著者
中山 雅雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.35_1, 2016

<p> 担任制で授業を行う小学校には運動を苦手とする教員もおり、特に手でボールを扱うスポーツに比べ、足でボールを扱うサッカーは教えにくい運動の一つです。一方で、サッカーはルールが比較的簡単で、特別な道具を必要としない手軽さがあり、ゲームそのものにおもしろさを感じられるスポーツでもあります。</p><p> JFAが蓄積してきた経験や知見に基づき、教員の方々にサッカーの楽しさや価値を理解してもらいサッカーの授業の進め方を提案できないかを模索しながら、これまでに約70回、約1800名の教員を対象にした研修会を行っています。また、教員が『すぐに使える教科書』というコンセプトで作成した書籍を発刊しました。</p><p> 子どもたちがサッカーそのものを楽しむ、サッカーの良さを感じることができる授業が展開できるように、1時間ごとの指導案を例示してあります。単元が進むにつれて、子どもたちが向上していくようにスモールステップの展開にしてあり、実践した教員が「これならできそうだ」「ほかの体育でも活用できそうだ」というような場の設定や声かけ、グルーピング、苦手・得意な子への対処などの指導法にも触れています。</p>
著者
湊 柊一郎 芳地 泰幸 岩浅 巧 水野 基樹
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.102_1, 2017

<p> 従来の組織研究においては、リーダーとは唯一無二の存在であり、そのリーダーの資質や行動特性などから、フォロワーに対して有効なリーダーシップの研究が展開・蓄積されてきた。しかし、スポーツチームを対象とした小川ら(2007)の報告によると、「個々の選手も指導者と同様の価値ある情報を持つようになったため、伝統的なトップダウン型のチームでは成果をあげにくく、新たなチームの形が求められている」と報告されている。つまり、メンバー一人ひとりがチームを牽引することの重要性が高まっている。このような中、従前のリーダーシップ研究とは一線を画す「シェアド・リーダーシップ」という概念が提唱され、注目を浴びている。石川(2013)はシェアド・リーダーシップの度合いが高いチームとは、リーダーを含むチームメンバーそれぞれが、チーム目標達成に向けて必要なリーダーシップを双方向的に発揮している状態であるとしている。以上を踏まえ本研究では、大学野球組織を対象に、シェアド・リーダーシップを醸成するための組織風土と従来のリーダー(監督)の役割を(競技レベルの差異を含め)質問紙調査による量的分析から検討することを目的とする。</p>
著者
梅林 薫
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.21_1, 2016

<p> 文部科学省が作成したスポーツ基本法に関わるリーフレットの表紙には「スポーツの力で日本を元気に!」とある。そして基本法前文には「スポーツは、世界共通の人類の文化である」という言葉にはじまり、「スポーツは、心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵養等のために」と続き、私たちが生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む上で不可欠なものであると記述されている。スポーツが心と体に何らかの影響を及ぼすことはアスリートのみならず多くの人が実感している。スポーツ界では心技体という言葉もよく耳にする。昨年現役を引退した澤穂希は「心と体が一致してトップレベルで戦うことが難しいと感じてきたから」と引退理由を説明した。</p><p> 本シンポジウムは「こころとからだをつなぐスポーツ」と題して3人の演者から、最新のエビデンスを交えた基本から最先端の話題や、女子テニス界トップアスリートの知られざる心と体の習慣などのご紹介など、それぞれの切り口でご講演を頂く。今後、より一層スポーツの力で心も体も、多くの人を元気に、私たちが取り組んでいくべき課題のヒントになるような企画としたい。</p>
著者
吉田 毅 工藤 保子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.36_1, 2019

<p> 東京2020オリンピック・パラリンピック(オリ・パラ)の開催を契機として、さまざまなレガシーの創造が模索されている。学校教育との関わりから言えば、オリ・パラ教育が多様なアクターによって推し進められている。</p><p> 例えば、東京都教育委員会は、育成すべき人間像、教育のレガシーを定め、基本的枠組みとして4つのテーマと、4つのアクションを組み合わせた多様な取り組みから、重点的に育成すべき5つの資質を掲げ、教育を展開している。</p><p> 一方で、ほぼ全ての幼稚園、学校を網羅することもあり、多様な価値観を含み込むオリ・パラについて、一方的、かつ固定化された価値の押しつけにつながるのではないかという懸念もある。また、そのような教育が行われる社会的意義については十分議論されているとは言いがたい。そこで、本シンポジウムでは、オリ・パラ教育の現状について実践例を検討しながら、その社会的意義や課題、向かうべき方向性について体育社会学の観点から議論したい。</p>
著者
井上 裕美子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.164_2, 2019

<p> バランス能力の維持が、高齢者のQOLを高めるためには、必要とされている。バランス能力を維持向上するためには、まずバランス能力を計測し、現状の能力を把握して貰うことと、体験者のバランス能力に見合ったトレーニングが行えるシステムが必要であると考えた。また、トレーニングを継続するためには、システムを手軽に利用して貰うことも必要である。本研究では、簡易に使用可能なシステムとして、加速度センサでバランス能力を測定する「測定モード」と、体験者のバランス能力に適したトレーニングを提示する「トレーニングモード」の2つのモードを作成した。本システムの構成は、シングルボードコンピュータ(BITalino、Plux)と加速度センサ、制御用PC、モニタ、スピーカとした。体験者の額部分にヘアバンドで装着した加速度センサで、身体の揺れを計測し、その値を基準とし、5段階のバランス能力の判定を行った。バランストレーニングでは、不安定な地面を再現する体幹トレーニングマット(CORE MOVE、 ウーマンジャパン)を用いてバランス能力に応じたトレーニングを提示し、バランス能力の向上を目指した。</p>
著者
菱田 慶文
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.330_3, 2019

<p> 本研究は、ブラジリアン柔術(以下、BJJ)のグローバリゼーションの実態を解明するものである。BJJは1993年にアメリカで始まったUFCでホイス・グレーシーが活躍したことで世界中に広まるようになった。当初は世界の総合格闘家たちが競技力向上のためにBJJの技術を取り入れていたが、のちにその用途は多方面に広がっていった。例えば、UAEのアブダビ首長国では学校体育として採り入れられているし、日本でも「デカセギ」のコミュニティ形成やフィットネスとして行われている。一方、90年代にはBJJの全伯組織及び世界組織の形成が進み、それまでブラジル国内で道場毎に伝承されていたBJJは競技化によって統一されることになる。</p><p> 本研究では、リオデジャネイロにおける貧困層に普及されたスプービオ柔術、サンパウロにおける柔道家によるBJJの普及、ファベイラ(貧民窟)におけるソーシャルレスキュー(ボランティア)で運営されるBJJ道場、日本においては、日系ブラジル人コミュニティ、プロ総合格闘家の柔術普及などの実態を明らかにする。</p>
著者
菊政 俊平 國部 雅大
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.128_3, 2019

<p> 本研究では、試合状況に関する情報が野球の捕手におけるプレー指示場面での状況判断に及ぼす影響について検討することを目的とした。大学硬式野球部の捕手10名を対象に、ノーアウトランナー1塁での投手に対する送りバントの映像を呈示した。対象者は4条件(1回同点、9回1点ビハインド、9回同点、9回1点リード)のもと、対応するボタンを押すことによって1塁または2塁への送球に関する判断(投手への指示)を行った。全試行終了後、試合状況による判断の方略の違いについて言語報告を行った。その結果、9回1点ビハインドの状況では、1回同点の状況や9回1点リードの状況に比べて、より多く2塁への送球を指示するバイアスをかけた判断を行っていることが明らかになった。さらに、1回同点や9回1点リードの状況では誤った判断によって複数失点の可能性が高い状況(無死1,2塁)が生じるリスクを回避する傾向が強く、9回同点や9回1点ビハインドの状況ではリスク回避的な傾向を弱くしていることが示された。これらの結果から、捕手は試合状況によって意識的に異なる判断の方略を選択しており、その選択に応じて判断のバイアスが変化することが示唆された。</p>
著者
崎田 嘉寛
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.86_2, 2016

<p> 第10回オリンピック競技大会(1932、ロサンゼルス)は、国内外の情勢変化を背景に、オリンピックに対する日本社会の意識が変化する起点として位置づけられている。そのため、この変化に深く関与したメディアを視点とした先行研究が包括的に蓄積されている。ここでの主たる資料は、新聞や雑誌等の印刷メディアである。一方で、国内の映像会社やフィルムライブラリーには大会に関する動的映像(以下、映像)が散逸的に蔵置されている。また、今日では典拠を不問にすれば、インターネットを介して簡易に映像を視聴できる。そして、これらの映像からは、印刷メディアによる記述を上回る情報を導出することができよう。しかし、体育・スポーツ史研究において、映像資料を活用する方法論および史料批判に関する知見は十分に確立されているとは言い難い。そこで本研究は、第10回オリンピック競技大会に関する市販のニュース映画「キネマニュース」を対象として、フィルムの復元から映像処理過程を報告し、資料批判について試論を提示するとともに、映像内容を分析する際の歴史的視点について検討することを目的とする。</p>
著者
前田 博子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.86_2, 2018

<p> 日本の女子サッカーは、2011年のFIFAワールドカップ優勝により、急激に知名度が高まった。このような競技成績によって急激に注目が集まった結果、少し成績が落ちた現状では、試合の集客やメディアによる情報量も減少している。しかし、女性が競技としてサッカーをプレーすることは、違和感なく受け入れられるようになったと言える。</p><p> 国際的な競技活動を行うためには、国内を統一した競技組織が必要となる。現在、女子サッカーは男子サッカーと同じく、日本サッカー協会の傘下にある。しかし、国内で定期的、継続的に女子の試合が行われるようになった当初は、異なった組織が統括していた時期もある。</p><p> そこで、本研究の目的は、1979年から1989年までの10年間、日本の女子サッカーを統括する役割を担った日本女子サッカー連盟の設立と解散の経緯を明らかにすることである。</p>
著者
竹村 瑞穂
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.32_2, 2019

<p> 2020年東京オリ・パラを目前にスポーツ界が揺れている。最も大きな話題の一つは、2016年に開催されたリオ五輪で金メダル(女子800メートル)を獲得した、キャスター・セメンヤ選手をめぐる性別問題であろう。</p><p> この問題をスポーツ哲学的側面から読み解くと、異なる道徳的価値の衝突が存在することが見て取れる。スポーツにおける公平性という価値と、あるがままの生をまっとうし、自身の性自認を尊重するべきという、基本的人権にかかわる普遍的な価値である。同様に道徳的価値の衝突をめぐる問題は、義足選手の五輪参加やドーピングの検査手法をめぐる問題などにも見受けられ、スポーツ社会の在りようそのものを揺るがす事態となっている。</p><p> 本発表では、スポーツ・ジェンダー問題を端緒として、スポーツ界が直面している身体の多様性についてどう向き合うべきか言及したい。スポーツ界が許容するべき不正義とは何か、そして、スポーツ社会の再構築に向けてどのような対応が望ましいのか、スポーツ哲学的視点からの提示を試みる。</p>
著者
鍋倉 賢治 小井土 正亮 青柳 篤 岡部 正明 辻 俊樹 濵谷 奎介
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.167_1, 2016

<p> サッカーの勝敗は、選手個人のボールを扱う技術の正確性、チーム戦術に負うところが大きい。選手がボールを扱う局面に目を向けると、一瞬のスピードやジャンプ力、当たり負けしない体幹の強さが求められ、これが局面における相手との勝敗に影響する。さらに、このようなスピード、パワー、クィックネスといった運動能力を90分という長い時間、間欠的に繰り返し発揮し続けなければならない。そのため、選手の持久的な能力を客観的なデータを用いて評価することは非常に重要な意味を持つ。そこで本研究では、プロサッカー選手の持久性体力を評価し、サッカー選手に求められる持久力の基礎的知見を得ることを目的とした。対象は2016年シーズンJ1リーグ所属チームのGKを除く25名(23.7 ± 4.5歳)である。トレッドミルにおいて漸増負荷試験を行い、呼気ガスパラメーターを測定し、最大酸素摂取量(VO2max)などを評価した。全員のVO2maxの平均値は58.5 ± 4.4ml/kg/minであり、別に測定した一流大学選手よりもやや低く、他国プロサッカー選手とほぼ同等であった。今後、ゲーム中の運動量や心拍数と合わせて検討していくことで、要求される持久力などが明らかになるものと期待される。</p>
著者
牛来 千穂子 水落 文夫
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.99_3, 2017

<p> バスケットボール競技の現場では、連続してシュートを成功させると、その選手はパフォーマンスに対する自信と成功への期待を高め、「シュートタッチ」やその後のシュート時の諸動作がスムーズになることから、シュートが入りやすくなると信じられている。このhot hand現象を支持する研究報告の例として、Smith(2003)はhot hand現象の生起に関して、成功体験による正の強化が、自己効力感を高めパフォーマンスを向上させるとしている。一方で、誤認知であり単なる偶然に過ぎないという報告もみられる。しかし、実際にシュートの連続成功場面における、シューターのシュート動作と心理状態の変化を検討した研究は見当たらない。そこで本研究では、hot hand現象の生起、及びその際のシュート動作と心理状態との関係について、男子大学生バスケットボール選手らに行ったインタビューデータの質的分析と、3ポイントシュートを課題とする連続シュート実験によって検討した。連続シュート実験では、二次元気分尺度(TDMS)を用いてhot hand現象が生起している際の感情状態を経時的に評価し、シュート動作を撮影した動画を用いて3次元動作解析を行った。</p>