著者
山口 利勝
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.422-431, 1998-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22

本研究は, Schlesinger & Meadow (1972) に示唆を得て, 健聴者の世界との葛藤並びにデフ・アイデンティティが聴覚障害学生の心理社会的発達に与える影響について実証的な検討を行った。健聴者の世界との葛藤尺度 (山口, 1997), デフ・アイデンティティ尺度 (山口, 1997), エリクソン心理社会的段階目録検査 (中西・佐方, 1993) からなる質問紙を141名の聴覚障害学生に実施し, 健聴者の世界との葛藤が心理社会的発達に与える影響とデフ・アイデンティティが心理社会的発達に与える影響を重回帰分析により検討した。その結果, 対象全体では,(1) 健聴者の世界との葛藤が心理社会的発達に多様かつネガティブな影響を与えており, 障害の受容がアイデンティティ形成につながること,(2) デフ・アイデンティティが心理社会的発達に影響を与えており, 統合アイデンティティ'がアイデンティティ形成にポジティブな影響を与えていること, などが明らかになった。教育歴では,(1) ろう学校群においては, 健聴者の世界との葛藤が心理社会的発達に影響を与えていないが, デフ・アイデンティティが心理社会的発達に影響を与えていること,(2) 学校変遷群と普通学校群においては, デフ・アイデンティティが心理社会的発達に影響を与えていないが, 健聴者の世界との葛藤が心理社会的発達にネガティブな影響を与えていること, などが明らかになった。なお, 健聴者の世界との葛藤, デフ・アイデンティティ, 心理社会的発達の聴覚障害変数 (聴覚障害を被った時期, 聴力損失の程度, 教育歴, 発声の伝達度, 両親が聴覚障害者か否か) による差については, 健聴者の世界との葛藤とデフ・アイデンティティにおいては教育歴で, 心理社会的発達においては発声の伝達度で差がみられた。
著者
丹藤 進
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.29-37, 1994-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
28

The purpose of this study was to deter mine degrees of sibling resemblance from the results of longitudinal testing of intelligence and school achievement. Research data was obtained from ten elementary schools and one junior high school, all in remote areas. Yearly scores from longitudinal tests on the same children served as data for this study. Using the above data we were able to compare siblings of the same age bracket. The main results were as follows:1) Sibling resemblance in school achievement differed according to age;2) Intra-class rs between siblings tended to be higher for contiguous siblings than for noncontiguous siblings;3) Sibling resemblance tended to be greater in verbal IQ than in IQ Performance. These findings indicate that nonshared environmental factors lead to developmental differences between siblings.
著者
細田 絢 田嶌 誠一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.309-323, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
50
被引用文献数
15 5

本研究の目的は中学生の自己肯定感, 他者肯定感と周囲からのソーシャルサポートとの関連を検討することであった。ソーシャルサポート内容として, 直接的にストレスには焦点を当てないが結果的に援助的な効果をもたらす共行動的サポートに焦点を当て, サポート源は父親, 母親, 友人, 教師の4者とし, 中学生305名を対象に調査を行った。サポート源とサポート内容の2点から検討した結果 (1) 自他への肯定感の高い中学生の方が両親からのサポート得点が高いこと, (2) 友人からのサポートは自己肯定感に関連していること, (3) 教師からの道具的サポートにおいて, 男子と女子では自己肯定感の高さによってサポート量の知覚に差があること, が明らかになった。全体として両親からのサポートの重要性と, サポート関係の性差が確認された。また教師以外のサポート源において自他への肯定感の高い中学生の方が共行動的サポートの得点が高く, 親子間や友人間での共行動的サポートの有効性が示された。加えて新たに, 父親による間接的なサポートの効果が示唆された。
著者
外山 美樹 長峯 聖人 湯 立 三和 秀平 黒住 嶺 相川 充
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.477-488, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
40
被引用文献数
8 11

本研究の目的は,制御適合の観点から,制御焦点が学業パフォーマンスに及ぼす影響について検討することであった。具体的には,制御焦点(促進焦点と防止焦点)と学習方略(熱望方略と警戒方略)が適合した時に,高い学業パフォーマンスを収めるのかどうかを検討した。分析対象者は大学生100名であった。学習方略は,マクロ理解方略,ミクロ理解方略,拡散学習方略,そして,暗記方略を取りあげ,学業パフォーマンスは,授業の定期試験(空所補充型テスト,記述式テスト)の成績をその指標として用いた。本研究の結果より,促進焦点の傾向が高い人と防止焦点の傾向が高い人のどちらが優れた学業成績を示すのかではなく,高い学業成績につながる目標の追求の仕方が,両者では異なることが明らかとなった。促進焦点の傾向が高い人は,マクロ理解方略を多く使用している場合に,記述式テストにおいて高い学業成績を収めていた。一方,防止焦点の傾向が高い人は,ミクロ理解方略を多く使用している場合に,空所補充型テストにおいて高い学業成績を収めていた。制御適合に関する一連の研究(Higgins, 2008)で示されている通り,促進焦点の傾向が高い人は熱望方略を使用する時に,かたや防止焦点の傾向が高い人は,警戒方略を使用する時に制御適合が生じることによって,それらに合致したパフォーマンスが向上すると考えられた。
著者
桜井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.286-295, 1984-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
21
被引用文献数
6

Deci (1975) proposed a “Cognitive Evaluation Theory” after examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic task motivation. The author is inclined to criticize two main points in such theory i. e. the causal relationship between factors and the feeling of competence; while discussing other things, the author at last proposed a “Self Evaluative Motivation (SEM) Model” as a new human motivation theory. The framework of this model was presented in TABLE 1. The features: (1) the factors of cognitive, feeling, motivation, and behavior levels were hypothesized and (2) they were found to have the causal relationship. The purpose of this study was to examine the SEM model using the method of self-report (Experiment 1) and behavior in a free task choice (Experiment 2).In the first experiment, the self-reports of language reward group and the token reward group were compared. The results indicated that the hypotheses of the SEM model were supported except the factor of a need for self-determination on the motivation level. In the second experiment, the factors of behavior level on the SEM model by the method of free task choice supported the hypotheses of the factors on behavior level. Therefore, the two experiments supported the SEM model. Finally, some problems of the SEM model were discussed.
著者
松山 康成 真田 穣人 栗原 慎二
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1-9, 2021-03-30 (Released:2021-05-01)
参考文献数
32
被引用文献数
8

本研究の目的は,小学生高学年を対象とした友人同士の対立場面における介入行動意図尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。小学5, 6年生の202名(男子児童93名,女子児童109名)を対象に,介入行動意図,向社会的行動,向社会的目標,自己指向的反応,被影響性に関する尺度を含む質問紙調査を実施した。探索的因子分析と確認的因子分析の結果,介入行動意図尺度は援助意図,傍観意図,非介入意図,介入意図の4因子21項目から構成された。介入行動意図尺度は一定のα係数と再検査信頼性係数を示し,十分な内的一貫性が認められた。また,同時に測定した外的基準との関連を示したことから,一定の信頼性と妥当性を有すると考えられた。尺度得点については,学年差が認められ,援助意図は小学5年生の得点が小学6年生の得点よりも高く,傍観意図と非介入意図は小学6年生の得点が小学5年生の得点よりも高いことが確認された。また傍観意図において性差が認められ,男子よりも女子の方が高いことが確認された。最後に本尺度の利用可能性について考察されるとともに,今後の介入行動研究に関して議論された。
著者
野崎 秀正
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.141-153, 2003-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
36
被引用文献数
8 6

独力では解決できない課題を解くために他者に助言を求める行為は, 生徒の学習過程において重要な学習方略にあたり, 学業的援助要請と呼ばれる。本研究では, 学業的援助要請への認知傾向である態度を媒介要因としたRyan & Pintrich (1997) の「動機づけ-態度-要請行動」モデルについて, 彼らのモデルで想定されていた能力感への脅威以外の抑制態度を解明し, さらに要請形態の区別を行うことによりモデルを精緻化した。また, 友人と教師という要請対象者別にモデルを構築し, これらを比較検討した。その結果, 熟達目標の高さは, 無効感を媒介して, 適応的要請に影響していた。一方, 遂行目標, 学業コンピテンスは, 能力感への脅威を媒介して, 依存的要請や要請回避に影響していた。しかし, 遂行目標に関しては, 自律性を媒介することにより適応的要請を促進するという側面があることも明らかになった。対教師群と対友人群のモデルでは, 特にコンピテンスの認知の影響に違いがみられた。
著者
山本 愛子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.42-51, 1995-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
28
被引用文献数
6 3

The present study was designed to investigate developmental changes of self-regulation in preschool children. Seventy-five nursery school children of 4, 5, 6-year-old (41 boys and 34 girls) were required to answer a set of questions as to how they would feel and behave when they were provoked by their peers. The variables manipulated were the subjects' familiarity with their peers and uncomfortability of the conflicting situations. The results indicated that the quality of self-assertive strategy changes with age from egoistic responses to social responses. It was also found that the development of the self-assertive strategy chosen varied according to the subjects' famiriarity with their peers and the uncomfortability of the conflicting situations. Implications of these findings were discussed in terms of the development of social cognition.
著者
工藤,与志文
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, 1997-03-30

College students numbering 206 were examined on their beliefs of the movement of sunflowers, and 112 students who had the false belief participated also in the experiment. The subjects were asked to read the science text which explained the facts that contradicted their beliefs in the following three conditions : (a) the photosynthetic rule was instructed, and the contradictory facts were referred to as examples of the rule ; (b) the photosynthetic rule was instructed, but the facts were referred independently from the rule ; and (c) only the facts were presented. The subjects were then put to some reading comprehension tests. The frequencies in the occurrence of belief-dependent misreading (BDM) on the tests were analysed. The following results were obtained : (1) There were less BDMs in the condition of the rule and example than in the other two conditions ; (2) there were no less BDMs in the condition of the rule and facts than in the condition of the facts only. There findings suggested that the instruction in the relation of the rule and example was useful in order to avoid BDM.
著者
西田 裕紀子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.433-443, 2000-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
22 34

本研究の目的は, 幅広い年代 (25~65歳) の成人女性の多様なライフスタイルについて, 複数の構成要素からなる心理的well-beingとの関連から検討することであった。まず研究1では, 成人期全般に適用でき, 理論的背景が確認されているRyffの概念に基づき, 人格的成長, 人生における目的, 自律性, 自己受容, 環境制御力, 積極的な他者関係の6次元を有する心理的well-being尺度が作成され, 6次元の信頼性・妥当性が確認された。また, 年代によって心理的well-beingの様相が異なり, 次元によっては発達的に変化することが示された。次に研究2では, ライフスタイル要因と心理的well-being各次元との関連について検討した。その主な結果は以下の通りである。(1) 年代と就労の有無, 社会活動参加度を独立変数, 心理的well-being各次元を従属変数とする分散分析を行った結果, 就労, 社会活動という家庭外での役割は, 成人女性の心理的well-beingとそれぞれ異なった形で関連していることが示された。特にこれまで家庭外役割としてほとんど焦点が当てられてこなかった社会活動が, 就労とは異なった形で心理的well-beingと強く関連していたことから, 成人女性の発達的特徴を考える際に, 就労以外の様々な活動にも目を向けることの必要性が示唆された。(2) 年代別に, 妻, 母親, 就労者, 活動者の各役割達成感と心理的well-being各次元との偏相関係数を検討した結果, 長期にわたる成人期においては, 各年代に応じた役割を獲得し, それによる達成感を得ることが心理的well-beingと強く関連することが明らかになった。この結果から, それぞれの役割の質的側面が成人女性のライフサイクルの中で異なった重要性を持つことが示唆された。
著者
木村 晴
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.115-126, 2004-06-30

不快な思考の抑制を試みるとかえって関連する思考の侵入が増加し,不快感情が高まる抑制の逆説的効果が報告されている。本研究では,日常的な事象の抑制が侵入思考,感情,認知評価に及ぼす影響を検討した。また,このような逆説的効果を低減するために,抑制時に他に注意を集める代替思考方略の有用性を検討した。研究1では,過去の苛立った出来事を抑制する際に,代替思考を持たない単純抑制群は,かえって関連する思考を増加させていたが,代替思考を持つ他3つの群では,そのような思考の増加は見られなかった。研究2では,落ち込んだ出来事の抑制において,異なる内容の代替思考による効果の違いと,抑制後の思考増加(リバウンド効果)の有無について検討した。ポジティブな代替思考を与えられた群では,単純抑制群に比べて,抑制中の思考数や主観的侵入思考頻度が低減していた。しかし,ネガティブな代替思考を与えられた群では,低減が見られなかった。また,ネガティブな代替思考を与えられた群では,単純抑制群と同程度に高い不快感情を報告していた。代替思考を用いた全ての群において,抑制後のリバウンド効果は示されず,代替思考の使用に伴う弊害は見られなかった。よって,代替思考は逆説的効果を防ぎ効果的な抑制を促すが,その思考内容に注意を払う必要があると考えられた。
著者
荒井 龍弥 宇野 忍 工藤 与志文 白井 秀明
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.230-239, 2001-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13

本研究では, 縮小過剰型の誤概念として小学生の動物概念を取り上げ, この誤概念を科学的な概念に修正するための境界的事例群を用いた教授法の効果を検討した。本研究の中心的仮説は, 境界的事例群を用いた教授により縮小過剰型誤概念が修正されるであろうというものであり, この仮説を検証するために, 3つの実験が行われた。実験はいずれも, 小学校5年生を対象とした理科の授業として行われ, 事前テスト, 自作のビデオ教材の視聴と視聴後の話し合いによる教授, 事後テストという3つのセッションで構成された。境界的事例群として水中のプランクトン事例群及び貝事例群を単独で用い, 食べる, 動く, 排泄するシーンを示すビデオ教材の視聴を行った第1, 第3実験では, 概念の組みかえを示す結果は得られなかった。境界的事例としてプランクトン事例と貝事例群を用いたビデオ教材の視聴を行った第2実験では, すべての課題の正答率が大幅に増加し, 仮説を支持する結果を得た。これらの結果から, 縮小過剰型誤概念の修正には, 2種の境界的事例群の対提示が有効であることが確認された。
著者
清道 亜都子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.361-371, 2010 (Released:2012-03-07)
参考文献数
28
被引用文献数
8 4

本研究の目的は, 高校生に対する意見文作成指導において, 意見文の「型」(文章の構成及び要素)を提示することの効果を検討することである。高校2年生59名(実験群29名, 対照群30名)が, 教科書教材を読んで意見文を書く際, 実験群には, 意見文の「型」や例文を示して, 書く練習をさせた。その結果, 事後テストでは, 実験群は対照群より文字数が多く, 意見文の要素を満たした文章を書き, 内容の評価も高まった。さらに, 介入1ヶ月後においても効果が確認できた。また, 対照群にも時期をずらして同一の介入指導を行ったところ, 同様の効果が現れた。これらの結果から, 意見文作成指導の際, 意見文の「型」を提示することにより, 高校生の書く文章は量的及び質的に充実したものになることが示された。
著者
本郷 一夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.46-53, 1982-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
17
被引用文献数
1

The purpose of the present study was to test the predictions derived from Semantic Feature Hypothesis concerning the acquisition of spatial adjective pairs and to discuss the formational processes of semantic space.The subjects were 30 children attending a nursery school in Sendai. According to their ages, they were divided into three groups of 10 each. The mean age for each group was 4; 0, 5; 1, 6; 1, respectively.Two experiments were conducted. In experiment 1, the Ss were presented with 10 spatial adjectives and asked to give their opposites. The 10 adjectives used were big/small, long/short, tall/short, thick/ thin, and wide/narrow. In experiment 2, the Ss were shown a set of four wooden blocks and asked to choose the-one, where the blank was filled with one of the following 6 words: longest/shortest, tallest/shortest, thickest/thinnest.The main results were as follows.(1) The children were aware that a word belonged to a particular semantic space before they had learned the full meaning of the word.(2) “Big/small dimension” was acquired prior to other dimensions. When the children did not know well more restricted adjectives, they tended to substitute “big/small” for them.(3) Unmarked words were acquired no later than marked words.(4) The children of 4 years old tended to regard marked words as complementary sets of unmarked words and the children of 5 years old tended to regard them as being below the average in the relevant dimensions.
著者
落合 良行
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.162-170, 1974-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
23

青年期の基本的感情であるといわれている孤独感について, その構造をQ技法を用いて検討した。対象は, 高校生であった。まず, 青年が現実にいだいている孤独感の実態を知るために, オリジナルなSCTをつくり実施した。その結果をもとに, 孤独感の構造についての仮説をたて, Q技法による検証を行なった。その結果, 互いに独立な少なくとも2次元が, 孤独感の構造であることがわかった。その2次元とは,(1) 人間同士共感しあえると感じ (考え) ているか否か。(2) 人間 (自己) の個別性に気づいているか否か, である。次に, 孤独感の類型化の方法について検討を行なったところ, 以上の2次元の組合せによる類型化が, 適当であることがわかった。つまり, それにより孤独感を一応 4類型に分けることができた。更に, 類型からみられる現代青年の特徴を検討したところ, 一般にいわれている「現代青年は, 感傷的な孤独感をもつことはあっても自己の存在を自覚するという意味での孤独感を味わうことはごく少ない」ということには, 今後再吟味の余地があることが示された。
著者
水野 将樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.170-185, 2004-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
11 2

青年の友人関係について扱った先行研究の多くはアイデンティティ理論などの視点に基づくトップダウン的なものであり, 主体としての青年の認識が扱われることはなかった。そこで, 本研究では既存の理論に基づく仮説検証型研究ではなく, あくまで主体である青年自身から得たデータに基づいて知見を得る質的研究, その中でも方法論が整っているグラウンデッド・セオリー・アプローチを採用して青年が信頼できる友人との関係をどのように捉えているかというリサーチクエスチョンの下, 調査・分析を行った。その際, 「信頼」を鍵概念に, 「友人」は親友などに限定し, 実情に合わせて「青年」の範囲を 18~30歳とするなどの工夫をした。学生, フリーター, 社会人の男女19名に対し半構造化面接を実施し, 得られた発話データをカテゴリーに分類することを通じて分析した。その結果, 友人との信頼関係の構造・形成・意味づけについて, 6つの仮説的知見を得て, それに基づいて青年の友人との信頼関係認識についての仮説モデルを生成した。研究全体としては, 青年は友人との信頼関係を「自分」という存在と不可分に捉えていること, その信頼関係は「安心」を中心とした関係であること, などの示唆が得られた。
著者
竹下 浩 藤田 紀勝
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.265-277, 2019-12-30 (Released:2020-01-24)
参考文献数
26
被引用文献数
1 4

近年の精神障害者の就労ニーズ急増に伴い,就労移行支援員の養成が課題となっている。しかし,医療・福祉の支援から職場での支援への「橋渡し期」特有の利用者に必要な就労スキルや,それらのスキル習得を支援する介入方略については未解明である。そこで本研究は,就労移行支援事業所の支援員(n=18)から得られたデータを質的に分析することで,利用者が就労スキルを習得していくプロセスと,支援員がそれを支援するプロセスとを統合的に明らかにする。分析の結果,55概念,4コアカテゴリー(「作業ギャップ発見→やり方を教える」「対人ギャップ発見→他者分析→付き添いながら経験させる」「認知ギャップ発見→自己分析→受けつつの技掛け」「自立発見→他者との連携」),19カテゴリー,2サブカテゴリーが生成された。「就労移行支援員による利用者のスキル発達支援過程」は,「就労スキルの熟練者が,就労に必要なスキルを順番に訓練していく」という上から下への一方向的な支援ではなく,「支援員と利用者が相互作用を続ける結果,利用者は就労スキル,支援員は支援スキルが発達していく」という互恵・循環的なプロセスを示していた。利用者の異なるスキル発達のためには,異なる支援方略が必要である。支援員の心理的要因が支援スキル発達に影響している。
著者
江川 亮
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.28-40,63, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13

1都市と農村の児童群 (各群とも小学校4年から中学校3年まで各学年25名) に鈴木治太郎氏の「実際的個別的知能測定法」を実施しその両群の比較を学年別に得点でみると, いずれの学年も都市群が優れ, 農村群が劣るのを明らかに認めることができる。この得点という全体的な表示での比較差異は, いわば量的な差異といえる。2項目の通過・非通過を検討することによつて両群各々の心的な機能を明らかにすることから, この検査での上の量的な差異の妥当性を吟味しようとするのが本研究の目的である。量に対する質の検討ということができよう。手続きは両群から39点から57点の間に分布する得点者を抽出し, 得点間隔3点で7段階に区分し, 群別段階別に標本を集めた. 検討の結果, 各段階ともいずれの項目, あるいはいずれの項目類型にも両群間に明らかな差異が認められず, また両群の項目通過の相関もきわめて高い値を示した。なお通過率の上昇, 相関傾向等によつてこの検査の両群における内的整合度の高いことを知ることができた。最終通過項目が同一の標本で集めた場合も結果は同様であつた。3上の結果より各群の特定の心的な機能の差異は, a項目群, b項目群と名付けた二類型にやや見出されるといえるにすぎなく, 明確な差異傾向を示すことができなかつた。4したがつてこめ検査では, 得点をいわゆる知能の全体的な表示とするとき, その同一水準は心的な機能のそれをも規定できるということを推論でき, 得点の低位は, 量とともに質のそれをも記述しうることを明らかにすることができる。5以上から, この検査は問題とその方法の見本が都市に偏することなく抽出されていて環境条件の相異する両児童群の共有の尺度としての信頼性をもつといえる。この見本性についての不安は標準化が都市中心であることに帰せられ, 多くの検査と同様にこの検査について注意を要する点として指摘されていた。6都市農村の分類は, 二つの環境類型化であつて, それら各々を構成する特殊的因子を捨象したいわば平均的な類型化である。著者はその特殊的因子, すなわちそれぞれの地域社会における階層類型 (29類型) を見出し, それらに帰属する児童がいかなる精神発達の段階秩序をもつか, あるいはまたそれらの段階秩序が都市から農村への移行的連続の過渡形態としていかなる類型をその間に挿入しうるかという検討を通じ, それら知能の差を生ぜしめる環境的要因の考察を試みようとした。そして「生活の差を, その生産手段の所有状態, 労働力の存在形態の差異」 (6) でとらえ, それにGoodenough (2) の分類を加味した階層類型と, この検査で測定される知能はきわめて密接に (F0=6.72) 関係するのを見出すことができた。以上における分析の詳細は省略するが, この類型化も公式的形式的類型であるというそしりをまぬかれえない。量を規定する質, その質を制約している枠組すなわち環境的要因を見出すという一連の研究がなされなければ, なんら教育の実践に貢献するものになりえないと思う。その直接的実質的な環境要因を明らかにすること, そこに心理学における階層化の目的が存すると思うが, 隣接諸科学の知見の組識的な協力をえて心理学的に抽象される環境類型が把握されなければならないと思う。
著者
村山 航
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.265-279, 2006-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
127
被引用文献数
2 3

学習者は, テストを受ける中で,“テスト作成者はこういったことを評価したいのだ”とその評価基準・意図を推察し, それにあわせて自らの学習行動を変化させることがある。本稿では, そのような現象を“テストへの適応”と呼び, 関連領域を包括的に概観しながら,1) 実証的にどのような形で支持されているのか,2) どのような教育実践上の問題点を持っているのか,3) その問題を解決するための視点として何が考えられるか, の3点に関して検討を行った。実証的な支持に関しては, テスト期待効果研究と学習方略研究を取り上げ, それらを統合的に捉える仮説を提出した。問題点としては“学習行動の危機”と“妥当性の危機”という2点を指摘した。最後にこれらの問題を解決するために, テストワイズネス・テストスキルの個人差の排除, 新しい評価 (alternative assessment) の導入, インフォームドアセスメント (informed assessment), 妥当性概念の拡張, 表面的妥当性への意識, という5つの視点を提出した。
著者
三木 安正 波多野 誼余夫 久原 恵子 井上 早苗 江口 恵子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-11, 1964-03

以上のべたように,われわれは双生児の対人関係の発達をさまざまな面から検討してきた。その主な結果は,以下の点に要約されよう。(1)親との関係双生児は,対の相手を持っているという特殊な条件のために,一般児と比較した時に,親との関係において差があるのではないか,すなわち,双生児は相手に対して依存的であるために,親からの独立は一般児におけるほど抵抗がなく,早くすすむのではないか,あるいは反対に,相互に依存的であることは親に対しても依存傾向が汎化し,一般児より親からの独立がおくれるのではないかという予想をもっていたのであるが,これらは,いずれも否定され,双生児と一般児の間に有意な差がほとんど認められなかった。これに対しては,母親に対する依存は対の相手に対するそれとは,質的に異なったものではないかという理由が考えられる。(2)友だちとの関係双生児の対の相手が,親友の役割りを果たしてしまうことから,双生児の友だち関係は一般児の場合に比べ発表しにくいのではないか,という予想をもっていた。結果は予想どおりで,双生児は友だちに依存することが少なく,かつまた友だちそのものを求めることが弱いようであった。相手に強く依存しているときにはとくにこの傾向が著しい。(3)双生児の自主的傾向.双生児の対の相手の存在が双生児の自主的僚向の発達を妨げてしまうことがあるのではないか,という予想も,ほぼ支持された。すたわち,一般児にくらべ双生児,しかも相手とのむすびつきが強い双生児ほど,自分で決める回数が少なく,他人の決定に従うことが多いことが見出された。第I報(三木安正ほか,1963)にも述べたように,われわれは対人関係の発達は,依存から自立へとすすむという従来の考え方に加えて,その過程として,依存性の発達をとおしての自立ということを考えてきたわけである。すなわち,人間は,赤ん坊時代の,まったく依存している状態から,成長するにつれて自立性を獲得していくのであるが,それは,依存傾向がしだいに禁止されるというのではなく,依存のしかたに変化がおきて依存の質が変っていくというプロセスをたどっていくものと考えているのである。従来,自立性は自分の意志を貫きとおせること,自分ひとりでものごとを処理できること,ひとりでいられること,などというその最終的な現象面が強調されてきた(たとえばHeathers,1955)。そのために,ひとりでおくことや依存を禁止することが自立性の確立のために有益である,と考えられていたようである。けれどもわれわれは,自立性とはいろいろなものに、じょうずに依存し,しっかりした依存構造のうえにたった自己の確立であるという見方が必要であり,かつまたこのような見方こそが,教育の場において有効であると考えている。すなわち,特定の対象への中心化から脱して,さまざまなものに依存しているという状態が自立性の発達する可能性を与えると考えているわけである。この点に関連して,今回の研究により示唆されたことを次に述べよう。