究では,塩化鉄との反応によって高吸水性ポリマーの吸水膨張を抑制する手法を検証した.さらに,既存の軟弱土固化処理技術である「繊維質固化処理土工法」により得られた改良土を用いて乾湿繰返し試験を実施した結果,内包される高吸水性ポリマーの吸水膨張により改良土の耐久性が低下すること,また,塩化鉄の作用により高吸水性ポリマーの吸水膨張が抑制され,改良土の耐久性の低下を抑制できることを明らかにした.
著者
小林 真貴子 石井 裕泰 藤原 斉郁 笠間 清伸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00246, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
16

セメント改良地盤の品質は地盤の不均質性や固化材の混合性などの影響を受けるため,適切な品質管理が求められる.一軸圧縮試験による現行の品質管理が,サンプリングされた供試体による標本調査に基づく強度把握であるのに対し,一軸圧縮試験では把握できない弱部の有無や連続的な強度分布を確認できる方法として針貫入試験がある.本研究では,針貫入抵抗値から一軸圧縮強さを推定する式に論理性を加えて,針貫入試験による強度推定精度の向上を目指している.本論文では,まず机上型装置での多点測定に基づく新たな推定の考え方を提案し,次にその検証のために,供試体作製法や強度の範囲が異なる種々のセメント改良土を対象に測定を行った.最後にその結果を用いて,具体的な推定式を提示し,提案推定方法の妥当性や推定精度の向上を確認した.
著者
渡辺 力
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.23-00050, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
21

本研究では,接着工法の構造解析における複合材料や等方性材料のモデル化ために,ハイアラーキ六面体要素の変位関数にZIG-ZAG項を付加したハイアラーキ異方性積層要素を開発する.ZIG-ZAG分布となる変位を効果的に表すためのZIG-ZAG関数には,Region-wise ZIG-ZAG理論の領域ZIG-ZAG関数を用いる.さらに,このハイアラーキ異方性積層要素を用いて,改良ZIG-ZAG理論,Region-wise ZIG-ZAG理論,Layer-wise理論,それぞれの数学モデルと同じ変位場を規定した複合材料解析モデルを構築する.異方性積層板,等方性平板,サンドイッチ板の三次元応力解析に用いて,精度と収束性,適用性が検証されている.
著者
塩崎 功 村上 晃生 谷口 博幸 川上 康博 今井 久 稲葉 秀雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.579, pp.163-176, 1997-11-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1

川浦ダム・川浦鞍部ダム周辺地山の透水性を評価するために, 初期湛水時にダム周辺地下水の水質・同位体調査を行った. イオン濃度の調査結果から, 川浦ダム監査廊内ボーリング孔, 川浦鞍部ダム左岸ボーリング孔の一部で調整池水の到達が確認された. イオン濃度の時間変化から求められた監査廊内への調整池水の流下時間は7~20ケ月と長く, ダム基礎岩盤の透水性は基礎処理によって十分改良されていることが示された.トリチウム, 酸素-18, 重水素の同位体データを用いた多変量解析結果より, イオン濃度からは判定できない仮排水路トンネル湧水への調整池水の到達が示された. 本調査の結果, 調整池水の到達を知るための指標として, 現場測定可能な電気伝導度および硝酸イオンが有効であった.
著者
井川 友裕 森岡 信人 小宮 朋弓 白井 隆裕 小浪 尊宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00235, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
12

2020年10月,菅内閣総理大臣(当時)による2050年カーボンニュートラル宣言が,2021年4月には,2030年に温室効果ガスを2013年度から46%削減する目標が日本政府により表明された.土木・建築分野における,建設段階を中心とした温室効果ガス排出量削減に向け,筆者らは,カーボンニュートラルに資する日本企業の土木・建築分野のソリューションに関する情報を調査・とりまとめ,今後の関連施策の検討に資することを目的とした分析を行った.具体的には,本邦企業の主な低炭素建設技術に関する調査を通じ,低炭素技術情報の集約と開発促進,統一的な排出量算定手法の確立,関連技術基準の整備,ライフサイクルアセスメント(LCA)の実施,入札契約制度を通じた支援等の施策について検討を行った.
著者
丸山 晃平 吉田 郁政 関屋 英彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00252, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
17

鋼橋において適切な維持管理を必要とする損傷の1つが疲労き裂である.疲労き裂の主な要因は活荷重によって生じるひずみであることから,活荷重の実態把握,すなわち交通荷重とその台数の計測が重要となる.交通量を計測する手法は様々あるが,本研究では加速度センサによる車軸通過時刻の検知手法の提案を行った.計測データには,車軸がセンサ直上を通過した際に生じるパルス波的なピーク応答以外にも,反対橋脚側や隣接車線から伝達する応答が含まれるため,誤検知を極力減らし,高精度にて車軸を検知するアルゴリズムを構築することが重要である.閾値のみによる検知手法の場合,再現率と適合率の調和平均であるF値は54.4%であったのに対し,提案手法では94.1%まで向上し,高精度に車軸の検知を実施できることを示した.
著者
尾崎 允彦 佐藤 靖彦 吉田 英二 竹内 彩 山田 雄太 永島 史晟
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00289, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
24
被引用文献数
1

過去のFRPシートの付着に関する研究は,FRPシートの剛性(シート剛性)が比較的小さい範囲が対象とされてきた.しかし,実際の補強では,構造物のスケールが大きいためFRPシートを積層化させる場合が多い.そこで,本研究では幅広い範囲のシート剛性を対象としたCFRPシート及びポリウレア樹脂を用いた付着試験を実施した.その結果,CFRPシートの積層化によりシート剛性が大きくなると付着耐力は増加するが,シート剛性が200kN/mm以上の範囲では既存の付着耐力式は実験値を過大評価することが明らかになった.また,剥離後のCFRPシートに接着したコンクリートの厚さである剥離深さを測定した結果,界面破壊エネルギーはシート剛性や樹脂の特性により決まるのではなく,コンクリート破壊面の表面積に強い関連性があることを見出した.
著者
関口 達也 林 直樹 寺田 悠希 大上 真礼 杉野 弘明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.23-00006, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
23

新型コロナウイルス感染症の蔓延(コロナ禍)は,人々の日常生活の様々な場面で大きな変化を引き起こした.本稿では,このうち東京都内在住の一般の人々の食料品の購買行動に起こった行動・意識の変化に着目する.コロナ禍が始まり,緊急事態宣言下を経てさらに一定期間が経過し現在までの食料品の購買行動の変遷状況を整理することで,今後の類似事例発生時の対策検討に役立てること,さらに「買い物不便」に対する人々の意識構造とその変化を把握することが主な目的である.東京都を対象としたアンケート調査の結果を用いて,人々の食料品購入行動(例:店舗選択,交通手段,買い物頻度など)や意識に対する変化の内容と,コロナ禍前の状況との乖離度合いを,複数時点の比較分析から明らかにした.
著者
吉野 和泰 山口 敬太 川﨑 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00224, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
10

近年,歩行者中心の道路空間への再編が注目されており,歩行者の自由な滞留や歩行など場所性の機能を実現しつつ,車によるアクセス性や安全性を確保し,合意形成を導くための,実践的方法論の構築が求められている.本研究では,欧州最大規模の歩車共存道路を実現したマリアヒルファー通りの事例を対象とし,計画調整と合意形成の過程の分析を通じて以下の知見を得た.1) 空間の活用を優先する調整管理,検討案の評価において,市民参加・社会実験が大きな役割を果たした.2) 歩車共存の計画・設計においては,アクセス性と安全性の調整が重要な課題であり,利用者による自律的な安全性の確保とその制度運用によって実現した.3) 合意形成においては,調整の段階ごとに適切な関係主体を同定・招集し,主体間の相補的な対話を導くことが有効であった.
著者
西堀 泰英 嚴 先鏞
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00193, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
29

本研究は,COVID-19感染拡大による商業集積地の滞在人口の変化とその影響要因を明らかにすることを目的とする.交通ビッグデータを含む各種データを用いて21都市の商業集積地を滞在人口の時系列的な変化傾向により分類し,商業集積地と居住地との位置関係に着目した分析や,産業構成の影響を分析した.本研究の主な成果は次のとおりである.1)商業集積地が所在する区(以下,同区)または隣接市区町村からの滞在人口は増加する一方,県外のように遠方からの滞在人口は大きく減少している.2)感染拡大後に滞在人口が増加した地区では,同区だけでなく隣接する区からの滞在人口も増加している.3)東京や京阪神の都市圏では医療等の生活を支えるサービスが多いと滞在人口が増加する傾向にあるが,地方中枢や地方中核の都市圏では同様の傾向は認められない.
著者
三村 泰広 山岡 俊一 富永 哲史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00181, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
9

本研究は,これからの地方都市における幹線道路,生活道路といった道路種別ならびに,中心市街地,郊外,中山間地域の道路における道路維持管理について,多様な地域に住まう住民の意識を把握することで,今後の地方都市における道路維持管理の在り方に関する基礎的知見を得ることを目的としている.政令市を除く愛知県,三重県,岐阜県の東海3県に居住する方(n=1,039)を対象に道路維持管理の重要性,維持管理方法の受容性を調査した結果,それぞれ,当初想定した道路種別や整備される地域性によって当該意識に差が生じており,これらの傾向を踏まえた道路維持管理の在り方が重要であることが明らかとなった.