著者
田中 鉄二 樋口 輝久 馬場 俊介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.38-48, 2011 (Released:2011-10-20)
参考文献数
64
被引用文献数
1 3

日々軌道を検査し,線路に発生する様々な異常を整備することが保線作業であり,保線なしで安全で快適な鉄道運転は成り立たない.輸送量の増加,速度の向上,使用機械及び材料の変化,さらには,鉄道事故や戦争の影響によって保線は変化し続けてきた.そこで本論文では,保線を行う際の規範となり,鉄道創業時から制定され続けている“規程”に着目し,鉄道創業時から国鉄の分割民営化後までの鉄道保線の変遷を明らかにしようとする.対象とした組織は,官設鉄道,国有鉄道そしてJRで,民営鉄道は除いている.まず,規程についての概略を述べた上で,保線に影響を与えた重要な出来事について整理し,作業,材料(レール,枕木,道床,分岐器)に区分して,その変遷を明らかにした.
著者
平野 勝也 加藤 優平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.1-12, 2019 (Released:2019-02-20)
参考文献数
88

標準設計は短期間に社会基盤整備をする上で有用であるが,画一的な景観が形成されるという大きな課題がある.画一的な社会基盤整備を避けるためには,選択と集中による差別化が必要であろう.本論文はそうした社会基盤整備制度の基礎資料とするために,戦前の駅等級制度を調査した.その結果,一等駅もしくは二等駅に指定することで,特別設計を行い,重要な駅についてはコストをかけた駅建築が実現していることが明らかとなった一方,それ以外の駅においては,標準設計により迅速な整備が行われていた.
著者
小方 武雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.61-71, 2013 (Released:2013-05-20)
参考文献数
9

7世紀後半~11世紀初頭にかけて,律令体制の整備に伴い駅伝制が行われ,駅路が全国展開することとなる.神奈川の地においても,駅路が整備されたが,具体的に何処を通っていたかについては従来様々な説がある.今回はそれらの視点に加え,古墳や地域の豪族,「延喜式」に掲載された式内社,直線道路のさらなる活用などの視点を加えて検討を行い,各時代における駅路のルートを求めた.ルートの検討に当たっては明治迅速図を使用したが,この地図には等高線が細かく入っているので縦断の比較も行うことが出来た.さらに,駅家の位置についても比定を行い,駅家間の距離について調査を行ってその妥当性について検討を行った.他の府県において,駅路のルートがはっきりしていないものがある場合には,今回のような視点が参考になればと思う.
著者
西山 孝樹 藤田 龍之 知野 泰明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.123-131, 2012 (Released:2012-11-20)
参考文献数
64

わが国では,10世紀をピークとして9世紀から11世紀にかけて,「土木事業の空白期」が存在していたことを本研究で指摘した.その背景には,10世紀における律令国家の崩壊が最も影響したと考えられる.そして更なる要因として,平安貴族を中心に,土の掘削を忌み嫌う「犯土」思想が,10世紀後期から11世紀に存在しており,その思想が「土木事業の空白期」に影響を及ぼしていたとみられることを示した. しかし,空白期における土木事業は,全く実施されなかったわけではなかった.わずかではあるが,僧によって行われており,文献史料を中心に彼らの事績をまとめた.そして,「犯土」思想が僧による土木事業に影響を与えたかについても迫り,平安時代における「土木事業の空白期」の実態を明らかにした.
著者
小川 健
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.32-50, 2020 (Released:2020-02-20)
参考文献数
49

針尾無線塔は,日露戦争において無線通信の重要性を認識した旧日本海軍が,1918(大正7)年に着手し,1922(大正11)年に完成させた構造物である.最近,コンクリート構造物の劣化が深刻な社会問題となっているなか,この無線塔は約100年を経た現在でも,ひび割れ,鉄筋の腐食もなく健全な姿を維持している.ところが,施工方法は現存している数枚の写真以外よく分かっていない.ただ,この貴重な遺産を構築した建造技術は,後世に継承されなければならない.そこで,これらの写真やコンクリート表面に残る現象および当時の文献を分析した結果,外側の吊足場を上下移動させて施工する方法や,中練コンクリートを使用した搗固法による締固方法が明らかになった.そして,この搗固法は緻密なコンクリートを生成し,中性化の抑制に有効であることが検証された.
著者
岡田 幸子 小林 一郎 増山 晃太 田中 尚人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.76-85, 2016 (Released:2016-08-20)
参考文献数
25

「軌道用敷石」とは,近代の都市交通の主役を担ってきた路面電車に欠かせない「板石舗装」〔1957(昭和32)年には全国の軌道敷舗装の78.84%を占めていた〕の表層に用いられる舗装材である.板石舗装用材として最も普及した軌道用敷石は,路面電車を支えてきた重要な石材だった.本研究ではこれまであまり研究されてこなかった軌道用敷石の体系化の基礎資料として,軌道用敷石の規格と産地を調査し,整理することを目的とした.その結果,軌道用敷石は舗装材の要求性能を満たす仕様(材質,形状,寸法,許容差,仕上げ)が明確な規格品であり,国内の主要6ヶ所の産地(茨城県稲田,群馬県沢入,山梨県塩山,岐阜県恵那,広島県倉橋島,香川県小豆島)から明治から昭和にかけて全国に供給された花崗岩であることが明らかになった.
著者
野口 孝俊 浦本 康二 鈴木 武
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.20-29, 2014 (Released:2014-08-20)
参考文献数
27

第二海堡は,軍事要塞として明治32年に人工島が竣工し,建設後100年が経過している.その間,第二海堡は1923年の関東大震災によって被害を受け,長年の風浪等により劣化・損傷・崩壊が進行している.現在,護岸の保全を行い,その一部は当時の護岸を復旧させることを検討している.本稿は,工学的立場から,国内で初めての海上人工島築造に対する海堡建設計画,建設技術,設計技術など明治期土木構造物の建設技術をとりまとめ,現代技術への展開について考察を行った.
著者
野口 孝俊 浦本 康二 鈴木 武
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.20-29, 2014

第二海堡は,軍事要塞として明治32年に人工島が竣工し,建設後100年が経過している.その間,第二海堡は1923年の関東大震災によって被害を受け,長年の風浪等により劣化・損傷・崩壊が進行している.現在,護岸の保全を行い,その一部は当時の護岸を復旧させることを検討している.本稿は,工学的立場から,国内で初めての海上人工島築造に対する海堡建設計画,建設技術,設計技術など明治期土木構造物の建設技術をとりまとめ,現代技術への展開について考察を行った.
著者
中根 洋治 奥田 昌男 可児 幸彦 早川 清 松井 保
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.22-37, 2012 (Released:2012-02-20)
参考文献数
48

本稿では,静岡県の赤石山脈の南端にある,我が国の代表的な尾根を通る秋葉古道を研究対象とした.この古道について,中世以前のことがこれまで明らかにされていないので,その成立過程と果たしてきた役割などを研究した.秋葉古道は時代と共に黒曜石・巨石信仰・塩・修験道・秋葉信仰・戦いの道などに使われてきたが,文献調査,現地踏査及び聞き取り調査により,その成立過程とともに浜松市を代表とする遠州と飯田市を代表とする南信州を結ぶ古道の役割についても研究した.その結果,最古の道は兵越峠を越えていたこと,そして,時代が下がるにつれて利用されたルートが低い位置に推移していること,また秋葉古道の役割として,物や人の運搬に関することおよび信仰などのために使われてきたことを明らかにした.
著者
中根 洋治 奥田 昌男 可児 幸彦 早川 清 松井 保
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.22-37, 2012

本稿では,静岡県の赤石山脈の南端にある,我が国の代表的な尾根を通る秋葉古道を研究対象とした.この古道について,中世以前のことがこれまで明らかにされていないので,その成立過程と果たしてきた役割などを研究した.秋葉古道は時代と共に黒曜石・巨石信仰・塩・修験道・秋葉信仰・戦いの道などに使われてきたが,文献調査,現地踏査及び聞き取り調査により,その成立過程とともに浜松市を代表とする遠州と飯田市を代表とする南信州を結ぶ古道の役割についても研究した.その結果,最古の道は兵越峠を越えていたこと,そして,時代が下がるにつれて利用されたルートが低い位置に推移していること,また秋葉古道の役割として,物や人の運搬に関することおよび信仰などのために使われてきたことを明らかにした.
著者
高橋 良和 小嶋 進太郎 Mya San WAI
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.16-31, 2020 (Released:2020-01-20)
参考文献数
62
被引用文献数
1 1

本研究では,第二次世界大戦末期に朝鮮半島で建設された複斜材型トラス橋梁について,朝鮮総督府鉄道局の小田彌之亮技師による回顧や当時の雑誌等の記述を組み合わせることにより,その開発の経緯を整理した.戦争時に爆撃の対象となる重要構造物である橋梁について,昭和10年代に行われた耐弾性能を高めるための技術的検討を整理し,内的・外的不静定,吊構造などの異なる技術の組み合わせ(多様性)を推奨していたこと,また高次不静定橋梁の構造計算は,近似的解法による一次応力の算出だけではなく,曲げによる二次応力も算出し,その精度が極めて高いことを証明した.また,中国と北朝鮮間の国際橋梁である鴨緑江橋梁について,その設計,架設状況について整理するとともに,実際の被害を踏まえた耐弾性能について検証した.
著者
馬場 俊介 樋口 輝久 山元 亮 島田 裕介 横井 康佑 木田 将浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.107-122, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
4

著者らが2007年から実施してきた「近世以前の日本の土木遺産の総合調査」では,データ蓄積と現地調査,ならびに,WEB公開を同時並行で進める中,残存遺構の価値を,(1)保存状態と(2)本質的価値に分け,後者については試行的に判断・公開してきた.保存状態の評価基準の作成に比べて本質的価値の評価基準の作成が遅れたのは,基準作成にあたって相当数のデータ蓄積が必要であり,かつ,文献上の確認も数多く必要となったからである.この度,調査開始5年目にしてようやく基準を作成できる水準に達したと判断したことから,遺構の中で最もデータ数の多い道路遺産(道標・町石・常夜灯)について,本質的価値の基本的概念を,その背景となったバックデータとともに示す.また,各評価対象項目の1位に相当するものを個別に紹介する.
著者
野口 孝俊 浦本 康二 鈴木 武
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1-10, 2015 (Released:2015-03-20)
参考文献数
22

第二海堡は,明治期後半に建設された東京湾中央部に位置する軍事要塞跡である.要塞はコンクリート,煉瓦,石材,土により建設された土木構造物(地盤構造物)である.築造100年を経過している近代遺産であるが,軍事施設であるため設計・施工や完成断面などの建設記録が残されておらず,耐久性の検討を行うことが難しい状況にある.本稿は,第二海堡における煉瓦の特徴をとりまとめ,周辺類似施設と比較することで,明治期の東京湾砲台群建設における煉瓦の調達の関係を考察し,材料の特定に必要な煉瓦構造物の建設年次および材料調達を推測した.
著者
小澤 広直 佐々木 葉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.38-52, 2021 (Released:2021-05-20)
参考文献数
49

本報告では,昭和戦前期から戦災復興期にかけて内務省や建設省の土木エンジニア,建設官僚として活躍した都市計画家町田保(1903-1967)に着目し,町田の著した論考や書籍,公文書や事業記録などの資料を用いて,町田の経歴や仕事を整理するとともに,代表的な仕事の特徴や町田の考え方について把握することを目的とする.町田に関する年表作成と資料分析を行った結果,戦災復興都市計画では帝都復興事業での経験や知見を生かし,戦災復興院及び建設省の土木エンジニアとして中心的役割を担ったこと,首都建設計画では首都建設委員会事務局長として,戦前の地方計画の研究や戦後のアメリカ都市計画の視察に関する経験を生かし,東京を中心とする衛星都市整備計画や首都高速道路計画の立案に尽力したことなどが把握できた.
著者
小関 玲奈 山本 正太郎 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.47-58, 2022 (Released:2022-07-20)
参考文献数
34

災害常襲国である日本において,土地利用マネジメントを含めた事前復興計画の推進は急務であるが,土木史的な視座を踏まえて,危険地帯への市街地進出要因を考慮した制度設計がなされているとは言い難い.そこで本研究では,東日本大震災,西日本豪雨で被災した5都市の都市形成史と災害後の都市計画的対応を比較分析し,各都市で甚大な被害を生むに至った空間的要因とその経緯を解明することを目的とする.近代以降の交通基盤整備や土地区画整理事業等の都市基盤整備が実施された位置や規模を,分析の視点とする.次の災害への備えとしての災害防御インフラの整備と,土地の利便を逓増させる交通基盤・都市基盤整備とが連動して行われたかどうかが,災害後に減災型都市構造へ転換する分岐点となったことを明らかにした.
著者
三山 幹木 真田 純子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.11-21, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
9

未曽有の災害が想定外の被害をもたらしている昨今,インフラの要求性能として,被災後に構造物としての機能をゼロにしない“粘り強さ”など単なる構造物の強さだけでは測れない特質が注目されている.環境的な観点からも評価されている伝統的な技術である空石積みの強度計算だけでは測れない構造物としての「強さ」の検証を行った. 本研究では四国・九州から計452件の擁壁・護岸の被災事例を収集し,写真を構造物の破壊箇所ごとに分類を行い,破壊時の挙動を観察した.観察の結果,空石積みは壊れた後にも効果を発揮しうる構造物であり,(1)小さく壊れること,(2)壊れたときの機能がゼロになりにくいこと,(3)復旧が容易であること,(4)二次被害の危険性が少ない可能性があることを明らかにした.
著者
金井 昭彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.14-28, 2018 (Released:2018-07-20)
参考文献数
40

19世紀のヨーロッパにおいては,大都市の駅舎のホームにはトレイン・シェッドが建設され,駅空間のシンボルとして君臨してきたが,現在においてもその圧倒的な存在感は失われていない.これに対し,明治・大正期の日本においては,ホームのみを覆い,軌道上部が開放されたプラットホーム・シェッドが主流であり,トレイン・シェッドは採用されなかった.本研究では,日本においてトレイン・シェッドが建設されなかった理由を,駅舎空間や当時のエンジニアが行った欧米視察記,停車場論,鉄骨建築史等から考察することを目的とする.
著者
福井 次郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.28-41, 2017

大正後期から昭和前期に多数の橋梁を設計した増田淳は,個人ではなく設計事務所で設計業務を行っていた.しかし,この設計事務所の組織体制や,増田が全ての橋の設計の中心的立場であったかどうか等は不明であった.今回,旧独立行政法人土木研究所で発見された設計計算書,設計図に記入されている担当者のサイン,日付を分析し,設計事務所の組織体制,活動状況等を調査した.調査の結果,設計事務所の技術スタッフは約10名で,各職員の氏名や担当した構造物等が明らかとなった.その中で,稲葉健三は増田に劣らない設計技術を有しており,稲葉が設計事務所の中心的立場であったこと等が明らかとなった.
著者
村上 理昭 山口 敬太 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.11-24, 2015

堺大濱では,明治期半ば以降,堺市や阪堺電気軌道株式会社によって公園地経営が進められた.本研究では堺市会決議録・会議録や行政資料,大阪毎日新聞堺周報等の資料をもとに,堺市大濱公園における管理と経営の変遷と,作り出された海浜リゾート空間の形成過程を明らかにした.具体的には,堺市による官有地を借り受けての料理屋・茶店営業を主とした遊園地経営,内国勧業博覧会を契機とする水族館と西洋式広場の整備,堺市の財源不足や鉄道会社間の競合関係を背景とした阪堺電気軌道の公園経営への参画と公会堂や潮湯などの文化・娯楽施設の整備,市と阪堺電気軌道の考えの相違による契約解消,といった公園地経営の経緯を明らかにし,海浜リゾートとしての空間形成の実態を明らかにした.
著者
簗瀬 範彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.9-20, 2011
被引用文献数
1

本研究は19世紀に作成された地籍図の面積誤差の原因を考証したものである.現在の地籍制度は,明治期の税制革改である地租改正時の土地台帳とその付属地図を淵源としている.数%からときには10%以上に及ぶ面積誤差の原因は,当事者である農民の拙劣な測量技術,重税を逃れようとする農民の計測の誤魔化し,官側の検査の杜撰さ等によるものと一般に認識されている.しかし,いわゆる「縄伸び」と呼ばれる登記簿面積と実測面積との差は,概ね官側から提示された許容範囲内にあることを地籍図に関する測量基準の分析から明らかにした.併せて,分筆対象の筆全体を実測なしに分筆する制度が長らく行われたことや農地改革に伴う国有地解放なども地籍図における面積誤差の原因の一部であることを指摘しておきたい.