著者
MIRHADI Mohamad Javad 小林 喜男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.115-124, 1981
被引用文献数
3

5月1日から7月1日まで,15日おきにグレインソルガム(H-726)を名大農学部附属農場の圃場で栽培し,週2回定期的にかん水する区と無かん水区を設け,生育収量やたんぱく含量を調査した. 1. いずれの播種期でもかん水区で,草丈,葉数,穂長,1穂粒数,茎葉や穀実のたんぱく含量が無かん水区より優れていて, この植物が乾燥に強いと考えられているにもかかわらず,栽培にあたってかんがいの必要性が高いと考えられた. 2. 6月1日および15日播きではかん水, 無かん水両区とも他の播種期の区に比べ,生育収量やたんぱく含量が全体的に低下していた. この減少は生育初期に降雨が多く日照が少なく, これに伴う気温の一時的な低下によるものと思われる. 3. 全植物中で茎葉や穂の占める乾物量の比率をみると,5月1日播きでは穂が最も高いが,5月15日播きでは葉の変化はなく,穂が減少して茎が高くなり, 6月1日播でほ茎も葉も増加した. さらに晩い播種期では葉の増加が最も高くなっている. これらから早期の播種では同化生産物の穂への転流が良好であり,晩期になるにつれて茎葉に残り,穂への転流が粒数の少ないこともあって減じ,穀実収量が減ずるといえる. 4. 全体的にかん水の有無で比較すれば,生育収量やたんぱく含量はどの播種期でも同様の傾向を示した. 穀実の粗たんぱく,粗でんぷんの比率に有意な差ほないが, 6月1日播きでは収量が低いので粗たんぱくは高い値を示し,その反面粗でんぷんの割合が減じている. 5.作期の早晩で比較すると,早播きがかん水の有無にかかわらず高収をもたらした. グレインソルガムの高収量を得るには栄養生長期は低温で長期間,登熟は高温で短期間経過するのが望ましいものと考えられる.
著者
佐藤 庚 稲葉 健五 戸沢 正隆
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.207-213, 1973-06-30 (Released:2008-02-14)
参考文献数
16
被引用文献数
15 22

A japanica rice (var, Norin-17) was used to test the effects of high temperature treatment (day-night, 35-30°C) from young panicle formation to maturity upon the ripening and the distribution of assimilates, and upon the pollens and anthers. 1) More than 20 per cent sterility occurred when treated just before and after flowering, being progressively decreased as the time of treatment was apart from flowering stage. In general, a larger amount of carbohydrate and nitrogen remained in the straw of the plant which exhibited a higher sterility. The plant with the greatest sterility treated at flowering stage produced grains of the greatest 1000-kernel-weight, being greater than the control. 2) The pollens of plants treated just before and during were smaller in size and stored starch abnormally, often being deficient of inclusions. Besides, the plants had a greater number of anthers which did not open at flowering. These may be related to the high sterility. 3) The plants treated at one or two weeks before flowering produced grains of smaller 1000-kernel-weight, due to smaller grain size especially in its length, although the sterility did not increase by the treatment. In such a plant, more nitrogen and available carbohydrate remained in the straw than the control plant. 4) The grains of plant which was treated under high temperature at several stages during the ripening period decreased in weight, but their sterility did not increase. Grain weight was smallest in the plant treated at 6 to 16 days flowering stage, mainly due to a decrease in grain thickness, and became progressively greater as the time of treatment went away from those period. The sum of TAC(total available carbohydrate)content of panicle and straw was decreased by the high temperature treatment, but more of it remained in the straw of the plants with smaller grains. Nitrogen accumulation did not change significantly by the treatments.
著者
Guiamet Juan Jose Nakayama Fermin
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.p35-40, 1984-03

ダイズ品種Williamsを第1本葉展開時以降短日下 (自然光9時間) で栽培し, 開花始めより次の処理を行った. A-実験終了時まで短日のまま, B-実験終了時まで長日 (低照度3時間補光), C-子実肥大始めまで長日, D-子実肥大始めより肥大中期まで長日, E-子実肥大中期より実験終了時まで長日, F-子実肥大始めより実験終了時まで長日. 処理Aが生理的成熟期に達したとき実験を終了し, すべてを収穫した. 主茎頂端の生長はBとCで延長された. 一方, これらの処理では, 着莢節あたり莢数の両方が増加する結果, 個体あたり莢数および種子数が対象 (A) よりも有意に大となった. 収穫時では, 茎, 葉柄, 葉身の乾物重およびSLWのすべてがBで最大であった. C, DおよびFの葉柄, 葉身乾物重およびSLWもまたAより大であった. 平均一粒重は長日で減少し, Bが最小を示した, 子実生長率は長日により減少した. 莢の成熟と葉の老化はB, C, DおよびFで遅延した.
著者
中村 聡 後藤 雄佐
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.324-329, 1996
被引用文献数
5

外観で容易に判断できる葉位齢(葉身が前の葉の葉鞘から抽出し終わった時点ごとに, 抽出を完了したばかりの葉の葉位で表す個体の齢)を用いて, スイートソルガムの茎基部(地表面付近)の第3節間から第10節間までの伸長を解析し, 非伸長節間(1cm未満)と伸長節間(1cm以上)との伸長様式を比較した. 晩生のシロップソルゴー2号(S2)と早生のハイシュガーソルゴー(HI)を, 第4葉から第14葉の各葉身がちょうど抽出完了するごとに20個体ずつサンプリングし, 節間位ごとの節間長を調査した. 第3節間から第6節間はすべて非伸長節間, 第9, 10節間はすべて伸長節間であったが, 第7, 8節間は, 非伸長節間と伸長節間が混在していた. タイムスケールに葉位齢を用いて, 非伸長節間と伸長節間の伸長様式を解析した結果, 次のようにまとめられた. 伸長節間(第n節間)は, 葉位齢n+2頃に急速に伸長し, 葉位齢n+3から葉位齢n+4にかけての時期にほぼ伸長が終わった. この伸長様式は, 前報での第10節間から第19節間までの伸長様式と同様であり, 品種の早晩によらず普遍的な伸長様式であると考えられた. 一方, 非伸長節間では, 両品種とも第n節間は葉位齢n+1から葉位齢n+2頃にかけて増大し, 葉位齢n+3頃に最終長に達する伸長様式を示した. 以上から, 非伸長節間の伸長様式も葉位齢によって把握することが可能となった. また, 非伸長節間の伸長と伸長節間の伸長とは質的に異なり, この違いは介在分裂組織の形成の有無によるものと推察された.
著者
柴田 和博 佐々木 一男 島崎 佳郎
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.267-274, 1973-09
被引用文献数
2

Growing the rice plants under various conditions of some possible combinations of daytime air-temperatures (A_D : 26, 20 and 14℃), the daytime water-temperatures (W_D : 26, 20 and 14℃), the nocturnal air-temperatures (A_N : 20, 14 and 8℃), the nocturnal water-temperatures (W_N : 20, 14 and 8℃) and the number of days of treatment (P : 3, 6 and 9 days), the authors examined their main effects and interactions on the heading date. The rice variety "Eiko" was used. The daytime was settled for eight hours from 9.00 a.m. to 5.00 p.m. and the night-time was settled for sixteen hours from 5.00 p.m. to 9.00 a.m. of the next day. The water was kept four cm. in depth above the soil surface in pots. The experimental design was 3^5 factorial in 81 units (1/3 replicate) with one block and defining contrasts 1=A_DW_DA_NW_<N^2>P. The results were summarized as follows; 1. At the fourth leaf stage (T_1; the transplanting time), the main effects of W_D, W_N and P were significant at 0.1% level and all the other were not significant (table 2). And regardless of the difference of W_N, it was inferred that W_D of 21℃ hastened the heading date (fig. 1-T_1(P_3)). 2. At the seventh leaf stage (T_2; about ten days before the differentiating stage of first bract primordia), the main effects of A_D, W_D, A_N and W_N and the two-factor interactions of A_D × P, A_N × W_N and A_N × P were significant. The contour lines of each date of heading based on W_D and W_N were almost straight and parallel with the line of mean water-temperature for nine days treatment (fig. 1-T_2 (P_3)). On the other hand, the contour lines of each date of heading based on A_D and A_N were curved. And regardless of the difference of A_N, it was inferred that A_D of 20℃ hastened the heading date (fig. 2-T_2 (P_3)). Moreover, T_2 was considered to be the most sensitive stage to temperature, because the heading date and the total leaf number on the main stem were most variable by both air- and water-temperature among all the treatment stages. 3. At the stages of nine leaves (T_3; the differentiating stage of first bract primordia) and ten leaves (T_4; the middle differentiating stage of primary branch primordia), the main effects of each factor and their interactions were similar to those of T_2, but the strengths were weaker than those of T_2 (table 2, 3 and 4). 4. At the thirteenth leaf (flgg leaf) stage (T_5; the stage of reduction division of pollen mother cells), the main effects of A_D, A_N and P and the two-factor interaction of A_N × P were significant greatly (table 2). The contour lines of each date of heading based on A_D and A_N were almost straight and parallel with the line of mean air-temperature (fig. 2-T_5 (P_3)).
著者
杉本 秀樹 佐藤 亨
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.39-44, 1999
被引用文献数
6

夏季における新ソバ供給と水田の高度利用を目的にした, 西南暖地における夏ソバ栽培技術の確立に関する研究の一環として, 播種期の違いが夏ソバの生育ならびに収量に及ぼす影響について調査した. 普通ソバ品種キタワセソバの種子を, 愛媛大学農学部内の雨よけビニルハウスに設置したポットに3月中旬から6月初旬まで10日ごとに播種した. 播種期が遅くなるほど開花数は増加したが, 結実率の著しい低下により粒数が減少し, さらに千粒重も低下して子実重は減少した. 特に, 開花始~成熟期における日最低気温の平均値が17.5℃を越えると結実率は顕著に低下した. したがって, 西南暖地における夏ソバの播種は, 遅霜の心配がなければできるだけ早く, かつ開花始~成熟期における日最低気温の平均値が17.5℃を越えない時期までに終える必要があることが明らかになった. さらに, 瀬戸内地域においては遅霜と梅雨入り時期ならびに上記臨界温度を考慮すると, 播種期は3月下旬から4月中旬に限定されること, 4月中旬までに播種すれば収穫は6月初旬となり, 初夏には新ソバの供給ができるばかりでなく, その後作に水稲はもちろんダイズ, 飼料作物などの栽培も可能となり, ソバを水田における輪作体系に組み込むことができることも明らかになった.
著者
ウデイン S.M.モスレム 村山 盛一 石嶺 行男 続 栄治 原田 二郎
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.747-753, 1995
被引用文献数
13

木酢液・木炭混合物(サンネカE)が夏植サトウキビの乾物生産および根の生育に及ぼす影響を明らかにするために, サトウキビ品種NCo310を供試し, サンネッカE施用量を0(対照区), 200, 400および800kg/10aの4水準設定して5反復で実験を実施した. その結果, サンネッカE施肥により茎重, 茎長, 茎径, 糖含量等のサトウキビの収量構成要素が増大した. サンネッカE施用区におけるCGR, NARおよびLAIは対照区より高い値を示し, CGRとNARおよびLAIの相関は有意であった. 原料茎収量, 葉糖収量および全乾物重もサンネッカE区が対照区よりそれぞれ13-24%, 19-31%および14-20%増加した. また, 原料茎収量, 蔗糖収量および全乾物重の最高値は400kg/10aサンネッカE区で得られた. サンネッカE区の根系の分布は水平方向, 垂直方向とも各分布域における根重密度はサンネッカE区が高かった.
著者
Guiamet Juan Jose Nakayama Fermin
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.p299-306, 1984-09

熟期の異なるダイズ品種, McCall (00), A-100 (I), Williams (III), Forrest (V), Ransom (VII) および Alamo (IX) を供試して, 開花以後の長日に対する反応の差異を調べた. 材料を開花まで短日下(自然光9時間)で育て, 開花後そのまま短日条件を続けたと区と, 長日条件(短日区の暗期に3時間の低照度補光)にした区とを設け, 比較した. 長日は, A-100 を除くすべての品種で栄養生長を促進したが, Williams では頂端生長の促進, Forrest, Ransom, Alamo では分枝数の増加によるものであった. 後者の場合, 長日下で発生した分枝には花がつかず, ニ次三次の分枝が生長した. 長日は, すべての品種, とくに Williams, Forrest, Ransom において生殖生長期間を延長させた. これら3品種と Alamo では長日により開花数が増加したが, 熟期の遅い品種ほどその程度は小さく, 脱落する花器の割合は高くなった. その結果, 成熟期における長日区の莢数と種子数は, McCall, Williams, Forrest および Ransom では増加したが, 花器の脱落が著しかった Alamo では減少した. 一方, 粒大は McCall を除いて長日により減少した. 長日区の子実収量は, 結局, Williams でのみ増加し, Alamo では短日区の約25%にすぎなかった.
著者
阿部 淳 根本 圭介 胡 東旭 森田 茂紀
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.572-575, 1990
被引用文献数
5

水稲根系の形成について研究していく場合, 個体間あるいは株間で1次根の分布を比較する必要があるが, 従来有効な手法が開発されていなかった。これは1次根の伸長方向 (GDPR) の分布がどのようなものであるか, 必ずしも明らかではないためである。したがって, 異なる標本間におけるGDPRの分布の差を検討するには, 分布の形についての前提を必要としないノンパラメトリック法の利用が妥当と考えられる。本研究では, 同一条件下で栽培した3品種, すなわち, 南京11号 (A), 土橋1号 (B), および, 無芒愛国 (C) の代表株について, Kolmogorov-Smirnov two sample testを用いて, GDPRの分布の差の検定を行なった。この方法では, 各標本の累積相対度数分布 (Sn(x)) を求め, 2標本間のSn(x) の差の最大値が, 棄却値D<SUB>α</SUB>より大きい場合には, 「2つの標本のGDPRは有意水準αで互いに異なった分布を持つ」と判定する。ヒストグラムではBがAとCとの中間型のGDPRの分布を示すようにみえたが, 検定の結果, AのみがB, Cとは有意に異なったGDPRの分布を持つことが明らかとなった。このことは, 従来, 統計学的手法による厳密な解析にはなじみにくかった水稲1次根の形質についての検討に, ノンパラメトリック法が有効であることを示唆するものである。
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.456-457, 2012 (Released:2012-10-31)
参考文献数
2
著者
柴田 和博 佐々木 一男 島崎 佳郎
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.401-408, 1970-12
被引用文献数
1

Growing the rice plants under each condition of some possible combinations of the daytime air-temperatures (A_D: 26,20 and 14℃), the daytime water-temperatures (W_D: 26,20 and 14℃),the nocturnal air-temperatures (A_N: 20,14 and 8℃), the nocturnal water-temperatures (W_N:20,14 and 8℃) and the number of days of treatment (P: 3,6 and 9 days) at each stage of growth, the autliors examined their main effects and interactions on the percentage of sterile grains. The daytime was settled for eight hours from 9.00 a.m. to 5.00 p.m. and the night-time was settled for sixteen hours from 5.00 p.m. to 9.00 a.m. of the following day. The depth of water was kept in four cm. above the soil surface in pots. The experimental design was 3^5 factorial in 81 units (1/3 replicate) with one block and defining contrasts 1=A_DW_DA_NW_N^2P. The results were summarized as follows; 1. At the differentiating stage of first bract primordia (T_3), all the main effects and their two-factor interactions were not significant (table 4). 2. At the middle differentiating stage of primary branch primordia (T_4), only the main effect of A_D was significant at 5% level. However, that was not considered to be important because the differences of the percentage of sterile grains among them were smaller than 3%(tables 3 and 4). 3. At the stage of reduction division of pollen mother cells (T_5), the main effects of A_D, A_N and P and all of their two-factor interactions were significant at 0.1 or 1% levels. Moreover, the effects of W_D, W_D × A_N and W_D × W_N were also significant at 5% level. The contour lines of each pefcentage of sterile grains based on A_D and A_N were straight and parallel with the line of mean air temperature for three day treatment (fig. la). On the other hand, the contour lines for six and nine day treatments were curve together (fig. 1b-c). 4. At the head emergernce stage (T_6), the effects of A_D, A_N, P, and A_N × P and A_N × P were significant at 0.1% level. However, for three day treatment, A_D and A_N didn't affect the percentage of sterile grains. For six and nine day treatment, A_D and A_N were effective and their contour lines of each percentage of sterile grains were curve (fig. 2b-c). 5. The optimum ranges between A_D and A_N to minimize the percentage of sterile grains for each mean air-temperature were found in all the cases in which the contour lines were curve. The lower the mean air-temperature became, the bigger the optimum range between A_D and A_N became in most cases. Moreover, the optimum combinations of A_D and A_N to minimize the percentage of sterile grains were found to be about 24-20℃ in all cases (fig. 1〜2).
著者
古畑 昌巳
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.418-425, 2015
被引用文献数
2

本研究では国内外138品種・系統のイネを供試して,乾田直播栽培における低温乾燥土中出芽性および出芽関連形質について評価を行った.その結果,低温乾燥土中播種条件における出芽速度と播種後35日目の出芽率および初期生育量との間には高い正の相関関係が認められた.この出芽速度と嫌気発芽条件での鞘葉の伸長速度との間には有意な相関関係は認められず,低温乾燥土中出芽性の良否に嫌気発芽条件での鞘葉の伸長性は寄与していないことが示唆された.また,この出芽速度と発芽速度との間には有意な正の相関関係が認められ,発芽の遅速が出芽の遅速に影響し,最終的な出芽・苗立ち率および初期生育量が異なることが示唆されたことから,早期の発芽が乾田直播栽培の出芽・苗立ち向上にとって重要であると考えられた.
著者
RABIE Raafat K. MATTER Mohamed K. KHAMIS Abd-El-Maksoud MASTAFA Mostafa M.
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.155-161, 1986
被引用文献数
3

食用ソラマメの生育と窒素含有量および収量に対する土壌塩類, 窒素施肥の影響をポット条件下で調査した. 塩類濃度は, 乾土当り 0.18, 0.30, 0.45, 0.60%の4水準を設け, 0.18%のものを対照区とした. 窒素施肥については, 1ポット4 kgの土壌に対して窒素成分として 0, 25, 50, 75 mg添加の4水準を設けた. 得られた結果は次の通りである. 1. 乾物重, 窒素含有量, 子実収量, 茎重, 個体当り莢数, 個体当り子実蛋白量は, 塩類濃度0.30%は促進的であったが, その他の塩類濃度では, 濃度が高まるにつれて抑制的であった. 百粒重, 子実蛋白含有率に対しては, 対照区に比べて全ての塩類濃度が抑制的に作用した. 2. 個体当り子実収量, 百粒重並びに開花前期と英形成期における乾物重については, それぞれの平均値が窒素施肥によって増加した. 3. 植物体窒素含有量, 個体当り莢数並びに子実蛋白含有量は, 窒素施肥によって増加し, 莢充実期と成熟期では 50mgの窒素施用が最も促進的であった. 4. 開花前期と莢充実期の植物体乾物重は, 最終子実収量と有意の高い正の相関が認められた. 5. 子実生産の効率は, 窒素施用量の増加にともなって高まった. これらの結果から, a) 塩類濃度 0.45%は, ソラマメの生育にとって限界濃度であり, b) 根粒菌種子接種に併用する窒素施肥は, 可給態窒素含量の低い土壌で最大収量を得るために有効であると結論された.
著者
齊藤 邦行 木村 麻奈 黒田 俊郎
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.337-341, 1998
被引用文献数
3

ダイズのシンク形成過程における花蕾数と結莢率の変動を明らかにするため, 圃場栽培した個体の特定節位に着目して(主茎第12節), 開花始に第12節直上で摘心し, 第11節以下すべての複葉, 葉柄, 花器を切除した孤立区を設け, その後の開花・結実課程を対照区と比較した.孤立処理により花蕾の分化・発育が助長されて開花時間は延長し, 花蕾数は対照区の10に対して, 36と多くなった.花蕾数の増加は, 孤立区で7次花房まで花蕾の分化・発育が促進されたことに加えて, 高次位花房のうち複葉を伴う椏枝の節数が増加したことに起因した.結莢率は処理直後に開花した1次花房で対照区48%に比べて孤立区76%と高くなったが, 高次位花房では明かな相違は認められなかった.その結果, 孤立区では莢数, 100粒重が大きくなり, 子実収量は対照区の3倍近くになった.以上の結果, 各節は潜在的に通常栽培条件下の3倍以上の花蕾を着生する能力をもち, これには椏枝の発生が重要な役割をもつこと, さらに, 開花数が決定している1次花房では結莢率の向上により莢数が増加したが, 高次位花房の結莢率は顕著には高まらなかったことから, ダイズのシンク調節機能においては結莢率よりも花蕾数の方が優先することが明らかになった.
著者
山本 由徳 濃野 淳一 新田 洋司
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.p601-609, 1994-12
被引用文献数
3

約1/1000aポットに直播栽培した水稲主稈の第2節から第11節の範囲で, 下位, 中位, 上位節に1次分げつを1節のみ, 2節あるいは4節残存させ, 株当り分げつ穂数を20本とし, さらに残存節数が同じ区では, それらの次位別構成を同一とした条件下で, 主稈の節位別, 次位別分げつの子実生産力について検討した. 1) 主稈の生育, 収量(穂重)は, 残存節数が少なく, 残存節位が上位であるほど優った. 2) 同一残存節数区の1次分げつの平均1穂重は, L位>中位>下位節の順に優った. 2次分げつの平均1穂重は, 1節および2節残存区では中位>上位>下位節の順に, また4節残存区では上位=中位<下位節の順に重くなった. 3(4)次分げつの平均1穂重は, 1節および2節残存区では中位>下位>上位節の順に, また4節残存区では中位=上位>下位節の順に重くなった. これらの結果, 全分げつの平均1穂重は1節, 2節および4節残存区でそれぞれ中位>下位>上位節, 中位>上位>下位節, 上位>中位>下位節の順に重くなり, 分げつの子実生産力は出現時期が早く, 栄養生長量の優る下位節ほど優るという傾向はみられなかった. 3)1次分げつの1穂重は穎花数と密接に関係し, 1穂穎花数は茎の生理活性をより直接的に示すと考えられた葉鞘からの葉身抽出速度(cm/日)と非常に高い有意な正の相関関係を示した.
著者
小野 良孝
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.p708-714, 1990-12

サトウキビの節間生長経過に見られる特徴と, 主茎に分化した各節の節間長, 節間径の季節変化について解析した。3品種 (F 161, NCo 310, 読谷山) における特定の1節間の伸長, 肥大生長は, 当該節に着生した葉身が完全に展開した日から10日目までの間に急激に行われ, 20日目までにほぼ終了した。しかし, 節間乾物重の増加は, 読谷山では葉身展開後70日目まで, 他の2品種では100日目まで漸増的に推移した。また, 成熟度の指標である節間の含水量の減少, ブリックスの増加は葉身展開後約100日目まで継続的に見られた。約1カ月間隔で周年的に値付けたF 161の主茎の各節における節間長, 節間径には, それらの生長時期に対応した顕著な季節変化が認められた。節間生長における季節変化を明らかにするために, 各植区の主茎基部の第11節位から各10節間を対象に, 節間の生長量と生長期間の気象要素間の関係を解析した。その結果, 節間長と3気象要素との間にいずれの節位においても正の単相関が認められた。しかし, 互いに他の2要素の影響を排除した節間長との偏相関は, 平均日射量と最も高い正の関係を, 次いで降水量と正の関係を示したが, 平均気温とは負の関係であった。節間径と3気象要素との単相関では, 第11〜30節位の節間径と平均気温, 降水量との間には負の有意な相関が, 一方, 第31節位以上の節間径と気象3要素との間には正の相関が見られた。各節位の節間径と気象3要素との偏相関は, 平均気温と負の高い関係を示し, 次いで平均日射量, 降水量と正の関係を示した。
著者
小野 良孝
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.708-714, 1990

サトウキビの節間生長経過に見られる特徴と, 主茎に分化した各節の節間長, 節間径の季節変化について解析した。3品種 (F 161, NCo 310, 読谷山) における特定の1節間の伸長, 肥大生長は, 当該節に着生した葉身が完全に展開した日から10日目までの間に急激に行われ, 20日目までにほぼ終了した。しかし, 節間乾物重の増加は, 読谷山では葉身展開後70日目まで, 他の2品種では100日目まで漸増的に推移した。また, 成熟度の指標である節間の含水量の減少, ブリックスの増加は葉身展開後約100日目まで継続的に見られた。約1カ月間隔で周年的に値付けたF 161の主茎の各節における節間長, 節間径には, それらの生長時期に対応した顕著な季節変化が認められた。節間生長における季節変化を明らかにするために, 各植区の主茎基部の第11節位から各10節間を対象に, 節間の生長量と生長期間の気象要素間の関係を解析した。その結果, 節間長と3気象要素との間にいずれの節位においても正の単相関が認められた。しかし, 互いに他の2要素の影響を排除した節間長との偏相関は, 平均日射量と最も高い正の関係を, 次いで降水量と正の関係を示したが, 平均気温とは負の関係であった。節間径と3気象要素との単相関では, 第11~30節位の節間径と平均気温, 降水量との間には負の有意な相関が, 一方, 第31節位以上の節間径と気象3要素との間には正の相関が見られた。各節位の節間径と気象3要素との偏相関は, 平均気温と負の高い関係を示し, 次いで平均日射量, 降水量と正の関係を示した。
著者
原 貴洋 照屋 寛由 塩野 隆弘 生駒 泰基 手塚 隆久 松井 勝弘 道山 弘康
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.151-158, 2008 (Released:2008-05-23)
参考文献数
36
被引用文献数
2 3

南西諸島に適した普通ソバ品種の導入,開発に資するために,沖縄本島の名護市において国内の普通ソバ5品種を11月上旬,12月下旬,3月上旬の3時期に播種して栽培し,成熟期に農業関連形質を調査した.いずれの作期においても,150粒 m-2 とした密播処理区の子実収量は50 粒m-2 とした粗播処理区に比べて1.3~3.4倍高かった.主茎長,初花節位,主茎花房数,花房あたり開花数は,日本の他地域での試験栽培で報告された値に比べて少なく,その一因として,栽培期間中の短日条件の影響が考えられた.主茎長,主茎花房数,花房あたり開花数,千粒重についての品種間差は,日本の他地域での試験栽培で報告された順序とほぼ一致していたため,他地域において認められる形質の品種間差は南西諸島においても類似していると考えられた.生育期間中に極度の短日条件が続く11月上旬播種,12月下旬播種の作期においては,子実収量と,主茎花房数および個体当たり花房数との間に有意な正の相関が認められた.
著者
平 将人 二瓶 直登 遠藤 あかり 谷口 義則 前島 秀和 中村 和弘 伊藤 裕之
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.173-182, 2012

タンパク質含有率の増加を目的とした出穂期の窒素追肥が,硬質コムギ品種ゆきちからの中華麺適性に及ぼす影響を検討した.出穂期における窒素追肥量の増加に比例してタンパク質含有率は高くなり,SDSセディメンテーション沈降量および湿グルテン含量は増加して生地物性は強くなった.一方,グルテンインデックスは低下したが,中華麺官能検査におけるゆであげ7分後の食感の評点は有意に高くなった.したがって,出穂期の窒素追肥によりグルテンインデックスは低下してグルテンの質は変化するが,生地物性が強くなることで中華麺のゆでのびを抑えられることが明らかとなった.また,福島県でゆきちからを喜多方ラーメン用として栽培する際に目標となるタンパク質含有率を明らかにするために,製粉工場でゆきちから100%で製造されたタンパク質含有率が9.1,9.8および10.8%の中華麺用粉を用いて中華麺官能検査を行い,タンパク質含有率と中華麺適性との関係を検討した.外国産硬質コムギを原料に用いたタンパク質含有率が11.8%の中華麺専用粉と比べて,ゆきちからの色相およびホシの程度の評点は10.8%でも有意に高かった.また,ゆであげ7分後の食感の評点はいずれのタンパク質含有率においても有意差は認められなかったが,総合評価の評点は9.8%および10.8%で有意に高かった.したがって,福島県で喜多方ラーメン用にゆきちからを栽培する際には,出穂期の窒素追肥により,タンパク質含有率を粉で10.0~11.0%程度にすることが望ましいと考えられた.
著者
杉本 秀樹 佐藤 亨
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.39-44, 1999-03-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
16
被引用文献数
3 6

夏季における新ソバ供給と水田の高度利用を目的にした, 西南暖地における夏ソバ栽培技術の確立に関する研究の一環として, 播種期の違いが夏ソバの生育ならびに収量に及ぼす影響について調査した. 普通ソバ品種キタワセソバの種子を, 愛媛大学農学部内の雨よけビニルハウスに設置したポットに3月中旬から6月初旬まで10日ごとに播種した. 播種期が遅くなるほど開花数は増加したが, 結実率の著しい低下により粒数が減少し, さらに千粒重も低下して子実重は減少した. 特に, 開花始~成熟期における日最低気温の平均値が17.5℃を越えると結実率は顕著に低下した. したがって, 西南暖地における夏ソバの播種は, 遅霜の心配がなければできるだけ早く, かつ開花始~成熟期における日最低気温の平均値が17.5℃を越えない時期までに終える必要があることが明らかになった. さらに, 瀬戸内地域においては遅霜と梅雨入り時期ならびに上記臨界温度を考慮すると, 播種期は3月下旬から4月中旬に限定されること, 4月中旬までに播種すれば収穫は6月初旬となり, 初夏には新ソバの供給ができるばかりでなく, その後作に水稲はもちろんダイズ, 飼料作物などの栽培も可能となり, ソバを水田における輪作体系に組み込むことができることも明らかになった.