著者
高橋 正行 長見 真
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.258_1, 2018

<p> 短縄跳び運動は、学習指導要領の体つくり領域に例示されていることから、小学校の体育授業で盛んに取り組まれている運動である。体育を専門としない教員が多い小学校では、短縄跳び運動を指導する際、児童の意欲を高めるために「縄跳びカード」がよく用いられる。使用されているカードには多様な技が掲載されているものの、縄跳びの技を系統的に身に付けるようになっていないと推察される。したがって子供たちは体育の授業で前回し跳びの学習の後、前回し交差跳び、次は二重跳び…など、技の系統に無頓着に取り組みがちで、効果的に技を身に付ける学習になっていないことが考えられる。本研究では、短縄跳びの技の体系を先行研究の成果から整理した上で、小学4年生を対象に、多様な技の中から背面交差跳びを取り上げ、運動類縁性に基づいて指導した実践について報告する。指導後、21名中11名が1回以上背面交差跳びを成功させ、そのうち5名は2~3回連続で跳ぶことができた。運動類縁性に基づいた指導をすることで、背面交差跳びという児童にとってなじみのなかった技でも習得可能であることが示唆された。</p>
著者
高田 康史 中尾 道子 生関 文翔
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.264_2, 2017

<p> 本研究では、ヒップホップダンスをリズム系ダンスの素材として捉えその特徴を明らかにすることで、この領域の指導方法に関する基礎資料を得ることを目的とする。中村(2016)は、創作ダンスを「モダンダンスを元に考案された教育教材」、現代的なリズムのダンスを「ヒップホップなどを元に考案された教育教材」、細川(2014)は「指導法を検討するにあたっては、やはりヒップホップダンス等リズム系のダンスについてその歴史や文化、踊りの意味を我々はもっと学んでいかなければならない」と述べ、素材としてのヒップホップダンスを再考することが必要視されている。</p><p> そこで、本研究では仮説的に、ヒップホップダンスで行われている活動について、「観客」「踊り手」の様相から「振付型(踊り手-観客分離型)」「ダンスバトル・サイファー型(踊り手-観客交代型)」「DJ TIME型(総踊り型)」の3つに分類し、それぞれの活動の特徴を明らかにした。本研究では、対象を高校生ダンサーとした質問紙調査法により、その「楽しさ・特性」や「難しさ・困りごと」を検討している。詳しい結果及び考察は当日発表する。</p>
著者
鈴木 啓央
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.111_3, 2017

<p> 本研究では、熟達化の機序を検討するため、スノーボードにおける学習過程を事例的に分析した。スノーボードを初めて経験する学習者が指導のもとターンができるようになるまでの全過程をビデオにより撮影した。具体的には、全日本スキー連盟が認定するスノーボード指導員を指導者とし、2名の学習者に対して1名の指導者が指導にあたり、計4名の学習者について3日間のレッスンの様子が全て撮影された。これらの映像について、指導者による各学習段階における言語的な課題の説明と身体的なデモンストレーションを入力とし、また、学習者による発話と各課題に対する試行を出力とし、これらの入出力関係を定性的に記述することにより分析した。結果、各学習段階の入力に対して、出力には、課題を達成するために学習者が多様に動きを探索する局面と、その探索により獲得された動きが安定する局面が観察された。加えて、各学習段階に応じてこれらの2つの局面が繰り返される傾向がみられた。この結果から、熟達化は直線的に進行するのではなく、動きの探索に応じて運動がゆらぐ局面を経て突然に技能が上達するという階段状に熟達化が進行することが示唆された。</p>
著者
大坪 菜々美 海老原 修
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.88_3, 2018

<p> 国民の誰しもが経験する身体検査や体力・運動能力テストにより暗黙裡に身につけた性向は、同じく誰もが参加する運動会で強化され、さまざまな男女別の区分けに敷衍される。この区分けへの疑義をもたず、アプリオリな制度としてジェンダーの論議の蚊帳の外にある。文部科学省「体力・運動能力調査報告書」のありようが論議されるセクハラやジェンダー・バイアスの源流にあたる可能性を秘めるかもしれず、そこで、本研究では平成27年度調査報告書にテスト項目ごとの加齢に伴う男女の差の変化傾向を手掛かりにこの論議の端緒を求めた。そこには長座体前屈を除くすべての種目で、男子が女子よりも高い水準を示しているという文言が記載され、女子は男子よりも体力・運動能力が低いと判定される。体力・運動能力テストはもとよりスポーツが男女別に運営・管理される理由が再生産される。しかし、積極的な運動能力における男女の差は、全体の平均値のみで求められる調査が多く、男女の差が存在するのかは定かでない。そこで、社会的・文化的な要因によって、男女の体力・運動能力に差が生じたと仮定し、体力・運動能力調査報告書を傍証に、その要因が何であるかを検証する。</p>
著者
日比野 幹生
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.193_2, 2019

<p> 近年、オリンピックをはじめとする国際競技大会においては、多くの参加国・地域がメダル獲得のために争奪戦を繰りひろげている。このような中にあって、デンマークは小国であるにも関わらず、リオデジャネイロオリンピックでは金メダル2個、銀メダル6個、銅メダル7個、合計15個のメダルを獲得している。なぜ、デンマークはこのような成功を収めることができたのか。我が国では少子化と言った人口構造の変化からアスリートとなり得る年代の人口減少は間違いなく起こることとなる。昨今、教員の負担軽減などから運動部活動の規模縮小の方向性が打ち出された。2020年東京オリンピックに向けた競技者の育成強化では従来にはない巨額の強化費が投入されているが、大会終了後に同様の強化費が確保できるとは考えにくい。そこで、本研究では、デンマークのエリートスポーツ政策に焦点をあて、その特性を明らかにすることで、我が国の今後のエリートスポーツ政策の推進に資することを目的とした。本研究の結果、デンマークのエリートスポーツ政策の特性から、効率的・効果的な施策・事業の展開やそのための諸アクター間の連携・協働などが明らかになった。</p>
著者
林 卓史 奈良 隆章 島田 一志
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.248_2, 2019

<p> 本研究では、大学野球リーグ戦において「特徴のある投手」とはどのような投手であるかについて検討した。また、「特徴のある投手」が複数名在籍することが、継投の選択肢に与える影響を検証した。対象は、著者が投手コーチを務めたK大学野球部であり、期間は2018年リーグ戦(春季・秋季)とした。投手を①リリース速度②回転速度③投球腕(左腕)④変化球の割合について基準を設定し、4項目の内、2項目を満たす投手を、「特徴のある投手」とした。リリース速度と回転速度については、練習での投球を、トラッキングシステムを用いて計測し、140km/h、2300rpmを基準とした(林・佐野,2019)。K大学には、2018年春季リーグ戦において、4項目の内2項目以上を満たす投手が7名存在した。同リーグ戦では継投を多用し、チーム防御率はリーグ1位となった。一方、2018年秋季リーグ戦では、2項目以上を常時満たす投手は1名であり、同リーグ戦では、1名の投手に依存し、チーム防御率はリーグ5位となった。このことから、上記の4項目の内2項目を満たす「特徴のある投手」を多く育成することが、継投の選択肢を多様にすることが示唆された。</p>
著者
橋本 佐由理
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.249_3, 2017

<p>【目的】子育てをめぐる社会問題は多く、不安やストレスを抱える母親が増加している。そこで本研究では、妊娠期や育児期(乳幼児)の母親を対象に子育て支援講習会を開催し、参加者の自己イメージ認知、支援認知、育児自信感や不安感などに変容がみられるか否かを検討した。【方法】講習会は1回2時間、内容は、1回目は気質コーチング法による「自分とパートナーの性格の良さを知り子育てに活かそう」(参加者8名)、2回目は情緒安定法とあるがままの自己法による「子育ての不安やストレスと上手につき合うコツ」(参加者7名)である(分析対象は7名)。本研究は研究倫理委員会の承認と参加者の同意を得て行った。【結果と考察】2回の講習会の前後で、自己イメージや支援認知の向上、育児自信感の向上と育児不安感の低下が見られた。家族への支援認知の向上は、気質コーチング法による人の性格のコアである気質理論の知識活用によりパートナーへの認知が変容し、その良さを認識できたことによるのであろう。さらに情緒安定法とあるがままの自己法により、自己や自己を取り巻く環境への感受性が変容し、自己イメージや育児への自信や不安が良好に変化したと考えられる。</p>
著者
岩嶋 孝夫 髙橋 仁大
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.283_1, 2019

<p> テニスラケットのグリップエンド部に装着するだけで様々なデータを取得できるテニスセンサー(以下センサーとする)であるが、その信頼性についての検証はまだなされていない。そこで本研究では、ドップラー効果を応用することで打球データを測定することができるトラックマンを用いて、センサーで得られた球速データとの比較及び検討を行った。測定にあたっては、レベルの異なる男女9名にひとりあたりフォアハンド、バックハンドそれぞれ30球ずつ打球させた。</p><p> その結果、全打球におけるセンサーの球速データとトラックマンによる球速データの間に有意な相関関係が見られた。さらに打球者のレベルや球速域の違いによる相関や誤差について比較、検討しながら、センサーデータの信頼性について考察していく。</p>
著者
池田 英治 内山 治樹
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.263_3, 2019

<p> 本研究の目的は、Collective Efficacy Scale for Basketball for Offense(CESBO、Ikeda et al.、2014)と有意な関係性を持つバスケットボールにおける「パフォーマンス指標」について検討することであった。対象は、国内の大学バスケットボール部及びトップリーグに在籍するチームのうち、それぞれのカテゴリーでのリーグ戦におけるパフォーマンス指標が収集できるチーム(37チーム)及びその対象チームに所属するリーグ戦に出場機会のあった選手(414名)とした。分析に際しては、得られた個々のデータをチームの値として合計し、1つのチームを1サンプルとして捉え、計37チーム(37サンプル)のCESBO及びパフォーマンス指標を算出した。パフォーマンス指標については、単純なゲーム・スタッツの項目以外に、複雑な回帰式等を用いた詳細な客観的指標(アドバンスド・ゲーム・スタッツ)を求め、相関分析の項目として採用することとした。分析の結果、「シュートに関する項目」、「勝敗に関する項目」、「客観的で精度の高い指標」(Bray and Whaley, 2001)が、バスケットボール版CE尺度(CESBO)との強い関係性を表すパフォーマンス指標として導出された。</p>
著者
山口 拓
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.329_3, 2019

<p> 1991年の東西冷戦構造の終焉によって期待された世界平和の願いは、各地の被支援者が抱える開発課題に切り込むなど、多様な支援事例を増加させた。その際、これまで着手されなかった多くの取り組みが導入された。「スポーツを通じた開発(IDS)」もその一つである。</p><p> 現在、加速度的な成長を遂げるIDSであるが、文化要素を多く含むスポーツを通じた開発を検討するには、文化接合の諸現象を明らかにした上で支援効果の議論を重ねていく必要がある。しかし、幾つかの研究は散見されるものの、スポーツの文化接合に関する研究は極めて少ない。またUNESCOは、古典的なIDSである体育の新たな概念「質の高い体育(QPE)」を打ち出して国際的な支援を開始しているが、応用論的な議論に留まり、その世界展開を考察する際に行なわれるべき文化接合、或いは、その基盤となる文化史研究の蓄積に着手できていない。</p><p> そこで本研究では、フランス及びカンボジアの公文書図書館に所蔵されている史料を分析し、近代教育導入前期(1925年)のカンボジアに関する教科体育の文化史を叙述した。</p>
著者
岸 秀忠 前鼻 啓史 鈴木 宏哉
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.229_1, 2019

<p> 2018年に日本アンプティサッカー協会はフィジカルフィットネス測定を開始した。アンプティサッカーの競技力向上に関する研究はこれまでほとんど行われていない。したがって、本研究ではアンプティサッカー競技の日本代表選考に対する体力の影響を検討することを目的とした。対象者は日本代表候補選手の男性アンプティサッカー競技者18名とした。基本属性とする身長、体重、年齢、競技歴とともに、体力テストとして基礎的体力を測定する握力、足趾把持筋力、立ち幅跳び、メディシンボールスロー、専門的体力(クラッチ操作技能を含む)を測定する30mスプリントテスト、5m×5シャトルランテストを行った。統計解析には、日本代表に選出された選手10名(選出群)と選出されなかった選手8名(非選出群)の2群に分け対応のないt検定を行った。その結果、基本属性に関して両群の間に有意差は認められなかったが、体力テストでは、30mスプリントタイムおよび5m×5シャトルランテストにおいてのみ、選出群は非選出群よりも有意に高い値を示した(p < 0.05)。したがって、クラッチ操作技能を含む専門的体力がアンプティサッカーの日本代表選考に影響を及ぼすことが示唆された。</p>
著者
馬場 宏之
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.22_2-22_2, 2016

<p> 沢松奈生子選手は、曽祖父からのテニス一家として生まれる。祖父は、日本ランキングプレーヤーで名コーチ、両親はともにウィンブルドンで戦った経験のあるトップテニスプレーヤー。叔母は1975年ウィンブルドンダブルスに優勝された沢松和子さん。そのような環境の中でテニスを早くから始められ、父親の転勤に伴い、5才から10才までドイツで過ごし、テニスも現地の州ジュニア大会に優勝されるなどの活躍。帰国後、しばらくしての12才の頃から数年間、それまで指導されていた両親から私がテニスの指導に携わる。1988年、15才で全日本テニス選手権に初出場、初優勝という快挙を達成し、その後、海外に転戦、WTA世界最高14位までの道のりを歩む。沢松選手は、粘り強い精神力、ストロークの安定感、身体の柔軟性が強みで、日頃の練習の時から、精神的に集中すること、どんな体勢になっても安定してボールを打つことができる基本動作、怪我のしにくい柔軟性のある身体つくりの重要性を意識されてきた。トップへの道のりは、簡単なものではなく、「沢松家」というサラブレッドでありながら、そのプレッシャーも大変大きい中で、本人の地道な努力、そして色々なサポートが彼女をトップの座へ導いたものと思われる。そのあたりのことを述べたいと考えている。</p>
著者
中瀬 雄三 塩野 竜太
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.250_1, 2019

<p> 近年、日本バスケットボール協会が体罰や暴言を抑止するための施策が施行されたことや、Bリーグのクラブライセンス交付規則に「ユースチームなどの育成環境の構築」が掲げられ、育成年代の指導環境を改善しようとする動きが顕著である。しかし、指導現場における問題は看過できない。例えば、育成年代カテゴリーでの短期的成果としての勝利をあげるべく、専門競技の特定の戦術や技術のみを教え込むことで、動きの鋳型化や早期のバーンアウトにつながってしまうという問題(早期専門化)である。</p><p> プロバスケットボールクラブであるアルバルク東京のユースチームでは、上記のような問題を克服するため、ゲームを中心とした練習内容と潜在的学習を促す指導を実践している。そこで、本研究の目的は、上記指導環境におけるユース選手の競技力がいかに変容したかを発生運動学的視点から事例的に考察し、バスケットボールの育成年代を対象とした指導法に関する知見を導き出すことである。研究方法は、同チームのコーチである筆者による指導観察記録と、複数のアカデミーコーチや選手へのインタビュー記録を元に、現象学的方法である本質観取に基づき考察を実施する。</p>