2 0 0 0 OA 依存性の研究

著者
江口 恵子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.45-58, 1966-03-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
113
被引用文献数
1
著者
伊藤 裕子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.p1-11, 1978-03
被引用文献数
5

本研究は,性質としての性役割が4つの評価次元-個人的評価・社会的評価・男性役割期待・女性役割期待-においてどのように評価されているかを明らかにするとともに,その役割観の違いには,どのような要因が関与しているかを検討することを目的とした。そのため,20代~50代の既婚男女約800名が調査対象として選定された。また,性役割測定のためのスケールが考案され,それは因子分析によって抽出された3つの役割要素(Masculinity, Humanity, Femininity)から構成されている。結果は以下のようにまとめられる。 1) 個人的評価においても社会的評価においても,女性役割より男性役割にはるかに高い価値が付与されており,男性役割の「優位性」が確認された。しかし,両評価次元のいずれにおいても,Humanityに最も高い価値が付与されるという事実を見逃すことは出来ない。 2) 男性役割期待は社会的望ましさと一致するが,女性役割期待は社会的望ましさとは一致しない,あるいはそれとは独立した形での期待が存在する。 3) 男性役割期待,女性役割期待のいずれにおいても,性別による役割期待の分化が明瞭になされている。しかし,性に規定された役割のみが期待されているわけではなく,男性にも女性にもHumanityという要素が多く望まれている。 4) 女性の側における自己の価値意識と周囲からの役割期待の不一致は,多くの役割葛藤を生んでいることを示唆している。 5) Masculinity, Humanity, Femininityという性役割における3つの要素の関係(三角形仮説)は,M型,H型,F型の役割観を持つ個人間の関係にも妥当であることが確認された。 6) 3型の各々,の役割観を持つ者の特徴として,F型の者は対人的価値指向が,M型の者は社会的価値指向が,H型の者は個人内価値指向が強い。 7) 男性および女性の役割観を大きく規定する要因群は,学歴・職業などのデモグラフィックな要因,役割形態に関する要因,および自己の価値観を反映する要因であった。
著者
内田 伸子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.p211-222, 1982-09

学術雑誌論文
著者
遠藤 由美
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.157-163, 1992-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

Traditionally, discrepancies between positive ideal-self and real-self have been associated with low self-esteem. The basic idea of general positiveness of real-self is considered an index of self-esteem. But Rosenberg (1965) emphasized two different meanings, that is, ‘good enough’ and ‘very good’ being involved in self-esteem. His self-esteem scale favored the former. In the present study, it was hypothesized that not a general positiveness, but a personalized positiveness together with a non-negativeness were correlated with self-esteem (Rosenberg). Personalized standard were defined as high rating scores of positive and negative ideal selves. The results of the present study supported the hypothesis, especially in a negative ideal-self. It was suggested that self-esteem was more a function of distance how far I am from the person who I won't to be.
著者
栗原 慎二
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.243-253, 2006-06-30
被引用文献数
1

本研究は,摂食障害で不登校に陥った女子高校生に対して教員が支援チームを作って関わり,無事卒業していった事例を通じて,学校教育相談における教員によるカウンセリングやチーム支援のあり方について検討することを目的とした。本事例の検討を通じてチーム支援の有効性が確認されるとともに,以下の点が示唆された。(1)学校や教員の特性を生かしたチーム支援の有効性と可能性(2)学校カウンセリング独自の目標設定と方法選択の重要性(3)コアチームのメンバー構成の重要性,(4)学校における秘密保持のガイドライン作成の必要性。
著者
越中 康治
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.479-490, 2005-12

本研究では, 挑発的攻撃, 報復的攻撃, 制裁としての攻撃の各タイプの攻撃行動に関する幼児の認知を比較検討した。4, 5歳の幼児を対象として, 主人公が他児に対して各攻撃行動を示す場面を紙芝居で提示し, (1)主人公が示した攻撃行動の善悪判断, (2)攻撃行動を示した主人公を受容できるかの判断, (3)幼児が日常, 主人公と同様の攻撃行動をするかの報告を求めた。結果として, (1)幼児は挑発的攻撃は明らかに悪いことであると判断するものの, 報復的攻撃及び制裁としての攻撃に関しては善悪判断が分かれており, 全体として良いとも悪いともいえないという判断を示した。また, (2)幼児は挑発的攻撃を示す主人公を明らかに拒否していたが, 報復的攻撃及び制裁としての攻撃を示した主人公とは一緒に遊んでもよいと判断した。さらに, (3)挑発的攻撃及び報復的攻撃に関して, ほとんどの幼児は日常示すことはないと回答したものの, 制裁としての攻撃に関しては示すと回答した者も少なからずいた。本研究から, 報復的公正に関する理解は4, 5歳児にも認められることが明らかとなった。幼児が報復や制裁のための攻撃を正当化する可能性が示唆された。
著者
外山 美樹 湯 立
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.295-310, 2020-09-30 (Released:2021-02-18)
参考文献数
45
被引用文献数
4

本研究の目的は,小学4―6年生646名を対象に1カ月間の短期縦断研究を行い,いじめ加害行動の抑制に関連する個人要因としていじめ観ならびに罪悪感の予期を,学級要因として学級の質を取りあげて検討することであった。本研究の結果より,いじめを根本的に否定する考え方を有している小学生は,いじめ加害行動の抑制につながりやすいことが示された。一方で,罪悪感の予期は,いじめ加害行動の抑制につながらなかった。さらに,友達関係雰囲気,学級雰囲気,承認雰囲気,いじめ否定雰囲気といった子どもが所属している学級集団の質の要因が,いじめ加害行動の抑制につながることが示された。最後に,Time 1の加害行動とTime 2の加害行動の関連の強さが学級集団の質によって調整されることが明らかとなり,学級集団の雰囲気が良い学級においていじめ加害行動が多くみられる児童は,その傾向が長期化しやすいことが示された。いじめの問題を取りあげる際には,教室環境の要因を加味し,個人要因と教室環境の要因のダイナミクスを検討する必要性が示唆された。
著者
道田 泰司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.193-205, 2011-06-30 (Released:2011-10-21)
参考文献数
30
被引用文献数
4 1

本研究の目的は, 大学での半期の授業の中でさまざまな形で質問に触れる経験をすることが, 質問に対する態度や質問を考える力に効果を及ぼすかどうかを検討することであった。授業では毎回, グループで質問を作ること, 個人で質問書を書くことに加え, 半期に1回グループで発表させることで, 質問することが必要となる場面を作った。授業初回と学期の最後に, 質問に対する態度の自己評定と, 文章を読んで質問を出す課題を行った。2年度に渡る実践の両方において, 学期末の調査で質問に対する態度が全般的に向上しており, 質問量も増加していた。質問量の増加は, 事実を問う質問や意図不明の質問によるものではなく, 高次の質問の増加である可能性が示唆された。その変化がどのように生じたのかを知るために, 質問量と質問態度それぞれについて, 事前テストでの成績によって学生を4群に分けて事後テスト結果を検討した。その結果, 事前テスト上位群以外の学生の質問量および質問態度が向上していることが示された。以上の結果より, さまざまな形で質問に触れる経験をさせた本実践の効果が示された。
著者
髙橋 高人 松原 耕平 中野 聡之 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.81-94, 2018
被引用文献数
7

<p> 本研究の目的は,中学生における認知行動的な抑うつ予防プログラムの効果を標準群との比較,さらに2年間のフォローアップ測定から検討することであった。介入群を構成した51名の中学1年生が,プログラムに参加した。標準群は,中学生1,817名から構成した。介入内容は,全6回の認知行動的プログラムから構成した。プログラムの効果を測定するために,子ども用抑うつ自己評定尺度,社会的スキル尺度,自動思考尺度が,介入前,介入後,フォローアップ測定1(1年後),2(2年後)で実施された。結果から,抑うつについて介入前と標準群1年生の比較では差が見られなかったのに対して,介入群のフォローアップ測定1と標準群2年生の比較では,有意に介入群の抑うつが低いことが示された。また,社会的スキルの中のやさしい言葉かけとあたたかい断り方,ポジティブな自動思考に関して,介入前よりも介入後,フォローアップ測定において向上することが示された。ユニバーサルレベルの抑うつ予防プログラムが,中学生に対して効果的な技法であることが示唆された。</p>
著者
倉掛 正弘 山崎 勝之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.384-394, 2006-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
36
被引用文献数
11 3

うつ病予防の重要性が指摘され, 欧米では早くから心理学を基盤とする児童期, 青年期を対象としたうつ病予防介入が実施され, 大きな成果を上げてきた。日本においては, うつ病の低年齢化が指摘されているにもかかわらず, 現在, 児童を対象としたうつ病予防介入は全く行われていない。このような現状をふまえ, 本研究では, 心理学的理論にもとつく教育現場で実施可能な小学校クラス集団を対象とするうつ病予防教育プログラムの構築, 実践, その教育効果及び効果の持続性の検討を行うことを目的とした。プログラムは, うつ病の構成要因とされる認知・感情・行動の3つの要因に対し, 総合的に介入を行い, 抑うつ傾向を改善することで, うつ病予防を目指している。さらにこのプログラムを実際の小学校教育現場において実践し, その教育効果と効果の持続性について検討を行った。その結果, 教育効果とその効果の持続性が部分的に確認され, 本プログラムが, うつ病予防総合プログラムとして有効であることが示唆される結果が得られた。
著者
進藤 聡彦 麻柄 啓一 伏見 陽児
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.162-173, 2006-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

これまで学習者の誤概念を修正するために, 反証例を用いる方法と用いない方法の2つのタイプの教授法が提案されてきた。しかし, これらの方法はそれぞれに短所を持つ。本研究ではこれら2つの教授法を組み合わせた新しい方法を提案した。それは以下の方法であった。まず, 誤概念を適用した場合には正しい解決ができない問題を提示する。続いて誤概念を持っていても解決可能な類似の問題を提示する。その問題での正しい解決に基づいて, 学習者に正しいルールを把握させ, さらにそのルールを一連の類似問題に対して適用できるようにするというものである。この方法と従来の2つの方法が誤概念の修正に及ぼす効果を検討した。76名の大学生が3群のいずれかに割り当てられた。被験者の多くは, 真空は物を吸い寄せるという誤概念を持っていた。実験の結果, 今回提案した方法は他の2つの方法より次の3点で優れていることが明らかとなった。まず, 学習者の誤概念を最も効果的に修正できた。また, 自分の知識が変化したという意識を学習者に持たせやすかった。さらに学習者の興味を喚起した。今回提案した方法は誤概念の修正に効果的であることが明らかとなった。この方法は「融合法」と名づけられた。
著者
津留 宏
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.12-20,61, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)

小学校五年生を通してみた603世帯, 約3500名の家族相互の称呼において, 比較的多数を占めた呼び方は次の通りである。夫→妻1. 名前の呼び捨て (45%) 2. 「お母ちやん」「お母さん」 (合せて29%)妻→夫1. 「お父さん」「お父ちやん」 (合せて73%)子→父1. 「お父ちやん」 (67%) 2. 「お父さん」 (27%)子→母1. 「お母ちやん」 (78%) 2. 「お母さん」 (18%)父→子1. 名前の呼び捨て (83%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (13%)母→子1. 名前の呼び捨て (67%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (27%)父→祖父「おじいさん」「おじいちやん」 (合せて70%)母→祖父「おじいさん」「おじいちやん」 (合せて80%)父→祖母「おばあさん」「おばあちやん」 (合せて70%)母→祖母「おばあさん」「おばあちやん」 (合せて80%)祖父→父1. 名前の呼び捨て (60%) 2. 「お父さん」「お父ちやん」 (合せて25%)祖母→父1. 名前の呼び捨て (44%) 2. 「お父さん」「お父ちやん」 (合せて40%)祖父→母1. 名前の呼び捨て (80%) 2. 「お母さん」「お母ちやん」 (合せて24%)祖母→母1. 名前の呼び捨て (63%) 2. 「お母さん」「お母ちやん」 (合せて10%)兄→弟1. 名前の呼び捨て (71%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (23%)姉→弟1. 名前の呼び捨て (60%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (32%)兄→妹1. 名前の呼び捨て (66%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (32%)姉→妹1. 名前の呼び捨て (55%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (43%)弟→兄1. 「兄ちやん」「お兄ちやん」またはこれの付くもの (合せて62%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (17%)妹→兄1. 「兄ちやん」「お兄ちやん」またはこれの付くもの (合せて59%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (22%)弟→姉1. 「姉ちやん」「お姉ちやん」またはこれの付くもの (合せて63%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (17%)妹→姉1. 「姉ちやん」「お姉ちやん」またはこれの付くもの (合せて68%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (20%)尚, 調査結果全般を通し次のような傾向が看取される。1夫婦間の称呼は一般に甚だ不明確であり, 特に妻→夫の場合は瞹眛である。多くは子が父を呼ぶ呼び方を借りている。2一般標準語とされる子→父母の「お父さん」「お母さん」, 弟妹→兄姉の「兄さん」「姉さん」は意外に少い。一般に家族間は「さん」よりは「ちやん」付けが多い。但し「おじいさん」「おばあさん」はこの限りでない。3夫婦間及び子, 祖母の父に対する称呼よりみて, 尚母よりは父に対して敬意が強い。4きようだい間の呼び方は, よく家庭の教育的配慮の如何を反映している。5農村には全く不当な称呼がかなりみられる。住宅地にはこれがない。一般に敬称の点では農村, 工業地がより乱れている。6家族称呼は一般に子供本位の呼び方になろうとする。日本の家庭の子供本位的性格を表わしている。7家族称呼にも明らかに過渡期的様相がみられる。即ち従来の標準的な家族称呼が崩れて新しい称呼が生じつつある。旧い称呼の権威的, 序列的, 形式的なものが, より平等的, 人間的, 親愛的な呼び方にとつて代わられようとしている。恐らくこれは家族制度の変化と共に, 封建的家族意識の減退, 個人意識の昂揚等によるものであろう。8尤も農村と住宅地の一部では標準的な称呼に尚, 関心が強いようにみえる。これは次のように解せられる。即ち日本の家族称呼の標準語はやや保守的なものであるが, 農村はその家族制度の保守性からこれを残し, 住宅地の知識階級では保守的というのではなくむしろ教育的配慮から標準語に依ろうとしているのであろう。従つて両方の性格を欠く商工地では最も称呼の乱れがみられるのである。
著者
水野 君平 日高 茂暢
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1-11, 2019-03-30 (Released:2019-12-14)
参考文献数
41
被引用文献数
7 7

本研究の目的は自己報告によって測定した友だちグループ間の学級内の地位と学校適応感の関連に関して,学級レベルの変数による調整効果を検討することであった。具体的に本研究が扱った学級レベルの変数は,自然な自己開示ができる学級風土と学級内の生徒間の不和を表す学級風土,さらにグループ間の地位におけるヒエラルキーの強さであった。公立中学校3校46学級の生徒1,417名を対象に質問紙調査をおこなった。分析の結果,学級風土はグループ間の地位と学校適応感の関連を調整しなかったが,ヒエラルキーの強さはグループ間の地位と学校適応感の「課題・目標の存在」との関連を調整した。単純傾斜検定の結果,ヒエラルキーが強い学級の場合,高地位グループの生徒ほど「課題・目標の存在」による充実感が高い傾向にあることがわかった。本研究の結果から,グループ間の地位と学校適応感との関連の学級間差やグループ間の地位におけるヒエラルキーの役割を考察した。
著者
尹 成秀
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.492-504, 2016 (Released:2017-02-01)
参考文献数
33
被引用文献数
4 3

本研究は在日コリアン青年の心理学的問題について, 対人関係における体験に焦点化し検討を行ったものである。在日コリアン青年14名に対してエピソード・インタビューを行い, 得られた語りをグラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。その結果, [日本人との関係における体験], [在日コリアン同士の関係における体験]についてのカテゴリー関連統合図が作成された。 考察では, 在日コリアン青年は日本人との間でも在日コリアン同士の間でも, 相手との差異を認識した際に相手が差異に対して否定的な態度であると想定し, 自身もその差異を望ましくないものとして意味づけている可能性が示唆された。そして, そのために彼らには相手からの評価や相手との関係が悪化する不安, 疎外感, 劣等感が生じる可能性が考えられた。しかし同時に, 在日コリアンであることを知ってもらいたいなどの相反する情緒も生じるために, 差異をめぐる状況で葛藤が生じることが示唆された。また, そうした状況で彼らは自身の認識や気持ちとは異なる相手に合わせた対応を行う場合もあることが見出された。この体験は彼らの対人関係のなかで反復されるものであり, 中核的な問題の1つであると考えられた。
著者
三輪 和久 寺井 仁 松室 美紀 前東 晃礼
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.156-167, 2012 (Released:2015-03-27)
参考文献数
60
被引用文献数
1 1

近年の知的学習支援システムは, 高度なインタラクティブ性を有し, その支援は多岐にわたる。そのような学習支援において, 学習効果を最大化するために, どこまで支援を提供し, どこから支援を保留にすればよいのかという, 支援バランスに関わるジレンマ(Assistance Dilemma)が生まれることが指摘されている。このジレンマの発生は, 学習志向活動と解決志向活動という学習時に生じる認知活動の二重性に起因する。学習者は, 限られた作業記憶の容量を, 問題解決を遂行しつつ(解決志向活動), 同時にスキーマ生成のための資源に割り当てなければならない(学習志向活動)という困難な課題に直面し, そこに支援ジレンマの問題の核心が存在する。本論文では, この問題を, 主に教育心理学において長年議論されてきた達成目標理論と, 認知科学や学習科学において展開されてきた認知負荷理論という2つの理論に基づき再解釈すると同時に, ジレンマ解消という観点から, この2つの理論の概要をレビューする。
著者
安達 未来
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.351-359, 2020-12-30 (Released:2021-01-16)
参考文献数
30
被引用文献数
5

これまでの研究で,他者を軽視する傾向が強いほど援助要請を回避しやすいことが示されているが,教師への学業的援助要請については十分な検討はなされていない。本研究では,仮想的有能感の高い生徒の特徴が教師への学業的援助要請にどのような影響を与えているのかを,拒絶感受性と孤独感の調整効果をふまえ,明らかにした。高校生173名を対象に,調査を実施した。仮想的有能感を他者軽視傾向で測定し,さらに自律的援助要請,依存的援助要請の2因子から構成される学業的援助要請を測定した。加えて,対人感受性尺度,対人疎外感尺度を用いてそれぞれ拒絶感受性と孤独感を測定した。その結果,仮想的有能感は,拒絶感受性が低い場合において,自律的援助要請に正の影響を与えていることがわかった。これは,仮想的有能感の高い生徒の拒絶に対する敏感さが自律的援助要請を回避させることを示唆する。また,仮想的有能感は,孤独感の高い場合において,自律的援助要請に正の影響を与えていた。孤独を感じることが対人的なコミュニケーションの一つとして,教師への自律的援助要請に結び付いた可能性がある。
著者
西村 多久磨 村上 達也 櫻井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.453-466, 2015-12-30 (Released:2016-01-28)
参考文献数
35
被引用文献数
3 3

本研究では, 共感性を高めるプログラムを開発し, そのプログラムの効果を検討した。また, プログラムを通して, 社会的スキル, 自尊感情, 向社会的行動が高まるかについても検討した。介護福祉系専門学校に通う学生を対象に実験群17名(男性6名, 女性11名 ; 平均年齢20.71歳), 統制群33名(男性15名, 女性18名 ; 平均年齢19.58歳)を設けた。プログラムを実施した結果, 共感性の構成要素とされる視点取得, ポジティブな感情への好感・共有, ネガティブな感情の共有については, プログラムの効果が確認された。具体的には, 事前よりも事後とフォローアップで得点が高いことが示された。さらに, これらの共感性の構成要素については, フォローアップにおいて, 実験群の方が統制群よりも得点が高いことが明らかにされた。しかしながら, 他者の感情に対する敏感性については期待される変化が確認されず, さらには, 社会的スキル, 自尊感情, 向社会的行動への効果も確認されなかった。以上の結果を踏まえ, 今後のプログラムの改善に向けて議論がなされた。
著者
森永 康子 坂田 桐子 古川 善也 福留 広大
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.375-387, 2017
被引用文献数
11

「女子は数学ができない」というステレオタイプに基づきながら, 好意的に聞こえる好意的性差別発言「女の子なのにすごいね(BS条件)」(vs.「すごいね(統制条件)」)が女子生徒の数学に対する意欲を低下させることを実証的に検討した。中学2, 3年生(研究1), 高校1年生(研究2)の女子生徒を対象に, シナリオ法を用いて, 数学で良い成績あるいは悪い成績をとった時に, 教師の好意的性差別発言を聞く場面を設定し, 感情や意欲, 差別の知覚を尋ねた。高成績のシナリオの場合, BS条件は統制条件に比べて数学に対する意欲が低かったが, 低成績のシナリオでは意欲の差異は見られなかった。数学に対する意欲の低下プロセスについて, 感情と差別の知覚を用いて検討したところ, 高成績の場合, 低いポジティブ感情と「恥ずかしい」といった自己に向けられたネガティブ感情の喚起が意欲を低めていること, 怒りなどの外に向けられたネガティブ感情はBS条件の発言を差別と知覚することで喚起されるが, 数学に対する意欲には関連しないことが示された。
著者
猪原 敬介 上田 紋佳 塩谷 京子 小山内 秀和
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.254-266, 2015 (Released:2015-11-03)
参考文献数
25
被引用文献数
10 4

海外の先行研究により, 読書量, 語彙力, 文章理解力には緊密な相互関係が存在することが明らかになっている。しかし, 我が国の小学校児童に対する調査はこれまでほとんど行われてこなかった。この現状に対し, 本研究では, これまで調査がなされていなかった1・2年生を含めた小学校1~6年生児童992名に対して調査を実施した。また, 読書量推定指標間の関係についても検討した。その際, 海外では使用例がない小学校の図書貸出数と, 新たに作成したタイトル再認テストの日本語版を含め, 6つの読書量推定指標を同時に測定した。結果として, 全体的にはいずれの読書量指標も語彙力および文章理解力指標と正の相関を持つこと, 読書量推定指標間には正の相関があるもののそれほど高い相関係数は得られなかったこと, の2点が示された。本研究の結果は, 日本人小学生児童における読書と言語力の関係についての基盤的データになると同時に, 未だ標準的方法が定まらない読書量推定指標を発展させるための方法論的貢献によって意義づけられた。
著者
北村 英哉
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.403-412, 1998-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1

自己の長所, 短所が対人認知過程に対していかに影響するか2つの研究によって検討がなされた。自己評価維持モデルの観点から, 自己の長所が短所よりも対人認知においてよく用いられ, アクセシビリティが高いことが予測された。研究1では, 39名の回答者が好きな, 嫌いな友人・知人の性格にっいて 5-7個の記述を行った。1週間後, 自己の長所5つと短所5つを挙げ, Rosenberg (1965) の自尊心尺度に回答した。友人・知人の記述に現れた長所, 短所を逆のコンストラクトも含む次元の観点から頻度を数え, その結果, 長所次元が短所次元よりも多く用いられており, また, 自尊心の低い被験者は, 自尊心が中程度, あるいは高い被験者よりも短所をよく用いることが示された。研究2では, 研究1と同じ手続きで, 回答者は友人・知人の記述を行った後, その記述がどの程度自己にあてはまるか, どのくらい重要であるかを評定した。さらに, 各友人・知人とどのくらい親しいかの評定も行った。その結果, アクセシビリティの高いポジティブな性質はアクセシビリティの低い性質よりもより重要で, 自己にあてはまる (すなわち, セルフ・スキーマ的である) ことが示された。また, 自己評価維持モデルで予測されるように, 心理的に近い, 親密度の高い友人・知人の記述において, 自己の長所的性質をよく用い, 短所的性質を用いることを避けることが見出された。結論として, 対人認知過程において自尊心維持のため長所が短所よりもよく用いられることが示唆された。