22 0 0 0 OA 不思議累々

著者
森川 雅博
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.661, 2016-10-05 (Released:2017-04-21)

巻頭言不思議累々
著者
中村 大輔
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.346-354, 2020-06-05 (Released:2020-10-14)
参考文献数
39

強磁場マグネットと聞いて多くの方が思い浮かべる装置は,研究室での運用が可能で1~10 T程度の磁場を発生できる,市販の電磁石や超伝導マグネットではないだろうか.国内では,それ以上の強磁場は東北大学金属材料研究所の31 T定常ハイブリッドマグネットや,東京大学物性研究所等の75 T非破壊パルスマグネットによって発生できる.これらはソレノイドコイルに電流を流して繰り返し磁場発生ができるマグネットである.物性研究所では,これらとは全く異なる発想で,磁場発生後にマグネットが破壊されることと引き換えに100 T以上の磁場発生が可能な「破壊型」パルスマグネットの開発に長年にわたって取り組んできた.中でも,300 T以上の磁場を発生できる電磁濃縮法を用いた装置は物性研究所でしか運用されていない世界唯一の装置である.電磁濃縮法では数mmの空間に再現性良く磁場を発生できるため,1,000 T級の磁場を用いた物性研究を目標とした技術開発が1970年代から進められてきた.その結果,1995年には550 T,2002年に620 T,2008年には730 Tの最高磁場に到達し,これまでに600 Tに至る磁場下において磁性体やナノカーボン物質を対象とした物性研究が行われた.しかし,1,000 Tを凌駕する超強磁場の発生には,磁場発生電源(コンデンサバンク)の根本的な見直しと,信頼性のある超強磁場測定法の確立という,2つの大きな壁を乗り越える必要があった.そのため,2010年度より開始された新プロジェクトでは,コンデンサバンク電源,電源からの電流が集約される集電板,主コイルのクランプ装置など電磁濃縮法装置の構成要素すべてを刷新し,1,000 T級の磁場発生が可能な総エネルギー5 MJの装置が2018年に完成した.これらの大規模な装置開発と並行して,筆者は1,000 Tを超える磁場の効率的な発生方法を提案した.最適な実験パラメータを数値計算によって探索した結果,磁束濃縮前の初期磁束を抑制することによって,磁束濃縮を行うライナーの最終的な内径がより小さくなり,発生する最大磁場が増加することが示された.しかし,磁場計測に使用されてきたピックアップコイルによる誘導起電力測定では,電磁ノイズの影響や測定リード線の絶縁破壊などにより,従来より小さい径に発生する超強磁場を計測することは困難であった.そこで,筆者は磁気光学的手法であるファラデー回転法を用いた磁場計測プローブを開発した.総エネルギー5 MJの新型電磁濃縮法装置を用いて初期磁束がある程度抑制された下での実験を行ったところ,2018年4月18日に1,200 Tの磁場発生・計測に成功し,電磁濃縮法によって1,000 Tの壁を越えるという長年の宿願が成就した.1,000 T級の超強磁場による効果は,室温の熱エネルギーや物質中でのファンデルワールス結合エネルギーを凌駕し,電子のサイクロトロン運動が原子間隔程度にまで小さくなる.そのため,超強磁場特有の新現象・新機能が現れるだけでなく,既存の強磁場物質科学研究の枠組みを超えて,化学反応や生命科学などの分野との融合的な研究が芽生えることが期待できる.
著者
西本 明弘 水口 毅 狐崎 創
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.758-762, 2009
参考文献数
22

土などの粉と水の混合物が乾燥する際に生じる亀裂は,日常の身近にみられる現象ではあるが,依然としてその詳細はよく分かっていない.最近,デンプンと水の混合物の乾燥過程で発生する亀裂パターンと柱状節理がよく似ていることに注目が集まっている.柱状節理はその美しさから古くより多くの人の興味を引いてきたが,地球物理分野でのフィールドワークによる研究が主であった.乾燥亀裂を詳しく調べ,柱状節理との対比を考えることにより,両方の現象に対する理解の進展が期待できる.
著者
青木 健一郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.435-441, 1995-06-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
14

陽子,中性子,π中間子などのハドロンの物理はQCDによって記述されると現在我々は理解している.QCDにおいてハドロンは基本的構成要素であるクォークとグルオンの束縛状態である.ハドロンの物理をQCDの第一原理より理解することは本質的に相互作用の強い物理の問題であり,素粒子論の長年の課題の一つといえる.QCDでは構成する粒子とその相互作用を記述するラグランジアン,繰り込み可能性など形式的な理論の側面はわかっていながら,低エネルギーでの物理的状態の記述が第一原理より導けないという歯がゆい状況にある.QCDのダイナミックスの問題の多くは一般のケージ理論においても理解せねばならない問題である。この問題の普遍性は,テクニカラーなどの素粒子論のモデルがQCDの理解の上に構成されているだけではなく,物性理論でもしばしばゲージ理論が登場することからも明らかであろう.2次元QCDではハドロンの様々な性質を具体的に計算し,明らかにすることが可能であり,20年前よりQCDの振舞を理解するために数多くの研究がなされてきた.また,弦理論とQCDの関係を明らかにするという観点から現在も盛んに研究されている.昔も弦理論とQCDが関係あるのではないかということが指摘され,研究されていた.20年前に2次元QCDでどのような結果が得られていたのであろうか?また最近どのような新しい成果があり,いかなる研究がなされているのであろか?ということをこの解説では書いてみたい.
著者
小竹 悟
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.156-163, 2016-03-05 (Released:2018-07-20)

調和振動子の量子力学ではエルミート多項式,水素原子の量子力学ではラゲール多項式という具合に,直交多項式は量子力学の問題を扱う際に頻繁に現れる欠かせない存在である.これら直交多項式は数学者によって詳しく調べられてきた.物理学にとって大切な2階微分方程式を満たす直交多項式はエルミート,ラゲール,ヤコビ多項式に限られる事が古くから知られており,2階差分方程式を満たす直交多項式も(q-)超幾何直交多項式のアスキースキームとして1980年代にまとめられている.このように書くともう何も研究する事が無いように思われるかもしれないが,中々どうして最近もまだ進展があり,その内の2つ,生成消滅演算子の自然な構成と,新しい種類の直交多項式について解説する.この発見の原動力となったのが解ける量子力学模型によるアプローチで,その利点は量子力学の研究で培われた知識・手法を用いる事ができる点である.また,直交多項式の性質に統一的な視点を与える事もできた.例えば,アスキースキームの直交多項式が満たしている前方・後方ずらし関係式は個別に述べられているだけであったが,量子力学の観点からは模型の形状不変性の帰結として統一的に理解できる.解ける量子力学模型の生成消滅演算子に関する研究は色々と行われてきたが,それらは具体的な微分演算子としてではなく形式的な演算子に過ぎなかった.前方・後方ずらし関係式はパラメータをずらしてしまうので,調和振動子以外では生成消滅演算子とは別物である.調和振動子の生成消滅演算子が座標のハイゼンベルク解の負・正振動数部分の係数として得られていたのを真似て,アスキースキームの直交多項式が固有関数に現れる量子力学模型に対して生成消滅演算子を微分演算子(差分演算子)として自然な形で構成する事が2006年にできた.これには,閉関係式と名付けられた性質を用いて,正弦的座標と呼ばれる特別な座標のハイゼンベルク解が厳密に求められる事が利用された.通常の直交多項式は全ての次数が揃っている事から完全系をなしているが,次数に欠落があるにも拘らず完全系をなしているものが新しい種類の直交多項式である.2階微分方程式を満たす(通常の)直交多項式はエルミート,ラゲール,ヤコビ多項式に限られるという定理を逃れる試みとして,微分方程式を差分方程式に変更する事でアスキースキームの直交多項式が得られていたが,多項式の次数を見直すという新しい方向への変更である.0次式が存在せず1次式から始まるが完全系をなす最初の例が2008年に与えられ,例外直交多項式と名付けられた.新しい種類の直交多項式を固有関数として持つ解ける量子力学模型を形状不変性や他の手法を用いて構成する事により,新しい種類の直交多項式が無限に多く得られ,多添字直交多項式と名付けられた.この新しい種類の直交多項式の発見は,多少大げさかもしれないが,エルミート・ラゲール・ヤコビ以来の大きな進展と言えよう.差分方程式を満たす直交多項式に対しても多添字直交多項式を構成する事ができ,これらの構成において量子力学的定式化がおおいに役立った.直交多項式に新たな分野を切り開いたこれらの新しい多項式は現在活発に研究が行われている.
著者
内山 泰伸 田中 孝明 田島 宏康
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.649-657, 2017-09-05 (Released:2018-07-25)
参考文献数
38
被引用文献数
1

宇宙線とは,宇宙の彼方から地球に飛来する高エネルギー粒子であり,発見以来100年以上経つ現在もその起源は未解決の問題である.数1,000テラ電子ボルト以下のエネルギーの宇宙線は銀河系内に起源を持つと考えられ「銀河宇宙線」と呼ばれている.銀河宇宙線は星間空間において恒星の形成に直接的な影響を与えるなど,銀河の構造とその進化にも重要な役割を果たしている.銀河宇宙線の大部分は高エネルギー陽子であり,宇宙線陽子1個の平均エネルギー約10ギガ電子ボルトは百兆度の温度に相当する.しかし,宇宙線は通常の意味での温度を持たない.宇宙線のエネルギー分布は,熱的なマクスウェル分布ではなく,ベキ関数分布に従っていて,とてつもなく高いエネルギーを持つ粒子が観測されている.銀河系外から飛来する宇宙線の最高エネルギーは100エクサ電子ボルト(1020 eV)にも達し,LHC(大型ハドロン衝突型加速器)よりも7桁も上である.銀河系外から到来する宇宙線の起源としては,活動銀河核すなわち銀河の中心部にある超巨大ブラックホールが候補天体としてあげられるが,今のところ,説得力のある証拠は得られていない.一方,銀河宇宙線については「超新星残骸起源説」が標準的な学説として広く受け入れられている.超新星残骸の衝撃波において銀河宇宙線が加速されているとする説である.恒星の壮絶な最期である超新星爆発の結果,恒星を構成していた物質は超音速で星間空間を膨張し,超新星残骸を形成する.超音速で膨張する爆発放出物によって駆動された無衝突衝撃波が,宇宙線加速の現場だと考えられている.実際,超新星残骸の衝撃波において,少なくとも10テラ電子ボルトまで高エネルギー電子が加速されていることが人工衛星によるX線観測からわかってきた.しかし,これまでは宇宙線の主成分である高エネルギー陽子が加速されている証拠を得ることができていなかった.2008年に打ち上げられたフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡のLarge Area Telescope(LAT)検出器によるガンマ線観測の結果,超新星残骸において宇宙線陽子が加速されている明確な証拠がついに得られた.特に分子雲と衝突している超新星残骸からは強いガンマ線放射が検出され,それが中性パイ中間子の崩壊ガンマ線であることが精確なスペクトル測定から確認された.超新星残骸のガンマ線観測の結果から,宇宙線のエネルギー総量を推定することが可能になり,超新星爆発の運動エネルギーの数パーセントが宇宙線のエネルギーに移行していることがわかった.フェルミ衛星によるガンマ線観測により,銀河宇宙線の超新星残骸起源説を裏付ける結果が得られたが,決定的な検証は2020年代に本格稼働する次世代の大気チェレンコフ望遠鏡Cherenkov Telescope Array(CTA)によって可能となるだろう.
著者
上野 健爾
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.785-794, 1988-10-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
10
著者
山口 幸司 堀田 昌寛
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.284-288, 2020-05-05 (Released:2020-10-14)
参考文献数
14

量子情報理論に基づく考え方は,量子コンピュータや量子通信の研究だけではなく,ブラックホール物理学や量子カオスなどとも関係して幅広い分野で利用されている.これらの研究とも深く関連する話題として,情報はどこに記憶されるかという基本的な問題について考え,そのひとつの答えである量子情報カプセルという概念を紹介する.量子系には通常,量子もつれと呼ばれる非局所的な相関が存在し,情報も非局所的に記憶される.例として,2量子ビット系の互いに直交する4つの最大量子もつれ状態(|0〉|0〉±|1〉|1〉)/√2と(|0〉|1〉±|1〉|0〉)/√2を考えよう.これらは非局所的な相関の違いによって区別できるが,各々の量子ビットを独立に調べるだけでは区別できない.つまり非局所的な相関にこれらの状態を特徴づける情報が含まれている.相関に含まれる情報の考察に便利な状況設定として,情報ストレージとみなした量子系に情報を書き込んで読み出すことを考える.例として,N個の量子ビットで構成される系を考えよう.あるひとつの量子ビットに未知パラメタに依存したユニタリ操作を行い,このパラメタの情報を読み出す.古典的類推から,書き込みを行った量子ビットから読み出せると想像するかもしれないが,それは正しくない.局所的な操作は非局所相関にも影響を与え,情報は自動的に非局所相関にも含まれるようになる.N量子ビット系が純粋状態にあるとき,非局所相関に書き込まれた情報もすべて読み出すには,単純には4N-1個の相関関数を測定すればよい.しかし書き込んだ情報を記憶する相関が同定できればそれ以外は測る必要はない.純粋状態にある部分系は,他の部分系とは相関がないため情報のひとつのユニットとして働く点で重要である.純粋状態にある部分系としてよく用いられるのが,純粋化パートナーである.今のようにあるひとつの量子ビットに書き込み操作を行う場合,純粋化パートナーの組で情報を共有しているとみなすことができる.初期状態において書き込みを行う量子ビットのパートナー量子ビットを探しておけば,その2量子ビット系は純粋状態であるため情報は外にもれない.この場合,15個の相関関数を測定すると情報が読み出せる.最近我々は量子情報カプセルという新しい概念を提案した.純粋化パートナーに共有されていた情報をうまく分解すれば,空間的に拡がったひとつの量子ビットが純粋状態として情報を記憶しているとみなせる.この量子ビットのことを量子情報カプセルと呼び,任意の初期状態に対して存在が証明できる.このとき情報を読み出す際に測定すべき相関関数は激減して3個になる.複数パラメタの情報の書き込みと読み出しを考えると,情報の独立性が失われて一般には情報の記憶構造は複雑になる.カオス的なダイナミクスで系をかき混ぜると,実は独立な量子情報カプセルが現れることで情報が互いに混ざり合わないことがわかった.これはフィッシャー情報行列に回転対称性が創発することを意味している.ガウス状態にある調和振動子系と量子場においては量子情報カプセルを探し出す公式を示すことができる.この公式からパートナーを同定する公式を導けるため,量子情報カプセルはパートナーよりも基礎的な概念であるといえる.この公式を量子場を媒介とした情報伝達過程の解析に応用し,量子もつれを利用して情報伝達効率を上げることが可能なことがわかった.特に,情報のシグナルが伝搬する因果円錐の外側で行う測定によっても情報伝達効率を向上させられることが明らかになった.更に,量子情報カプセルは量子衝撃波による情報伝達過程の解析にも応用可能である.
著者
今田 正俊
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.437-446, 1993-06-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
61
被引用文献数
1

「量子モンテカルロ法」とは何だろうか?多体量子系に対する数値計算の手法はいろいろあるが,そのうち「量子モンテカルロ法」は経路積分に基礎を置くものの総称である.経路積分が典型的な非摂動論的手法であることは知られている.ところで,物性物理学の研究の動向に目を向けてみると,強く相関する電子系の諸問題が困難な,しかし根本的な課題として広く認識されている.やや誇張していえば,強相関電子系の長い研究の歴史にもかかわらず,はっきりしたことは何も解明されていないというわけである.世に言う「高温超伝導」(すなわち銅酸化物超伝導体)の問題がその典型である.強相関電子系にアタックするのに適した非摂動論的手法として,「量子モンテカルロ法」の開発と応用が最近進んできた.まず開発途上のこの手法の現状に目を向けるのがこの解説の目的の一つである.強相関電子系の示す典型的な現象にモット転移(金属-絶縁体転移)がある.金属が絶縁体に転移するとき,電子の有効質量が発散するのか,それともキャリアの数がゼロになるのかという異なる二つの考え方がある.この対立概念を源として,金属-絶縁体転移に関する量子モンテカルロ計算の結果はより広範で基本的な問題提起へとつながってゆく.この問題を「量子モンテカルロ法」の応用例として考えてみるのが本稿のもう一つの目的である.
著者
グレゴリー・A グッド 有賀 暢迪
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.12, pp.856-859, 2019-12-05 (Released:2020-05-15)

話題未来のために歴史を残す――アメリカ物理学協会(AIP)のオーラル・ヒストリー
著者
並木 美喜雄
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.19-26, 1989-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
34
被引用文献数
2

1987年4月から10月までの僅か半年の間に量子力学の基礎についての国際会議が5回もあった. この年はシュレーディンガー(E. Schrodinger)の生誕百年に当たっていたこともあって, それを記念しての集会が多かった. ちなみに, シュレーディンガーは1887年8月12日に生まれている. 1987年以前にも, 1983年からの4年間に10回ほど会議が開かれていたのである. 量子力学の発足を1925年とすれば, 1985年は量子力学還暦の年であるし, 同時に先達ボーア(N. Bohr)の生誕百年記念の年でもあった. これら以外にも, いくつかの記念集会があった. たしかに, 量子力学はこの数年間に記念碑的な折り目節目を通過してきたわけだ. しかし, それだけでこれほど多くの会議は開けない. 理論的展開とともに, いやそれ以上に, 技術革新による原理的実験の発展があり, 観測問題自身が全く新しい時代を迎えつつあるからである. ここでは会議の一部を紹介すると同時に, 量子力学の原理的諸問題に関する最近の話題について語りたい. ただ, 私もすべての会議に出席したわけではないし, 話の内容も私自身の興味に偏るであろうことをお断りしておく.
著者
河村 豊
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.706-710, 2016-10-05 (Released:2017-04-21)
参考文献数
26

変わりゆく物理学研究の諸相―日本物理学会設立70年の機会に日本における物理学研究の転換点をふりかえる―(歴史の小径)島田実験所という研究プロジェクト:戦時科学動員は何をもたらしたのか

18 0 0 0 OA 分裂するスピン

著者
求 幸年
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.852-853, 2017-12-05 (Released:2018-09-05)
参考文献数
4

現代物理のキーワード分裂するスピン
著者
相川 恒 小林 研介 中西 毅
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.682-689, 2004-10-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
35
被引用文献数
1

電子を微小な領域に閉じ込めた量子ドットは人工的に制御可能な量子系であり,少数多体問題,量子カオス,量子デコヒーレンスなどの舞台として注目されてきた.最近,エネルギースペクトルばかりでなく干渉実験によって位相情報を抽出しようという試みが始まり,また新たな問題提起もなされている.本稿では干渉実験で何が問題となったかについて,そしてそれを解決することによって明らかになった量子ドットの電子状態の性質について解説する.
著者
宮本 岩男
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.103-107, 2022-02-05 (Released:2022-02-05)
参考文献数
5

話題ビックデータ解析基盤(e-CSTI)を活用し「選択と集中」について考える
著者
笹本 智弘
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.380-381, 2019-06-05 (Released:2019-10-25)
参考文献数
3

特別企画「平成の飛跡」 Part 2. 物理学の新展開非平衡系における普遍性と数理――KPZ方程式を例として