著者
永田 昌明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.3420-3431, 1999-09-15
被引用文献数
15

本論文では 統計的言語モデルとN-best探索アルゴリズムを用いた新しい日本語形態素解析法を提案する. 本方法は 未知語の確率モデルを持つことにより任意の日本語文を高精度に解析し 確率が大きい順に任意個の形態素解析候補を求められる. EDRコーパスの部分集合(約19万文 約470万語)を用いて言語モデルの学習を行い オープンテキスト100文に対してテストを行ったところ 単語分割の精度は第1候補で再現率94.6%適合率93.5% 上位五候補で再現率97.8%適合率88.3%であった.We present a novel method for Japanese morphological analysis which uses a statistical language model and an N-best search algorithm. It has a probabilistic model for unknown words to parse unrestricted Japanese sentences accurately and it can get N-best morphological analysis hypotheses. When the statistical Japanese morphological analyzer was trained on the subset of the EDR corpus (about 190 thousand sentences, 4.7 million words) and tested on 100 sentences of open text, it achieved 94.6% recall and 93.5% precision for the top candidate, and 97.8% recall and 88.3% precision for the top five candidates.
著者
宇田 隆哉 砂田 智 井上 亮文 重野 寛 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.8, pp.2237-2245, 2000-08-15

デジタル記憶媒体の小型化,大容量化,低価格化にともない,近年,デジタル音楽をネットワークを通じて安全に配信する仕組みが研究されている.デジタル音楽は劣化することなくネットワーク上を流通できる利点を持つ反面,複製が非常に容易であり,つねに著作権侵害の危機にさらされている.また,ハードウェアを用いてセキュリティを実現しているシステムは,規格の不統一や規格のバージョンアップなどの際に機器全体を買い換えなければならず,ユーザへの浸透に歯止めをかけている.そこで,本論文では安全で安価なソフトウェアベースのデジタル音楽コンテンツ配信を提案する.公開ネットワーク上を自由に流通可能な自己展開型の音楽コンテンツカプセルと,定期的にアップデート可能なセキュリティモジュールを保持する音楽プレイヤの使用により,不正利用からコンテンツを保護するとともに,確実な利用履歴の回収により,聴いた回数に応じた課金(PayPerListen)や課金の一部を肩代わりするなどのような,ユーザへの幅広い課金方式を実現する.さらに,ユーザが気に入った曲を加工して,新しい音楽コンテンツとして容易に二次利用可能な環境も実現している.コンテンツの利用や課金の方式に自由度を持たせ,ソフトウェアベースによる安価で安全な音楽の流通方式は,次世代の音楽流通プラットフォームを形成する主要な条件を満足していると考えられる.Downsizing, down-pricing and volume-increasing of digital mediahave promoted the study of some secure delivery systems of digitalmusic contents through networks.Digital music has an advantage of being delivered through networkswith no debasement of music quality, but the fact that it could becopied easily brings the copyright violation.The existent systems using hardware security protection are notconvenient for users, because security standard for digital musichas not been established and revising the standard is difficult.So, this paper describes a secure and inexpensivesoftware-based digital music contents delivery systems.Self-extracting capsules freely delivered through opennetworks and security modules updated regularly are used in ourmusic player system. They protect the music contents from illegal use.A user can choose PayPerListen for payment or can take over otheruser's payment.Furthermore, a user can easily arrange the music for secondhand use.Consequently, our software-based music delivery system,being flexible, inexpensive and secure, will certainly bring thesatisfactory conditions to be a new music platform for the nextgeneration.
著者
竹内 勇剛 片桐 恭弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.623-631, 1999-02-15
被引用文献数
11

本研究では マルチタスク/マルチウィンドウを可能とするコンピュータにおいて 人格化にともなう個体性が個々のウィンドウに対して帰属されるかを社会心理学的手法を用いて実証する. 個体性の帰属を観察するために 人-コンピュータ間における礼儀(politeness)に基づく対人インタラクションに注目する. 人-コンピュータ間においても人-人同様の「礼儀」に基づくインクラクションが観察されるとき 人はコンピュータを人格化していると考えられる. 実験では 最初にコンピュータ画面上のあるウィンドウからCAI形式による情報提供が被験者に対して行われた. 次に 以下の3条件によってその情報提供に関する心的評価の回答を求めた:(a)情報提供を行ったウィンドウ自身に評価を行う. (b)情報提供を行ったウィンドウとは異なるウィンドウに評価を行う. (c)情報提供を行ったウィンドウとは異なるウィンドウに評価を行う 先行して情報提供をしたウィンドウは画面上から消えている. その結果 コンピュータ使用に熟練した者では (a) (b)条件における評価がどちらも(c)条件より有意に高かった. だが コンピュータ使用に熟練していない者ではこれらの差は観察されなかった. これらのことから コンピュータの機構を熟知している者は個々のウィンドウに対して個体性を帰属させ そうでない者は物理的な実体としてのコンピュータに個体性を帰属させていることが明らかになった.Recent studies on social responses in human-computer interaction have been finding affirmative evidences which indicate that even when people interact with computer systems, people automatically and unconsciously apply social rules and principles in human-human interaction, and respond socially to computers as if they are human. This study focuses on "politeness", one of the most powerful and universal factors governing social interaction between humans, and experimentally investigates whether human-computer interaction is also dictated by politeness. The issue of attribution of individuality in interaction is also explored. A set of experimental conditions are setup to determine whether people respond to machines, visible and tangible units of hardware, or to windows, functional units of channels for interaction. The results of the experiment indicate that people who are expert computer users exhibit politeness driven responses directed toward windows as separate social individuals.
著者
右田 雅裕 中村 良三
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.2941-2944, 2000-10-15

2分探索木を通りがけ順になぞる並列アルゴリズムを並列計算機モデルCREW PRAMのもとで提案する.このアルゴリズムでは,はじめにオイラーツアー技法を用いて2分探索木のオイラー閉路を求め,その走査リストから簡潔で効率良く通りがけ順の値を算定する並列アルゴリズムを示す.この並列アルゴリズムの時間計算量は,節点の数を $N$ とすると,$O(N)$ のプロセッサを用いて通りがけ順の値を $O(?log N)$ 時間で求めることができる.We propose an efficient parallel algorithm to number the verticesin inorder on a binary search tree by using Euler tour technique.The proposed algorithm can be implemented in $O(\log N)$ time with $O(N)$ processors in CREW PRAM,provided that the number of nodes in the tree is $N$.
著者
新舎 隆夫 塩田 博行 金山 賢一郎 春名 宏一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.230-237, 1980-05-15

端末がインテリジェント化するにつれて 各種の端末群を集中的に作御 管理するTCE (Terminal Control Equipment)のソフトウェアは一層大規模化 複雑化してきた.本論文では 専用端末固有の業務処理を行うOP(Operation Program)の生産性向上方法を論じる.最初に OPの制御モデルを作成しOPの制御と処理を明確にする.次に (1)制御と処理の分離 (2)システム規模に対する拡張性 (3)モジュール化の促進 (4)システム固有な制御情報の識別の4つの標準制御構造の基本条件の視点からOPを構造化する.最後に これらの条件を満たすトランザクション処理プログラムヘの1構造的アプローチ SATC(Structured Analysis for Transaction Control)を提案する.SATCは1種のより実用的で強力な決定表プログラムであり 3階層の標準制御構造とこれに裏付けられた機能設計の基本手順を与える.SATCは トランザクション処理プログラムの機能設計と基本設計を単純化 形式化するので このプログラムの標準設計手段であると考えられる.最も代表的な専用端末である銀行の窓口装置にSATCを適用した結果 SATCはプロトタイプシステム開発時と比較して トランザクション処理プログラムの全体開発工数を少なくとも約15%削減可能であることが判明した.
著者
石田 真也 永原隆嗣 小西良往
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.99-104, 1979-03-15

本論文では 鉄道における乗車券発行システムに関連して開発された漢字パターンデータ圧縮方式について述べている.本圧縮方式の特徴は (1)漢字自身をあらかじめ圧縮に都合の良いようにいくつかの種類の基本図形-直線 長方形 平行四辺形 四辺形-のみで構成したこと (2)各基本図形の位置 大きさ等を2次元ベクトルの系列として表わし 各ベクトルをその出現頻度を考慮し 可変長符号を用いて効率的に符号化したこと などである.本圧縮方式を定期乗車券発着駅名用漢字(32×32ドット)に適用した結果 平均約1/3.2の圧縮率を得た.
著者
山守 一徳 海野祐史 河合 敦夫 椎野 努
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.2928-2938, 2002-09-15
被引用文献数
4

駅の切符売り場や列車の扉の上などで見かける鉄道の路線図は,等縮尺の地図上の線路図形と比べて大きな変形が施されている.駅間の繋がりを表す位相構造は維持したままでそのような大きな変形を施した路線図をデフォルメ路線図と呼ぶ.我々は,縦方向に圧縮されたデフォルメ路線図をインタラクティブ生成するシステムを開発した.本システムで用いた手法は,各線分を反復並列的にゆっくりと移動させることによって,変形前の位置にできるだけ近い形で変形を行うものである.ユーザは望む結果を得るまで,線分の向きを指示し結果を修正することができる.最後にできるだけ小さな領域内に路線図が収まるように駅名の再配置を行う.実験より,本システムは,縦方向に十分圧縮された満足のいく結果が生成できることが分かった.Railway maps as seen on the ticket counter at the station or above the door of the train are largely transformed in comparison with the maps with equal reduced scale.And they are largely transformed maintaining the topological structure which represents relation among the stations.We call such type of maps ``deformed railway maps''.We have developed an interactive generation system of deformed railway maps which are compressed vertically.The method used here transforms all edge segment in parallel and iteratively,and the transformed shape becomes as close to the original one as possible.Users can repair the result by specifing edge directions until the comfortable results are obtained.Finally, station names are relocated to make the map as small as possible.In experiments,it was shown that this system can generate the comfortable result which is optimally compressed along vertical direction.
著者
藤井 信夫 後藤 義人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.423-427, 1992-04-15

本論文では 境界値問題(楕円形偏微分方程式と境界条件の組 ここではNeumann問題)の解の汎関数を評価関数とする最適化問題(領域最適化問題 非線形数理計画問題の一)において有用な役割を演じるポテンシャル表現について考察しその利点と欠点を明らかにした最適化問題を扱う最初は必要条件を求めることであるが そのためには常道にしたがって評価関数の変分を求めなければならないところが この変分の計算に不可欠なのが境界値問題の解の(第1)変分である従来この変分を特徴づける墳界値問題の導出にはテイラー展開の方法が用いられてきたこの方法によると 解の変分について高階の導関数についての仮定を置かなければならない境界値問題がDirichlet問題である場合にはポテンシャル表現を使ってこの仮定を避けることができる境界値問題がNeumann問題の場合にもポテンシャル表現による方法がどこまで使えるか興味のあることであるそこで ポテンシャル表現からNeumannデータを得るための補題を使って解の(第1)変分の従う境界値問題の導き方および1次の必要条件の導き方の概略を説明したポテンシャル法によれば導関数についての仮定が緩やかなものですむついで 境界値問題が定義されている空間の次元が3以上の場合にこの補題を証明したしかし趣がら 空間次元が2である つまり平面の場合には対応する命題が成り立たないことを示す反例を与えたこれらのことよりポテルシャル法の有用な点と限界を明らかにすることができた
著者
登尾 啓史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.1013-1021, 1992-08-15
被引用文献数
11

ロボットを知能化するための課題のひとつに 障害物を回避しながらゴールまで自律的に到達する機能を移動ロボットに持たせることがあるこれは洗練されたパスプランニングアルゴリズムを設計することで実現できる本稿では 未知空間 すなわち障害物の位置や形状が全く判らない作業空間において機能するパスプランニングアルゴリズムを設計するための十分条件を提案する移動ロボットは基本的にゴール方向へ直進するが もしそれが障害物によって妨げられたなら その周囲を時計回りか反時計回りに辿るそして ゴール方向に向って直進できるうえ ゴールへ単調に接近できるところから障害物を離れ 再びゴール方向へ直進するこれが移動ロボットを確実にゴールへ到達させる十分条件である障害物に妨げられない限り移動ロボットはゴール方向に向かって直進するので 障害物から離れるところが単調にゴールへ接近するなら 移動ロボットが衝突できる障害物やその周囲の領域も単調に減少し 最終的にそのようなものは作業空間には存在しなくなり移動ロボットはゴールへ到達するこの十分条件にもとづいたアルゴリズムを利用すると 障害物と接触しているかどうかというローカルな情報のみを頼りに移動ロボットは障害物を回避し確実にゴールへ到達できる
著者
大塚 和弘 竹前 嘉修 大和 淳司 村瀬 洋
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.2317-2334, 2006-07-15
参考文献数
40
被引用文献数
9

複数人物による対面会話を対象とし,会話参加者の視線パターン,頭部方向,および,発話の有無に基づき会話の構造の推論を行うための確率的枠組みを 提案する.本研究では,まず,会話の構造として,話し手,受け手,傍参与者と 呼ばれる参与役割と会話参加者との組合せに着目する.次に,会話中の各人物の 行動は,会話の構造によって規定されるという仮説を立て,マルコフ 切替えモデルと呼ばれる一種の動的ベイジアンネットを用いた会話 モデルを提案する.このモデルは,会話レジームと呼ばれる会話の構造に対応 した上位プロセスの状態が,マルコフ過程に従い時間変化しつつ,その会話 レジームの状態に依存して,視線パターン,および,発話が確率的に生成され,さらに,各人の視線方向に依存して頭部方向が観測されるという 階層的な構造を持つ.このモデルにおいて,会話レジームは,会話中に頻出 する視線パターンの特徴的な構造に基づいて仮説的に設定される.また,ギブスサンプリングと呼ばれる一種のマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて,観測された頭部方向と発話の有無の時系列データより,会話レジーム,視線パターン,および,モデルパラメータのベイズ推定を行う方法を提案する.最後に,4人会話を対象とした実験により,視線方向と会話レジームの推定精度を評価し,提案した枠組みの有効性を確認する.A novel probabilistic framework is proposed for inferring the structure of conversation in face-to-face multiparty communication, based on gaze patterns, head directions, and the presence/absence of utterances. First, as the structure of conversation, this study focuses on the combination of participants and their participation roles. Next, we hypothesize that the structure of conversation governs how people behave during conversation, and propose a conversation model based on the Markov-switching model, a kind of dynamic Bayesian network. In this model, the state of the high-level process, we call it the conversation regime, is assumed to correspond to the conversation structure and that its changes over time exhibit Markov properties. Also, the conversation regime controls the dynamics of utterances and gaze patterns, which stochastically yield measurable head directions. The conversation regimes are hypothetically configured based on typical structures exhibited by gaze patterns among the participants during conversations. Furthermore, a Markov chain Monte Carlo method called the Gibbs sampler is used to realize the Bayesian estimation of conversation regime, gaze pattern, and model parameters from the observed sequential data of head directions and utterances. Finally, experiments on four-person conversations confirm the effectiveness of the proposed framework in estimating gaze directions and conversation regimes.
著者
宗森 純 堀切 一郎 長澤 庸二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.143-153, 1994-01-15
被引用文献数
28

ネットワークで結合された複数台の計算機による発想支援システム郡元(Groupware for new idea generation support system)を開発した。本システムは分散協調型KJ法と知的生産のためのカードシステムを計算機上で融合したものである。KJ法は川喜田二郎によって開発された(頭文字をとってKJ法)手法で、複数の人による発想法の体系的技術の一つである。分散協調型KJ法は複数の計算機上で行われる。参加者はテーマに添って意見を出し、それを類似性によっていくつかのグループに分け、そこから結諭を導き出す。本システムの特徴は、分散協調型KJ法の結果をカードシステムを模擬したデータベースに自動的に保存し、再利用できるようにしたことにある。本諭文では郡元を3台もしくは4台で行う分散協調型KJ法の学生実験に適用した緒果と紙面上で行ったKJ法の結果とを、意見の数、文字数、かかった時間などをパラメータとして比較して述ぺている。
著者
岡山 聖彦 山井 成良 河野 圭太
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1072-1080, 2008-03-15

現在最も普及している無線LAN の規格であるIEEE802.11a/b/g では,通信内容の漏洩やネットワークの不正利用を防ぐためにWEP(Wire Equivalent Privacy)やWPA(Wi-Fi Protected Access)が用いられている.しかし,これらとend-to-end の暗号化とを併用する場合には,無線区間が二重に暗号化されることになるため,通信効率が必要以上に低下するという問題がある.この問題点を解決するため,本論文はend-to-end 暗号化の有無に応じて,無線区間ではパケット全体の暗号化とパケット認証を切り替えることができるような手法を提案する.end-to-end の暗号化が行われている場合には,無線区間では暗号化の代わりにパケット認証のみを適用することにより,不正アクセスを防止しながら二重暗号化の回避による通信効率の改善が期待できる.On IEEE 802.11a/b/g, the most popular standards of wireless LAN networks, encryption functions called WEP (Wire Equivalent Privacy) or WPA (Wi-Fi Protected Access) are used for preventing malicious users from both eavesdropping and unauthorized access. However, along with end-to-end encryption, WEP and WPA have large overhead due to duplicated encryption. In this paper, we propose a method to reduce this drawback. On this method, a wireless client can choose packet encryption or packet authentication in its wireless LAN automatically depending on whether end-to-end encryption is performed or not. With packet authentication in case that end-to-end encryption is performed, we can improve the communication speed on the wireless environment while preventing invalid access.
著者
吉田 幹 奥田 剛 寺西 裕一 春本 要 下條 真司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.402-413, 2008-01-15
被引用文献数
20

ユビキタス環境におけるアプリケーションでは,ユーザの位置を同定したうえで,物理的,意味的に近傍に位置するオブジェクトを探索し,発見された情報やサービスを相互に連携させて高度なサービスを実現する枠組みが必要となる.本論文では,分散環境に散在する情報やサービスを連携させるプラットフォームシステムの1 つの実現形態として,P2P エージェントをモデルとしたPIAX を提案する.PIAX の特徴は,能動的に動作するエージェントに,オーバレイネットワークの持つ強力な情報探索機能を融合させることで,ユーザの地理的位置や情報の特性に基づくサービスの発見と連携をスケーラブルに実現するところにある.オーバレイネットワークについては,新しい機構を組み込むことができ,情報探索のニーズに応じて複数のオーバレイネットワークを切り替える機能を持つ.アプリケーション構築に関しては,エージェント呼び出し機構とエージェントどうしが相互に発見・連携するための簡便なAPI を提供することで,高度な分散エージェントシステムを高い開発効率で構築することができる.本論文では,PIAX のベースとなった概念と現状の設計,マルチオーバレイ,発見型メッセージング(discovery messaging)の機構,ならびに今後の課題について述べる.In the ubiquitous environment, applications must identify the user's current geographical location, discover objects which are located near the users both physically and semantically, and combine the discovered objects to realize highly intelligent services. In this study, we propose a new P2P-based agent platform called 'PIAX', to realize such services. PIAX achieves scalable discovery and automatic cooperation of distributed services by the combination of active agents and resource discovery function of the overlay network. Especially about overlay networks, PIAX can plug in a new overlay network mechanism and has a functionality which changes multiple overlay networks according to the need of applications. Moreover, PIAX provides simple and strong discovery-messaging API for efficient development of applications. In this paper, the basic design and architecture of PIAX, the multi-overlay and the discovery-messaging mechanisms, the current status and future tasks are described.
著者
中野 雄介 山登庸次 武本 充治 須永 宏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.727-738, 2008-02-15
被引用文献数
3

近年,インターネットをはじめとする分散環境で,様々なコンポーネントを連携させ,サービスを提供する試みがさかんになっている.これにともない,ネットワーク上でのコンポーネントの提供が増えている.しかし,このようなコンポーネントの数は十分とはいえず,連携サービスの作成者が意図したサービスを自由に作れるほどコンポーネントはそろっていない.そこで,Web アプリケーションが生成するHTML ドキュメントの中から,Web アプリケーションの処理結果の部分を抽出する手法を,Web アプリケーションのWeb サービス化のためのラッパ生成に応用することを提案する.本手法はHTML ドキュメント内の各タグのネストの回数(深度)の変化に規則的なパターンがある部分を結果部分として抽出する.本手法を評価するための評価プログラムを実装し,既存のWeb アプリケーションが生成するHTML ドキュメントから,結果部分の抽出を試みた.100 ドキュメント中76 ドキュメントから結果部分を抽出することに成功した.加えて,本提案はラッパ作成者に対して十分なユーザビリティを提供できることを確認した.This paper proposes a novel method to create Web Services by transforming existing Web applications in the Internet or enterprise networks. Recent technical trends in service coordination using various kinds of components in distributed service execution environments necessitate the provision of elemental service components, which typically take the form of Web Services. However, the number of Web Services is still small although that of Web applications is enormous, and so there should be a method that makes good use of such Web applications. Our approach is to convert HTML documents a Web application creates into a Web Service interface by extracting the operational result parts of the Web application. In this method, the depth of HTML tags, i.e., the number of nests of a given HTML document is analyzed to identify a regular patter and extract this part as an output. Through the evaluation of the wrapper system including this method, it is shown that correct result segments can be extracted from 76% of documents among a hundred. Also, it is clarified that this method has good usability for wrapper creators.
著者
佐藤一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.556-569, 2005-02-15
被引用文献数
1

複合ドキュメントを実現するコンポーネントフレームワークを設計・実装する.これはテキストや画像などの多様なコンテンツを実現するコンポーネントとその合成によって高次なドキュメントを実現するものである.従来の複合ドキュメントと同様にコンポーネントの合成やシームレスなコンテンツ表示・編集能力を提供するとともに,このフレームワークでは各コンポーネントがコンテンツに相当するデータ部分に加えて,そのコンテンツを表示・編集するプログラム部分も内蔵できるという自己完備性を導入する.さらにモバイルエージェント技術を利用することにより,コンポーネントにコンピュータ間移動性を与える.これによりネットワークを自律的に移動しながら情報配信を行うドキュメントが実現できるようになる.本論文ではこのフレームワークの概要を述べるとともに,Java言語を用いた設計・実装について概説し,さらに応用事例を示す.This paper presents a new framework for building mobile compound documents in distributed system, where a compound document to be dynamically and nestedly composed of software components corresponding to various contents, e.g., text and image. The framework enables each component to migrate over a network under its own control by using mobile agent technology and be are self-contained in the sense that they include not only their contents but also their programs for viewing and editing the contents. It also provides several value-added mechanisms for visually manipulating components embedded in a compound document and for seamlessly combining multiple visible components into a single one. Therefore, we can easily create and operate autonomous documents, which can change their contents and distribute themselves over a distributed system. This paper describes this framework and its implementation, currently using Java as the implementation language as well as a component development language, and then illustrates several interesting applications to demonstrate the utility and flexibility of this framework.
著者
松原 繁夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.1340-1348, 2006-04-15
被引用文献数
1

本論文は動的環境における資源割当て問題を解決するオークションプロトコルを提案する.動的環境においては,資源の価値は不確実性を有する.すなわち,価値はオークションが行われる時点の状況だけでなく,割り当てられた資源が実際に使用される時点の状況に依存する.たとえば,天気が晴れの場合の価値は雨の場合の価値と異なるかもしれない.このような状況を扱う方法の1 つは,事象が生じるたびにオークションを行って,再割当てを行うことである.しかし,再割当ては不効用を生じるかもしれない.さらに,そのようなオークションはつねに均衡戦略が存在するとは限らない.均衡戦略が存在しなければ,どのような結果が得られるか予測できなくなる.この問題を解決するため,我々は新たなプロトコルを提案する.提案プロトコルは,入札者に資源の利用から得られる効用に加えて,再割当てによって生じる費用を申告させる.提案プロトコルでは,入札者の真実申告が均衡となり,期待値のうえで社会的に効率的な割当てが達成できることを証明する.This paper proposes an auction protocol for solving a resource allocation problem in dynamic environments. In such environments, the valuation of resources has uncertainty for each bidder, i.e., this valuation depends on the situation not only at the point when the auction is held but also at the point when the allocated resources are actually used. For example, a bidder's valuation in fine weather may be different from that in rainy weather. A solution for dealing with this problem is to execute auctions whenever an event occurs and then to re-allocate resources. Re-allocating resources, however, may cause disutility. Moreover, it does not always provide an equilibrium strategy because it can be viewed as a sequential auction, which means that we cannot accurately predict what outcome will be obtained. To solve this problem, we propose an auction protocol that allows bidders to declare the cost due to re-allocation and then decides an allocation based on this cost of re-allocation as well as the surplus obtained from the allocated resources themselves in the realized situation. We prove that a bidder's truth telling is in equilibrium and that a socially efficient allocation on expected values is obtained in the proposed protocol.
著者
中田 豊久 金井 秀明 國藤 進
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.3962-3976, 2007-12-15

部屋の中でテレビのリモコンや携帯電話などをなくすことがある.本論文では,このような屋内での捜し物を手助けするシステムについて提案する.システムは,隠れた位置にある物であっても高い精度で位置を計測するために,超音波方式とActive RFIDからの計測値をパーティクルフィルタによって融合する.また,測定した位置をスポットライトで照らすことによって,ユーザに分かりやすく捜し物の位置を知らせる.このシステムを,構築した実験環境で性能試験を実施した.また,関連システムとの比較実験により,提案システムが捜し物を早く発見できることを明らかにした. : We propose a support system for finding lost objects indoors. The system employs active RFID and ultrasonic position detection to detect the position of a lost object. Even if a lost object is hidden by others, the system enables us to find the position by the two position detection devices. Since the system illuminates the position by using a spot of light, user can find it easily. From an experiment, we made clear ability of the system and the advantage of time to find it over a related system.
著者
仲谷 美江 西田 正吾 坂口 敏明 後藤卯一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.124-135, 1990-01-15
被引用文献数
6

本論文は ソフトウェア開発プロジェクトにおけるコミュニケーション支援に関するものである.ソフトウェアの生産性向上が急務となっている.本論文では 協同作業を支援し 開発プロジェクトの生産効率を上げることを目指している.プロジェクトにインタピニー調査を行ったところ ソフトウェアの意図を表現する適切な方法がないため コミュニケーションが困難であるという問題が見られた.このため コミュニケーションの支援が生産性向上に有効であると予測される.ここでは ソフトウェアの意図やイメージを表現する方法として 劇場モデルを提案する.劇場は 俳優が舞台の上でドラマを演じ 観に見せる場所である.観客はドラマの進行を見て脚本家の意図を読み取る.これは 人間が まとまりの中から意味を把握する認識メカニズムを持っているからである.ここで ソフトウェアの構造がドラマと類似していることに着目した.ソフトウェアの進行を適切に表現すれば 人間はその中から設計者の意図を読み取ることができると考えられる.そこで 劇場モデルに基づいた表現方法を実現する意図伝達支援ツールCOMICS(COMputer-based Intention Communication System)を試作し その有効性について検証した.
著者
高橋 正浩 生天目 章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.3586-3595, 1999-09-15
被引用文献数
4

本論文では 個々の主体が選好を集団全体の選好を集約したマクロ情報と自らの選好を比較し自己修正する適応型合意形成モデルを提案する. 自己の選好に忠実であることは 個人合理性を追及することと同じであるが すべてのメンバが自己の合理性を追及することによって合意形成の困難性の問題が生じる. そこで 個々のメンバが無制限に自己の選好を主張するのではなく 集団の一員としての立場から自らの選好を集団全体の動向に逐次適応させる本合意形成モデルによって 集団全体として調和的な合意形成が可能になることを示す. また 異なる適応速度を内部属性として持つ主体によって構成される集団における合意形成上の特性について明らかにする. さらに 上位の意思決定者が存在する場合や 合意形成に時間的制約が存在する場合を考え それらが合意形成に及ぼす影響について シミュレーションによって明らかにする.In this research, we introduce a model of adaptive consensus formation by changing the preference of each individual. Being faithful to his own preference and pursuing individual rationality are the same thing. But, it is difficult to get harmonious consensus formation as a group when all member of group pursue the own individual rationality. We show that it is possible to get consensus formation by adapting each individual preference to group preference. We also show the characters of the consensus formation on a group of various type of members with the different speeds of adaption. We also consider the effects of the existance of the meta agent dicision-maker and the time constraint for the consensus formation, by some simulations.
著者
山下 直美 坂本 知子 野村 早恵子 石田 亨 林 良彦 小倉 健太郎 井佐原 均
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.1276-1286, 2006-04-15
被引用文献数
11

機械翻訳を介したコミュニケーションを通じて相互理解を実現するためには,翻訳精度の向上とともに相互作用性の向上が重要である.我々は機械翻訳に対するユーザの適応行動の1 つである原文の書き換えに注目した.本論文では,ユーザが母国語だけを用いて原文の書き換え作業を行う方法として折り返し翻訳を検討し,折り返し翻訳を用いてユーザが書き換え作業をする際の作業量を減らす支援方法を考案する.本研究でユーザの折り返し翻訳作業に関する実験を実施,分析した結果,以下の知見を得た.1) 母国語に関する知識が豊富なユーザほど機械翻訳に容易に適応でき書き換え作業量が少なかった.2) ユーザに事前に「良い翻訳結果を得るためのルール集合」の教示を行うと,母国語に関する知識が豊富でないユーザも機械翻訳に容易に適応できるようになり,書き換え作業量が大幅に減った.3) ただし,原文をどのように変更すべきかを明示しない「操作自由型ルール」に対する教示効果は薄く,これらのルール獲得にかかる書き換え作業量は大きく減少しなかった.原文をどのように変更すべきかを明示した「操作指示型ルール」に対する教示効果は高く,これらのルール獲得にかかる書き換え作業量は大きく減少した.4) ルールの教示は,母国語に関する知識が中位のユーザに最も効果的であった.Translation refinement is often observed when users communicate via machine translation systems. In this study, we analyzed user's translation refinement process through a controlled experiment. In the experiment, users translated sentences using a Japanese-English-Japanese turn-back translation. From the analysis, we discovered the following results: 1) The more knowledge users had about the source language, the better users could refine the original text, 2) Rule instruction was very effective in user's adaptation. Users who were reminded of the rules refined the original text ahead of other users, 3) Instructing operational rules were effective in helping user's adapation, while conditional rules were not as much effective. 4) Rule instruction was most effective to those who had midium knowledge in their source languages.