著者
北田 純弥 萩原 将文
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.1232-1241, 2001-05-15
参考文献数
20
被引用文献数
8

本論文では, 大規模な知識を有する電子辞書を利用し, 認知心理学に基づく比喩による文章作成支援システムを提案する. 比喩は, 言語による情報伝達のみでなく, 我々の思考や概念化, 記憶などの認知過程にも深くかかわっていることが広く認識されている. また, 自然言語処理の観点から, 比喩研究の成果から反映できる技術やモデルは, 応用範囲が広いと考えられている. 一方, 従来のコンピュータを利用した比喩研究は比喩理解に関する研究が多く, 使用する知識ベースの獲得にも大きな問題があった. 認知心理学においては, 比喩の処理過程には情緒・感覚的類似性やカテゴリ的類似性, 修飾語との共起関係の強さが比喩の生成に大きな影響を与えるといわれている. そこで, 本論文ではこれらの概念が工学的に導入された, 電子辞書を用いた比喩による文章作成支援システムを提案する. 提案システムでは, 情緒・感覚的類似度, カテゴリ的類似度, 共起度の3点を満たした比喩度と呼ばれる概念を導入し, 柔軟な比喩の計算を行う. また, 知識ベースとして大規模な知識を有するEDR電子化辞書を利用している. さらに, 発散的思考支援ツールとしての立場に立ち, 文章作成支援システムという形で, 実際にユーザが使用できるシステムを実装している. 詳細な評価実験により, 提案システムの有効性が確認されている.
著者
金澤 裕治
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.2382-2391, 2016-11-15

厳密解を求めるのが困難でヒューリスティクスによって解かれている問題で,計算機が熟練者を上回ることが困難なものが存在する.そのような問題において,ヒューリスティクス手法を多数のパラメータで制御できるようにしておき,そのパラメータを機械学習によりチューニングすることで,熟練者の判断を再現できれば,解法の性能向上が期待できる.そのために解決しなければならない課題の1つが,教師データの不足である.本論文では,教師データが不足した環境で学習結果に含まれる誤りを改善する強化学習類似手法を提案する.提案手法を将棋プログラムBonanza 6.0の機械学習テーブル改善に適用し,1回の適用でイロレーティングが平均25程度,繰り返し適用することで,最終的には150程度向上した.
著者
義久 智樹 原 隆浩
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.898-907, 2017-04-15

センサなどのモノがインターネットに接続される流行は,IoT(Internet of Things)と呼ばれ,近年非常に注目されている.これらのモノから継続的に発生するデータを入力として,あらかじめ登録された問合せ(連続問合せ)を実行するストリーミング処理技術が研究されている.これらの研究では,データが入力されてから連続問合せの結果を得るまでのストリーミング処理にかかる時間を短縮している.近年のIoT環境の普及により,高頻度なデータの発生源が分散してインターネットに接続されており,さらなるストリーミング処理時間の短縮が求められている.そこで本研究では,IoT環境におけるストリーミング処理時間短縮手法を提案する.提案手法では,センサが接続された処理サーバが分散していると想定したうえで,各連続問合せを個別に処理できるいくつかの部分条件に分割してストリーミング処理を行う.評価の結果,提案手法は従来手法よりも最大通信ホップ数と平均通信量を削減でき,ストリーミング処理時間を短縮できることを確認した.
著者
田村 仁 古原 和邦 今井 秀樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.494-504, 2007-02-15
参考文献数
11
被引用文献数
1

アドホックネットワークに代表されるような動的なネットワーク上で何らかの双方向通信を行う際,送信時に利用した経路を返信時では利用できないケースは当然考慮されるべきであるが,とりわけ,返信時にその返信先を知ることができない匿名通信においては,これはそう単純な問題ではない.特に医療相談など,返信までのタイムラグが大きいアプリケーションほどそのような問題に陥る可能性は高い.しかしながら,こうした点について従来の匿名通信方式では十分に考慮されているとはいい難い.そこで本論文では,主な既存方式の特徴や問題点とその原因を整理したうえで,新たに高いデータ可用性を有した方式を提案する.また,これら提案方式を含め種々の組合せについて匿名性,データの可用性,および操作のコストという観点からの比較検証を行った.その結果,従来の代表的な双方向匿名通信方式であるオニオンルーティングを用いる場合に比べても総合的に性能が優った方式の組合せを示すことに成功した.
著者
中村 聡史 小松 孝徳
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1402-1412, 2013-04-15

スポーツの試合の録画視聴を楽しみにしているユーザにとって,Web上で遭遇してしまう試合結果などのネタバレ情報は楽しみを減退させる忌むべきものである.本稿では,こうしたネタバレ情報との遭遇を防ぐための表現手法を4つ提案し,実装を行った.また,表現手法の有効性について評価実験をベースとして検討を行った.Seeing the final score of a sports match on the Web often spoils the pleasure of a user who is waiting to watch a recording of this match on TV. This paper proposes four information clouding methods to block spoiling information, and describes implementation of a system using these methods as a browser extension. We then experimentally investigate the usefulness of the methods, taking into account their differences, differences in the variety of content, and differences in the user's interest in sports.
著者
岡本 栄司 中村 勝洋
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.32, no.11, pp.1498-1504, 1991-11-15

暗号システムにおいて 暗号化鍵はシステム全体の安全性の要であり 暗号化鍵の保護には十分な注意が必要である長い間同一の鍵を使用していると 悪意の第三者に知られる可能性が高くなるこのため 暗号化鍵は時々変える必要がでてくるそこで データを暗号化する鍵(ワーク鍵)を随時変更し 別の上位の鍵(鍵暗号化鍵)で暗号化して相手に送る方法が用いられているさらにこの鍵暗号化鍵を多段階層にすることもあるしかしながら これらの暗号化鍵 特に最上位の鍵(マスタ鍵)の変更をどの程度に行うべきかに関する「鍵の変更周期」あるいは「鍵の寿命」については まだ議論が少ないこれでは 実際に暗号システムを導入する際 運用上不安が残るそこで 本論文ではアメリカ標準暗号DESを想定して 暗号化鍵(ワーク鍵 マスタ鍵)の変更周期を調べた解読方法には 例として最も単純な全鍵探索法(Exhaustive Key Search)を用いたこの結果 マスタ鍵は毎年 ワーク鍵はメッセージごとあるいはセッションごとに変更したほうが良いことがわかったなお 本論文で示した考えは 暗号アルゴリズムと解読法を変えても基本的に適用できるものであるまた本結果は 最も単純な解読法を仮定しているため 一般に守るべき最低基準を示していると考えられる
著者
野村 圭太 谷口 義明 井口 信和 渡辺 健次
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.672-682, 2017-03-15

今後,企業や大学などの既存ネットワークにおいてOpenFlowネットワークへの移行が進められると予測される.しかし,OpenFlowネットワークへの移行には,コントローラの設定やテスト環境の構築にコストを要すると考えられる.そこで本稿では,従来型のネットワークから,OpenFlowネットワークへの移行を支援するシステムを提案,設計,実装,評価する.提案システムを用いることにより,従来型のネットワーク上のルータから自動的に設定情報を取得し,その設定情報をOpenFlowネットワークで適用可能な形式に変換,その後,変換した設定情報をOpenFlowネットワークへ反映させることができる.これにより,従来型のネットワークと同等のパケット制御を行うOpenFlowネットワークを半自動的に構築できる.本稿では,実ルータを用いた評価の結果,最大10台のルータから構成される従来型のネットワークを6分以内でOpenFlowネットワークに移行できることを確認した.
著者
Yoshihiro Oyama Yudai Kawasaki Kazushi Takahashi
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, 2015-03-15

Many dynamic malware analysis systems based on hypervisors have been proposed. Although they support malware analysis effectively, many of them have a shortcoming that permits the malware to easily recognize the virtualized hardware and change its execution to prevent analysis. We contend that this drawback can be mitigated using a hypervisor that virtualizes the minimum number of hardware accesses. This paper proposes a hypervisor-based mechanism that can function as a building block for dynamic malware analysis systems. The mechanism provides the facility for checkpointing and restoring a guest OS. It is designed for a parapass-through hypervisor, that is, a hypervisor that runs directly on the hardware and does not execute a host OS or an administrative guest OS. The advantage of using a parapass-through hypervisor is that it provides a virtual machine whose hardware configuration and behavior is similar to the underlying physical machine, and hence, it can be stealthier than other hypervisors. We extend the parapass-through hypervisor BitVisor with the proposed mechanism, and demonstrate that the resulting system can successfully checkpoint and restore the states of Linux and Windows OSes. We confirm that hypervisor detectors running on the system cannot identify the virtualized hardware, and determine that they are executing on a physical machine. We also confirm that the system imposes minimal overhead on the execution times of the benchmark programs.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.23(2015) No.2 (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.23.132------------------------------Many dynamic malware analysis systems based on hypervisors have been proposed. Although they support malware analysis effectively, many of them have a shortcoming that permits the malware to easily recognize the virtualized hardware and change its execution to prevent analysis. We contend that this drawback can be mitigated using a hypervisor that virtualizes the minimum number of hardware accesses. This paper proposes a hypervisor-based mechanism that can function as a building block for dynamic malware analysis systems. The mechanism provides the facility for checkpointing and restoring a guest OS. It is designed for a parapass-through hypervisor, that is, a hypervisor that runs directly on the hardware and does not execute a host OS or an administrative guest OS. The advantage of using a parapass-through hypervisor is that it provides a virtual machine whose hardware configuration and behavior is similar to the underlying physical machine, and hence, it can be stealthier than other hypervisors. We extend the parapass-through hypervisor BitVisor with the proposed mechanism, and demonstrate that the resulting system can successfully checkpoint and restore the states of Linux and Windows OSes. We confirm that hypervisor detectors running on the system cannot identify the virtualized hardware, and determine that they are executing on a physical machine. We also confirm that the system imposes minimal overhead on the execution times of the benchmark programs.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.23(2015) No.2 (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.23.132------------------------------
著者
渡邊 純一郎 望月有人
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.3899-3907, 2008-12-15

さまざまな情報端末を用いて膨大な情報にアクセスすることが可能になってきているが,それらのユーザインタフェースはコンテンツの検索性という点において複雑さを増している.本研究では,複雑な操作を必要とせず所望のページにアクセスできる「本」という情報メディアに着目し,パラパラとページをめくる操作をメタファとしたブラウジングインタフェースを試作した.薄いシート状のデバイスを曲げる操作により,曲げによる弾力を手や指にフィードバックとして与えることで,実世界の本のページを自在にめくる感覚でデジタルコンテンツのブラウジングを行うことができる.このインタフェースは既存の情報端末向けのタンジブルな操作デバイスとしてだけでなく,技術開発が進んでいるフレキシブルディスプレイ向けのインタフェースとしての応用を視野に入れている.
著者
市野 順子 磯田 和生 上田 哲也 佐藤 玲美
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.1162-1173, 2015-04-15

本稿では,インタラクティブディスプレイの角度(0°・20°・45°・90°)が人々の社会的な行動に与える影響を探る.フィールドスタディでは,約4カ月間にわたり合計900人以上の来場者の量的および質的データを収集した.本研究から以下のことが明らかになった:(1)知的好奇心の高い来場者の注意を誘うには水平に近いディスプレイが効果的である.しかしディスプレイ空間にすでに人がいる状況では垂直が効果的である.(2)タッチジェスチャータイプのインタラクティブ展示を,時間をかけて体験してもらいたい場合は水平あるいは垂直が効果的である.特にルーペ機能を含む場合は垂直が有効である.(3)来場者は0°~45°のディスプレイ空間にいるとパーソナルスペースを意識しやすく,45°に近い方がそのサイズが大きい.コンテンツを介した人と人のコミュニケーションを促したい場合には,垂直のディスプレイが有効である.また,調査結果全体から,45°のディスプレイは,必ずしも0°と90°の中間的な性質を有した「無難」な角度ではないことが示唆された.これらの知見は,ミュージアムのインタラクティブ展示や,その他の公共の空間に設置するディスプレイを設計する際に有用である.
著者
出口 弘 西村 仁志 吉村 浩 河田 亨 白川 功 大村皓一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.944-952, 1984-11-15

コンピュータグラフィックスで動画制作を行うには 画像生成速度の飛躍的向上と画像の生成・合成・編集が効率的に行えるトータルシステムが必要である.そこでわれわれは物体の三次元形状や材質感をリアルに表現できる陰影表示による動画制作システムLINKS-1を開発した.そのサブシステムである高速画像生成システムは マルチマイクロコンピュータによる分散型並列処理システムである.高品質な三次元画像を生成するためには 影・反射・透過・屈折の処理が必要不可欠であり これらを一貫して処理できるアルゴリズムとしては視線探索法があり 並列処理に適しているのでこれを生成アルゴリズムとした.視線探索法を実現するうえで問題となる交差判定の高速化のために マルチコンピュータシステムによる並列処理・パイプライン処理のほか 物体データの階屈化 各種コヒーレンスの応用 非屈折透過処理などを行った.本論文では システムの概要と これらの高速化手法とその評価を報告する.
著者
網谷 重紀 堀 浩一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.89-102, 2005-01-15
被引用文献数
6

本研究では知識創造過程を支援するための方法「知識の液状化と結晶化(Knowledge Liquidization & Crystallization)および,知識創造過程を支援するためのシステム「Knowledge Nebula Crystallizer(KNC)」を提案・構築し,ユーザスタディを通して評価を行った.従来知識創造に関していくつかの理論が提唱され,それらは多くの企業の知識管理に対する考え方に影響を与えてその重要性が理解されるに至ったが,現実にはその理論を具体的に実務に適用する方法が提示されておらず,実際に知識創造のためには何をすればよいのかが分からないという問題が生じている.そこで本研究では,知の共有から協創への実際的な道筋を示すべく,実際に広告会社との共同研究を通してイベント設計過程を題材として知識創造過程の支援という問題に取り組んだ.本稿では提案・構築した方法とシステムおよびユーザスタディの分析結果を述べる.The aim of this research is to develop a method and a system to apply the theories for knowledge creation to human practices. Though a number of theoretical and practical studies on knowledge creation have been conducted both by researchers and by business-practitioners, practical methods for knowledge creation, i.e., for connecting the theoretical frameworks with the real world knowledge creation are still required. In this paper, the developed method named "Knowledge Liquidization & Crystallization", and a system named "Knowledge Nebula Crystallizer (KNC)" are described. They were applied to the actual exhibition design processes as an exemplar of knowledge creation, in co-operation with a Japanese advertising company. The effectiveness of the method and system has been examined through user studies and discussions with the professional designers.
著者
山田 剛一 森 辰則 中川 裕志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.2431-2439, 1998-08-15
参考文献数
12
被引用文献数
2

情報検索においては, 検索対象の規模が拡大するにつれ, 検索精度の向上がより強く求められてきている.そこで本論文では, 複合語をまとまりとして扱う手法と, 単語の共起情報を用いる手法を統合することにより, 探索システムの精度向上を図ることを提案する.複合語は全体で1つの概念を表現しており, まとまりとして扱うことが望ましいが, 複合語どうしマッチさせる場合には部分的なマッチングを考慮する必要が生じる.このマッチングを行い文書をスコア付けする手法を考案した.さらに, 単語が複合語を構成せず共起する場合もスコアに反映させるため, 共起情報を利用する手法と組み合わせ, 評価実験を行ったところ, 単語の重みに基づく手法, およびそれに共起情報を加える手法のいずれよりも良い探索精度が得られることが確認できた.
著者
大出訓史 今井 篤 安藤 彰男 谷口 高士
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1111-1121, 2009-03-15
被引用文献数
1

音楽や音響システムの評価に人の嗜好や感性を加えることを目的として,心に何らかの良さを強く感じたときに用いられる"感動"という観点から音を評価することを検討している.著者らは,これまでに心理実験によって感動を表現する言葉(以下,感動語)を分類し,"感動"に含まれる心理状態が一意ではないことを示した.本稿では,分類した感動語を感動評価尺度として,音楽聴取における"感動"を評価させた.その結果,楽曲によって感動評価尺度の評価の傾向は異なり,音楽によって喚起される感動にも種類があることが分かった.また,同じ楽曲を評価した場合に,「感動」を高く評価した実験参加者と低く評価した実験参加者では,音楽の持つ感情価測定尺度の評価値よりも感動評価尺度の評価値にグループ間で大きな差異がみられた.「感動」の評価値は,感動評価尺度の評価値の重み付き線形和で近似できた.Our main purpose was to evaluate acoustical reproduction system or musical broadcast programs from the viewpoint of not only impressions of them but also Kandoh, "emotional affect". Some impressionably pleasant or deeply moving experiences are expressed in Japanese by the term "Kandoh", which is generally accompanied by strong emotion. Words describing the experience of Kandoh were collected and classified. The various types of feelings were included in Kandoh categories. The Kandoh Evaluation Scale was made from these Kandoh categories. In this paper, participants listened to music, and then described their feelings using the Kandoh Evaluation Scale. The results showed different types of Kandoh were evoked by music. The Kandoh Evaluation Scale could explain more adequately than the conventional Affective Value Scale of Music the differences between participants who felt Kandoh or not. The evaluated value of Kandoh was approximately estimated by both the types of Kandoh category and the values of the Kandoh Evaluation Scale.
著者
中畑 将吾 中野 裕介 佐川 裕一 垂水 浩幸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.98-109, 2007-01-15
参考文献数
21
被引用文献数
2

近年の相次ぐ食品事故,偽装表示問題を受け,商品トレーサビリティの充実が強く求められている.しかし現在の商品情報データバンクは,登録型であるため特定の汎用データバンクに情報が寡占される状態が進行しており,登録されるデータ項目,データ形式が限られている.特に,少数の消費者にしか利用されない情報については軽視される傾向があり,これらの改善を図るためには従来手法に変わる情報発信,収集のアプローチが必要である.そこで本研究では,データ項目にしばられないRSSを用いた自由な情報発信と,それをデータバンクが目的に沿って自動的に収集,選別する商品情報流通モデルを提案する.これは,データバンクの運用者によって定義された新たな商品情報のデータ形式に従って生産者が情報発信するものであり,また詳細な情報を扱う専門分野に特化したデータバンクの活性化を図るものである.また提案モデルでは,従来できなかった「業界をまたぐ深い検索」が可能である.この点を評価するために,これを実現するアプリケーションを本モデルに基づいて構築した.さらに,被験者21名による評価実験を通して,実際に構築できたアプリケーションが有効であったこと,情報公開が進めばトレーサビリティの質へと変化すること,専門分野に特化したデータバンクは被験者独特のニーズにあった情報を取得することが示された.
著者
星合 厚 鈴木 敦志 坂根 裕 秡川 友宏 竹林 洋一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.3772-3783, 2007-12-15
参考文献数
14
被引用文献数
2

視覚障碍者向けのタンデム自転車における速度感をギター曲のトレモロ奏法を応用して演出する手法を提案する.晴眼者が景色の流れで速度感を常時得られるのに対し,タンデム自転車の後部座席に乗った視覚障碍者は連続的な速度感を自然に感じることは難しい.速度感をBGM(Back Ground Music)のテンポに結び付ける方法は奏功しなかったが,撥弦楽器のトレモロ奏法に着眼し結び付けることで,景色の流れのような速度感の可聴化を実現できた.自転車のスポークがレーザ光を遮ることで生成されるBGM は,車速を感じるために聞き入ることもできれば,サイクリングをより楽しむためのBGM として聞くことも,あるいは気にすらとめずに聞き流すこともできる.実験を通じ,トレモロの速さによって速度感を得ることが可能であること,機構の直感性が担保されていることが確かめられた.This paper proposes the technique that produces the speed cenesthesia for visually impaired cyclists by tremolo playing method used in guitar music. While a sighted cyclist constantly obtains a speed impression from the scenery, a visually impaired cyclist sat on the backseat of a tandem bicycle has difficulty in perceiving continuous speed impression. Though the first and straightforward way that associates the bicycle speed to a tempo is unsuccessful, the second way that associates the bicycle speed to tremolo speed succeeds in producing speed cenesthesia like scenery. The impaired cyclist can listen to the generated music to know the exact speed, or can simply hear the music as a BGM to enjoy the cycling itself, or can pay totally no attention to the music. Experimental results show that the tremolo is useful to perceive the speed, and also shows that the proposal offers instinct mechanism to hear the speed.
著者
秋山 寛子 和田 昌昭 中山 雅哉 加藤 朗 砂原 秀樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.2675-2681, 2016-12-15

プライバシ保護の観点から匿名化技術の重要度が高まっており,なかでもk-匿名化が活発に研究されている.k-匿名化のためのアルゴリズムとしてはMDAVやVMDAVなどが提案されているが,数値データの匿名化において,それらは情報損失の観点から必ずしも最良のものとはなっていない.本論文では,それらのアルゴリズムによって得られたデータの分割を,k-匿名性を保ったまま修正して情報損失を極小にする方法を提案する.またそれを実装して,いくつかのデータセットに適用し評価を行う.データ総数をkで割った余りが大きい場合の多くで,MDAVやVMDAVによる情報損失を提案アルゴリズムにより改善可能である.また,提案アルゴリズムは,データ総数によらず高速に実行可能である.
著者
中川 聖一 Reyes Allan A. 鈴木 英之 谷口 泰広
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.1649-1658, 1997-08-15
参考文献数
16
被引用文献数
19

本論文では, 音声認識技術を利用した英会話CAIシステムについて述べる. これは, システムが, 学習者の発話を自動音声認識により理解し, 待ち時間なしで適切な応答を音声で出力し, 対話を進めることにより, スピーキングとヒアリングの能力を高めるものである. まず, 日本人の発声した英語の音声認識を行うためには日本人の英語発音モデルを用いる必要のあることを示す. 次に, 評価実験として4人の日本人男性にこの英会話CAIシステムを使用してもらった評価実験結果について述べる. 使用前と使用後のスピーキングとヒアリングの能力の差を比較したところ, 全員に能力向上がみられた. またアンケートの結果, 本システムを引き続き利用したいとか, システムの応答時間はちょうど良いといった意見が多く得られた.
著者
河原 英紀 片寄 晴弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.208-218, 2002-02-15
参考文献数
40
被引用文献数
12

音楽としての歌唱の魅力は,歌詞をともなうことに多くを負っているといわれる.しかし,歌詞の理解できない外国語の歌唱であっても,楽器としての人間の声の魅力を楽しむことができることも事実である.ここでは,楽器としての声そのものの魅力を楽しむスキャット,ヴォーカリーズ,口三味線,鼻歌等を対象として取り上げ,音声処理技術を用いて,その魅力の分析,再合成,加工を行うシステムの開発を狙う一連の研究構想を提案し,実現技術の予備検討結果を紹介する.具体的には著者らが開発している高品質音声分析変換合成システムSTRAIGHTをエンジンとして利用し,基本的な反射弓を修飾する発声制御モジュール,韻律制御モジュール,音楽情報処理モジュール,インタラクション制御モジュール等を逐次更新していく生態学的枠組みに基づく開発戦略を提案する.様々な研究者が,このようなシステムの実現を意識して研究を進めることは,計算機音楽の範囲を拡大するだけではなく,音声に含まれる非言語情報やパラ言語情報の処理技術に対する有力なベンチマークの機会を提供するものと考えられる."A research program to develop a versatile system for analysis, manipulation and generation of a specific vocal music genre;scat, vocalease, {\it kuchi-jamisen} and humming, is introduced.One of the major aim of the program is to explore why vocal music is still attractive,even if their lyrics are not intelligible when they are sung in a foreign language.This may sound peripheral to the usual belief that lyrics is the centralcharm point of vocal music.However, we argue that this type of research is indispensable forunderstanding roles of non-linguistic andpara-linguistic components in speech and vocal music.The proposed program uses STRAIGHT as its central analysis, modification andsynthesis engine, and will refine its constituent modules like voicing control,prosodic control, musical information processing, interaction control, and so on,organized as modifiers of the basic reflex arc,in an evolutional and developmental process.This research program,that can be understood as a global load-map for various individual research projects,provides a unique common ground for benchmarking non-linguistic and para-linguisticprocessing algorithms as well as a wide variety of opportunities in computer music applications.
著者
村尾 和哉 寺田 努 矢野 愛 松倉 隆一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.2175-2185, 2016-10-15

建物内にセンサを配置したスマートホームやスマートオフィスにおいて,人の存在あるいは人の移動を検出することで入退室情報の取得や位置推定を行い,ログの生成や室内灯の制御などを実現している.従来研究における人の移動検出方法として,RFIDなどのタグを用いる手法が提案されているが,家庭などで移動推定のために部屋間を移動するたびにタグをかざす作業はユーザの負担になる.人がデバイスを保持しない例として,環境設置型カメラによる画像認識処理を用いる方法が存在するが,人の移動を追うには環境内に至るところにカメラを設置しなければならず設置コストが高く,また必要以上の情報を取得してしまうためプライバシの面で適さない.本論文では照明制御などを目的としてすでに多くの環境で設置されている赤外線人感センサを利用して,家庭内における住人の移動推定を行う.本論文で想定している赤外線センサの密度は一般的な天井照明と同程度(5m2/sensor)で,センシング領域に死角がある疎な環境である.4人家族を想定して2階建て戸建て住宅で行った評価実験の結果,被験者に指示したシナリオの移動および人物を再現率0.93の精度で推定できた.提案手法で得られる住人の移動情報を利用することで,家電の効率的な制御や予測制御が実現できる.