著者
松本 万里 渡邊 智子 松本 信二 安井 明美
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.255-264, 2020 (Released:2020-12-26)
参考文献数
21

目的: 組成に基づく成分値を基礎とした食品のエネルギー値 (アミノ酸組成, 脂肪酸組成, 炭水化物組成などを用いたFAOが提唱する方法, 組成エネルギー値) と従来法によるエネルギー値の相違を明らかにすることを目的とした。方法: 日本食品標準成分表2015年版 (七訂) の収載食品を対象に可食部100 g当たりの組成エネルギー値を算出し, 既収載のエネルギー値 (既収載値) と比較した。さらに, 平成26年国民健康・栄養調査の食品別摂取量から, 組成エネルギー値および既収載値を用いてエネルギー摂取量を算出し, 両者を比較した。結果: 可食部100 g当たりの組成エネルギー値 (a) と既収載値 (b) との一致率 (a/b×100) は, 126±24% (藻類) から76±20% (野菜類) の範囲であった。一致率が100%未満の食品群は14群であり, 全食品の一致率は91±17%であった。一致率80‐100%の範囲に対象食品の68%が含まれ, 一致率60‐80%に対象食品の13%が, 一致率100‐120%に対象食品の12%が含まれていた。国民健康・栄養調査の食品別摂取量を基に, 組成エネルギー値を用いて算出した総エネルギー摂取量と, 既収載値を用いて算出した総エネルギー摂取量との一致率は, 92%であった。
著者
久米 大祐 喬 穎 中山 珠里 保川 清 島尻 佳典 伊東 昌章
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.15-20, 2021 (Released:2021-02-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究では, シマグワ (Morus australis) 葉から製造したパウダーを配合したパン (シマグワパン) の血糖値上昇抑制効果を検証することを目的とした。実験1では, シマグワパンの機能性解析として, 1-デオキシノジリマイシン (1-DNJ) 含有量, α-アミラーゼ[3.2.1.1]およびマルターゼ[3.2.1.20]阻害活性を評価した。実験2では, 健常成人を対象として同パンの食後血糖値上昇に対する抑制効果を検証した。実験1の結果, 製パン時に1-DNJ含有量は減少するものの, シマグワパンには1-DNJが残存していることが示された。シマグワ葉パウダーにα-アミラーゼ阻害活性は認められなかった。シマグワパンは, シマグワ葉パウダーそのものよりもマルターゼに対する50%阻害濃度は高値を示すものの, マルターゼ阻害活性を保持していた。実験2の結果, シマグワパンを摂取した後は, 通常のパンを摂取した後よりも, 血糖値およびインスリン値の上昇が抑制された。本研究の結果から, シマグワパンの血糖値上昇抑制効果が明らかとなった。
著者
石見 百江 寺田 澄玲 砂原 緑 下岡 里英 嶋津 孝
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.159-165, 2003-06-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
13
被引用文献数
7 9

高糖質食ならびに高脂肪食 (ラード食) にショウガ粉末あるいはショウガの有効成分であるジンゲロンおよびジンゲロール (ジンゲロンの還元型) を添加し, エネルギー消費に及ぼす影響を酸素消費量と呼吸商の面から検討した。添加前と比べた12時間の累積酸素消費量はショウガの2%添加によって高糖質食群で7%と有意に増加し, ラード食群でも増加傾向 (6%) を示した。その際, 呼吸商 (RQ) はショウガの添加によって高糖質食ならびにラード食群でともに有意に低下した。比較のために唐辛子を2%添加して調べたところ, ショウガ添加とほぼ同程度の酸素消費量の増加とRQの低下を認めた。ショウガの辛味成分であるジンゲロンの効果を調べると, 0.4%の添加によって, 高糖質食群では微増にすぎなかったが, ラード食群で著しく増加した。RQはジンゲロンの添加によって両食餌群ともに低下した。一方, 辛味のないジンゲロールを0.4%添加した場合には, 酸素消費量ならびにRQ値に有意な変化がみられなかった。しかし, ジンゲロンとジンゲロールを同時に添加すると, 酸素消費量は高糖質食群で34%, ラード食群で28%と有意に増加し, 両成分の相乗効果が観察された。RQも有意な低下をみた。以上の実験結果から, ショウガあるいはその辛味成分であるジンゲロンは酸素消費量を増加させ, かつ体内の脂肪の燃焼を盛んにすることによってエネルギーの消費を促進する作用を持つことが明らかになった。
著者
北野 泰奈 本間 太郎 畠山 雄有 治部 祐里 川上 祐生 都築 毅 仲川 清隆 宮澤 陽夫
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.73-85, 2014 (Released:2014-04-21)
参考文献数
52
被引用文献数
26 26

日本人の食事 (日本食) は健康食として世界中に認知されている。しかし, 日本では食の欧米化が進行し, 現代日本食が本当に有益か疑わしい。そこで本研究では, 時代とともに変化した日本食の有益性を明らかにするため, 2005年, 1990年, 1975年, 1960年の日本食を調理・再現し, これをマウスに4週間与えたところ, 1975年日本食を与えたマウスで白色脂肪組織重量が減少した。肝臓のDNAマイクロアレイ解析より, 1975年日本食を与えたマウスは糖・脂質代謝に関する遺伝子発現が増加しており, 代謝の活性化が認められた。次に, 各日本食のPFCバランス (タンパク質・脂質・炭水化物のエネルギー比率) を精製飼料で再現し, 上記と同様な試験を行ったところ, 群間で白色脂肪組織重量に大きな差は認められなかった。以上より, 1975年頃の日本食は肥満発症リスクが低く, これは食事のPFCバランスに依存しないことが明らかとなった。
著者
門岡 幸男 小川 哲弘 高野 義彦 守屋 智博 酒井 史彦 西平 順 宮崎 忠昭 土田 隆 佐藤 匡央
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.79-83, 2019 (Released:2019-04-23)
参考文献数
19

Lactobacillus gasseri SBT2055株 (LG2055) の摂取による消化管を介した保健機能に関する研究を行った。内臓脂肪蓄積抑制作用については, はじめに, LG2055を含む高脂肪飼料を摂取したラットで腸間膜脂肪の脂肪細胞の肥大化が抑制されることを見出した。さらに, この知見を基にヒト介入試験を実施し, 有効性探索, 用量設定および最終製品での確認という一連の試験において, LG2055の摂取による内臓脂肪蓄積抑制作用を確認した。免疫調節作用については, マウスにおける小腸免疫グロブリンA産生促進作用およびインフルエンザウイルス感染防御作用を確認し, さらに, ヒト介入試験においてインフルエンザワクチン特異的抗体価およびナチュラルキラー細胞活性の亢進を確かめた。以上の成果の活用例として, 内臓脂肪蓄積低減作用に関する知見に基づいた特定保健用食品の許可取得および機能性表示食品としての届出があげられ, 実際の商品への保健機能表示が可能となった。
著者
三澤 江里子 田中 美順 阿部 文明 山内 恒治 齊藤 万里江 鍋島 かずみ
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.141-145, 2019 (Released:2019-08-22)
参考文献数
13

アロエベラ葉肉から機能性成分として同定した植物ステロール類 (以下, アロエステロール) について, 生体の恒常性維持に重要な役割を果たす皮膚機能に着目し, 経口摂取による効果を検討した。ヒト皮膚由来線維芽細胞をアロエステロール存在下で培養する in vitro 試験により, コラーゲンとヒアルロン酸の合成と産生が促進されることを明らかにした。また, in vivo での検討において, 紫外線による皮膚の水分量や弾力の低下が予防され, コラーゲン量の低下とマトリックスメタロプロテアーゼ (MMP) 過剰産生が抑制されたことから, ヒトでの効果を検証するため無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を行った。その結果, アロエステロール含有食品の12週間摂取が, 皮膚の保湿力を高めて肌の潤いを保つとともに, 真皮コラーゲンを増やして皮膚弾力性を維持することを確認した。細胞からヒトまでの試験結果から, アロエステロールが皮膚の健康の維持, 増進に役立つ機能性食品素材として有用であることが明らかとなった。
著者
佐藤 隆一郎
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.279-285, 2013 (Released:2013-12-20)
参考文献数
37

脂質代謝異常に起因すると考えられる生活習慣病の予防, 改善に寄与する食品成分の探索を行った。脂質代謝制御において重要な働きをする生体内機能分子を定め, これら分子の機能, 活性を変動させ得る食品成分を, 分子細胞生物学的手法を駆使して樹立した評価系を用いて評価した。その際に機能分子として, 核内受容体, 転写因子, 受容体を設定し解析を行った。また, 入手可能な市販食品由来化合物を多数集めた食品成分ライブラリーを構築し, これらの活性を追跡した。結果として, 機能性食品化合物の作用点が標的分子を介したことを明確にする特徴を持つ。筆者らが見いだした機能性食品成分を列挙して解説した。
著者
藤澤 史子 灘本 知憲 伏木 亨
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.3-9, 2005-02-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
25
被引用文献数
14 17 1

漢方で身体を温める効果があるといわれているショウガについて, ヒトを対象としてショウガ摂取後の体表温を中心とし, 生理機能に及ぼす影響を検討した。その結果, ショウガ水摂取後は対照の水摂取後と比較して, 額の体表温が有意に上昇した (p<0.05)。ショウガ添加パン摂取後は対照のショウガ無添加パン摂取後と比較して, 額と手首の体表温が有意に上昇した (p<0.05)。すなわちショウガはパンへ添加することにより温熱効果はより顕著になった。なお, 官能検査の結果からは, ショウガ添加パンはショウガ無添加パンと比較して, 香り, 味, 食感, 総合評価に有意な差はみられず, パンとして好ましい評価を得た。これらの結果から, ショウガは実用的食材としての可能性が大きいことが示唆された。
著者
金子 一郎
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.3-7, 2020 (Released:2020-02-17)
参考文献数
18

これまで謎のベールに包まれていたリン代謝調節系は, その詳細が解明されるにつれ, 寿命や加齢に関して非常に重要な役割を演じていることが明らかにされた。特に老化抑制遺伝子Klothoの研究により, 「リンが老化を加速する」という概念が確立され, 線維芽細胞増殖因子 (FGF23) /Klotho/ビタミンD調節シグナルを介したリン代謝異常と各種疾患との関連が重要視されている。本研究では, 遺伝子改変動物や培養細胞を用いた基礎研究からFGF23/Klotho/ビタミンD調節シグナルが成長期から加齢におけるミネラル代謝の中核として機能していることを明らかにした。これらの研究成果は, 各種慢性疾患におけるビタミンDの栄養状態を維持することが老化を制御している可能性も示唆している。さらに, 現代高齢化社会で問題となる慢性腎臓病重症化予防や脳機能障害改善におけるリン・ビタミンD代謝を介する老化抑制機構の解明は, 栄養学的アプローチを可能とするために, より一層の健康長寿への応用が期待できるものと予想された。
著者
堀尾 文彦
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.267-274, 2018 (Released:2018-12-17)
参考文献数
32
被引用文献数
1

糖・脂質代謝異常症の原因遺伝子の同定と, 発症抑制する食事因子の探求とを目的とした。遺伝因子に関しては, マウス SMXA 組換え近交系統の中に高脂肪食誘発性2型糖尿病と脂肪肝を呈する SMXA5 系統を見出した。SMXA5 の原因遺伝子を同定するために高脂肪食摂取下で遺伝解析を行って, 糖尿病遺伝子座を第2番染色体に, 脂肪肝遺伝子座を第12番染色体に検出することに成功した。これらの遺伝子座を含む染色体部分置換マウスを作出して原因遺伝子の染色体上の存在領域を限局して, 糖尿病遺伝子については4つの候補遺伝子を, 脂肪肝遺伝子については1つの候補遺伝子を選抜した。食餌因子に関しては, コーヒー, 植物性タンパク質, キノコ由来ペプチドなどの糖尿病の発症抑制効果を見出した。コーヒーは, 2型糖尿病でのインスリン抵抗性を改善させて高血糖の発症を抑制すること, また膵臓β細胞の保護作用により1型糖尿病も抑制することを見出した。これらの成果は糖尿病・脂肪肝の新規の発症機構の発見と, 疾患を予防する食生活の構築に寄与するものである。
著者
野口 律奈 平岡 真実 陣内 瑤 北原 裕美 渡部 芳徳 香川 靖雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.229-238, 2011 (Released:2011-10-18)
参考文献数
40
被引用文献数
1 2

日本人健常者を対象とした観察研究において, 男性の血清葉酸濃度, および葉酸摂取量が鬱スコアと逆相関することが報告されている。しかし, 日本人鬱病患者を対象に葉酸栄養状態を調べた研究はない。そこで本研究では, 精神科通院中の日本人患者103名の血清葉酸・ホモシステイン・VB12濃度, 葉酸・VB2・VB6・VB12摂取量, メチレンテトラヒドラ葉酸還元酵素 (MTHFR) 遺伝子多型を調べ, 鬱病症状との関連を検討した。結果, 男性患者の血清葉酸濃度, および葉酸・VB2・VB6の摂取量が鬱病精神症状と有意な逆相関を示した。女性ではこうした関連はなかった。血清葉酸濃度は男性より女性の方が有意に高く, 葉酸・VB2・VB6摂取量も女性の方が有意に多かった。一方, 精神疾患のリスクとされるMTHFR遺伝子TT多型の出現頻度は, 日本人の一般的な出現頻度と有意な差は見られなかった。本研究の結果から, 精神疾患男性患者の葉酸栄養状態は, その精神症状と逆相関することが示唆された。
著者
永井 亜矢子 久保田 優 東山 幸恵
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.249-254, 2013 (Released:2013-10-21)
参考文献数
34
被引用文献数
1

正常な味覚閾値は健康な食生活に大切である。味覚閾値に影響を及ぼす因子の一つとして疲労やストレスが挙げられるが, それらが味覚閾値にどのような影響を与えるかを検討した研究は特に小児において殆どみられない。そこで, 健常な小学生男女58名を対象に, 疲労やストレスが味覚閾値とどのように関連するのかを検討した。味覚閾値は濾紙ディスク法を用いて4基本味を測定した。ストレスは唾液α-アミラーゼ活性を, 疲労はチャルダー疲労スケールを指標として評価した。唾液α-アミラーゼ活性によるストレス度別に4群で比較したところ, 味覚低下者数に違いはなかった。チャルダー疲労スケールでは, 非疲労群に比べ疲労群で有意に味覚低下者数が多かった (身体的疲労:酸味p=0.02, 精神的疲労:塩味p=0.03, 総合的疲労:酸味p<0.01, 苦味p=0.02) 。以上より, 小児において疲労は特定の味覚閾値を上昇させる可能性が示唆された。
著者
伏木 亨
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.61-68, 2010 (Released:2010-06-02)
参考文献数
52

エネルギーの過剰摂取や運動不足による肥満は種々の生活習慣病増加の原因となっている。高カロリー食の摂取欲求やエネルギーを消耗する運動の忌避はともに動物としての本能に根ざしたものであり, 動物行動科学的な視点なくして改善は容易ではない。現代人の過剰なエネルギー摂取を改善するための食嗜好の制御と無理のないエネルギー消費促進を目的として, 基礎となる次の三つの問題をおもに実験動物を用いて解析した。 (1) 油脂をはじめとする高嗜好性食品のおいしさのメカニズム: 油脂の口腔内受容機構を明らかにし, 味細胞表面に受容体候補タンパク質を見出した。一方, 動物行動学実験によって油脂の摂取がマウスに報酬効果をもたらすことを明らかにし, 高嗜好性食品への執着のメカニズムを示した。 (2) 運動によるエネルギー代謝変化の解析: 長時間の水泳運動を課したラットの脳脊髄液中に, マウスの自発行動を抑制する物質が増加することを見出し, 活性型TGF-βであることを明らかにした。脳内TGF-βは血中の乳酸濃度の上昇などに伴って増加し, 体温上昇や末梢の脂肪酸化を促進する作用をも有していた。疲労の指標となることが期待できる。 (3) エネルギー消費促進としての食品成分による自律神経の制御: 香辛料を中心として, 人間の自律神経活度を高める成分の探索とメカニズム解析を行った。京都大学の矢澤が発見した無辛味トウガラシから抽出した新規カプサイシン様物質に, エネルギー消費を促進する作用があることを見出し, 自律神経を介してマウスやヒトの体脂肪蓄積抑制効果があることを明らかにした。
著者
森滝 望 井上 和生 山崎 英恵
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.133-139, 2018
被引用文献数
4

<p>日本食の風味を支える出汁は, 心身への健康機能を有することが最近の研究により明らかにされてきているが, いずれの報告も長期摂取による効果に着目しており, 短期的な影響については知見が乏しい。本研究では, 出汁の単回摂取による効果を明らかにすることを目的とし, 鰹と昆布の合わせ出汁の摂取および香気の吸入が自律神経活動および精神的疲労に及ぼす影響について検討を行った。24名の健康で非喫煙のボランティアが本研究に参加した。被験者は, 9: 00に指定の朝食を摂取し, 10: 30—11: 30に実験を実施した。自律神経活動は心拍変動解析により評価し, 疲労の評価では, 一定の疲労負荷として単純な計算タスク (内田クレペリンテスト) を30分間課し, その前後でフリッカー試験を実施した。加えて, Visual Analogue Scale (VAS) を用い, 主観的な疲労度および試料に対する嗜好度を評価した。出汁の単回摂取では, 対照の水と比べて, 心拍数低下と副交感神経活動の一過性上昇が認められた。また, 出汁の香気吸入でも同様の効果がみられた。さらに, 出汁の単回摂取により, 計算タスク後のフリッカー値低下が抑制され, VASの結果より主観的な疲労度も軽減されていることが示された。これらの結果から, 出汁の摂取は副交感神経活動を上昇させる作用を介して, リラックスと抗疲労の効果を誘起する可能性が示唆され, その作用における香気成分の重要性が示された。</p>
著者
松村 成暢
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.231-235, 2018

<p>油脂を多く含む食品は魅力的なおいしさ (嗜好性) を持つ。我々はこれまでの研究により脂肪酸結合タンパク質CD36が舌の味細胞に発現していることを見出し, 油脂が受容体を介して味細胞を刺激することを示してきた。本研究ではGタンパク共役型の脂肪酸受容体GPR120が舌の味細胞に発現していることを新たに発見した。次に油脂の嗜好性の脳内メカニズムについて検討を行った。嗜好性の高い食品の摂取は脳内で<i>β</i>エンドルフィン分泌を促進することが知られている。そこで, マウスに油脂を摂取させ検討したところ, 脳内で<i>β</i>エンドルフィンニューロンが活性化されることが明らかとなった。<i>β</i>エンドルフィンは快感を生み出す神経ペプチドであることから, 油脂はCD36とGPR120を介して味細胞を刺激し, 味覚神経を介して脳内で<i>β</i>エンドルフィン分泌を引き起こす。これが快感を生み出し, 油脂の高い嗜好性の発生に関与する可能性を示した。</p>
著者
池上 幸江 土橋 文江 中村 カホル 印南 敏
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.447-454, 1991-12-19 (Released:2010-02-22)
参考文献数
26
被引用文献数
1 6

血糖値の変化に対する大麦の影響を明らかにするために正常動物と実験的糖尿病発症動物を用いて検討した。実験にはSprague Dawley系雄ラットを用い, 糖尿病動物はストレプトゾトシン (40mg/kg体重) を腹腔内投与して作成した。実験Iでは4週齢ラットに大麦食, 玄米食, 小麦ふすま食, α-コーンスターチ食を64日間摂取させた。その後すべてのラットを糖尿病とした。糖尿病を発症させた後のラットの体重は大麦食と玄米食のみ増加が見られたが大麦食では飼料摂取量はもっとも低かった。正常期ラットの飼料摂取後およびグルコース負荷後の血糖値は大麦食摂取ラットで低く, 糖尿病発症後でもグルコース負荷後の血糖値は大麦食での抑制が顕著であった。大麦食-糖尿病ラットでは腹腔内へのグルコース負荷でも血糖値の上昇が抑制されており, 体内における糖代謝の改善が認められた。さらに塘尿病発症後の空腹時血糖値は, 25日目には大麦食ではほぼ塘尿病発症前のレベルに回復し, 47日後の血清インスリンはα-コーンスターチ群より有意に高くなっていた。実験IIでは大麦とα-コーンスターチ食を摂取させて, 正常ラットと糖尿病ラットの間で比較した。糖尿病発症後33日目では大麦食ラットは, グルコース負荷後の血糖値の変化はα-コーンスターチ食-正常ラットよりむしろ低くなっていた。以上の結果より, 大麦は糖尿病患者の治療食として用いた場合に糖代謝の改善が期待されることが示唆された。
著者
高木 絢加 谷口 彩子 駒居 南保 村 絵美 永井 元 森谷 敏夫 永井 成美
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.19-25, 2014
被引用文献数
1

炭酸水の口腔内刺激 (清涼感) に着目し, 炭酸水の飲水が実体温をどの程度変化させるのか, その反応は炭酸の口腔内刺激のみでも起こるのかどうかを明らかにするために, 等温・等量の炭酸水と水を用いた飲用試験と偽飲 (Sham-feeding;SF) による口腔内刺激のみの試験を行った。炭酸水の飲水 (炭酸水) , 水の飲水 (水) , 炭酸水の偽飲 (炭酸水SF) , 水の偽飲 (水SF) の4試行をrandomized crossover designで実施した。前夜10時より絶食した若年女性13名に, 室温を26℃に保持した実験室で異なる日の朝9時にサンプル (15℃, 250 mL) を負荷した。心電図 (心拍数, 心拍変動) をサンプル負荷前20分間および負荷後40分間測定し, 深部体温 (鼓膜温) , 末梢体温 (足先温) を高感度サーモセンサーで連続測定した。鼓膜温は水・炭酸水ともにSFでは変化せず, 飲水で一過性に低下した。足先温は, 飲水 (水, 炭酸水) で約2.5-3℃低下し, 水SFでは約1℃の低下であったのに対し炭酸水SFでは約2.5℃の低下を認めた。心拍数は, 炭酸水, 炭酸水SFで負荷直後に一過性に上昇した。結果より, 炭酸水の口腔内刺激 (味, 炭酸刺激) のみでも足先温や心拍数を変化させることが示された。
著者
山岡 一平
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.83-89, 2011 (Released:2011-06-10)
参考文献数
24

麻酔薬は体温の恒常性を破綻させ, 体温低下をもたらす。手術時の低体温は種々の合併症とも関連し, 予防策の一環にアミノ酸が混和された輸液製剤が投与される。ラットを用いた本研究では, 麻酔状態でアミノ酸液を持続静脈内投与した場合, 1) 覚醒下に比べて血中インスリン濃度と翻訳開始因子のリン酸化の度合いを著しく上昇させて骨格筋のタンパク質合成を刺激すること, 2) このインスリン高値が骨格筋タンパク質合成, エネルギー消費と腹腔内温度の連関上昇に寄与することを明らかにした。また, アミノ酸投与により筋原線維タンパク質の分解が亢進し, タンパク質代謝回転の向上が体温制御に深く関わることを傍証した。また, 体温保持には分枝鎖アミノ酸群が必要であり, なかでもイソロイシンは血糖調節やエネルギー代謝制御能を有することを示した。これとは別に, 食餌タンパク質が, 深部体温の概日変動の形成に深く関わり, 活動期と非活動期で独自の調節系により緩衝していることを見出した。これらの知見は重要な生命兆候である体温の制御の一端をアミノ酸が負うことを示したものである。
著者
高瀬 幸子 合田 敏尚
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.133-138, 1990
被引用文献数
1

十二指腸粘膜膜酵素活性の誘導機構の解明を目的とし, ふ化前のふ卵14日目のニワトリ胚にヒドロコーチゾンならびにビタミンD<SUB>3</SUB>を投与して (ヒドロコーチゾンは17日目に2回目の投与) 十二指腸粘膜刷子縁の膜脂質の脂肪酸組成に及ぼす影響を観察し, 同時に膜酵素としてスクラーゼとアルカリホスファターゼ活性を測定した。これら膜酵素活性の誘導と刷子縁膜脂肪酸組成の変動との関連について比較検討した。<BR>1) ヒドロコーチゾン投与によりふ卵20日胚の十二指腸粘膜重量, 粘膜DNAおよび粘膜刷子縁の膜タンパク質量が増大したが, DNA当りのタンパク質量は増加せず対照群と同じであった。ビタミンD<SUB>3</SUB>投与ではそのような効果はみられなかった。<BR>2) 十二指腸刷子縁膜脂質の脂肪酸組成は, ヒドロコーチゾンならびにビタミンD<SUB>3</SUB>投与のいずれの場合にも18: 2 (ω6) と20: 4 (ω6) のω6系の長鎖多価不飽和脂肪酸が著明に増加した。<BR>3) ヒドロコーチゾンの投与により, スクラーゼ活性とアルカリホスファターゼ活性が増大した。ビタミンD3投与によりアルカリホスファターゼ活性が増大したが, スクラーゼ活性の誘導は起こらなかった。