著者
野中 秀俊 伊達惇
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.268-274, 1990-02-15
被引用文献数
4

新しいポインティング装置として慣性マウスを提案し その試作を行い その有効性を検討した.慣性マウスは通常のマウスに拡張機能として慣性機能を付加したもので 近年マウスがパーソナルコンピュータやワークステーションの入力装置として急速に普及し 操作性向上の必要性が高まっていることに応えるものである.慣性機能は人間の自然な動作に整合した機能であるため この機能を使いこなすために特に練習を行う必要がなく また既存のハードウェアやアプリケーション・ソフトウェアを変更することなく実現することができる.この慣性マウスをパーソナルコンピュータ上のデバイスドライバとして設計・試作した.本論文ではその効用について説明すると共に 被験者を用いた実験を行うことにより ユーザがどの程度この機能を活用するかを調べ その活用度・有効性を検証した結果を紹介する.
著者
中山 康子 真鍋 俊彦 竹林 洋一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1186-1194, 1998-05-15
参考文献数
13
被引用文献数
18

個人や組織の知識や情報をストックし,オンデマンドで検索・利用できるようにする知識情報共有システム(Advice/Help on Demand)を,ストック情報の理解・活用の鍵となる知識ベース,マルチデータベース検索,対話インタフェース,メディア変換等の各種要素技術を統合して構築した.実際にストック情報のコンテンツを入れて1,000人規模の組織で実践し,有効性を検証している.システムは,オフィスの構成や業務手順のような体系化可能な知識を蓄積する知識ベースと,仕事のこつや事例など体系化されない個人のノウハウを蓄積するノウハウベースの2つのデータベースの連携で知識情報の管理検索を行う.これら2つのデータベースは相互に関連づけられており,ユーザからの自然言語の問合せを解釈し,意図に合った情報を検索して提示する.知識ベースはコンピュータの問題解決向きの構造であるのに対し,ノウハウベースは人間が可読な形式で蓄積し,自然言語で検索するための浅い構造を持たせた.ユーザがタイトルつきのテキストを入力するとキーワードを抽出し,構造情報を自動生成する.2つのデータベースの連携により,従来暗黙知のままとどまっていた個人のノウハウが蓄積しやすくなり,形式知化が促進された.We have developed a knowledge/information sharing system "Advice/Help on Demand" by fusing various technologies used in the accumulation/structurization of office knowledge and dialogue interfaces.The system has two databases.One is the "office knowledge base" that contains systematized information about office procedure,job flows,documentation,and the like.The other is the "knowhow base" that contains a wide variety of practical information,sucha as advice on dealing with everyday problems on the jobs.If a user enters a query in natural language,the system retrieve relevant information from these databases.Our experiments carried out in the real office show the feasibility of integrating organized office knowledge and flexible personal knowhow.
著者
伊藤 毅志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.4033-4040, 2007-12-15

本研究では,同じ問題を,現在トップクラスのコンピュータ将棋とトッププロ棋士に解かせ,その思考過程の違いを比較する.現在のコンピュータの特徴を人間のトッププロ棋士の思考と比較することで,近い将来トッププロ棋士に挑むコンピュータ将棋の現状と展望を考察する.In this research, the computer Shogi and the top-professional shogi player are made to solve the same problem, and I compared the difference in the thinking process. By comparing the feature of the contemporary computer with thinking of top-professional player, I consider the contemporary and the future of computer Shogi which will play a match against the near future top professional Shogi player.
著者
堀田 圭佑 佐野 由希子 肥後 芳樹 楠本 真二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.2788-2798, 2011-09-15

近年,重複コードへの関心が高まっている.一般的に重複コードはソフトウェアの修正作業量を増大させるおそれがあると考えられており,重複コードの検出や集約に関する研究がさかんに行われている.しかし,重複コードと修正作業量の関係を定量的に調査した研究はあまり行われていない.そこで本論文では,重複コードが非重複コードと比較して修正されやすければ重複コードが修正作業量を増大させているという考えに基づき,ソースコードに加えられる修正の頻度を計測,比較することで,重複コードと修正作業量の関係を調査した.15のオープンソースソフトウェアに対して実験を行った結果,非重複コードと比較して重複コードは修正されにくく,重複コードがソフトウェアの修正作業量を増大させているとは必ずしもいえないという結果を得た.
著者
角田 雅照 大杉 直樹 門田暁人 松本 健一 佐藤慎一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.1155-1164, 2005-05-15
被引用文献数
12

ソフトウェア開発における工数予測を目的として,過去のソフトウェア開発プロジェクトにおいて記録された多種類のソフトウェアメトリクス値を入力データとし,協調フィルタリングにより予測工数を求める方法を提案する.協調フィルタリングは,未計測の値(欠損値)が大量に含まれているデータを入力とした場合でも予測が行えるという特長があるが,ソフトウェア工数予測に適用する方法はこれまで提案されていない.提案方法では,まず,入力となるメトリクス値を正規化し,値域を揃える.次に,正規化したメトリクス値を用いて,予測対象(開発中)のプロジェクトと,過去に行われたプロジェクトとの類似度を計算する.最後に,類似度の高い(予測対象プロジェクトと類似した)プロジェクトの工数を類似度で加重平均した値を,予測対象プロジェクトの工数とする.ケーススタディとして,株式会社NTTデータにおいて1 081件のソフトウェアプロジェクトから計測された14種類のメトリクス(約60%の欠損値を含む)を用いて試験工数を予測した.その結果,提案方法は従来方法(欠損値処理法を用いたステップワイズ重回帰分析)よりも高い精度を示し,予測試験工数の相対誤差の平均値(1プロジェクトあたり)が22.11から0.79に改善された.To predict software development effort, this paper proposes an effort prediction method based on the Collaborative Filtering (CF) which uses as input various software metrics recorded in past software development projects. The CF has an advantage that it can conduct a prediction using "defective" input data containing a large amount of missing values. There are, however, no researches which propose a method for applying the CF to Software effort prediction. Our proposal consists of three steps. In the first step, we normalize values of metrics to equalize their value range. In the next step, we compute the similarity between target (current) project and past (completed) project using normalized values. In the last step, we estimate the effort of target project by computing the weighted sum of efforts of high-similarity projects (that are similar to the target project) using the similarity of each project as a weight. In a case study to evaluate our method, we predicted the test process effort using 1,081 software projects including 14 metrics whose missing value rate is 60%, which have been recorded at NTT DATA Corporation. As a result, the accuracy of our method showed better performance than conventional methods (stepwise multiple regression models); and, the average accuracy per project was improved from 22.11 to 0.79.
著者
桜井 裕 佐藤理史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.1470-1480, 2002-05-15
被引用文献数
18

本論文では,与えられた用語に対して,その用語を説明する文章(用語説明)をワールドワイドウェブから収集し,それらを編集してユーザに提示するシステムを提案する.本システムは,(1)用語説明の収集,(2)編集,の2つのモジュールから構成される.{}「用語説明の収集」では,まず,サーチエンジンなどを用いて,入力された用語の説明が記述されている可能性が高いウェブページを収集する.次に,収集したウェブページから,用語の説明が記述されている段落を抽出する.最後に,抽出した段落内を解析し,その用語を定義する文(用語定義文)が存在するかどうかを判定し,存在した段落のみを用語説明として出力する.この判定においては,13種類の用語定義文それぞれに対して設定した文型パターンを用いる.{}「編集」では,収集した用語説明を語義ごとにグループ化し,それぞれのグループに対して,最適な用語説明と上位語を決定する.最後に,これらをまとめて,結果を語義ごとに出力する.本システムにおいて,用語定義文の判定精度は87%,グループ化の精度は81%であり,ほぼ実用レベルに達していると考えることができる.This paper proposes a term explainer that offers us a virtual dictionary, which uses the World Wide Web as information source. Thesystem consists of two modules: explanation collector and explanation editor. For a given term, the first module collects related webpages by using search engines, and extracts paragraphs thatcontain the term explanations. Sentence patterns of thirteen kinds ofdefinition sentences enable automatic detection of definitionsentences and automatic extraction of term explanations. The secondmodule classifies the extracted explanations into groups according tothe meaning, and determines the best explanation and the best broaderterm for every group. Finally, the system generates the result inHTML. In an experiment, the system achieved 87% accuracy indetection of definition sentences and 81% accuracy in classificationof explanations into groups.
著者
池田 和史 柳原 正 服部 元 松本 一則 小野 智弘 滝嶋 康弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.2474-2483, 2011-08-15

本稿では高速かつ高精度に有害サイトを検出するため, Webサイトの背景色やリンク先, ブラウザに特定の動作をさせるスクリプトなど, 有害サイトに特徴的に見られる傾向をHTML要素から検出する手法を提案する. 提案手法では有害サイトのHTMLに偏って出現するような文字列を自動的に抽出し, SVM(Support Vector Machine)を用いてこれらの特徴を組み合わせて有害サイトの検出を行う. 提案手法はWebサイトの本文の情報を利用しないため, 既存のキーワードベース方式によって検出が困難なサイトも検出が可能である. このため, 既存のキーワードベース方式と組み合わせて利用することで検出精度を向上させることも可能である. 大規模なWebサイトデータを用いた性能評価実験を行い, 既存のキーワードベース方式と比較して, 適合率を9.3ポイント向上するなどの性能向上を確認した.
著者
松原 豊 本田 晋也 高田 広章
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.2387-2401, 2011-08-15

分散リアルタイムシステムにおいて,個別に開発・検証されたリアルタイムアプリケーションを,単一のプロセッサに統合して動作させるための階層型スケジューリングアルゴリズムが数多く提案されている.本論文では,統合前に,プリエンプティブな固定優先度ベーススケジューリングによりスケジュール可能なリアルタイムアプリケーションを対象に,優先度設計を変更することなく統合後もスケジュール可能であることを保証する階層型スケジューリングアルゴリズムを提案する.提案アルゴリズムの正当性を理論的に証明し,さらに,スケジューリングシミュレータを用いて,同一のアプリケーションに対するスケジュール可能性を従来アルゴリズムと比較した.その結果,従来アルゴリズムでは統合後にデッドラインをミスしてしまうアプリケーションが,提案アルゴリズムによりスケジュール可能であることを確認した.
著者
松岡 司 植田 健治 早野 勝之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.2377-2386, 1999-05-15
被引用文献数
9

3次元表現の利用が拡大するにつれて 現実の3次元形状から幾何的に正確かつ位相構造を再現したソリッドモデルを平易な手段により生成することの重要性が高まっている. 3次元形状から面モデルを生成する前の中間データとして 3次元測定器などで測定した点群データを一般に用いる. しかし 測定器の性質により 多くの場合点群密度のばらつきが発生するため いかなる点群データからも幾何的再現性と位相的再現性を両立したモデルを生成することは非常に困難であった. そこで我々は これら幾何 位相両面にわたる再現性の問題を2ステップのアルゴリズムにより解決した 構造化されていない点群からのポリゴンメッシュの再構成手法を提案する.As using 3D models in computer environments is getting popular, the needs of an easy method which can construct geometrically exact shape and topological structure of solid models from actual 3D objects is increased. To construct 3D models from actual 3D objects, we generally use a set of points data taken from various 3D scanner devices. However, it is very difficult to construct exact shape of solid models from these points data because of the nonuniform density property of scanner devices. Therefore, we propose a new polygon mesh reconstruction method from unorganized points set which can solve geometric and topologic fidelity problems with our two-step algorithm.
著者
林 博友 趙強福
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.2878-2889, 2008-08-15

ニューラルネットツリー(NNTree)は各中間ノードに小規模なニューラルネット(NN)を埋め込んだ決定木(DT)である.NNTreeの利点としては,フル結合型NNと比べ構造学習およびハードウェア実現に適していることと,通常の単一変量DTと比べ汎化能力が高いこと等があげられる.しかし,NNTreeの生成は難しい問題であり,NNはたとえ1個のニューロンしか含まないときでさえ,各中間ノードの最適なテスト関数を求めることはNP完全問題である.この問題を解決するために我々は遺伝的アルゴリズム(GA)に基づくNNTreeの生成方法を試みたが,この方法は非常に時間がかかるため容易に使用できない.NNTreeを高速に生成するために,本論文で我々は新しいアルゴリズムを提案する.このアルゴリズムでは,まず各中間ノードに割り当てたデータのグループラベルを発見的な方法で定義し,そして,教師付き学習を用いてテスト関数を求める.提案方法の有効性は,複数の公開データベースを用いた実験によって実証された.Neural network tree (NNTree) is a decision tree (DT) with each internal node containing a small neural network (NN). Although NNTree is a model good for structural learning and for hardware implementation, it is difficult to induce suitable structure of NNTrees. Even if each NN contains only one neuron, the problem for finding the optimal test function in each internal node is NP-complete. To solve this problem, we have tried to induce the NNTrees using genetic algorithm (GA). The GA-based approach, however, is very time consuming, and cannot be used easily. In this paper, we propose a new algorithm for inducing NNTrees quickly. The basic idea is to define the group labels for the data assigned to each internal node based on some heuristic rules, and then find the test function through supervised learning. The efficiency of the proposed algorithm is proved through experiments on several public databases.
著者
安部 惠一 澤田 尚志 増井 崇裕 峰野博史 水野 忠則
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.585-595, 2011-02-15

本稿では,省電力型無線通信ZigBeeによるセンサネットワークにより家庭内の住環境情報ならびに家電などのエネルギーの消費量を可視化できる簡易型表示系HEMS(Home Energy Management System)の構築技術について提案する.提案の手法では,HEMS普及の課題である導入コストの課題などを解決でき,かつ既存建造物および既存家電に対していっさい改変を行わずに家庭およびオフィスにおいて,簡単に表示系HEMSを構築できる.また,ZigBee通信の特徴を利用することで,家庭内の分電盤および,その分電盤の同電力系統につながっているすべての個別家電の消費電力を測定することで単位時間あたりの消費電力量の詳細内訳表示・分析ができる技術について述べる.実際に提案した簡易型表示系HEMSのプロトタイプを開発し,実証実験を行った.その結果,消費電力量の詳細内訳表示・分析を行うことで,これまでに気づくことがなかった電気エネルギーの無駄使いの発見や具体的な省エネ対策を発見でき,省エネ効果の有効性を確認できた.In this paper, it proposes the construction technology of Easy-HEMS (Home Energy Management System) for Indication that can make the energy consumption of living environmental information and the consumer electronic visible using Wireless Communication (ZigBee) Sensor Networks. In the technique of the proposal, the problem etc. of the introduction cost that is the problem of the HEMS spread can be solved. And, HEMS can be easily constructed in the home and the office without modifying it to an existing building and an existing consumer electronic at all. Moreover, in the use of the feature of the ZigBee communication, the technology that can display and analyze a detailed breakdown of the amount of electric power an hour is described. We developed and evaluated proposed prototype Easy-HEMS (smart meter nodes) for Indication. As the result, we could notice the waste of electricity and share the energy-saving strategy in our laboratory.
著者
斉藤裕樹 中村 陽一 戸辺 義人
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.334-346, 2011-02-15

センサネットワーク技術の発展,GNSS(Global Navigation Satellite System)機能を備えた小型デバイスの普及により,位置情報サービス(Location-based Service,LBS)の利用分野が拡大している.LBSでは実世界の膨大な情報を扱うため,分散環境上に実現される必要があるとともに,位置依存情報を管理するための枠組みが必要となる.本論文では,位置依存情報に適したオーバレイネットワークの構成手法GeoSkipを提案する.GeoSkipは,2次元の平面上のピア間を角度分割と隣接ピアへのリンクを行うことにより論理ネットワークを構成する.さらに,Skip Graphを2次元に拡張した階層構造を与えることにより,各ピアはより遠方のピアへのリンクを持つことができる.これらにより,2次元の情報を効率的に検索することができる特徴を有する.また,シミュレーションによる評価を行い,経路表の大きさと検索コストがO(log N)に抑えられることを確認した.Mobile devices equipped with Global Navigation Satellite System (GNSS) functionality and the advance of technology for sensor networks have enabled Location-Based Services (LBS). The location-based services deal with real-world information which is collected from mobile devices and sensors. Due to the large amount of collected data, we should manage such data in distributed architectures. This paper proposes a scalable overlay network architecture, called GeoSkip. GeoSkip extends one-dimensional Skip Graphs to two-dimensional content space in order to achieve efficient data processing for location-based contents. As a result, we are able to reduce cost to search for two-dimensional information to O(log N). The benefit of GeoSkip is validated by simulations.
著者
高橋 磐郎 早迫亮一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.238-248, 1990-02-15
被引用文献数
1

オートマトンによる自己増殖器官の実現には多くの試みが行われている.基本的アイディアはNeumannによって そしてそれを引き継いだBurks らによって理論的には一応完成したと考えられる.またその改良なども多く報告されている.しかし実際に動作可能な実体として設計されたものは報告されていない.本論文では 2次元格子によるNeumannのモデルを3次元格子に拡張することにより オートマトンによる自己増殖器官の設計に成功したので その概要について報告する.Neumannのモデルは 2次元格子上における29種の状態のオートマトンによるものであるが 2次元格子上では混線なしに情報を交差させることが難しい.NeumannはCrossing Organ等を導入することによりそれを解決しようとしたが 膨大な容量が必要であり またきわめて複雑な同期操作を行わなければならなかった.われわれは 領域を3次元格子空間に拡張することにより その情報の交差の問題を解決した.そのため オートマトンの状態の種類は41種に増えたが 情報の交差は著しく簡単になった.その他いくつかの改良を加え 各機能における構造を極度に簡潔化したため オートマトンによる自己増殖器官が実現できた.われわれの作成した自己増殖器官は1O0x20Oの2層からなり おそらく最も簡単なものであろうと確信している.
著者
佐藤 秀雄 矢向 高弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.189-196, 2001-02-15
参考文献数
10
被引用文献数
10

本論文では,遠隔地との力学的インタラクションを実現する新しいメディアを実現するための通信機構を提案する.遠隔地の物体の質感を利用者側で表現するためには,遠隔地と利用者側との間で短い周期の分散フィードバック制御を行う必要がある.そこで,リアルタイム処理が厳しい時間制約を満たしつつ利用可能な通信機構としてRT-Messengerを提案する.RT-Messengerは,リアルタイム性を持たない通信媒体を用いてもリアルタイム処理内での通信を可能にする機構である.本通信機構をRT-Linux上に実装し,制御情報を交わす分散フィードバック制御を試みた.その結果,1? [msec]周期のリアルタイム処理ごとに通信を交わすことに成功し,また制御周期の揺れ幅を1.5? [%]以内に収めることができた.This paper proposes a new communication mechanism for new media whichcan realize dynamical interactions between local and remote site. Inorder to express the feel of touch, a feedback control is requiredwith short sampling period. To address this issue, RT-Messenger wasproposed and implemented. RT-Messenger is a new communicationmechanism which makes it possible for real-time applications tosatisfy these time constraints. This mechanism is device independent,i.e., it can work without any real-time communication media. Toevaluate the performance of proposed mechanism, a feedback control wasimplemented with RT-Messenger on RT-Linux. The results show thatcommunication within every 1\,[msec] sampling periods was wellachieved, and the jitter of the control was within 1.5\,[%].
著者
浦谷則好
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.9, pp.1119-1125, 1989-09-15
被引用文献数
1

コンピュータによる文書処理にとって文字列の照合は最も基本的な操作である.文書処理の高速化への寄与が大きいので 効率の良い照合手法が求められている.パターンが1つの場合にはBoyer-Moore法が最も効率の良い手法として知られているが この方法では複数パターンを同時に照合することはできない.複数パターンを同時に照合する方法としてはAho-Corasick法が有名であるが 効率は Boyer-Moore 法より劣る.筆者らは「パターンの後方からの照合」というBoyer-Moore法の基本的なアイデアと 「パターン照合機械による照合」というAho-Corasick法の基本的なアイデアを結合して FAST法(A Flying Algorithm for Searching Terms)を考案した.FAST法では複数のパターンを同時に効率良く照合することができる.この輪文ではFAST法の基本的な発想と具体的なアルゴリズムについて述べる.FAST法の効率についても考察し 実験による結果も示す.文字種が多いときやパターンが長いときには高い照合効率が得られることを確認した.例えば パターン長が2と短くても文字種が94のときには パターン数60以下ではAho-Corasick法より効率がまさっている.また この方法は多大なメモリを必要とする欠点を有しているが この軽減方法についてもふれた.
著者
越川 満 内山 将夫 梅谷 俊治 松井 知己 山本 幹雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.1443-1451, 2010-08-15

フレーズベース統計的機械翻訳では,連続する単語列(フレーズ)を翻訳の最小単位とした確率的規則に基づいて翻訳候補の順位付けを行い,最も確率の高い候補を出力とする.しかし,入力文のフレーズ区切りや翻訳前後の訳語関係(フレーズ対応)の組合せ数は膨大である.そのため,従来の統計的機械翻訳システムは,翻訳候補およびフレーズ区切り・対応に対して大胆な近似を行うことで探索空間を狭めており,厳密な確率の最大化をしていない.本稿では,フレーズ対応・区切りに関する厳密な確率最大化を行う問題を,フレーズベース翻訳において広く用いられているすべての素性を考慮可能な形式で整数線形計画問題として定式化し,それを翻訳候補のリランキングに応用する手法を提案・実装する.評価実験の結果,提案手法は有意に翻訳精度を改善することが示されると同時に,フレーズベース翻訳における探索の課題は,フレーズ対応ではなく翻訳候補文についてより多くの候補を評価することにあるという示唆が得られた.
著者
下郡 信宏 坪井 創吾
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.1951-1959, 2010-09-15

英語を母国語としない人が英語で会話を行う際に,音声認識によって自動生成された英語字幕を提示すると,理解度が向上するか実験により調べた.55名の英語能力の異なる被験者に対しTOEICのリスニング試験を,音声認識特有の誤りを含む字幕を提示しながら行った.その結果,TOEICレベルC(470~730点)の被験者に単語正解精度80%以上の字幕を提示した場合に成績が有意に向上した.TOEICレベルCは日本人受験者の約半数が属するレベルであり,単語正解精度80%は現在の音声認識システムを注意して使用すれば達成可能な精度であることから,音声認識によって自動生成された英語字幕でも会話の理解を支援することが十分に可能であることが確認できた.We conducted an experiment to determine whether caption created by automatic speech recognition (ASR) will help non-native English speakers understand English conversation. 55 subjects with different English skill took the TOEIC listening tests while showing caption which includes recognition errors typical to ASR. There was significant difference when captions with accuracy more than 80% was presented to subjects with level C (score 470-730) on the TOIEC proficiency scale. Since about 50% of the Japanese TOEIC examinee fall under level C, and accuracy 80% can be achieved by current ASR technology, we conclude that caption generated by ASR is useful to non-native English speakers to understand English conversation.
著者
村尾 和哉 寺田 努
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.1968-1979, 2011-06-15

近年,計算機の小型化・軽量化によりコンピュータを装着するウェアラブルコンピューティングに注目が集まっている.特に行動認識の分野では,加速度センサを用いたシステムが数多く提案されてきた.従来の行動認識システムで認識可能なコンテキストはその波形の形状から「座る」などの姿勢,「歩く」などの運動,「円を描く」などのジェスチャの3種類に分類できる.姿勢と運動は一定時間継続される状態であり,特徴量を用いて認識される.一方,ジェスチャは1回きりの動作であり,波形自体を用いて認識される.このような認識手法の違いから運動中のジェスチャ認識は困難とされてきた.また,従来のジェスチャ認識はジェスチャの開始点を明示するためにいったん停止したりボタンを押したりする必要があった.そこで本論文では,加速度波形の定常性を判定し,ジェスチャの部分に対してのみジェスチャ認識を行うことで姿勢,運動,ジェスチャを認識するシステムを提案する.評価結果より,5種類の運動中に行った7種類のジェスチャ認識のRecallとPrecisionは従来手法では0.75および0.59であるのに対し,提案手法では0.93および0.92と改善した.提案システムを用いることで運動中でもジェスチャによる入力や機器の操作が可能になる.
著者
藤原弘将 後藤 真孝 奥乃 博
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.1995-2006, 2010-10-15

本論文では,歌声の基本周波数(F0)と母音音素を同時に推定可能な新たな手法について述べる.本手法は,F0と母音音素だけでなく,歌手名や性別などの要素も同時に推定できるように設計されているため,混合音中の歌声を認識するための新たなフレームワークと考えることができる.本手法は,歌声とその他の伴奏音が混ざった状態を,歌声を分離するのではなく,そのままの形で統計的にモデル化する.また,信頼性の高い歌声のスペクトル包絡を推定するために,様々なF0を持つ複数の音の調波構造を使用する.F0と母音音素の同時推定を,ポピュラー音楽6歌手10曲で評価した結果,提案法によりF0推定の性能が平均3.7ポイント,音素推定の性能が平均6.2ポイント向上することを確認した.A novel method is described that can be used to concurrently recognize the fundamental frequency (F0) and vowel phoneme of a singing voice (vocal) in polyphonic music. This method can be considered as a new framework for recognizing a singing voice in polyphonic music because it is designed to concurrently recognize other elements of a singing voice including singer's name and gender, though this paper focuses on the F0 and vowel phoneme. Our method stochastically models a mixture of a singing voice and other instrumental sounds without segregating the singing voice. It can also estimate a reliable spectral envelope by estimating it from the harmonic structure of many voices with various F0s. The experimental results of F0 and phoneme recognition with 10 popular-music songs by 6 singers showed that our method improves the recognition accuracy by 3.7 points for F0 estimation and 6.2 points for the phoneme recognition.
著者
小越 康宏 日名田 明 広瀬 貞樹 木村 春彦
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.397-400, 2003-02-15
被引用文献数
12

コンピュータシステムの個人認証においては,従来よりユーザ名,パスワードの情報を用いて本人かどうかの認証を行っているが,これらの情報が漏れた場合に不正利用される恐れがある.そこで,ユーザ名,パスワードを入力するときの打鍵間時間(あるキーが打たれてから次のキーが打たれるまでに要する時間)の特徴を参考にして個人認証を行うシステムがいくつか提案されている.しかし,打鍵の熟練者においては打鍵間時間に差異が現れにくく,どのシステムにおいても本人かどうかの認証が困難となる問題点があった.本研究では,このような打鍵間時間を基にした認証システムにおいては,認証時に意図的なリズムを持たせて打鍵するリズム打鍵が有効で,認証精度を大幅に改善できることを示す.In this paper,we propose an improvement method of the authentication systems based on keystroke intervals using intentional keystroke rhythm.In the previous authentication systems based on keystroke intervals,user was more exactly discriminated by the speed of each keystroke in addition to the user name and the password.However,they still have a problem that an authentication might be difficult when the speed of each keystroke was similar to the other person's.We solve this problem by making a rhythm keystroke to each user at the time of the authentication.