著者
川端 輝江 兵庫 弘夏 萩原 千絵 松崎 聡子 新城 澄枝
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.161-168, 2008 (Released:2009-01-30)
参考文献数
27
被引用文献数
2 6

女子大学生25名を対象として,7日間の食事調査を実施し,積み上げ法によるトランス脂肪酸摂取量を計算した。さらに,そのうちの特定の1日を選び,調査者側で食事を再現した。得られた食事サンプルはフードカッターで細砕し均一化後,脂質およびトランス脂肪酸含有量を分析した。計算,あるいは実測から求められた総トランス脂肪酸摂取量の平均値(±標準偏差値)は,それぞれ,0.95±0.31 g,1.17±0.84 gであった。総トランス脂肪酸摂取量の分布は正の歪度を示し,はずれ値が1名(2.82 g),極値が2名(3.13 g,3.27 g)であった。若年女性のトランス脂肪酸摂取量はWHOの基準値であるエネルギー比率1%未満を下回っており,したがって,トランス脂肪酸摂取の血清脂質に対する影響は懸念されるものではないと考えられる。しかしながら,トランス脂肪酸を高濃度に含む加工食品を摂取することで,1日のトランス脂肪酸摂取量が予測の範囲より高くなる可能性のあることが明らかとなった。
著者
堀尾 拓之 大鶴 勝
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.299-305, 1995-08-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
24
被引用文献数
4 4

The effects of Maitake (Grifola frondosa) on blood glucose level in rats with streptozotocin-induced diabetes were investigated. Diabetic rats were produced by injecting 80mg/kg streptozotocin (STZ) into 2-day-old neonates. From the age of 9 weeks, the rats were given Maitake as a dietary admixture at 20% food weight for 180 days. Diabetic rats showed obvious diabetic symptoms such as hyperglycemia, hyperphagia, polydipsia, polyuria and glucosuria. The diabetic levels of blood glucose, water consumption, urine volume and glucosuria were significantly decreased in the rats fed Maitake. From these results, it may be considered that the bioactive substances present in Grifola frondosa ameliorate the symptoms of diabetes.
著者
藤沢 和恵 吉野 昌孝
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.494-497, 1995-12-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

パン生地および発酵前後のイノシン酸, グルタミン酸を定量し, 両者の増減の機構とパンの旨味との関連を考察した。1) イノシン酸, グルタミン酸とも, パン生地として用いた小麦粉の中で強力粉に最も大量に含まれ, ついで中力粉, 薄力粉の順であった。2) 発酵によりパン中のイノシン酸は約2倍に増加する一方, グルタミン酸は1/2以下に減少した。3) パンの旨味物質としてはイノシン酸が発酵により増加しており, その蓄積はパン酵母のAMPデアミナーゼの高い活性とイノシン酸分解酵素 (5′-ヌクレオチダーゼ) の低い活性に起因すると結論された。
著者
江頭 祐嘉合 真田 宏夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.357-360, 2002-12-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
13

ラットに脂質を経口投与するとトリプトファンからナイアシンへの転換率が上昇した。その転換率に影響を与える脂質の構造を調べたところ, 炭素数18以上の多価 (一価) 不飽和脂肪酸が影響を与えた。トリプトファン・ナイアシン代謝経路の酵素活性を測定したところ, トリプトファン・ナイアシン代謝経路の鍵酵素α-amino-β-carboxymuconate-ε-semialdehyde decarboxylase [EC4.1.1.45] (ACMSD) の活性を多価不飽和脂肪酸が抑制したことを明らかにした。初代培養肝細胞の実験でも同様の現象が認められた。ACMSDの精製, cDNAのクローニングを行い, ウエスタンブロット分析, ノーザンブロット分析を行ったところ, 多価不飽和脂肪酸摂取によりACMSDの酵素量およびmRNA量が著しく減少し, 血清キノリン酸レベルが上昇することを明らかにした。脂質がトリプトファン代謝系の鍵酵素に転写レベルで影響を与える可能性が示唆された。
著者
鈴木 麻希子 山下 成実
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.115-120, 2019 (Released:2019-06-14)
参考文献数
21

近年, 加工食品は多様化し, その利用も増加しているため, 食品添加物として使用されている無機リンの過剰摂取が懸念されている。また, 無機リンの吸収率は有機リンよりも高いことが知られている。しかしながら, 国民健康・栄養調査では, そのリン量が考慮されている加工食品は一部に限られ, 無機リンとしての摂取量は不明である。そこで, 本研究においては, 加工食品における添加無機リンおよび総リンの定量を行った。小スケールの陰イオン交換カラムでも直線濃度勾配法により, オルトリン酸, ピロリン酸, トリポリリン酸を効率よく分離し, 90%以上回収することができた。測定した食品の中には, トリポリリン酸を含むものもあり, 総リン量に占める無機リンの割合が50%を超えるものが複数あった。また, 一般に, 食品のリン/たんぱく質比は15 mg/gとされているが, それを超えるものも複数見られた。これらの情報は慢性腎臓病患者にとって有用な情報となると考えられる。
著者
中川 恭 甲田 哲之 濱田 広一郎 菅谷 建作 斎藤 高雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.55-60, 2020 (Released:2020-04-15)
参考文献数
29

「乳酸菌B240」は, タイ北部の発酵茶ミヤンから単離された植物由来の乳酸桿菌である。B240は小腸のパイエル板から取り込まれ, 生菌と死菌ともに分泌型免疫グロブリンA (sIgA) の産生誘導活性を有する。基礎検討では, B240の経口投与により季節性及びパンデミックインフルエンザウイルス, 肺炎球菌やサルモネラに対する感染防御効果を認めた。さらにヒトにおいてはB240の経口摂取により唾液中sIgAの分泌が促進され, また用量依存的に風邪罹患割合を抑制することを実証した。一方, 我々は分岐鎖アミノ酸 (BCAA) の摂取による運動後の疲労感, 筋肉痛の軽減を認めており, またホエイプロテインを運動直後に摂取することで, 骨格筋量や筋力を増加させる効果を確認している。従ってB240とホエイプロテイン及びBCAAを組み合わせた食品は, アスリートだけでなく感染リスクの高い高齢者や受験生, ビジネスパーソンなど, 大切な時期に体調管理を心がけたい多くの生活者のコンディショニングフードとして貢献し得るものと期待される。
著者
林 あつみ 清水 真澄 七戸 和博 長谷場 健 木元 幸一
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.321-329, 1996 (Released:2010-02-22)
参考文献数
30

スナネズミの肝と胃における各クラスのADHアイソザイムの存在ならびにそれら組織におけるADH活性をマウス, ラット, モルモット等の超歯類と比較検討した。スナネズミは, 肝においては, 電気泳動により3本のADHバンド (A, B, C) が検出された。陰極側のバンドAは低濃度エタノールを基質とした場合に濃く染色され, 4-methylpyrazoleで強く阻害されたことから, クラスIと同定された。陽極側のバンドCはヘキセノールに対して強い活性を示し, エタノールを基質とした場合2.5Mまで活性が飽和せず, 4-methylpyrazoleにより阻害されないことより, クラスIIIと同定された。クラスとクラスIIIの間にみられたバンドBは, 肝に存在することおよびIとIIIの中間の酵素的性質を有することより, クラスIIと同定された。胃においても2本のバンド (D, E) が検出された。陰極側のバンドDは, 胃に特異的であること, エタノール1Mで最大活性を示したこと, また4-methylpyrazoleによる阻害感受性が肝のクラスI ADHより低いことより, クラスIVと同定された。陽極側のバンドEは肝のバンドCと同様の基質特異性および4-methylpyrazoleによる阻害感受性および移動度より, クラスIIIと同定された。以上のように, スナネズミのADHアイソザイムシステムは他の齧歯類と同様であった。スナネズミの肝におけるADH活性は, マウスやラットと同様, 15mMエタノールおよび5mMヘキセノールのいずれの基質でもモルモットより有意に高かった。一方, スナネズミの胃ADH活性はいずれの基質でもモルモットと同様, マウスおよびラットに比べ著しく低かった。また, 肝ADHはいずれの種においても, 15mM以上のエタノール濃度では活性の低下がみられたが, 胃ADH活性はマウスやラットにおいては逆に上昇し, 0.25M以上になると逆転し, 肝の活性より高くなった。このことは, 胃が摂取された高濃度のアルコールを代謝する場として重要であると考えられた。一方, スナネズミおよびモルモットにおける胃ADH活性は, 高濃度エタノールでも有意な活性の上昇はみられず, 低値のままであった。したがって, これらの動物種のアルコール代謝における胃の役割は小さいと考えられた。さらに, 動物種間における各ADHアイソザイム活性の相違は, とくに胃ADHのヘキセノールに対する活性で著しく, 各動物種の食性との関連が示唆された。
著者
土井 佳代 小島 尚 原田 昌興 堀口 佳哉
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.15-22, 1994-02-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

1%コレステロール添加飼料 (Ch) に乾燥桑葉 (ML) およびその熱水抽出物 (ME) をさらに配合した飼料 (ML・Ch, ME・Ch) をウサギに12~16週間与え, 血清脂質に及ぼす影響について検討した。実験期間中2週間ごとに採血し, 総コレステロール (TC) 等の血清脂質成分を測定し, 実験終了時には剖検および病理組織学的検討を行った。1) Ch食による血清TCの増加は, 10週間で2, 500mg/dlに及んだのに対して, ML・Ch食によるTCの増加は抑制された。とくに2.5%添加したML・Ch群では最大値1, 500mg/dlを示したに過ぎず, 有意に増加が抑制された。FC, PL, TGなどの血清脂質成分も同様の傾向を示した。2) 16週間の摂食後の剖検において, 肝臓の肥大・脂肪沈着はML・Ch群で軽減することが認められた。10%MLのみを添加した飼料を与えた動物は, 通常飼料群との間に差を認めなかった。3) 4週間Ch食で飼育し, 各群のTCが約1, 300mg/dlに増加したのをみてML・Chに切り換えて飼育すると, TCをはじめとする血清脂質成分の増加は抑制された。また, ME・Ch群においても, 増加は抑制された。4) 3) の肝臓病理組織学所見において, 肝細胞の腫大・脂肪沈着等はCh群で顕著であったのに対して, ML・Ch食群とME・Ch食群では微弱傾向を示した。胸部大動脈の病理組織学所見において, Ch群で顕著にみられた血管内膜の肥厚は, ML・Ch群では抑制された。以上の結果より, 桑葉には高コレステロール食により高脂肪血症を呈したウサギの血清脂質増加を抑制し, 脂肪肝を軽減する効果を有することを認めた。また, この効果は桑葉の熱水抽出物でも認めたが, 有効成分は非抽出画分にも存在すると思われる。
著者
井手 隆
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.105-110, 2002-04-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

食品成分が肝臓脂肪酸酸化と合成系に与える影響をラットで系統的に追究した。大豆リン脂質は肝臓のトリグリセリド合成を著減させる。この低下は脂肪酸合成低下が主要因となり引き起こされることを明らかとした。卵黄やサフラワー種子リン脂質も同様な生理作用をもつことを示し, また脂肪酸合成低下は脂肪酸合成系酵素の遺伝子発現の変化によることも明確にした。α-リノレン酸の血清脂質濃度低下作用の発現機構に関連し, ミトコンドリアとペルオキシゾームの脂肪酸酸化系酵素の基質特異性とα-リノレン酸摂取によるβ酸化系酵素活性と遺伝子発現増加が, 大きな役割を果たすことを明確にした。ゴマに含まれるリグナンであるセサミンの血清脂質低下作用発現機構に関し, セサミンが強力な肝臓β酸化酵素の活性上昇と遺伝子発現誘導作用をもつことを示した。また, セサミンは脂肪酸合成系酵素遺伝子発現を低下させ, この低下に転写因子ステロール調節エレメント結合タンパク質-1 (SREBP-1) 遺伝子発現低下とその活性化抑制が関与することを示した。
著者
中埜 拓 村上 雄二 佐藤 則文 川上 浩 井戸田 正 中島 一郎
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.37-42, 1995-02-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
22

カゼイン組成がカード形成状態や消化性に及ぼす影響を調べた。ウシα-カゼインに酸を添加すると粗大なカードが形成されたが, ウシβ-カゼインならびに人乳カゼインではカードが微細であった。乳児の消化管内を想定したpH 4.0のペプシン分解およびそれに引き続くパンクレアチン分解を行うと, ウシβ-カゼインがウシα-カゼインに比べ速やかに消化された。ラットによる消化試験では, ウシβ-カゼインがウシ全カゼインに比べ分解されやすく, 胃内滞留時間が短かった。以上のことから, カードはβ-カゼインのように微細であるほど, 消化されやすいこと, また胃から速やかに小腸に移行することが示唆された。
著者
荒木 理沙 藤江 敬子 中田 由夫 鈴木 浩明 松井 幸一 植松 勝太郎 柴﨑 博行 安藤 貴彦 植山 ゆかり 礒田 博子 橋本 幸一
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.121-131, 2018 (Released:2018-06-15)
参考文献数
28
被引用文献数
3 4

オリーブは, 果実だけでなく, 葉にもオレウロペイン等のポリフェノールを豊富に含んでいる。この点に着目し, オリーブ葉茶が生産されているが, ヒトにおけるオリーブ葉茶の機能性は明らかになっていない。そこで, 血清LDL-コレステロール (LDL-C) 濃度が境界域または軽度高値の40‐70歳非糖尿病男女を対象とし, 試験飲料としてオリーブ葉茶と緑茶を用いたランダム化2群並行群間比較試験を実施した。12週間の介入によって, オリーブ葉茶群でのみ, 体重 (p<0.05) と腹囲 (p<0.01) が有意に減少した。このことから, オリーブ葉茶が緑茶に比べて体重や腹囲の減少に有効となる可能性が示唆され, オリーブ葉に特有のポリフェノール等の機能性成分の関与が考えられた。なお, オリーブ葉茶群ではLDL-C濃度の低下傾向 (p=0.054) がみられたが, 明確な糖・脂質代謝改善効果を認めるには至らなかった。オリーブ葉茶がヒトの健康に及ぼす影響について, 今後さらに検討すべきと考えられた。
著者
伊藤 千夏 小泉 暁子 田中 絵里香 金子 佳代子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.221-227, 2006-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
26
被引用文献数
9 3

9歳から22歳までの男女3468名の骨量を超音波法により測定し, 骨量の年齢別推移および骨量と身長, 体重, BMI, 除脂肪量, 体脂肪率との関連を検討した。骨量は乾式踵骨超音波骨評価装置 (ALOKA 社AOS-100) を用い, 超音波伝播速度 (SOS) と透過指標 (TI) を測定して音響的骨評価値 (osteo sono-assessment index 以下OSIとする) を算出し骨量に相当する指標とした。OSIは9歳から14歳までは男女間に差はなく年齢とともに増加し, 15歳以降は男子の方が女子よりも有意に高値を示した。女子では初経発来者は未発来者に比べてOSIが有意に高値を示していた。年齢を4区分 (9-12歳, 13-15歳, 16-18歳, 19-22歳) にわけ, OSIと身長, 体重, BMI, LBM, 体脂肪率との相関を検討したところ, 女子ではすべての年齢区分で, OSIと体重, BMI, LBM, 体脂肪率との間に, 有意な正の相関関係が認められたが, 男子の19-22歳では, OSIと身長, 体重などの身体組成とは相関が認められなかった。
著者
森藤 雅史 伊藤 恭子 市川 聡美 大庭 知慧 北出 晶美
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.19-22, 2022 (Released:2022-02-23)
参考文献数
12

皮膚は, 水分の喪失を防ぐ, 微生物や物理化学的な刺激から生体を守るなど, 生命を維持するためになくてはならない様々な機能をもっている。それゆえ, 常に皮膚機能を高めておくことが必要であり, その方法として日々の食生活の改善や機能性を有する食品素材の継続的な摂取が効果的である。我々は, 様々な食品素材の中から, 「SC-2乳酸菌」「コラーゲンペプチド」「スフィンゴミエリン」の3成分に着目し, 吸収動態, 有効性評価, メカニズム解析をすすめた。また, これら3成分を配合した新たな食品を開発した。臨床試験において, 3成分を配合した被験食品を摂取することにより, 対照食品を摂取したときと比べ, 紫外線刺激から肌を保護するのを助けること, 肌の潤いを保ち, 肌の乾燥を緩和することが示された。本技術により, 食べることによって人において皮膚機能を高めることが可能となり, 人々の健康の維持・増進に貢献できると考える。
著者
若林 茂 植田 由香 松岡 瑛
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.131-137, 1993 (Released:2010-02-22)
参考文献数
26
被引用文献数
8 15

馬鈴薯デンプンより調製した低粘性水溶性食物繊維である難消化性デキストリン (PF-C) について, 各種糖質負荷後の血糖値およびインスリン分泌に及ぼす影響を検討した。1) PF-Cの血糖値上昇抑制効果はショ糖およびマルトースに対して, またインスリン分泌の抑制効果はショ糖, マルトースならびにマルトデキストリンに対して有意に認められた。しかし, グルコース, 異性化糖あるいはラクトース負荷後の血糖値およびインスリン分泌に対してPF-Cは有意な影響を及ぼさなかった。2) PF-Cはスクラーゼ活性を微弱ながら上昇させたが, マルターゼ活性に対しては有意な影響を及ぼさなかった。3) in situ小腸灌流実験において, PF-Cはグルコースの吸収にはほとんど影響を与えなかうたのに対し, ショ糖およびマルトースの消化により生じたグルコースの吸収はいずれも有意に抑制した。
著者
田中 清 上西 一弘
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.231-236, 2020 (Released:2020-12-26)
参考文献数
4

日本人の食事摂取基準2020年版におけるビタミン・ミネラルにつき, 変更点を中心に述べる。脂溶性ビタミンでは, ビタミンDの目安量の根拠は従来健康人摂取の中央値だったが, 近年ビタミンD欠乏/不足者の割合が非常に高いことが明らかとなり, 「骨折予防に必要な量-日照による産生量」に変更された。水溶性ビタミンでは, 葉酸に関して, 食事性葉酸と狭義の葉酸の区別が明記された。多量ミネラルでは, ナトリウム (食塩相当量) の目標量 (上限) は, 高血圧・慢性腎臓病の発症予防のため, 望ましい摂取量 (5 g/日) と日本人の摂取量の中間値に基づき, 男性 < 7.5 g/日, 女性 < 6.5 g/日とされ, 今回その重症化予防のための量 (< 6 g/日) も定められた。カリウムは目標量 (下限) が定められ, ナトリウム・カリウム比の重要性も記載された。微量ミネラルでは, 妊娠中期・後期での鉄の付加量が引き下げられた。策定栄養素には変更なく, クロムについてのみは必須性に関して再検討されているが, これらの必須性は既に確立され, 食品成分表と合わせた活用が重要である。ヒト対象のエビデンスは少なく, 日本人での研究が必要である。
著者
荒牧 礼子 廣内 智子 佐藤 厚
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.107-111, 2011 (Released:2011-06-10)
参考文献数
9

野菜摂取量増加を目的とした栄養教育において, 喫食者に野菜摂取目標量, および自己の日常的な野菜摂取量を把握させることは重要である。喫食者が野菜と認識する食品素材が, 日本食品標準成分表において野菜として定義・分類されている食品素材とどの程度異なっているのかを調査し, その違いが日常的な野菜摂取量把握に及ぼす影響の検討を行った。成分表に収載されている主要野菜25品目, および非野菜15品目の計40品目を抽出し, 野菜, および非野菜かの認識を質問した。その結果, 平均正解率は, 野菜類93.6%, 非野菜類57.8%, 正解率の最も低かった食品は, じゃがいも14.9%, 次いで, やまいも18.9%, さつまいも24.2%であり, いも類を野菜と誤認識している者が非常に多いことが明らかとなった。また, 市販弁当78種類の副食に使用されていた食品素材の重量を秤量し, 分類した結果, 野菜実重量は47±26 g, 認識野菜重量は57±29 gと実重量に比較し21%高値を示した。
著者
佐々木 敏
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.291-296, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
7
被引用文献数
3

『日本人の食事摂取基準』は, 厚生労働省が公開しているガイドラインのひとつであり, 食事・栄養に関するわが国で唯一の包括的ガイドラインである。本稿では, 総論のなかで今回の改定 (2020年版) で特に強調された点を紹介するとともに, 今後の食事摂取基準の策定も見据えて, 栄養学研究の役割や食事摂取基準との関係性について, 考察を加えることにする。今回の改定では, 数値の改定は最小限に留まっているものの, 指標の定義が再整理され, その詳細が説明されている。また, 食事摂取基準活用時に必要となる食事アセスメントに関する知識や知見などについても詳述されている。さらに, 食事摂取基準の策定方法に関する課題, 特に系統的レビューならびにメタ・アナリシスの利用における課題についても触れられている。総論の中でもっとも注視すべき記述は, 「我が国における当該分野の研究者の数と質が食事摂取基準の策定に要求される能力に対応できておらず, 近い将来, 食事摂取基準の策定に支障を来すおそれが危惧される。」という一文であろう。栄養学研究に携われる者がこの問題を真摯に取り上げ, 積極的に対応することを期待したいところである。なお, 本稿は政府の公式見解を述べたものではない。
著者
寺口 進 小野 浄治 清沢 功 福渡 康夫 荒木 一晴 小此木 成夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.157-164, 1984
被引用文献数
7

ヒト由来のBifidobacterium 5菌種, すなわちB. in-fantis, B. breve, B. bifidum, B. longumおよびB. adolescentisを用い菌体内と菌体外のビタミン産生量を測定した<BR>1) 供試したBifidobacteriumのすべての菌株は菌体内にビタミンB<SUB>1</SUB>, B<SUB>2</SUB>, B<SUB>6</SUB>, B<SUB>12</SUB>, C, ニコチン酸, 葉酸およびビオチンを蓄積し, 菌体外にはビタミンB<SUB>6</SUB>, B<SUB>12</SUB>および葉酸を産生した。<BR>2) 菌種別ではB. longum, B. breveおよびB. in-fantisが比較的高いビタミン産生能を有していた。とくにB. longumはビタミンB<SUB>2</SUB>およびB<SUB>6</SUB>, B. breveはニコチン酸, B. infantisはビオチンにおいて高い産生能を示した。<BR>3) これらBifidobacteriumの産生するビタミン量は宿主としてのヒトのビタミン所要量と比較しても無視できない量であると考えられる。
著者
田中 啓二
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.221-228, 2011 (Released:2011-10-18)
参考文献数
25
被引用文献数
1

生体を構成する主要成分であり, 生命現象を支える機能素子であるタンパク質は, 細胞内で絶えずダイナミックに合成と分解を繰り返しており, ヒトでは, 毎日, 総タンパク質の約3%が数分から数カ月と千差万別の寿命をもってターンオーバー (新陳代謝) している。タンパク質分解は, 不良品分子の積極的な除去に関与しているほか, 良品分子であっても不要な (細胞活動に支障をきたす) 場合, あるいは必要とする栄養素 (アミノ酸やその分解による代謝エネルギー) の確保のために, 積極的に作動される。タンパク質分解研究は, 過去四半世紀の間に未曾有の発展を遂げてきたが, 現在なお拡大の一途を辿っており, 生命の謎を解くキープレイヤーとして現代生命科学の中枢の一翼を占めるに至っている。我々はタンパク質分解システムについて分子から個体レベルに至る包括的な研究を継続して進めてきた。その研究小史を振り返りながら, タンパク質分解 (リサイクルシステム) の重要性について概説したい。