著者
小浜 駿
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.325-337, 2010 (Released:2012-03-07)
参考文献数
35
被引用文献数
5 1

本研究の目的は, 大学生が学業課題を先延ばししたときに, その前・中・後の3時点で生じる意識の感じやすさを測定する先延ばし意識特性尺度を作成し, その信頼性および妥当性を検討することであった。研究1では, 先延ばし意識特性尺度の作成と尺度の内的整合性および構成概念妥当性の検討を行った。研究2では, 尺度の再検査信頼性の検討を行った。探索的因子分析によって先延ばし意識特性尺度の7因子構造が採択され, 確認的因子分析でその構造の妥当性が確認された。同尺度とこれまでに作成された先延ばし特性尺度との関連から弁別的証拠が, 同尺度と認知特性, 感情特性との関連から収束的証拠が得られ, 構成概念妥当性が確認された。先延ばし意識特性尺度と他の尺度との関連から, 否定的感情が一貫して生起する決断遅延, 状況の楽観視を伴う習慣的な行動遅延, 気分の切り替えを目的とした計画的な先延ばし, の3種類の先延ばし傾向の存在が示唆された。考察では3種類の先延ばし傾向と先行研究との理論的対応について議論され, 学業場面の先延ばしへの介入に関する提言が行われた。
著者
松本 明日香 小川 一美
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.28-41, 2018-03-30 (Released:2018-04-18)
参考文献数
36
被引用文献数
4 5

本研究の目的は,大学で専攻する学問に対して,どのような価値を求めるのか,どのような価値評定をしているのかという専攻学問に対する価値と,大学教育を通じて培うべき力である批判的思考力との関連を探索的に検討することであった。批判的思考力として,質問力,質問態度,クリティカルシンキング志向性を測定した。専攻学問に対する価値を第1群,批判的思考力を第2群として正準相関分析を行った結果,以下の2点が示された。1点目は,専攻学問に対する4つの価値全てが高いと,質問態度やクリティカルシンキング志向性が高くなり,事実を問う質問数も多くなるという結果であった。2点目は,専攻学問の学びは他者から見て望ましいと思われているという価値である公的獲得価値は高いが,専攻学問は充実感や満足感を喚起する学問であると思うという興味価値が低いと,事実を問う質問数は多くなるが,クリティカルシンキング志向性および思考を刺激する質問数に負の影響を与えるという結果であった。専攻学問に対して価値を見出すことは,批判的思考力の獲得に有効な要素であることや,複数の価値を組み合わせて効果を検討することの意義などが考察された。
著者
長谷川 真里
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.13-23, 2014 (Released:2014-07-16)
参考文献数
21
被引用文献数
7 1

本研究の目的は, いわゆる「仲間はずれ」とよばれる, 異質な他者を集団から排除することについての判断の発達を検討することであった。研究1では, 小学生, 中学生, 大学生を対象に, 私的集団(遊び仲間集団)と公的集団(班)のそれぞれにおいて, 社会的領域理論の3領域(道徳, 慣習, 個人)に対応した行動の特徴を持つ他者に対する排除判断(集団から排除することを認めるか), その理由, 変容判断(その他者の特徴は変わるべきか)を求めた。その結果, 年齢とともに, 排除自体の不公平性に注目し排除される他者の特徴を区別しない判断から, 集団機能に注目し他者の特徴を細かく区別する判断へ変化した。小学生は2つの集団を区別して判断する一方で, 他者は変わるべきであると考える傾向が見られた。研究2では, 小学生と中学生を対象に, 友人への志向性の差と排除判断の関係を検討した。閉鎖的, 固定的な集団への志向性および友人への同調欲求が高いと, 集団排除を認めることが示唆された。最後に, 本研究の限界と今後の課題が議論された。
著者
小塩 真司
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.280-290, 1998
被引用文献数
2

本研究の目的は, 自己愛傾向と自尊感情との関わりを検討すること, そしてその両者が, 青年期における友人関係とどのように関連しているのかを検討することであった。自己愛人格目録(NPI), 自尊感情尺度(SE-I), 友人関係尺度が265名(男子146名, 女子119名)に実施された。NPIの因子分析結果から, 「優越感・有能感」「注目・賞賛欲求」「自己主張性」の3つの下位尺度が得られた。NPIとSE-Iとの相関から, 自己愛は全体として自尊感情と正の相関関係にあるが, 特に「注目・賞賛欲求」はSE-Iと無相関であり, SE-Iの下位尺度との関係から, 高い自己価値を持つ一方, 他者の評価に敏感であり, 社会的な不安を示すといった特徴を有していることが明らかとなった。これらの結果は, NPIの妥当性を示す1つの結果であると考えられた。また, 友人関係尺度の因子分析結果から, 友人関係の広さの次元と浅さの次元が見出され, その2つの次元によって友人関係のあり方が四類型された。この友人関係のあり方とNPI, SE-Iとの関係が分析された。結果より, 広い友人関係を自己報告することと自己愛傾向が, 深い友人関係を自己報告することと自尊感情とが関連していることが明らかとなった。このことから, 青年期の心理的特徴と友人関係のあり方とが密接に関連していることが示唆された。
著者
黒田 祐二 桜井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.86-95, 2003-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
28
被引用文献数
12 6

本研究は, 友人関係場面における目標志向性と抑うつとの関係に介在するメカニズムを明らかにすることを目的として行われた。両者に介在するメカニズムとしては, Dykman (1998) により提唱されたディストレス生成モデル (目標志向性が対人行動を通してネガティブな出来事を促進 (ないし抑制) し, その結果抑うつが促進 (ないし抑制) される) に加えて, 新たにユーストレス生成モデル (目標志向性が対人行動を通してポジティブな出来事を促進 (ないし抑制) し, その結果抑うっが抑制 (ないし促進) される) を提唱し, この2つのモデルを検討した。重回帰分析による結果から, 3つの目標と抑うつとの関係はいずれもユーストレス生成モデルで説明できることが示された。すなわち,(1) 「経験・成長目標→関係構築・維持行動及び向社会的行動→ポジティブな出来事の発生→非抑うつ」,(2)「評価一接近目標→関係構築・維持行動→ポジティブな出来事の発生→非抑うつ」,(3)「評価一回避目標→関係構築・維持行動の不足→ポジティブな出来事の非発生→ 抑うつ」,という結果が示された。本研究の関連する既存の研究領域及び教育的介入に対する示唆が論じられた。
著者
深谷 達史 戸部 栄子 立見 康彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.414-428, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
30
被引用文献数
3

説明行為に関する知識である説明スキーマは, 説明的な文章の読解と表現に共通して働く知識である。例えば, 説明的な文章が主に「問い-説明-答え」の要素からなるという知識に基づき, 説明的文章の内容を整理して読んだり, 書いたりできると想定される。本研究では, 小学4年生の1学級を対象に, 説明スキーマに基づく方略使用を促し, 論理的な読み書き能力を育成することをねらいとする, 2つの説明的文章の単元の実践を行った。2つの実践では, 単元の前半に説明スキーマを明示的に教授し, 問いの文を同定した上で, 説明と問いへの答えをまとめるなど, 説明スキーマを活用して教科書の教材を読み取らせた。単元の後半では, 問い-説明-答えの要素に基づき, 授業時間外に読んだ関連図書の内容を説明する文章を作成した。また, 実践においては, ペアやグループで読んだことや書こうとしていることを説明, 質問しあう言語活動を行い, 内容の精緻化を図った。質問紙やテストによる調査結果から, 実践後には説明スキーマを活用する態度やスキルを表す得点が高くなったことが示された。今後, 他教科や探究的な学習においても説明スキーマに基づく指導を展開していくことが期待される。
著者
原岡 一馬
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.29-40, 1957-02-25
被引用文献数
2

以上の結果を要約すれば,〔一〕から,1知能以上の成績を上げた子も,無能以下の成績1しか上げ得なかった子も,家庭環境を一定とすれば知能と学業成績とは相当高い相関関係を示す(.7〜.8)し,学業成績は知能と環境との重相関では,ほとんど完全に近い相関係数を示す(.88〜.99)。又どちらも,知能と環境との相関はほとんどOであった(.018〜.039)。2知能以上の学業成績を上げた生徒は,知能以下の成績を上げた生徒よりも,家庭環境得点において有意に高く(田中研究所・家庭環境診断テスト使用),中でも「子供のための施設」「文化的状態」「両親の教育的関心」が特に大きな差を表わし,次に「家庭の一般的雰囲気」が重要だと云える。3オーバー・アチーバーのグループでの知能,学業成績及び家庭環境の関係と,アンダー・アチーバーのグループでのそれらの関係とでは,オーバー・アチーバー内では学業成績を上げるに環境の影響が少なく,アンダー・アチーバー内での学業成績に対する環境の影響は高かった。4叉各項目について,オーバー・アチーバーとアンダー・アチーバーとの有意な差を示すもの16を取り上げてみると,(1)同胞数について,1人子と6人以上の兄弟を持っているものは,アンダー・アチーバーの方が多かった。(2)家を引越した数はオーバー・アチーバーの方が多かった。(3)教科書以外の本が6冊以上ある家は,オーバー・アチーバーの方が多い。(4)一人当りの部屋数では.60以上がオーバー・アチーバーの方に多かった。(5)家に字引が二種類以上あるのは,オーバー・アチーバーの方が多かった。(6)家で決って子どものために雑誌を取ってもらったことのないのは,アンダー・アチーバーの方が多かった。(7)新聞を取っていない家庭は,アンダー・アチーバーが多かった。(8)両親が月に一回以上教会やお寺,お宮に参るかということについて,「時にはすることがある」というのにオーバー・アチーバーが多く,「お参りする」「全然しない」の両端は,アンダー・アチーバーの方が多かった。(9)家庭のお客様の頻度では「普通」がアンダー・アチーバーに多く,「比較的に少ない」と「比較的に、多い」との両端が(8)の場合とは丁度逆にオーバー・アチーパーに多かった。(10)家庭がいつもほがらかだと感ずるのは,アンダー・アチーバーであった。(11)お母さんの叱り方では,「全然叱らない」のが多いのはアンダー・アチーバーであった。(12)子どもが家でじゃまもの扱いにされていると全然思わないのは,オーバー・アチーバーが多かった。(13)両親とも働きに外に出ているのは,アンダー。一アチーバーが多かった。(14)両親が服装や言葉遣い等に全然注意しないのはアンダー・アチーバーが多かった。(15)子どものことについて,両親が口げんかをほとんどしないのはオーバー・アチーバーが多かった。(16)叉誕生日に何か送りものやお祝を「たいていする」のはアンダー・アチーバーに多く,「全然しない」「時にはすることがある」にはオーバー・アチーパが多かった。5以上のことから考えられることは,知能以上の学業成績を上げるには文化社会的家庭環境の影響が大であることが多くの研究結果と同様に示された。6次に推論出来ることは全体としてオーバー・アチーバーがアンダー・アチーパーより家庭環境はよいが,成就指数が高くなるに従って学業成績に及ぼす環境の影響度は少なくたって行くと云うことであり,連続的に見れば成就指数と環境との関係グラフは成就指数を横軸に,環境を縦軸に取れば,指数曲線状を描きその変化率が次第に減少すると仮定することが出来よう。7ここではオーバー・アチーパーとアンダー・アチーバーの両端を取って調べたため,その連続的傾向を見ることが出来なかったので,次に全体調査を行って上の推論を検証することとした。次に〔二〕から1 努力係数(FQ)と家庭環境得点とは正の相関(γ_<FQ・En>=302)を有すること,、(但しこの場合,その関係グラフは指数曲線状であり,相関係数は直線を仮定する故低い値となったであろう)。これに比して,学業成績はFQと高い相関(γ<FQA>=.71)を有し,知能はそれとほとんど無関係である。(γ_<FQ1>=111)2 オーバー・アチーパーがアンダー・アチーパーより一般に高い環境得点を有しているが,その関係の程度は努力係数が高くなればなる程低くなる。即ち努力係数と環境との関係は指数曲線状を描く。3 努力係数の変動の大部分は学業成績・環境・及び学業成績と知能との交互作用にあり,知能にはほとんどないのである。しかしながら,環境か努力係数の変動の中で無視されないほどの変動を有し,叉努力係数と.302の相関を有するということから,努力係数を構成するには,FQやAQのように知能と学業成績だけから作成されたイソデックスだけでは不充分ではなかろうか。そこには当然環境という要素をその重要度に応じて入れることが必要でh</abst>
著者
平山 るみ 楠見 孝
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.186-198, 2004-06
被引用文献数
21

本研究の目的は,批判的思考の態度構造を明らかにし,それが,結論導出過程に及ぼす効果を検討することである。第1に,426名の大学生を対象に調査を行い,批判的思考態度は,「論理的思考への自覚」,「探究心」,「客観性」,「証拠の重視」の4因子からなることを明らかにし,態度尺度の信頼性,妥当性を検討した。第2に,批判的思考態度が,対立する議論を含むテキストからの結論導出プロセスにどのように関与しているのかについて,大学生85名を用いて検討した。その結果,証拠の評価段階に対する信念バイアスの存在が確認された。また,適切な結論の導出には,証拠評価段階が影響することが分かった。さらに,信念バイアスは,批判的思考態度の1つである「探究心」という態度によって回避することが可能になることが明らかにされ,この態度が信念にとらわれず適切な結論を導出するための重要な鍵となることが分かった。
著者
山森 光陽 萩原 康仁
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.555-568, 2016 (Released:2017-02-01)
参考文献数
32
被引用文献数
2 3

クラスサイズパズルと呼ばれる, 学級規模が児童生徒に及ぼす影響を検討する研究群で一貫した結果が得られない現象が見られる背景には, 学級規模と学級規模以外の要因との交互作用の存在が考えられる。学級編制基準は学級規模のみならず, 学年学級数の多少も決定するため, 本研究では学級規模の大小, 学年学級数の多少及びこれらの組合せによって過去の学力と後続の学力との関係に違いが見られるかを検討した。そのために, 小学校第4, 6学年4月に実施された国語の学力調査得点についての67校分の2時点のパネルデータに, 対象児童が第4, 5学年時に在籍した学年の学級数及び学級の児童数を組合せ, 階層的線型モデルを適用した分析を行った。この結果, 過去の学力調査得点が低かった児童について見れば, 学級数の多い学年で小規模な学級に在籍した児童の方が, 学級数の少ない学年で小規模な学級に在籍した児童と比べて後続の学力が高いといった学力の底上げが見られた。この背景について, 学級規模と学年学級数によって異なる学級の質, 学年学級数によって異なる教師同士の協同による教材研究等の頻度の点から考察した。
著者
藤村 宣之 太田 慶司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.33-42, 2002-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
7 2

本研究では, 算数の授業における他者との相互作用を通じて児童の問題解決方略がどのように変化するかを明らかにすることを目的とした。小学校5年生2クラスを対象に「単位量あたりの大きさ」の導入授業が, 児童の倍数関係の理解に依拠した指導法と従来の三段階指導法のいずれかを用いて同一教師により実施された。授業の前後に実施した速度や濃度などの内包量の比較課題と, 授業時のビデオ記録とワークシートの分析から, 以下の3点が明らかになった。1) 倍数関係の理解に依拠した指導法は従来の指導法に比べて, 授業時と同一領域の課題解決の点で有効性がみられた。2) 授業過程において他者が示した方法を意味理解したうえで自己の方略に利用した者には, 他者の方法を形式的に適用した者に比べて, 洗練された方略である単位あたり方略への変化が授業後に多くみられた。3) 授業時の解法の発表・検討場面における非発言者も, 発言者とほぼ同様に授業を通じて方略を変化させた。それらの結果をふまえて, 教授・学習研究の新しい方向性や方略変化の一般的特質などについて考察した。
著者
下村 英雄
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.145-155, 1996-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
1

The present study was intended to examine strategies of information search used in vocational decision making. Third and fourth-year undergraduate students were selected as subjects. Regarding the amount of information search, high and low group of vocational readiness were found to be different among third-year students who did not have any job hunting experience whereas no difference was observed between the two groups among fourth-year students who had a job hunting experience. With regards to strategies of information search, third-year students tended to use strategies-search within alternatives across attributes in first part of vocational decision making process and search within attributes across alternatives in a second part of the process. On the other hand, fourth-year students tended to search within attributes across alternatives in the first part and search within alternatives across attributes in the second part. Fourth-year students used information search strategies which were more rational and analogous to decision making in other areas of daily life.
著者
堤 亜美
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.323-337, 2015-06-30 (Released:2015-11-03)
参考文献数
26
被引用文献数
5 6

本研究では, 一般の中学・高校生を対象とした, 認知行動療法的アプローチに基づく抑うつ予防心理教育プログラムの実践を行い, その効果を検討した。プログラムは全4セッション(1セッション50分)からなり, 主な介入要素は1)心理教育, 2)感情と思考の関連, 3)認知の再構成, 4)対反芻, であった。中学3年生および高校2・3年生を対象に本プログラムを実施したところ, 分散分析の結果, 中学生対象の実践ではプログラム実施群はプログラム実施前に比べ実施後に有意に抑うつの程度と反芻の程度が低減したこと, 高校生対象の実践ではプログラム実施群はプログラム実施前に比べ実施後に反芻の程度が有意に低減し, 抑うつの程度が有意に低減した傾向が示された。また, 中学生では実施6ヶ月後, 高校生では実施3ヶ月後の時点において, プログラム実施後の抑うつ・反芻の程度を維持していることも示された。そして感想データの分析の結果, 自分自身や周囲の人たちの抑うつ予防に対する積極性の獲得など, 一次予防や二次予防につながる様々な変化が見出された。これらのことから, 本プログラムは抑うつ予防に対し継続的な有効性を保持するものであることが示唆された。
著者
湯澤 正通 湯澤 美紀 関口 道彦 李 思嫻
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.60-69, 2012 (Released:2013-01-16)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

本研究では, 日本人幼児, 中国人幼児, 国際幼稚園の日本人幼児による英語非単語反復を比較し, 日本人幼児における英語音韻習得の制約を検討した。非単語反復とは, ある言語の典型的な音韻から構成された非単語を子どもに聴覚提示し, 即時反復させるものであり, その言語の音韻習得能力の指標と見なされている。2~5音節の英語非単語が反復刺激として, 日本人幼児46名, 中国人幼児63名, 国際幼稚園の日本人幼児29名に与えられた。その結果, 中国人幼児では, 非単語の音節数が増加するとともに, 完全正答数が減少し, 逆に, 音節再生数が増加した。一方, 日本人幼児では, 非単語の音節数の増加に伴う完全正答数の減少や音節再生数の増加は, 3音節で天井または床効果を示した。また, 国際幼稚園の日本人幼児では, 完全正答数や音節再生数は, 多かったが, 音節再生数の増加は, 一般の日本人と同様, 3音節で天井効果を示した。これらの結果から, 日本人幼児が, 英語の非単語の反復に, より多くの負荷をかけるような処理を行っていること, また, このような制約が早期の英語経験によって変化しにくいことが示唆された。
著者
村山 航 及川 恵
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.273-286, 2005-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
83
被引用文献数
7 10

臨床・教育心理学の分野で,“回避方略”は, ストレス状況の解決や不快情動の緩和, 学業達成などを阻害するものとして, 非適応的な方略だと主張されてきた。しかし, 気晴らし, 援助要請行動の回避, セルフハンディキャッピングといった回避方略を取り上げて実際の先行研究を概観する限り, 結果は一貫しておらず, この命題が確実に支持されているとは言い難い。そこで本稿では, 上記の命題を批判的に検討した上で, 回避方略の非適応性を捉えるための視点を提出することを目的とした。具体的には, 同じ“回避方略”であっても,“目標・意図レベルの回避”と“行動レベルの回避”を分けて考える必要性を示唆した。その上で, 従来の研究の非一貫性を説明するため,“たとえ行動レベルで回避的な方略であっても, 目標レベルで回避的でなければ非適応的にならない”という仮説を提出した。この仮説を検証するため, 先行研究を改めて概観し, いくつかの支持的な証拠を得た。また, 著者らが直接実施した調査データからも, この仮説が支持された。最後に, 臨床・教育実践の観点から, 本稿の意義が検討された。
著者
石津 憲一郎 安保 英勇
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.442-453, 2009-12-30
被引用文献数
7 8

過剰適応はいわゆる「よい子」に特徴的な自己抑制的な性格特性からなる「内的側面」と,他者志向的で適応方略とみなせる「外的側面」から構成されている。これまでこの2つの高次因子は並列的に捉えられてきたが,内的側面は具体的な行動を生起させる要因として想定することができる。そこで本研究では,幼少時の気質と養育者の態度を含め,因子間の関連性を再検討することを第1の目的とし,過剰適応の観点を含めた包括的な学校適応のモデルの構築を第2の目的とした。1,025組の中学生とその母親を対象にした調査の結果,養育態度や気質から影響を受けた「内的側面」によって「外的側面」が生起するモデルの適合度が相対的に高いことが示された。また,過剰適応の内的側面である「自己不全感」や「自己抑制」が「友人適応」や「勉強適応」に負の影響を与える一方で,「自己不全感」や「自己抑制」が過剰適応の外的側面に繋がった場合には,外的側面はそれらの適応を支えるべく作用していたが,抑うつ傾向には影響を与えていなかった。個人が過剰適応することで社会文化的には適応していく可能性があるが,心理身体レベルでの適応とは乖離がなされていくことが想定される。
著者
佐々木 万丈
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.69-80, 2001
被引用文献数
3

本研究の目的は, 中学生の体育学習における能力的不適応経験時のコーピング形態を測定できる尺度を開発することであった。まず, 男女中学生827名に対するコーピング記述の因子分析結果に基づいて3下位尺度・26項目 (ストラテジー追求, 回避的認知・行動, 内面安定) の中学生用体育学習ストレスコーピング尺度 (SCS・PE) が作成された。次に, クローンバックのα係数とテストー再テスト法によって信頼性が, 構成概念的妥当性, 基準関連妥当性, 交差妥当性および弁別力の検討によって妥当性の検証がそれぞれ行われ, いずれも満足できる結果が得られた。以上によりSCS-PEはコーピング尺度として信頼性と妥当性を有することが確かめられた。さらにSCS-PEの5段階評価基準が設定され, 尺度としての有用性と今後の課題が討論された。まず, SCS-PEは生徒のコーピング状況を予測・査定でき, また, 体育嫌いや運動嫌いになることを認知的側面から予防する資料を提供できるという点で有用であることが指摘された。次に, 今後の課題として, 実践場面との関連からも信頼性と妥当性の検討が行われなければならないことが指摘された。
著者
鈴木 有美 木野 和代
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.487-497, 2008-12-30
被引用文献数
17

本研究の目的は,共感性の多次元的アプローチに従い,他者の心理状態に対する認知と情動の反応傾向をそれぞれ他者指向性-自己指向性という視点から弁別的に測定しうる多次元共感性尺度(MES)を作成し,その信頼性と妥当性を検証することであった。先行研究における概念定義の議論および既存尺度の構成を概観し,「他者指向的反応」「自己指向的反応」「被影響性」「視点取得」「想像性」の5つの下位概念を設定した。これらを測定する項目を作成し,質問紙調査を実施した。大学生871名から得られた回答について因子分析を行った結果,5つの下位概念に対応する5因子が得られた。α係数,I-T相関係数,再検査信頼性係数などの結果から信頼性を検討した。また,既存の共感性尺度および共感性との関連が予想される概念を測定する尺度との相関から妥当性を検討した。今後,自我発達との関連など認知・情動反応傾向の指向性を規定している要因の検討を進めることが,共感性に関する応用研究において有益と考えられる。
著者
佐田 吉隆
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.138-144, 2000-06-30
被引用文献数
3

本研究の目的は, 朗読による精神面での積極的休息が知覚-運動学習に及ぼす効果を検討することであった。テスト試行10試行間それぞれの, 1分間の休憩中における3つの技法の回復促進効果が比較された。3つの技法は次のようなものであった。(a)積極的休息(筋)群は, 回転板追跡学習(右手)の休止期間にタッピング(左手)に従事した。(b)積極的休息(心)群は, 実験とは無関係の書物を朗読した。(c)消極的休息群は, できるだけ体を動かさず実験に関する思索をしないように休憩した。その結果, 休憩中に朗読することが最も効果的な回復技法であった。朗読群の被験者は, 技能習得試行において, 他の2つの技法よりも接触時間で有意に優れていた。休憩中に朗読することはまた, フリッカー値の上昇をもたらした。しかし, 統計的には認められなかった。覚醒水準の上昇の可能性が考察された。
著者
村上 宣寛
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.183-191, 1980-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
38
被引用文献数
1 2

音象徴の研究には2つの流れがあり, 1つはSapir (1929) に始まる, 特定の母音と大きい-小さいの次元の関連性を追求する分析的なものであり, もう1つはTsuru & Fries (1933) に始まる, 未知の外国語の意味を音のみから推定させる総合的なものであった。本研究の目的は音象徴仮説の起源をプラトンのテアイテトス (201E-202C) にもとめ, 多変量解析を用いて日本語の擬音語・擬態語の音素成分を抽出し, それとSD法, 連想語法による意味の成分との関連を明らかにするもので, 上の2つの流れを統合するものであった。刺激語はTABLE1に示した65の擬音語・擬態語であり, それらの言葉から延べ300人の被験者によって, SD評定, 名詞の連想語, 動詞の連想語がもとめられた。成分の抽出には主因子法, ゼオマックス回転が用いられた。なお, 言葉×言葉の類似度行列作成にあたって, 分析Iでは言葉に含まれる音をもとにした一致度係数, 分析IIでは9つのSD尺度よりもとめた市街模型のdの線型変換したもの, 分析IIIでは6803語の名詞の反応語をもとにした一致度係数, 分析IVでは6245語の動詞の反応語をもとにした一致度係数を用いた。分析Vの目的は以上の4分析で抽出した成分の関係を調べるもので, Johnson (1967) のMax法が用いられた。分析1の結果はTABLE2に示した。成分I-1は/n/と/r/, I-2は/r/と/o/, I-3は/a/と/k/, I-4は促音, I-5は/o/, I-6は/a/, I-7は/i/, I-8は/p/, I-9は/u/, I-10は/b/, I-11は/k/, I-12は/t/に関連していた。分析IIの結果はTABLE3に示した。成分II-1はマイナスの評価, II-2, II-4はダイナミズム, II-3は疲労, に関連していた。分析IIIの結果はTABLE4に示した。成分III-1は音もしくは聴覚, III-2は歩行, III-3は水, III-4は表情, III-5は不安, III-6は液体, III-7は焦りに関連していた。分析IVの結果はTABLE5に示した。成分IV-1は活動性, IV-2は不安, IV-3は表情, IV-4は音もしくは運動, IV-5はマイナスの評価もしくは疲労, IV-6は液体, IV-7歩行, IV-8は落着きのなさに関連していた。分析Vの結果はTABLE6とFIG. 1に示した。音素成分と意味成分の関係として, I-5 (/o/) とIV-8 (落着きのなさ), I-7(/i/)とIII-7 (焦り), I-10 (/b/) とIII-6 (液体) が最も頑健なものであった。さらに, I-8 (/p/) とIII-2 (活動性), I-9 (/u/) とIII-5 (不安) 及びIII-6 (液体), I-12 (/t/) とIII-2 (歩行) 及びIV-8 (落着きのなさ) も有意な相関があった。日本語の擬音語・擬態語の限定のもとで, 音象徴の仮説が確かめられた。/o/が落着きのなさを, /i/が焦りを, /b/が液体を象徴するという発見は新しいものでありその他にも多くの関係があった。また, SD法によってもたらされた成分は狭い意味の領域しかもたらさず, 意味の多くの側面を調べるには不十分であり, 擬音語と擬態語の区別は見出されなかった。