著者
百瀬 靖子 湯沢 雍彦 末広 和子 内海 すの子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.514-520, 1980

1) 家庭生活の健全度測定指標を構成する目的で, 4側面からなる10領域指標, 100項目にわたる項目・尺度の作成を試みた.<BR>同尺度による一般主婦を対象に測定実施した結果, ストレス, 家族統合, 夫婦関係, 次いで住居・環境領域 (指標) に高い健全度を示した.<BR>2) 指標の妥当性をx<SUP>2</SUP>-検定により求めたところ, ストレス, 家族統合, 夫婦関係, 次いで生活満足感, 住居・環境領域 (指標) に, 高い妥当性を示した.<BR>指標の健全度への影響をφ係数により求めたところ, 全体判断的側面 (家族統合, 生活満足感領域指標) の連関の高さが示された.<BR>3) ステージ別, 家族構成別, 職業の有無別による健全度への影響は, ステージ別-高等教育へ子女を進学させる家庭の健全度は幼稚園児を有する家庭より高い-にやや明確な傾向が現われた以外は, 差がみられなかった. 個々領域では若干の差が現われるものの健全度の低い領域では他の領域で補強することにより平均的な健全度を示した.<BR>4) 以上により, 家族関係領域, 心理的・情緒的領域, 家族意識的領域指標での健全度測定尺度としての妥当性の高さ, と同時に同指標での健全度の高さを認めうる. と同時に, 家庭生活の健全度測定値は, 家庭生活の満足度状況と関係が深いという仮説を実証できた.<BR>5) 今後の課題<BR>若干の項目や尺度を検討・追加すること. 調査対象の幅を広げ, 家庭機能の充足が十分でない家庭や地域, 階層にも及ぶ調査の実施を繰り返し検討すること.これらにより, 信頼性の高い標準化された指標が構成されるものと考えられるからである.
著者
中谷 圭子 松元 文子 桜井 芳人
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.201-206, 1974-06-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6

前報につづいて醤油が加熱調理食品をかたくする原因を追求するため, 大豆を用いて, 醤油中に含まれる化学成分の影響を調べた.その結果を要約すると, 1) 醤油に含まれる有機酸16種はいずれも, 加熱処理大豆をかたくし, その程度は酸の種類によってことなる.また, アミノ酸の中では酸性アミノ酸のグルタミン酸とアスパラギン酸が大豆をかたくした.一価のイオンの食塩と塩化カリウムは水処理のものよりやわらかく, カルシウム, マグネシウム, 三価の鉄の各塩化物溶液は逆の結果となった.2) 上記のアミノ酸および有機酸0.1モル濃度を含む5g/dl食塩濃度の醤油水で大豆を加熱処理すると, 同醤油水のみで処理した大豆のかたさの約1.5~2倍のかたさを示した.また, 食塩濃度5g/dlの醤油液あるいは同食塩濃度の緩衝液をベースにして, 乳酸, コハク酸および酢酸を溶かした各溶液で加熱処理した大豆は, 前三者の水溶液の場合より, やわらかく, 酸の添加量による影響は小さかった.
著者
中谷 圭子 松元 文子 桜井 芳人
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.195-200, 1974-06-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
14

醤油が加熱調理品をかたくする現象を官能検査と物理的測定 (カードメーター) によって確かめ, その原因を追求した.その結果はつぎのように要約される.1) 醤油水と食塩水とで加熱処理した大豆, 大根およびじゃがいもはいずれも食塩濃度18g/dlまでの範囲で醤油水処理の方が, 食塩水処理のものよりかたくなった.2) 醤油中の主成分 (食塩, アミノ酸および有機酸) の組合わせによって調製した溶液で大豆を加熱処理すると, そのかたさは (アミノ酸+有機酸) 液>有機酸液>アミノ酸液> (食塩+アミノ酸+有機酸) 液>水> (食塩+有機酸) 液>醤油水> (食塩+アミノ酸) 液>食塩水であった。これにより, 加熱調理の際食塩はやわらかくする性質を, また有機酸およびアミノ酸はかたくする性質があり, 有機酸はアミノ酸より大きな影響を与えると考えられる.
著者
下村 道子 小串 美恵子 山崎 清子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.27-31, 1982-01-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5

カマスサワラの冷凍魚肉を用いて, 魚肉調理における酒類の影響を調べることを目的とし, 魚肉を清酒, 煮切り酒, エチルアルコール溶液, 有機酸・糖液などに浸漬し, その後蒸し加熱を行い, 浸漬液の違いによる魚肉の性状の変化を調べた結果, つぎのようなごとがわかった.1) 清酒, 煮切り酒, 焼酎希釈液, エチルアルコール溶液, 水などの液に食塩を加えて魚肉を30分浸漬した場合, 魚肉は液を7~8%吸収し, 重量が増加した.加熱した場合, 加熱後の重量はどの浸漬においても大差なく, 加熱魚肉の水分・揮発分の魚肉水分に対する割合もほぼ同じであった.2) 生魚肉から浸漬液中へ溶出するたん白質の溶出率は, 煮切り酒が最も少なく, 加熱による魚肉からの溶出たん白質率は, どの浸漬液でもあまり差がみられなかった.3) テクスチュロメーターによる硬さの測定値では, 浸漬液によって差がみられた.清酒と煮切り酒では煮切り酒を用いたほうがやわらかく, 有機酸・糖の影響は, 濃度の高いほうが魚肉はやわらかかった.エチルアルコールの濃度の違いによる影響は, 15%以下の濃度では有意差がみられなかった.
著者
立屋敷 かおる 大亦 みち子 寺元 芳子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.359-362, 1983

1) 煮切り等の加熱操作により, 酒のアルコール度は減少した.アルコール度の高い酒ほど減少率は大きく, 残存量は少なかった.<BR>2) 2倍に希釈した酒を加熱した結果, いずれの酒も加熱時間に伴ってアルコール度が減少し, 加熱2分で元の約112に減り, 10分で1度以下となった.この経時変化に, 加熱時の蓋の有無と酒の濃度は影響しなかった.<BR>3) 清酒の燗は, 燗の程度によりアルコール度の変化に差があった.ぬる燗 (45℃) ではアルコール度に変化がなく, あつ燗 (60℃) で0.6%, 過度の燗 (70℃) で1.2%減少した.<BR>4) 酒を使用する料理10種の結果では, 多くのものが加熱によりアルコール含量の約90%が減少した.加熱後の料理のアルコール含有率は, ほとんどが1%以下だった.
著者
中島 謙一 須原 重明 福山 汀子 江良 至徳
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.52-55, 1984

紅茶にレモンを入れた場合に, レモン中のDPおよびOPPがどの程度紅茶中に溶出するか, について検討を行った.その結果, 通常のレモンティーのいれ方では, レモンに含まれているDPの5.4±2.8% (検体数14個), OPPの9.2±2.9% (検体数14個) が紅茶中へ溶出した.レモンを紅茶中に浸漬する時間を60分にしたところ, DPの溶出率はほとんど変化しなかったが, OPPの溶出率は28.8±4.9% (検体数14個) へと顕著に増大した.また, ショ糖の影響を調歳たが, ショ糖を加えた場合 (濃度 : 6.7%) と加えなかった場合とで, DPおよびOPPのいずれにおいても溶出率に有意差は生じなかった.
著者
松原 朝子 松元 文子 桜井 芳人
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.368-375, 1972

1. 小麦粉をデンプン部, グルテン部および水溶性部に3区分し, 各区分の単一あるいは混合物を, オリーブ油を揚げ油として, てんぷらの衣を調製し, その香気を官能検査によって比較した。その結果 (デンプン+グルテン+水溶性) 部を衣とした場合, 最もてんぷら様の好ましい香気が形成された。<BR>2. てんぷら様香気形成には (グルテン+水溶性) 部が重要な要因となっている。<BR>3. 水溶性部として, アミノ酸を検討した結果, レアスパラギン酸およびレグルタミン酸など, 酸性アミノ酸がてんぷら様香気形成に重要である。<BR>4. 水溶性部として, (酸性アミノ酸+リジン) を添加して調製した衣が, 現段階までのところでは, 最もてんぷら様の好ましい香気を生じた。<BR>5. 揚げ油として, トリオレインを用いた場合の衣の香気は, てんぷら様香気とは著しく異なっていた。<BR>6. トリオレインにメチルリルイトを添加して揚げ油とした場合には, オリーブ油を用いた場合と嗜好的有意差のない好ましい香気のてんぷらの衣が形成された。<BR>7. トリオレインに冷ケン化物あるいはフィトステリンを添加した場合には, 6.に述べたような好ましい香気は形成されなかった。
著者
永井 靹江 今村 ひとえ 山本 正代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.315-322, 1986-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
23

3週齢のウィスター系雄ラットを用いて, 基本飼料群, 塩類混合から亜鉛を除去した対照群, この対照群に未処理小麦ふすまを10%添加したWB群, 0.5% EDTA-2Na溶液で脱ミネラルした小麦ふすまを10%添加したEDTA-WB群の4群に分け, 3週間飼育後の亜鉛欠乏食ラットにおける小麦ふすまの影響を成育状況, カルシウム, マグネシウム, 鉄, 亜鉛の出納について検討した.1) 亜鉛欠乏の対照群, EDTA-WB群は3日目で成長は阻害され, 実験終了時に至るまで体重は増加せず, 3日目の体重をそのまま維持する程度であった.WB群は順調に体重が増加し, 基本飼料群と同じ成長速度を示した.さらに摂食量, 飼料効率においてもWB群は基本飼料群と有意差なく優れていた.2) 各臓器中のミネラル含有量は臓器, ミネラルの種類によって変動した。総重量あたりのミネラル量は基本飼料群, WB群で高い値を示し, 対照群, EDTA-WB群で有意に低い値を示した.大腿骨中のミネラル量も同様の結果であった.3) WB群のミネラル吸収量は基本飼料群とそん色なく良好な値を示した.とくに亜鉛の糞中排泄が抑制され, 吸収率は基本飼料群よりはるかに高く, 80%以上であった.対照群, EDTA-WB群の亜鉛吸収量は負の値を示した.4) 以上の実験結果から, 未処理ふすま中の亜鉛は亜鉛欠乏飼料を十分に補いうるもので, フィチン酸, センイ成分などミネラル吸収阻害作用で懸念される負の要素を考慮してもさらに上回った有効性が観察された.EDTA処理ふすまは何ら有効性を示さなかったが, 負の作用をさらに強調するほどではなかった.
著者
辻 昭二郎
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.33-36, 1986-01-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
4

既報の小麦粉のバッターの多重パイト試験法を改良して等速運動とし, バイト数も増加し, バッター濃度, 添加物の影響, バッターの放置にともなう変化などについて数値的に検討した.1) 一般に, 小麦粉のバッターの多重バイト試験においてバッター濃度が大となるほどa, bの経過曲線の勾配の変化は小となった.2) 多重バイト試験におけるノミイトにともなう経過曲線の最初の変曲点は, 小麦粉の粘弾性特性の変化と関連していることが認められた.この関係を示す4値は強力粉ほど大で薄力粉では小であった.3) 小麦粉の多重パイト試験のパラメーターam, bm, cm/am, 4などで小麦粉の特性の差を数字的に示すことができる.4) 既報の1/100N酢酸液バッターによる多重バイト試験はとくに強力粉の粉質問の差をよく示した.5) 小麦粉のバッターを長時間放置するとその加工性が低下するが, この変化も多重バイト試験のパラメーターの変化で示すことができる.
著者
船川 幡夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.439-446, 1972-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
4

子どもを生み, それを健康に育てていきたいという願いは, 生物として, また, 動物としての人間の本来的な願いから出発したものであって, 古今東西にわたって変わらないものであろう。しかし, 子どもたちをとりまく環境は, 科学技術の進歩, 社会環境の変貌とともに推移し, 健全育成への道はいろいうと変化してきている。これらの実態を正確に把握していることは, すべての小児をその家庭, 学校, 地域社会などとの関連のもとに心身の健全な発達, 健康の保持, 増進をはかり, あわせてその福祉を効果的にすすめるための小児保健活動にはぜひ必要なことなのである。
著者
妻鹿 絢子 三橋 富子 藤木 澄子 荒川 信彦
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.79-82, 1983-02-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

市川らの報告をもとに, ショウガ根茎からショウガプロテアーゼを抽出, 精製し, そのプロテアーゼ活性の比較を行った.その結果, ショウガ搾汁, 酵素抽出液, 粗酵素液, 精製酵素B, 精製酵素Aの順にカゼイン分解物が増加し, 酵素の精製が進んだことが確認された.これら各精製段階のショウガプロテアーゼをpH5.037℃において, 筋原繊維蛋白質に対して3%になるように添加して作用させた.ショウガ搾汁を作用させた場合には, 反応時間60分におけるミオシン分解率は35.8%であったが, 最も蛋白分解力の強い精製酵素Aを作用させた場合には, 反応時間60分で62.3%におよぶミオシン分解率を示した.
著者
島田 裕子 大野 庸子 泉谷 秀子 志水 映子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.603-608, 1980

本研究は名古屋市内の民間分譲マンションの建設傾向を把握し, その資料をもとにマンション居住者の実態および住要求を明らかにすることを目的に調査を行い, つぎの結果を得た.<BR>1) 名古屋市のマンションは近年増加の傾向にあり, その大部分は地下鉄沿線に建設されている.<BR>2) マンション居住者は, 平均家族3人の核家族, 平均年収300万円以上の給与生活者が8割を占め, 広さ約80m<SUP>2</SUP>, 室数3LDK以上に居住している. 居住者は利便性を選択の最大理由としている.<BR>3) マンション居住者の永住意向は低く, 転居意向は高く, 大多数が住み替えを前提としている. 転居の要因となりうるものとしては, 住戸の型, 広さ, 価格および年齢があげられる. しかし転居の最大の理由は庭付き1戸建て志向であり, ここにマンションの限界の一つがあるといえる.<BR>4) 以上マンション居住者の属性および転居意向から指摘しうることは, マンションが都市の中堅サラリーマンの住居として有効に機能していないという点である.
著者
吉松 藤子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.359-361, 1954

1. 鰹節の煮出汁をとる場合、材料を沸騰水中に入れても、水に入れて直ちに加熱しても、水浸しておいて加熱しても馬見成分の侵出量に大した差異を認めない。<BR>汁の香気は、沸騰水中に入れたものが最もよい。<BR>2. 鰹節は使用量が増すに従つて、旨味成分の侵出率は低下する。<BR>3. 煮出汁を取るのに用いる鰹節の使用量の最大限度は、水の5%内外とされている。使用量が更に増して8%にもなると、煮出汁の味は渋みを伴つて不味である。<BR>4. 一番煮出汁に用いた水の量の半分の水を用いて取つた二番煮出汁、三番煮出汁中に侵出される旨味成分の侵出率は、材料の使用量の多いもの程低くなる。<BR>5. 血合肉の多い部分の煮出汁は、背の部分の煮出汁に比較して、色や匂が悪いのみでなく旨味成分の侵出量も少い。<BR>6. 手で削つたままのものと、それを更に細をく砕いたものとは、旨味成分の侵出量には差異は認められない。手で削つたままの形が既に侵出し易い状態であると考えられる。<BR>7. 沸騰水中に於ては、鰹節の旨味成分は極めて短時間内に侵出される。
著者
今井 弥生
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.292-297, 1965

東京家政学院短期大学・家政科学生を対象とし、1955~1963年にわたり、日本色彩社発行の97標準色を用いて、嗜好色と着用嗜好色とを経年的に調査し、これらの嗜好率と相関関係とを明確にするために決定係数を求め、同時に着用嗜好色率の嗜好色率平均弾力性を求めて検討を加えた。被験者は9年間計2,757名である。<BR>主な結果<BR>1. 嗜好色と着用嗜好色とにおいて、色彩の受容には周期的現象が認められる。<BR>1) 嗜好率1位を示したダーク・ブルー系の周期は、約4~6年と推察される。なお、レッド系とブルー系とを主調とする年度にはパープリッシュの傾向を好み、ブラウン系とグリーン系とを主調とする年度にはグリーニッシュを好む傾向が強い。<BR>2) 2位を示したスカイ系は、ダーク・ブルー系と交互に出現する傾向があり、次のピークに達するまでには、約4~6年の周期があると推察される。<BR>3) 3位を示したイエロー系は、徐々にピークに達し、その周期は、約8年以上と推察される。<BR>2. 決定係数の大小には、その信頼度とともに、年令層による特色がやや認められる。<BR>1) ターコイズ系、ライト・グリーン系、メディアム・グレー系は決定係数が大であり、嗜好色と着用嗜好色との相関関係が強度に存する。これはこの年令層にあう系統と思われる。<BR>2) オリーブ系、ラベンダー系、ワイン系、リーフ系においては決定係数が小であり、相関関係が殆んど存しない。これらは比較的年配層にあう系統と思われる。<BR>3. 決定係数・平均弾力性ともに大なる系統については、この年令層における需要予測が確定できると考えられる。<BR>1) ターコイズ系、メディアム・グレー系、ライト・グリーン系は決定係数・平均弾力性ともに大であり、着用嗜好色率の増加が確実に予想される。<BR>2) イエロー系、イエロー・グリーン系、レッド・パープル系、ブルー系、レッド系、ベージュ系、ブラウン系、オリーブ・グリーン系については、決定係数は中位であるが、平均弾力性は1より大であるので、着用嗜好色率の増加がやや予想される。<BR>3) ブラック系の決定係数は中位ではあるが、平均弾力性は最も大であり、ある時期には最大の着用嗜好色率の増加率が予想される。
著者
日比 喜子 小林 喜美枝 北村 進一 久下 喬
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.743-749, 1986

うるち米飯 (米飯) およびもち米飯 (強飯) を5℃に放置したときの性状変化について, 澱粉の老化の面から検討を行い, 次の結果を得た.<BR>1) 水可溶性画分は, 強飯のほうが米飯より多かった.画分中の全糖量は, 米飯では, 冷蔵3時間後に最高値を示した後, 減少した.強飯では, 冷蔵3時間までほぼ一定で, その後, 減少した.<BR>これらの糖についてGPC分析を行い, 分子サイズ分布を調べ, その経時変化を追跡した.<BR>2) 冷蔵中における糊化度は, 強飯のほうが, 一般に, 米飯より高かった.米飯では, 冷蔵3時間後に糊化度が最高値を示した後, 低下した.強飯では, 冷蔵1時間後までほぼ一定で, その後, 徐々に低下した.<BR>3) 米飯, 強飯とも, 加熱前のA図形の結晶構造は, 加熱により消失し, 米飯では, 微量のらせん状複合体の形成を示すV図形, 強飯では, 非晶形のV図形を示した.冷蔵24時間後から結晶性の回復がみられ, 144時間後には, B図形へと変化した.
著者
大井 裕子 鶴淵 和子 小林 トミ 穂坂 直弘 寺元 芳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.81-86, 1985

砂糖液の加熱時における火力と最終温度がカラメルソースの色や味とどのような関係にあるかを明らかにするため実験を行い, 次のような知見を得た.<BR>1) カラメルソースの濃度は, その仕上がり重量がもとの砂糖重量の1.10~1.15倍がよい.<BR>2) 官能検査の結果, 強火では 210~230℃ 加熱のものが色・味ともに評価が高かった.これに該当するのは, 中火では220℃, 弱火では210℃加熱のものであった.<BR>3) カラメルの色は弱火で210℃, 中火で220℃, 強火で230℃になると急変しやすく, ばらつきが大きくて再現性に欠ける.<BR>4) カラメルソースの色価は 600 前後が適当である.<BR>5) カラメルソースの pH は, 加熱温度の上昇とともに低下する.<BR>6) 火力は強火よりも弱火のほうが温度が緩慢に上昇し, 低温で着色する.<BR>7) カラメルの調製法としては160℃まで強火にし, その後弱火で加熱するのが, 所要時間や調理操作上よいと考えられる.
著者
新田 ゆき
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.173-176, 1975-06-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

1) 加熱中断によるジャガイモ組織の硬化現象 (ゴリイモ化) について実験した結果, 55~70℃, 100分予加熱したのち, 100℃で再加熱したものは堅く, 破断力が増大した.しかし, EDTAを加えると予加熱しても柔らかく, 逆に, CaCl2 を加えたものは普通加熱でも破断力は著しく増大した.2) 予加熱したものでは, 水溶性ペクチンが普通加熱のものより明らかに少なく, 塩酸可溶性ペクチンは逆に多い傾向を示した.3) ジャガイモ以外の野菜, 果実の若干のものについても実験したが, 同様に60℃予加熱で顕著に破断力が増し, 水溶性ペクチンが減少した.4) 以上の現象の原因として, ペクチンメチルエステラーゼがペクチニン酸のメチル基を離し, フリーになったカルボキシル基が組織内の Ca++, Mg++ と架橋を作り堅くなるのではないかと想定している.