著者
石村 広明
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.278_2, 2018

<p> 高等学校の運動部活動の全国大会は、多くの競技者にとって目標とするところであり、応援する人たち、ファンにとっても注目が集まるところである。そこで出場校や注目選手だけでなく毎年のように話題となるのが「イメージソング」である。それらの楽曲はアーティストが大会のために作詞・作曲するものが多く、その曲の歌詞、メロディーはまさにその大会、競技を象徴するものであると考えられる。</p><p> ORICON NEWSの「シングルCD売り上げランキング」を見ても、その大会のイメージソングとして用いられている楽曲は、大会期間を含めたその前後に最も高いランキングを示し、上位に出ることも珍しくない。つまり、それらのイメージソングは大会を象徴する曲として人々に受け入れられ、支持されているということである。つまり、その曲が聴く人々の中に「高校スポーツ観」を形成しうるともいえるだろう。</p><p>そこで本発表では、イメージソングのテキストを手掛かりとして用いて、高校スポーツとイメージソングの関係性、イメージソングが表象する競技らしさについて明らかにしていく。</p>
著者
大森 肇
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.51_1, 2016

<p> 近年、各代謝系や臓器が独立して機能するのではなく、互いに連携して恒常性を維持するという臓器連関の概念が定着してきた。運動時にも、状況に応じて様々なエネルギー供給機構が駆使され、プレーヤーが縦横無尽に各々の役割を果たす。また、運動を続ける側面の一方で、運動を止める側面もある。生体破綻を防ぐためである。競技はこの機構にどう抗うかを競っているとも言える。宮﨑先生には持久性運動時の筋・肝での代謝調節について、またエネルギー代謝状態を低侵襲的に評価する方法についてお話いただく。石倉先生には、長時間運動時の血糖低下とそれを抑制するタウリン摂取の効果・機序についてお話いただく。越中先生には、活動筋で生じた熱が肝臓に伝達されて生じるエネルギー代謝効果への関与について論じていただく。最後に大森が、高強度運動により出現する疲労に及ぼすシトルリン摂取の効果とその機序について言及する。運動生理学が手法的に細分化し、視点がミクロへと深化する一方、改めて生体全体を見渡す視点の重要性が問われている。代謝の本質は動的平衡にある。代謝バランスと臓器連関という視点が、運動生理学の発展にとっての一助になれば幸いである。</p>
著者
前田 奎 大山卞 圭悟 加藤 忠彦 水島 淳 山本 大輔 梶谷 亮輔 広瀬 健一 尾縣 貢
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.206_3, 2018

<p> 円盤投の指導現場において、投てき動作前半の局面で円盤あるいは円盤を保持する腕を積極的に加速させる動作について、「円盤を走らせる」という表現が用いられている。この「円盤を走らせる」動作は、効率の良い投てき動作を遂行させる上で重要であると指導現場では認識されているが、実際に競技力の高い円盤投競技者ほど「円盤を走らせている」のか、という疑問が生じる。そこで本研究では、「円盤を走らせる」動作に関連すると考えられるパラメータとパフォーマンスとの関係について明らかにすることを目的とした。国内一般レベルから世界トップレベルまでの記録を有する男子円盤投競技者62名(記録:38.05 – 68.94m)を対象に、競技会での投てき動作を撮影し、3次元動作分析を行った。円盤の速度について確認したところ、第一両脚支持局面の変化量および右足離地時点について、対象者全体で見た場合、投てき距離との間に有意な正の相関関係が認められた。しかし、競技レベルごとに見ると、世界トップレベル競技者12名については、有意な負の相関関係が認められたのに対して、国内競技者50名については、有意な正の相関関係が認められた。</p>
著者
野口 亜弥
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.47_3-47_3, 2016

<p> スポーツ界において女性ロールモデルの増加は、女性のスポーツ参加を促し、彼女らの引退後のスポーツへ関わり方に影響を与えるのではないか。米国では女性も当たり前にプロの監督になることができる環境が整っており、指導者として引退後のキャリア形成を目指す女性アスリートに多く出会うことができた。スウェーデンの女子プロサッカーリーグに所属する選手は、プロモーションビデオやファンサービスを通じて、その地域のアイコン的存在となり、子どもたちの憧れの的となっていた。アスリートや指導者といったスポーツ界におけるロールモデルを身近に感じることで、選手や子どもたちの選択の幅を広げることができるのではないか。さらに、近年ではスポーツを通じて女性の社会参画を促すプログラムが開発途上国で多く行われており、ザンビアではスポーツ界における女性リーダーを育成し、彼女らの取り組みをメディアで効果的に発信することにより、社会に根付く女性イメージの変革に挑戦している。2020年東京に向けて、多くの場面でスポーツが取り上げられることが予想される。身近なロールモデルとしての女性指導者を増やし、女性アスリートを効果的にプロモーションすることで、女性のスポーツへの参画を促し、さらには、スポーツ界から社会が持つ女性イメージに変化を与えることができるのではないか。</p>
著者
田中 信行
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.300_2, 2017

<p> パラリンピック競技大会(パラリンピック)では、オリンピック競技大会と異なり、女子選手の参加割合が非常に低い(田中2015)。この問題は、国際パラリンピック委員会(IPC)においても問題視されている。IPC会長は、女子選手の参加について1996年アトランタ大会で24%であった状況から、20年が経過する2016年リオ大会には、43%にすることを2013年のThe EU Conference on Gender Equality in Sport in Vilniusで示した。ただその検証結果は発表されていない(2017/5/18)。本研究は、IPC会長が示した20年間の女子選手の参加状況の概要を明らかにすると共に、障害者スポーツにおけるGender問題の要因について考察することを目的とした。女子選手の参加状況は、1996年アトランタ大会24.2%、2000年シドニー大会25.5%、2004年アテネ大会30.6%及び2008北京大会35.0%及びロンドン大会35.1%と上昇が確認された。リオ大会については、全登録選手名簿を元に女子選手の参加状況を競技別・地域別等に整理し、同大会のGender問題を報告する。</p>
著者
青木 敦英 石川 峻 竹安 知枝
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.267_3, 2019

<p> バスケットボール競技は定められた時間内により多くのゴールを決めたチームが勝利する球技であり、4つのクォーターで試合は構成されている。本研究では関西学生バスケットボール連盟2部リーグを対象にクォーターごとの得点の変化に着目し、その違いについて比較検討を行った。対象となった2部リーグの全試合(90試合)についてクォーターごとの得点、得失点差を記録し、勝ちチームと負けチームで比較を行った。クォーターごとの得点と得失点差の比較は一元配置分散分析を行い、有意な差が認められた場合は多重比較検定を行った。その結果、勝ちチームのクォーターごとの得点は第2クォーターと第3クォーター、第2クォーターと第4クォーターとの間に有意な差が認められ、いずれも試合終盤の得点が大きくなる傾向を示した。また、得点差が19点差以内の試合のみを対象とした場合においても、勝ちチームの得点傾向では第2クォーターと第4クォーターとの間に有意な差が認められ、試合終盤の得点が大きくなる傾向であった。これらのことから、バスケットボール競技においてハーフタイム以降に前半以上に得点を積み重ねることが試合に勝つために重要であると考えられた。</p>
著者
岩瀬 裕子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.23_1, 2016

<p> 2020年の東京オリンピックを控えて、ポスト・オリンピックの議論も喧しい。未来を議論するに当たり、しばしば参照されるのが1964年の東京オリンピックと1998年の長野オリンピックである。だが、我々は2つのオリンピックについてどれだけ知悉しているのか。アジアで初めて開催された先の東京オリンピックでは、1961年に日本体育協会と五輪組織委員会の共催によりカール・ディームが招かれた。オリンピックの思想と意義について、他ならぬディームから学ぼうとしたのである。そのディームから多大な影響を受けたのが、大島謙吉であった。2 人に今さら安直な美辞麗句を捧げる必要はないが、今日の冷静な視点から見ても、彼らの思慮深い言動は学術的な検討に値する。</p><p> 日本で3度目のオリンピックは長野であった。低成長時代に開催されたという点では、長野オリンピック開催前後の様々な社会経験は、現在に通じるものがある。長野には様々な意味でポスト・オリンピックを意識させる建物や政治文化や人々の行動が残っている。</p><p> 本シンポジウムでは、2人の「哲人」と1つの隣接する地域社会に焦点を当てつつ、スポーツを文化として根づかせるために求められる論点や課題を探りたい。</p>
著者
中山 健二郎 松尾 哲矢
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.79_2, 2018

<p> メディアによる伝達を通じて歴史的に生成されてきた高校野球の「物語」は、人々の高校野球に対する解釈を規定しているとされ、主に神話論的アプローチによって、その構造を捉える試みがなされてきた。しかしながら、高校野球の「物語」は固定的な構造というよりも、種々の力学関係の中で流動的に再生産されているものとみられ、その変動を読み解く研究が求められているといえる。そこで本研究は、朝日放送テレビのドキュメンタリー番組『熱闘甲子園』を対象として、特に投手を主題化した映像および言説を分析することで、高校野球の「物語」が変動する過程について考察することを目的とした。</p><p> 競技特性上、「物語」の中心として主題化されやすい投手に関して、甲子園大会の戦術は近年、「先発完投型」から「継投型」へとシフトしてきている。分析の結果、『熱闘甲子園』ではこうした戦術の変化によって、投手を描く主題を「精神力」から「友情」へと置き換えていく様相がみられるなど、メディアに具現化される「物語」の変化が看取された。この結果から、高校野球の「物語」が、実践における変化によって変容しつつ構造化される過程の一側面が示唆された。</p>
著者
野上 玲子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.28_2, 2018

<p> 昨年度の議論を引き継ぐかたちで、オリンピックと反・反知性主義が織り成すオリンピック希望論を考えてみたい。反知性主義とは、知性主義への反感から知性や理念を批判し引きずり降ろそうという態度であると理解し、ここからもう一度、オリンピックにおける平和への理念(オリンピズム)や権威(IOC)を現代版として立て直すとすると、どのような提言が可能なのか。今や、自国でのオリンピック開催を歓迎する声は少ない。不透明なIOCの体制、膨大な費用のかかる大会、金メダル至上主義など現代のオリンピックに平和への理念は見出せない。広く世界に向けた平和な地球社会に寄与する姿勢も見られない。本発表では、普遍であるはずのオリンピックの理念がいかに時代の趨勢や流行に流され空虚なものであったかという批判的視点から出発し、その様相とカントの平和哲学を援用解釈しながら、平和理念の再構築を目的としたオリンピック希望(改革)論を提示する。その際、平和のためのオリンピックは誰の平和のためのオリンピックなのか、オリンピックが体現しうる平和への理念と私たち人間およびIOCの組織改革を含む平和への努力の方向性を体育・スポーツ哲学の立場から提言していく。</p>
著者
宮﨑 明世
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.268_2, 2018

<p> 2020東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、全国各地でオリンピック・パラリンピック教育が進められている。開催都市である東京都では、すべての学校で教育推進が求められており、ここ数年で具体的な教材も蓄積されてきた。2020東京大会の開催を前にオリンピック・パラリンピックムーブメントの全国への普及が望まれるが、地域による差が大きく、十分に浸透していないのが現状である。スポーツ庁が2015年度に調査研究事業として委託し、2016年度から「オリンピック・パラリンピックムーブメント全国展開事業」として継続されている事業では、拠点3大学が全国の道府県及び政令指定都市と連携して、オリンピック・パラリンピックムーブメントの普及を進めている。本研究では、本事業の対象となっている自治体の報告書から、学校におけるオリンピック・パラリンピック教育プログラムが行われている時間や形態、具体的な活動の内容について、2016年度と2017年度の実績を比較することで大会開催まで2年となった現在の実態を明らかにした。これをもとに、大会開催までの2年間で効果的に教育を推進し、大会後もレガシーとして存続するための課題を検討した。</p>
著者
大田 穂 木塚 朝博
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.256_2, 2016

<p> ソフトボールは、野球よりも塁間が約9m短い(ソフトボールの塁間は18.29m)ために、走者が塁に達するまでの時間も野球以上に短い。内野手は、走者が塁に達するまでの時間的制約下でゴロ処理、つまりゴロの捕球から送球までを完了しなければならないため、ゴロの捕球および送球の正確さのみでなく素早さも求められる。したがって、ソフトボールにおいて内野ゴロを正確かつ素早く処理できる技能を向上させることは重要な課題である。このような背景から、本研究ではソフトボールのゴロ捕球技能に着目し、実戦的な速いゴロを捕球できる選手の特徴を明らかにすることを目的とした。技能レベルが低程度から中程度の女子ソフトボール選手を対象として、2種類の速度(約40km/h・約70km/h)で転がされるゴロを捕球する課題を実施し、それらの課題の成功率および捕球時の動作を評価した。その結果、約40km/hの速度のゴロではほとんどの選手で高い捕球成功率であったが、約70km/hの速度のゴロでは捕球成功率に差がみられた。この差には、目線の高さが影響していることが示唆された。</p>
著者
竹内 秀一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.105_2-105_2, 2016

<p> 運動部活動などを舞台に物語が紡がれるスポーツ漫画は、我々とスポーツとの関わりを映し出すひとつの鏡といえる。例えば、1990~96年に井上雄彦氏によって連載された『スラムダンク』は、多くの若者をバスケットボールへと駆り立てた。このような現象を松田(2009)は、「マンガに描かれたスポーツ世界のリアリティが、逆に現実世界のスポーツのリアリティ感覚の受皿となる」と述べる。すなわち、スポーツ漫画は単なる表象文化ではなく、他方スポーツに新たな現実を生起させる循環装置にもなっているのである。ところで、漫画が世代ごとの「アイデンティティ」を確認する役割を担うという報告(諏訪、1989)もある。ここより、スポーツ参与者の同一性(=プレイヤー・アイデンティティ)を基底している言説、あるいは揺らぎのダイナミクスをスポーツ漫画から捉えることができるのではないか。そこで本研究では、スポーツ漫画におけるキャラクターの表象について、「アイデンティティ」という補助線を用いて考察していく。そして、そこから透けてみえる運動部活動における現代的な力学の様相を明らかにすることを目的とする。</p>
著者
三島 隆章
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.352_1, 2016

<p> 中高齢者において加齢関連認知低下(AACD)と判定された場合、認知症へ移行するリスクが高いことが認められていることから、AACDの早期発見は認知症への移行を予防するうえでたいへん重要である。そこで本研究では、神経心理学的スクリーニングとスマートフォンを使用した運動機能および認知機能の測定結果との関連性について検討することを目的とした。被験者は介護認定を受けている中高齢者の男女60名であった。スマートフォンを使用した運動機能の測定項目としてTimed up and goテスト、認知機能の測定項目としてTrail making test-Bおよび数唱テストを実施した。神経心理学的スクリーニングとしてファイブコグテストを行い、年齢、性別、教育年数を考慮した総合ランク得点を算出し、問題なし群、AACDの可能性群、認知症の可能性群の3群に分け、比較した。Trail making test-Bおよび数唱テストにおいて、問題なし群と認知症の可能性群との間に有意な差異が認められたが、AADCの可能性群と他の2群とは有意な差異は認められなかった。</p>
著者
和田 浩一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.67_2, 2017

<p> 本研究の目的は、国際オリンピック委員会(IOC)会長を辞任した直後に立ち上げた万国教育連盟における教育改革の中で、オリンピック・ムーブメントの一要素として位置づけた芸術と美を、ピエール・ド・クーベルタン(1863-1937)がどのように展開していったのかを、連盟の具体的な活動内容とそこでの彼の問題意識とから明らかにすることである。芸術と美に関するクーベルタンの行動と問題意識の一端を明らかにすることは、2020年東京大会に向けて進められている文化プログラムの根源的な意味の問い直しにつなげられよう。本研究で用いた主な史料は、万国教育連盟が4年間に渡って発行した計4冊の機関誌『万国教育連盟報』(1926-1929)である。クーベルタンは「現代都市の教育学的役割」をテーマに開いた1926年の会議(ローザンヌ)では、民衆芸術をトピックの一つとして取り上げ、1928年には美を全体テーマにした会議をエクス・アン・プロヴァンスで開催した。『万国教育連盟報』ではこれらの会議の予告・報告がなされるとともに、ユーリトミー(eurythmie、調和・均衡)をキーワードとした芸術論・美学論が展開されていた。</p>
著者
和田 浩一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.86_3, 2016

<p> オリンピズムへの無理解に危機意識を募らせつつ1925年にIOC会長を辞任したピエール・ド・クーベルタン(1863-1937)は、その直後に万国教育連盟を創設した。本研究では、4年間に渡って発行された計4冊の連盟報のうち、連盟の活動が総括されている第4号(1928-1929)を取り上げ、IOC会長辞任後にクーベルタンが示した問題意識を明らかにし、オリンピズムの内実を再検討する。連盟報第4号によれば、万国教育連盟の活動には2つの目的があった。1)中等教育や成人教育に対して、従来とは異なる原理に基づいた新しい教育改革プログラムを示すことと、2)「現代都市」が未来の教育学の中枢機関として機能するよう、特定の仕組みや取り組みを示唆することである。オリンピズムとの関連で特に注目すべきは、(1)一般教養はすべての人間が学べるように、そして人生を通した学びとなるようにしなければならない、(2)早期からの専門教育をやめ、「全体を考慮しながら学ぶ」必要がある、という2つの指摘である。IOC会長辞任後に示されたこれらの指摘は、当時のオリンピック・ムーブメントにおいて理解に至らなかったオリンピズムの内実を描くものであると解釈できる。</p>
著者
和所 泰史
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.88_2, 2016

<p> 第二次世界大戦終結後、日本は1948年開催のオリンピック大会(ロンドン)に招待されず、次の1952年オリンピック大会(ヘルシンキ)の参加を目指すこととなった。当時の日本がオリンピック大会に招待されるための条件の1つは、日本のNOCがIOCから承認を受けることであった。先行研究によると、日本のNOC承認は1951年IOCウィーン総会であったとされている。しかし、このウィーン総会に出席した東龍太郎の報告および総会の議事録を見るかぎり、IOCはこの総会で日本の1952年オリンピック大会参加を認めたものの、NOCを承認したという記録は存在していない。そこで本研究では、ウィーン総会の約1年前にあたる1950年IOCコペンハーゲン総会の議事録に着目し、日本のNOCがいつIOCによって承認されたかを明らかにすることとした。本研究の検討結果、日本のNOC承認に否定的な意見を述べるIOC委員が存在していたものの、IOC会長エドストロームやアメリカのIOC委員らの援助もあり、日本のNOC承認は否決されることなく、可決し、大会への参加を議論すべきとの報告がIOC副会長ブランデージからなされていたことが明らかとなった。</p>
著者
案浦 知仁 青柳 領 田方 慎哉 小牟礼 育夫 川面 剛 大山 泰史
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.267_1, 2019

<p> 2点シュートはボール落下までの時間が短く、ゴール下付近にボールが落下する傾向がある。反面、3点シュートは時間的に長く、大きく跳ね返る傾向がある。そのため、ディフェンスリバウンドを獲得するためには均等に選手が配置されることが望ましいが、両者にはそのコート占有には違いが見られると考えられる。そこで本研究は2点シュートと3点シュートのディフェンスリバウンド獲得に対する自チームと相手チームのコート占有の影響について検討する。対象となったのはK地区大学バスケットボール選手権大会で行われた30試合で見られた1677ディフェンスリバウンドである。その際、ゴールからの距離と方向によりコートを6分割し、区画ごとに「自チームのみ」「相手チームのみ」「両者が存在」「両者ともに存在しない」区画数を獲得の成功・失敗とともに記録し、全ての組み合わせについて獲得と非獲得間の区画数についてt検定を行った。結果、2点シュートでは10個の有意差がみられ、「自チームのみ」で獲得し、「両者が存在」で非獲得の傾向がみられた。しかし、3点シュートでは2個しか有意差がなく、3点シュートのコート占有の影響は2点シュートより少ないと考えられた。</p>
著者
松本 孝朗 山下 直之 伊藤 僚 樊 孟 稲葉 泰嗣 渡辺 新大
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.130_1, 2018

<p> 2020東京オリンピックとパラリンピックが開催される真夏の東京の「高温・多湿」の暑さは、選手はもちろん、観客、スタッフやボランティアにとっても大きな問題であり、熱中症の大量発生も危惧される。【方法】2017年7・8月、東京オリ・パラのマラソンコース(国立競技場⇔浅草雷門)1km毎の21地点に、携帯型WBGT計(黒球式熱中症指数計、タニタ)を設置し、1分毎のWBGTを記録した。時間を横軸に、スタートからの距離を縦軸にとり、18℃~23℃(黄色)、23℃~28℃(褐色)、28℃~31℃(赤色)、31℃以上(黒色)の色スケールでWBGTを表し、「WBGT(時間×位置)マッピング」を作成した。【結果・考察】2017年の東京は涼夏であったが、実測した6日間のうち暑い方の2日においては、午前7時半(スタート予定時刻)~10時のコースほぼ全体が、WBGT28℃~31℃(赤色:熱中症リスク極めて高い、市民マラソン競技を行なってはならない)、31℃以上(黒色:原則運動中止)であった。スタート時刻を1時間繰り上げることで、大きく緩和できることが示された。【結語】スタート時刻の繰り上げを提言したい。</p>
著者
荒川 勝彦
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.70_1, 2019

<p> 本研究の目的は、1896年第1回アテネ大会から2016年第31回リオデジャネイロ大会までの、陸上競技トラック種目、マラソン、競歩における男女の優勝記録の変遷を調査することであった。トラック種目は、100m、200m、400m、男子110m障害、女子100m障害、400m障害、400mリレー、1600mリレー、800m、1500m、3000m障害、5000m、10000m、マラソン、20km競歩、男子50km競歩であった。陸上競技トラック種目では、日本選手の優勝者はいなかった。マラソンの優勝者は、1936年第11回ベルリン大会孫基礎禎、2000年第27回シドニー大会高橋尚子、2004年第28回アテネ大会野口みずきの3名であった。競歩でも日本選手の優勝者はいなかった。4年毎の優勝記録は経年的に短縮して行く傾向を示した。優勝記録の変遷には、2,3大会連続優勝を果たすことができるような突出した才能や身体能力を持つ選手の出現。技術、トレーニング、用具、施設の進化。スポーツ医科学、情報のマルチサポート等が関係していると考えられる。</p>
著者
菊池 章人 征矢 英昭
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.155_2, 2016

<p> 【背景】小学校の教科は、2020年から英語やプログラミングの導入が展望され、児童の運動条件が頭打ちないし劣化することが懸念される。今後、体育時間の拡大は望めないため、児童の一層の体力向上を図る上では工夫が求められるが、全体として教諭の負担が大きくなる方向は容易ではない。体育の学習指導要領を妨げない短時間の活用が注目される。【目的】体育時間に、中高強度運動を、週1回、2分半だけ行う無理のない方法によって、児童の持久力、跳躍力の有意な向上をはかる。【方法】高崎市のN小学校で、2016年1月から3月の2か月間、6年生59人に「2分半スタミナ体操」を週1回だけ体育時に介入した。対照は5年生63人(通常の体育)。体操は、動作を円滑に支える楽しい音楽を制作し使用した。全体を96bpm~165bpmにテンポアップさせ、動作指示は進行中に行い、歩く、スクワットなどのウォームアップから、走る、ケンケン、前跳び、ギャロップ、垂直跳びなどの高強度インターバル(HIT)を行った。【結果】2か月後、対照5年生(通常体育)に比べ、「2分半体操」を介入した6年生は、持久力(20mシャトルラン)、跳躍力(立幅跳び)のいずれも、有意に大きく向上した。</p>