著者
下井倉 ともみ 土橋 一仁 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.238-247, 2014 (Released:2015-01-19)
参考文献数
16
被引用文献数
6

Several studies have revealed that most students not majoring in science at the Faculty of Elementary Education are not confident to teach science at elementary school. We conducted a questionnaire survey to 1815 such students at 15 universities in Japan. The purpose of this survey was to investigate what they expect from university and what would be the most effective education in order to improve their confidence. The survey revealed that (1) the students only have confidence in teaching biology, but (2) not other scientific subjects covered at elementary school, and (3) they are especially reluctant to teach physics and chemistry. These results indicate that a comprehensive curriculum at university covering all science subjects taught at elementary school is needed to improve their confidence.
著者
松本 伸示 北浦 隆生
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.220-228, 1999-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
12

It is said that biological education in today's high school has many problems. The purpose of this paper is to explain the existence of those problems, and to search for possible clues for solving them. For the purpose of achieving this goal, an analysis was made of the historical transition of biological education since the Second World War. The materials that were analyzed include sets of the course of study and textbooks used in each period. The characteristics of a particular course of study in each period were extracted through this analysis. The following characteristics of biological education in Japan became clear from the analysis : 1. The basic structure of high school biological education contents has not changed since the curriculum movement of science education ; 2. The basic concepts which have been used in biological education have been retained ; 3. There was some old-fashioned content as a result of the introduction of too little new content of biology in recent years ; and 4. A serious problem exists in the biological education content structure due to the elimination of content as a result of revisions made in the courses of study.
著者
松本 伸示 佐藤 真 森 秀樹
出版者
兵庫教育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

19年度は,兵庫県加東市の小学校で低学年児童を対象として絵本の「読み聞かせ」活動を取り入れた日本版の「哲学」授業を実践した。これは,これまでIAPCで開発されたテキストを用いてきたが,低学年児童を対象するには討論の題材が身近であること,さらには,低学年児童の読解力の発達を考慮にいれたことによる.また,これまで「総合的な学習の時間」を活用して「哲学」授業をおこなってきたが,今年度は子どもたちにもっと哲学的討論を身近なものとするため,学校のカリキュラムに縛られることのない放課後の学童保育の時間を活用することも考えてみた.これにより教室という物理的,心理的な条件に縛られることなく子どもたちは自由に哲学的討論を楽しむことができた.さらに,兵庫教育大学附属中学校においても選択科目の時間を活用し日本版の「哲学」カリキュラムを開発して授業実践した。これはイギリスのNEWSWISEを手がかりにニュースを教材としたP4Cの手法を参考としつつ,討論テーマを生徒の身のまわりの出来事から取り上げた実践研究である.この実践ではより哲学的な要素を含んで討論が展開されるようにカリキュラムを設定した.また,17年度に収集した韓国の資料をもとに思考力育成を図るための副読本「お母さんとともに創る日記」を完成させた。これらの基礎データによって日本においても「哲学」授業が可能であり,児童・生徒の思考力の育成につながっていくことを明らかにした。
著者
名倉 昌巳 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.234-245, 2021 (Released:2021-07-16)
参考文献数
31
被引用文献数
1

Despite the accidental and purposeless nature of “biological evolution,” there is no end to the “Naturalistic Fallacy” borrowed for value judgment during social change. A previous study shows that elementary school students hold many misunderstandings concerning “biological evolution”; for example, several misconceptions such as “Lamarckism” and “teleology” (which are frequently applied even by university students). It has been pointed out that modern biology, which floats in a great sea of knowledge, should be integrated by “biological evolution.” Therefore, in this study, based on this “unified understanding of biology,” lower secondary school science was integrated from the viewpoints of “acquisition of scientific evolutionary concepts” and “elimination of misconceptions,” in order to examine the learning content and structure of biology education. By analyzing the data obtained from descriptions of the two tasks in the classes of two units (genetics and ecosystem) among lower secondary school students, it was suggested that a “unified understanding of biology” contributes to avoiding misuse of “evolution”. In conclusion, we proposed a curriculum that uses evolution as an overarching theme to integrate five units (classification, cells, genetics, evolution, and ecosystem) to create a new biology course.
著者
山岡 武邦 沖野 信一 松本 伸示
出版者
Society of Japan Science Teaching
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.179-188, 2022-07-31 (Released:2022-07-31)
参考文献数
13

本研究は,理数系学部に在籍する国立理科系大学生319名を対象に,素朴概念の形成過程や,その克服の過程を明確化させることを目的として,2013年から2018年にかけてアンケート調査を行ったものである。調査対象者319名が記述した434個の素朴概念を分析した結果,次の6点が明らかとなった。(1)素朴概念を抱く時期は,男女ともに小学生の時期が多いこと,(2)素朴概念を抱く時期は,女子の方が男子に比べて幼い時期であること,(3)素朴概念を形成する分野ごとの男女比率は,物理分野は相対的に男子多く女子が少ない。生物分野は女子が相対的に多く男子が少ない傾向があること,(4)素朴概念が形成される原因について分野別に比較をすると,物理分野は実体験を基にした理解,化学分野は直感的理解や不可視を根拠にした理解,生物分野は他の助言を根拠にした理解,地学分野は漫画や映画等に基づく理解の割合が,相対的に多い傾向にあること,(5)素朴概念の形成に関する原因は,性差や発達段階の差によらないこと,(6)素朴概念を克服した方法について分野別に比較をすると,物理分野は数式による証明,化学分野は学校での実験等による実体験との照合,生物分野は学校での実験等による実体験との照合とSNSやテレビ番組,地学分野は発達段階に応じた理解の割合が,相対的に多い傾向にあること,が明らかとなった。
著者
名倉 昌巳 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.397-407, 2019-11-29 (Released:2019-12-20)
参考文献数
17

本研究の目的は中学校の新入生に「生物多様性」の理解と,その多様性の解析手法である「進化思考」の形成過程を探ることにある。現行(平成20年改訂学習指導要領準拠)の中学校第1学年理科教科書における「生命編」の最初には,近隣のいろいろな環境に生息する「身近な生物」を観察しながら,顕微鏡の使い方など基本的技能の習得が目的とされてきた。平成29年改訂の新学習指導要領では,そこに「分類」の記述が加わり,「生物多様性」の理解が重視されるように改訂された。しかし,中学校現場では「身近な生物の観察」も通り一遍で終えられることが多い。そこで,新入生による初めての観察実習として,科学的な見方・考え方という観点を踏まえた授業を展開した。一方,「生物多様性の理解には進化に関する知識の習得が重要」であり,かつ「分類思考と系統樹思考を柱とした進化思考が多様性の解析手法の基盤である」という2つの提言がある。そこで,本研究ではその2つの提言に基づいて,「身近な植物」としてのタンポポの「分類」を手始めに,雑種タンポポ出現による「多様化」や,水中の小さな生物の「系統的分類」を事例に,進化の入門編を意図した授業を開発した。ワークシートの記述分析や質問紙調査の結果から,「生物多様性」や「科学的進化概念」の理解を一定程度促進することが明らかになった。
著者
小川 博士 髙林 厚志 池野 弘昭 竹本 石樹 平田 豊誠 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.345-356, 2019-03-25 (Released:2019-04-12)
参考文献数
32
被引用文献数
3

我が国の理科教育では,科学や理科学習に対する態度の低迷が問題となっている。本研究は,実社会・実生活との関連を志向する真正の学習論に着目し,中学校理科において,単元開発及び実践を行い,科学や理科学習に対する態度の向上に有効であるかを明らかにすることを目的とした。この目的を達成するために,中学校第2学年の生徒132人を対象として,「電流と磁界」の単元開発を行い,授業を実施した。学習効果を検証するために,「科学や理科学習に対する態度」に関する質問紙を用いて事前事後調査を行った。また,単元後の生徒の感想記述を分析した。その結果,「科学に関する全般的価値」や「科学に関する個人的価値」などにおいて,事後の平均値の方が事前のそれよりも有意に高かった。また,生徒の感想記述を計量テキスト分析し,コード化した。コード間のJaccard係数を算出したところ,「科学の内容」と「日常生活」や「日常生活」と「有用感」などの関連度が高かった。以上のことから,実社会・実生活との関連を志向する真正の学習論に着目した中学校理科授業が,生徒の科学や理科学習に対する態度の改善に一定の効果があることが明らかとなった。
著者
高橋 浩一 松本 伸 大河内 保彦 龍岡 文夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
no.777, pp.53-58, 2004-12-20
被引用文献数
4

りんかい線大井町駅部は, 用地上の制約から, シールドトンネルのセグメントの一部を撤去し, 隣接する立坑間を地中開削し, 接合して構築した. この際下部シールドトンネルが, 水圧300kN/m<sup>2</sup>を超える東京礫層に位置するため, 止水対策が最重要視された. 工期上の制限から, 薬液注入工法を採用し, 注入を1次, 2次, 補足注入の三段階とし万全を図るとともに, 注入効果を比抵抗トモグラフィ等で確認した. 確認試験結果は注入の良好性を示し, 補足注入も1次注入の1/10以下であった. さらに, 漏水のリスク低減のためのディープウェルを計画し, 三次元浸透流解析で事前検討を行なった. その結果, 大きな漏水もなく, ウェルの水位低下量, 地表面沈下等も予測と矛盾のない範囲で安全な施工が達成された.
著者
向井 大喜 村上 忠幸 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.455-464, 2019-11-29 (Released:2019-12-20)
参考文献数
19
被引用文献数
2

本研究では,高校生の探索的な科学的問題解決における,仮説形成の到達段階を評価する指標の開発を目指した。そこで,仮説形成プロセスのモデルを設定して評価指標を作成し,高校生に実践された探索的な科学的問題解決を実際に評価した。その結果,活動が進展している学習グループには以下の(1)~(3)が認められた。(1)実験素材への「操作」を通して「要素の抽出」が生じた。(2)要素に説明付けすることで「説明仮説の生成」が生じた。(3)説明仮説から演繹することで「作業仮説の生成」が生じた。しかし,停滞している学習グループでは,「要素の抽出」が繰り返され「説明仮説の形成」へ進まず,演繹的探究への移行が起こらなかった。このことより,本研究で提案する指標には,仮説形成の段階を評価できる可能性があることが明らかになった。
著者
松本 伸哉
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.683-688, 2012-12-01

米国において,ビッグデータ解析の事例を紹介する.本事例は,オンラインゲームの会社において,ユーザーとの通信をすべて蓄積し,解析を実施した事例である.オンラインゲームにおいては,初心者にとって入り込みやすいゲームであるとともに,熟練したプレイヤーにとっても飽きさせない要素が必要である.また,プレイヤー間でのフェアな競争が必要であり,アンフェアな行為が可能でないかの確認ために,解析を実施した.
著者
高橋 浩一 松本 伸 大河内 保彦 龍岡 文夫
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.777, pp.53-58, 2004-12-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
5
被引用文献数
4

りんかい線大井町駅部は, 用地上の制約から, シールドトンネルのセグメントの一部を撤去し, 隣接する立坑間を地中開削し, 接合して構築した. この際下部シールドトンネルが, 水圧300kN/m2を超える東京礫層に位置するため, 止水対策が最重要視された. 工期上の制限から, 薬液注入工法を採用し, 注入を1次, 2次, 補足注入の三段階とし万全を図るとともに, 注入効果を比抵抗トモグラフィ等で確認した. 確認試験結果は注入の良好性を示し, 補足注入も1次注入の1/10以下であった. さらに, 漏水のリスク低減のためのディープウェルを計画し, 三次元浸透流解析で事前検討を行なった. その結果, 大きな漏水もなく, ウェルの水位低下量, 地表面沈下等も予測と矛盾のない範囲で安全な施工が達成された.
著者
松本 榮次 建部 昇 安部 洋一郎 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.183-191, 2020-07-31 (Released:2020-07-31)
参考文献数
17
被引用文献数
2

「月の満ち欠け」を科学的に理解するには地球視点と宇宙視点を交互に視点移動させる能力が必要であり,その指導は容易でない。本研究では,地球視点と宇宙視点の両方から活用できる三球儀風「月の動きと形しらべ盤」を開発した。小学校では,地球視点を中心にして「月の満ち欠け」の理解を指導するが,開発した三球儀風「月の動きと形しらべ盤」を活用することで,地球視点と宇宙視点の両方の視点から月の満ち欠けを考えることができる。平面的な教材として開発したことで,児童自身が作成することが可能となった。このクラフトを利用することで,月の動きや形についての子供たちの学習を支援することができることが示唆された。
著者
藤原 篤 松本 伸洋 川崎 清
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
vol.452, pp.85-94, 1993-10-30 (Released:2017-12-25)
参考文献数
7

In this paper, the consensus-making process in architectural design is examined through the example of the Fukui Pref. Univ. design project. The relationship between information and repre: sentation is analized, as well as the method with which the designer makes a consensus with members involved in the project. The results are as follows ; as the design proceeds, the concretization level of the representation changes in accordance with that of information which the designer deals with, and the information given at the begining consists of various concretization levels. The problem-solving method for consensus-making changes from problem-finding to problem-solving as the design proceeds.
著者
吉武 美孝 松本 伸介 篠 和夫
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.177, pp.383-393,a2, 1995-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
7

We investigated the water area reclamation projects, in particular the changes of these projects in Japan after the World War II.Firstly, we explained the institution of water area reclamation projects.Secondly, we classified these projects and made the distribution maps of the projects.From these results, the following was found worthy of being reported:1) Sea coast reclamation projects are concentrated around Ariake Sea, Yatsushiro Sea, Seto Inland Sea, Ise Bay, Mikawa Bay and Kagoshima Bay where tidal range is remarkable.2) All projects above mentioned except Kagoshima bay belong to alluvial plains3) Water area reclamation projects at lakes are almost all distributed around large lakes or brackish water lakes, i. e. Lake Shinji, Nakaumi, Lake Biwa, Lake Hamana, Kasumigaura, Imbanuma, Teganuma, Izunuma, Hachirogata, Lake Jusan.4) The total number of the sea coast reclamation projects is more than that of the water area reclamation projects. But the total project area and the total reclamation area of the latter are larger than those of the former.Then, from the view of social conditions, international situations and agricultural administrations, we discussed the historical transition of the projects in detail, and explained the change and decay of the projects.Lastly, we presented some tables of the project area and the reclamation area produced by each projects and these diverted area.
著者
沖野 信一 山岡 武邦 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.389-401, 2021-11-30 (Released:2021-11-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究は,質量の科学的概念の構築を試みた授業において,沖野・松本(2011)の3段階のメタ認知的支援(方略1「素朴概念の明確化」,方略2「素朴概念の獲得過程の明確化」,方略3「素朴概念と科学概念の接続・照合」)のすべてを講じるクラス(実験群:2クラス,N=52)と方略1だけを講じるクラス(対照群:2クラス,N=43)を比較し,方略2と方略3の有無によって,どのように生徒の理解に影響を及ぼすのかについて検討することを目的とした。その結果,質量の科学的概念の構築に対して,対照群よりも実験群の方が,有効性が高まることが示された。本研究により,方略2と方略3を講じることによって,方略1で生じた素朴概念と科学的概念の間の認定的葛藤が解消され,力および質量が運動に与える影響に関して,正しく考察できるようになったことが示唆された。
著者
山岡 武邦 松本 伸示 隅田 学
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.25-34, 2015

本研究は,中学校理科授業における生徒の誤答に対する教師の対応発問と生徒の期待に関する分析を行うことで,指導法への示唆を導出することを目的とした。具体的には,第3回国際数学・理科教育調査の第2段階調査(TIMSS-R)ビデオスタディ95時間分の国内中学校理科授業における生徒の誤答に対する教師の対応発問を分析した。分析結果を踏まえた質問紙を作成し,2013年9月から10月に,県内公立中等教育学校1校で中学校1から3年生451人を対象に調査を実施した。その結果,次の3点が明らかとなった。(1)教師は,別の生徒を指名するよりも,誤答を述べた生徒で対応する傾向があること,(2)1年生は情緒的対応を期待する傾向があること,(3)3年生は認知的対応を期待する傾向があること。以上より,中学校段階では,学年が上がるにつれて情緒的対応から認知的対応へと移行させる支援を意識しながら中学1年で「ヒント」,中学2・3年で「説明」,中学3年で「同じ発問」という対応を行い,自力で答えさせる指導をすることが効果的であると考えられる。
著者
近江 亮介 安田 宏 伊東 文生 清川 博史 松本 伸行 奥瀬 千晃 中川 将利 吉田 栄作 吉村 徹 清木 元治 越川 直彦
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.125-133, 2019

<p>【<b>背景</b>】血清ラミニンγ2単鎖(Ln-γ2m)測定は臨床的に有用な肝細胞癌(HCC)診断の新規腫瘍マーカーとなる可能性がある。Ln-γ2mがHCCの治療効果判定の指標となるかは明らかでない。そこで肝動脈化学塞栓療法(TACE)前後の血清Ln-γ2m値を測定し,治療効果判定への有用性を検討した。<br/>【<b>方法</b>】2013年1月から2018年2月までに加療したHCC症例28例(男性:19例,女性:9例,平均年齢値:70歳)を対象とした。TACE後1週間〜1ヶ月(中央値7日:4〜25日)に施行された造影computed tomography(CT)画像を用いて,modified RECIST criteriaによりその治療効果を評価した。また,TACE術前と術後7日の血清のLn-γ2m値を化学発光免疫測定法(Chemiluminescent immunoassay: CLIA)で測定し,CT画像による治療効果との比較を行った。<br/>【<b>結果</b>】CT画像による治療効果判定は著効(Complete response:CR)5例,有効(Partial response:PR)11例,不変(Stable disease:SD)5例,進行(Progressiveon disease:PD)7例であった。治療有効例であるCR群とPR群では,CR 3/5例(60%),PR 4/11例(36%)でTACE後に血清Ln-γ2m値が有意に低下した。PR 7/11例(64%)でTACE後に血清Ln-γ2m値が上昇し,CT画像においても3ヶ月以内に腫瘍の増悪が認められた。治療無効群であるSD群とPD群では,SD 5/5例(100%)とPD 6/7例(86%)において,TACE後に血清Ln-γ2m値の有意な上昇を認めた。<br/>【<b>結語</b>】血清Ln-γ2mは,HCCにおけるTACE術後のCT画像による治療効果判定を補完する新たな指標分子となりうる可能性をもつ。</p>
著者
松本 伸示 廣瀬 正見 秋吉 博之
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.55-61, 1990

本研究は,理科学習に於ける生徒の「やる気」の要因を同定しようとする基礎的研究である。そこで,まず「やる気」に影響を及ぼすであろう項目を抽出し,理科における「やる気」に関する調査票:QMSCを開発した。調査は,昭和63年11月,兵庫教育大学附属中学校3年生126名(男子74名,女子52名)を対象として行われた。調査票の信頼度係数は0.85であった。分析の結果,本調査票の43項目中の31のものが,「やる気」に彫響を及ぼしていることが認められた。そこで,この項目をさらに因子分析にかけたところ5つの因子が抽出された。第I因子は「科学的興味」,第II因子は「科学的活動」,第II因子は「数学的作業」,第IV因子は「測定的作業」,第V因子は「内容不消化」の因子と解釈することができた。この内,第I,II因子はプラス側に,第III,IV因子はマイナス側に働くことが明らかになった。
著者
松本 伸一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-243_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに】 肩関節疾患において、夜間痛は頻繁に遭遇する臨床所見である。三笠らは6~7割にみられるとしており、夜間痛による睡眠障害をきたすことは、患者QOLを低下させると考えられる。また、睡眠障害は慢性疼痛のリスクを高める要因とされており、局所の炎症が減退したのちも、痛覚過敏や患側の不活動を惹起することで治療の妨げになる恐れがある。 檜森らは、夜間痛による中途覚醒を伴う患者において睡眠の質・量ともに低下していることを示唆しているが、中途覚醒が臨床症状へ及ぼす影響については言及していない。また、対象となっている例は手術適応となる腱板断裂損傷例が主であり、肩関節周囲炎患者の臨床像との違いが考えられる。 そこで今回、肩関節周囲炎患者において夜間による中途覚醒の有無が、疼痛・睡眠・精神情緒面に与える影響を調査することを目的とした。【方法】 対象は2017年4月~2018年5月の間に当整形外科クリニックで肩関節周囲炎の診断により理学療法が処方された52症例のうち、両側肩関節周囲炎6例を除外した46例46肩を対象とし(年齢54.4±10.6歳、男性14名、女性32名)、夜間痛による中途覚醒の有無2群に分類した。 測定項目は,精神情緒面としてHospital Anxiety and Depression Scale(以下HADS,不安尺度:HADS-A,抑うつ尺度:HADS-D),安静時・動作時・夜間それぞれの疼痛の強度と睡眠の熟睡阻害感をVisual Analog Scale(以下VAS)を用いて測定した。熟睡阻害度は十分睡眠がとれていると感じる場合は0,全く睡眠がとれないと感じる場合は100とした。Mann-Whitney U検定と対応のないt検定を用いて,2群間の比較を行った。【結果】 覚醒なし群18名、覚醒あり群28名であった。 覚醒なし群HADS-A:4.0±3.0点、HADS-D:7.1±3.7点、安静時痛VAS:7.11±11.2㎜、動作時痛VAS:65.6±15.6㎜、夜間痛VAS:24.7±25.6㎜、熟睡阻害度VAS:12.0±15.9㎜。 覚醒あり群HADS-A:6.0±3.7点、HADS-D:6.5±3.7点、安静時痛VAS:13.3±19.4㎜、動作時痛VAS:68.5±24.5㎜、夜間痛VAS:43.9±29.8点、熟睡阻害度VAS:35.7±27.0㎜となった。 HADS-A、夜間痛VAS、熟睡阻害度VASにて2群間に統計学的有意差がみられた。【結論】 肩関節周囲炎患者の初回理学療法評価時において、夜間痛による中途覚醒がある例では、不安傾向が高く、夜間痛が強く、熟睡が妨げられていることが示唆された。 Chulらは肩痛が持続することで睡眠障害・不安・抑うつ傾向が高まることを、Poulらは睡眠障害と慢性疼痛の関連を報告している。このことから、疼痛に晒される期間や、睡眠障害が持続することは痛覚過敏や不活動性、機能障害の悪化など、慢性疼痛へ移行するリスクを高めると考えられる。早期から夜間痛による覚醒の有無を聴取し、ポジショニング指導や疼痛管理などの対応を検討していく重要性が示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は、ヘルシンキ宣言に則った文書および口頭にて対象者に対して説明を行い、書面にて同意を得た。