著者
谷口 初美 山田 美恵子 内藤 知佐子 内海 桃絵 任 和子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.2_71-2_79, 2014-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
34

【目的】新人看護師のリアリティ・ショックの現状を理解し,大学から臨床へのスムーズな移行を促す看護基礎教育のあり方を探ること。【研究方法】A大学を卒業後,A大学の附属病院に就職した新人看護師10名を対象に,質的研究の記述的現象学を用い実施した。本研究はA大学医学部とA大学病院看護部の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】新人看護師のリアリティ・ショックの要因として,①求められる能力のハードルが高すぎ,何もできない自己に対するショック,②職場における先輩との人間関係がクローズアップされ,基礎教育のときから臨床現場に即した看護ケア,high riskケアと接遇の必要性が明らかになった。【考察】安全で質の高い臨床実習を保障するため先進国が実施している大学と臨床が協働で取り組むシミュレーション教育のシステム構築の必要性が示唆された。
著者
村上 美華 梅木 彰子 花田 妙子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.4_29-4_38, 2009-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
28

本研究は,外来通院中の2型糖尿病患者を対象として自己管理を促進する要因,および阻害する要因を明らかにすることを目的とした。研究方法は,質的記述的研究である。研究参加者は糖尿病患者16名で,半構成的面接調査を行った。 その結果,糖尿病患者の自己管理を促進する要因は,【糖尿病と向き合う】【自己管理の実行を意識化する】【取り組んだ効果を実感する】,医療者や同病者などと【支援環境を形成する】であった。反対に,患者の自己管理を阻害する要因は,【糖尿病と向き合えない】【糖尿病である自分自身や生活が重荷になる】【支援環境が広がらない】であった。 糖尿病患者が主体的に自己管理を継続できるために,看護者は糖尿病と向き合えるように支援すること,実施した効果を実感できるように働きかけること,負担感や孤立感を緩和することが重要である。
著者
和泉 美枝 眞鍋 えみ子 植松 紗代 渡辺 綾子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20170224001, (Released:2017-12-18)
参考文献数
38

【目的】産後女性の肥満予防の基礎データを得るため,産後の身体組成とエネルギー代謝に関連があるとされる自律神経活動の推移と関連を明らかにすることとした。【方法】非妊娠時BMIやせまたは標準で,産後1年以内に3回協力の得られた女性49名を対象とし,身体組成(体重・体脂肪率)と自律神経活動を測定した。【結果】体重と体脂肪率は産後の経過に伴い有意に減少していたが,産後9~12か月で「隠れ肥満傾向」34.7%,「隠れ肥満」16.3%,非妊娠時BMI標準者(35名)で非妊娠時体重への未復帰者28.6%であった。自律神経活動は産後時期による差はなかった。1日あたりの体重や体脂肪率の減少量と交感神経活動指標は負の相関,副交感神経活動指標は正の相関がみられた。【結論】産後1年の経過に伴い体重や体脂肪率は減少を示し,自律神経活動は変化しなかった。しかし,体重や体脂肪率の減少には自律神経活動の関連が示唆された。
著者
野中 光代 古田 加代子 柴 邦代
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20190218050, (Released:2019-06-07)
参考文献数
27

目的:自閉症を伴う在宅重度知的障害者が誕生してから肥満に至った現在までの母親の肥満に関する認識と行動のプロセスを明らかにし,肥満の管理に関する看護支援を検討すること。方法:母親10名に体型の経過の中で記憶に残っている出来事について半構造化面接を行い,M-GTAを用いて分析した。結果:自閉症を伴う在宅重度知的障害者の誕生から肥満に至るまでの母親の認識と行動のプロセスは,母親は自閉症,重度知的障害によっておこる食事や多動の問題に必死に対処するうちに,〔自立困難な子への愛着〕にも助長され,肥満につながる【平和希求の食のパターン化支援】をせざるを得ず,さらに〈肥満の認知〉後は【減量のためのパターン崩し】を試みるが,【平和希求の食のパターン化支援】に傾きがちで肥満容認に至っていた。結論:看護への示唆として【減量のためのパターン崩し】の強化と【平和希求の食のパターン化支援】の弱化の必要性が示唆された。
著者
泊 祐子 堀 智晴 曽和 信一 早川 淳 又賀 淳
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.2_9-2_18, 1987-06-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
18

本研究は,自宅分娩時代の産婆の仕事を検討することにより,地域で果たしていた役割を明らかにすることを目的とした。 方法は兵庫県但東町にお住まいの大正末期から昭和の初めにかけて開業を始めた3人の産婆からの聴取り調査により行った。 自宅分娩時代は,産婆と産婦との付き合いは長く,産婆は産婦の家などの環境についても良く知っていたし,過去の妊娠歴などの情報も豊富に持っていた。そのため産婦への援助は情報量に対応して個別性が図れた。そして,産婦側でも産婆が自分について知ってくれているので,すぐに相談も可能であり,精神的な安定につながっていたと思われる。 妊娠・出産・育児は決して母親1人に任せることではなく,家族・地域の人達・医療関係者などが協力し合う中でなされることではないだろうか。そのためにも地域の機能の活性化が必要であろう。
著者
濱田 真由美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.4_75-4_87, 2016-09-20 (Released:2017-03-18)
参考文献数
33

目的:授乳支援を行う助産師の経験を明らかにすることである。方法:助産師6名に参加観察および半構成的面接法を行い,得られたデータを質的帰納的に分析した。結果:助産師は授乳支援を行うなかで【授乳支援に対する信念が揺れ動く】【授乳支援に不確かさや迷いがつきまとう】【母親の実情に沿い,かつ母子の利益が最大限になる授乳支援を開拓する】【授乳支援のむずかしさのなかから母親との隔たりを埋める手がかりを感じとる】【組織の円滑な運営のために個人的な不満や見解は差し控える】という経験をしていた。結論:本研究の結果から,先行研究で浮かび上がった母乳育児推進を前提とした授乳支援の問題状況が研究参加者の世界にも内在することが見出された。母親の多様性を考慮した豊かな知識を構築するためには,助産師の経験を正当な知識として認め,蓄積していく必要が示唆された。
著者
新谷 理恵子 佐藤 三穂 大友 里奈 佐藤 靖 佐藤 隆太 中山 瑛里 大萱生 一馬 奥村 美灯 逸見 奈緒 矢野 理香 髙橋 久美子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20210816139, (Released:2022-01-24)
参考文献数
18

目的:北海道の高度急性期医療を担う病棟看護師がCOVID-19患者の受け入れを開始してからどのような体験をして,どのような心理状況にあったかを明らかにする。方法:病棟看護師13名を対象にフォーカス・グループインタビューを行い質的に分析した。結果:【患者の受け入れ決定に対する葛藤】,【未知で新規の感染症であることに由来するつらさ】,【自分や家族の感染に対する不安】などを経験し,【看護を続ける中で生じるジレンマ】,【患者の看取りに関わる中での複雑な思い】を持っていた。一方で【病院が体制を整えようとしてくれていることへの安心感】,【協働しながら実践できているという思い】,【看護への責任と成長】を感じていた。結論:病棟看護師はつらさや葛藤といった心理状況があった一方で,看護を継続できている思いも持っていた。これらの経験の理解がより良い看護に向けた看護管理体制の整備に重要である。
著者
山本 孝治 中村 光江
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20180706031, (Released:2018-11-30)
参考文献数
24

本研究の目的は,青年期以前に発症した中年期のクローン病患者がこれまでどのように生活を再構築してきたのか,今後どのように病気とともに生活しようと考えているのかを明らかにすることである。中年期クローン病患者7名を対象とし,半構成的面接から得られたデータを質的に分析した。その結果,[再構築の契機となる経験][調子のよさを維持させる][体調コントロールの軸は自分][体調を優先させて生きる強さをもつ][自分の感覚が頼り][体得した自分流の工夫を生活に組み入れる][加齢や合併症出現による将来の生活の不安]の7つのカテゴリー,[乗り越えてきた喜びと自信][豊かに生きていく]の2つのコアとなるカテゴリーが抽出された。生活の再構築は繰り返され,病気や加齢による影響をふまえ,自分らしく豊かに生きていこうとするものであった。患者が自分流の工夫を実践し振り返りながら修正させ発展できるような支援が必要である。
著者
佐藤 美佳
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.2_35-2_46, 2013

【目的】自己決定理論を礎に,看護学生の友人関係への動機づけの程度と自律性欲求,有能さの欲求,および学習動機づけとの関連を明らかにし,自律的動機づけを支援する教育方法の示唆を得る。【方法】看護学生を対象に自記式質問紙調査を実施し,分析・考察した。【結論】①看護学生は,看護系以外の大学生より自律的な友人関係への動機づけをもっている。②看護学生は,看護系以外の大学生・短大生より自律的な学習動機づけをもっている。③友人関係への自律的な動機づけは,自律的な学習動機づけの要因となる。④自尊感情を先行要因とした自律性欲求の自己決定は,自律的な学習動機づけの要因となる。⑤看護学生の自律的な友人関係への動機づけは,自尊感情や自律性欲求からは直接的に影響を受けない。⑥仮想的有能感は友人関係への動機づけ,および学習動機づけを低くする要因となる。⑦仮想的有能感は自律性欲求の独立の先行要因となる
著者
佐藤 好恵 成田 伸 中野 隆
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_45-1_52, 2005-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
19

殿部筋肉内注射実施時の安全性について検討するため,代表的な殿部筋肉内注射部位である「四分三分法の点」および「クラークの点」において,実習用遺体18体33側の皮脂厚および筋の構造,各点と上殿神経との解剖学的位置関係について調べた。また,健康な成人女性32名(20~55歳)64側の殿部について皮脂厚を計測した。「四分三分法の点」では「クラークの点」よりも皮脂厚が有意に厚く(p<0.001),そして12側に皮脂の直下に大殿筋が分布していた。中殿筋の厚みは「クラークの点」(2.1±0.8㎝)の方が「四分三分法の点」(1.7±0.7㎝)より厚かった(p<0.01)。また「四分三分法の点」では,注射針を直角に小殿筋表層まで刺入した時,上殿神経への刺入が10側(30.3%)あった。このことから,「クラークの点」の方が,「四分三分法の点」よりも中殿筋に安全に注射針を刺入できると考えられた。
著者
布川 真記 古瀬 みどり
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.2_93-2_100, 2009

本研究の目的は,外来化学療法中のがん患者が,どのようにセルフケア行動を行い治療を継続しているのかを明らかにすることである。研究対象者は,外来化学療法を行っているstageⅢの消化器がん患者11名である。半構成的面接法による調査を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにて分析した。患者がセルフケア行動を取り治療を継続する過程には,治療に伴う身体変化の自覚,セルフケア行動,健康を判断できる条件,支援者,治療に対する満足感と"家族を守るために長生きしたい"があった。患者が取るセルフケア行動には,体重を自己管理の目安にする,日常生活の規則化,日常生活と治療の折り合いをつける,医師との有効な治療関係の維持があった。患者は,セルフケア行動を行うことによって自分自身の健康が判断できており,満足感を得ていた。そして,治療に対する満足感は,患者のセルフケア行動を後押ししていた。外来化学療法患者がセルフケア行動を取り治療を継続できるよう支援するためには,患者自身が健康を判断できるような指導と治療に対する満足感を高められるような外来サービスの提供が必要であると示唆された。
著者
室田 昌子 北島 謙吾 岩脇 陽子 滝下 幸栄 松本 賢哉
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.4_83-4_95, 2014-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
20

アーユルヴェーダを基盤とした専門的な頭部へのマッサージ技術(ヘッドトリートメント)が心身に与える影響を明らかにする。対象者は健康な女性25名である。洗髪後に5分間,坐位を保つ統制群,ヘッドトリートメントを行う介入群Ⅰ,アロマオイルヘッドトリートメントを行う介入群Ⅱの3群を,同一対象者に1週間以上の間隔をあけて行った。生理学的指標として腋窩温,血圧,LF/HF,ストレス値を,心理学的指標として倦怠・活動的快・非活動的快,STAI状態不安を測定した。 その結果,統制群に比べてヘッドトリートメントおよびアロマオイルヘッドトリートメントは,副交感神経優位の傾向が示唆され,倦怠感や不安が減少し,のんびり感が増加した。とくに爽快感の獲得および倦怠感の軽減の持続は,アロマオイルヘッドトリートメントに特徴的であった。以上のことから,ヘッドトリートメントおよびアロマオイルヘッドトリートメントのリラクセーション効果が示唆された
著者
竹内 陽子 長谷川 雅美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.4_13-4_24, 2012-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
25

本研究は,前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia:以下,FTDとする)の視覚空間認知機能が保たれている点を重視して,自閉症患者用のTEACCHプログラムの活用に着目した。本研究の目的は,FTD患者の特徴を活かしてTEACCHプログラムの一部にある「構造化」による介入を行うことで,その有用性を検証することである。対象者は,認知症専門病院でFTDと診断された10名のうち,同意が得られた4名であった。対象者には,視覚的な構造化,時間の構造化,空間の構造化,作業の構造化の4つの構造化プログラムで約3か月間介入した。分析は,FTD患者の反応や変化から構造化プログラムのどの要素に有用性があるかを検証した。その結果,視覚的な構造化,時間の構造化,作業の構造化で有用性が認められたが,空間の構造化に対しては,有用性は判定できなかった。本研究から,FTD患者の日常生活援助として構造化プログラムを活用することの有用性が示唆された。
著者
京田 亜由美 神田 清子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20180413019, (Released:2018-09-06)
参考文献数
36

【目的】在宅緩和ケアを受ける終末期がん患者の“生と死”に関する体験を明らかにすることである。【方法】予後半年以内で,在宅緩和ケアを受けている患者5名を対象に,半構造的面接法と参加観察法を用いてデータを収集し,Giorgiの現象学的心理学アプローチの方法を用いて分析した。【結果】在宅終末期患者は【残された時間は長くはないと自覚しながらも抱き続ける生への希求】と【逃れられないのならせめて“自然な死”を望む】気持ちから,【生への希求とせめて穏やかな死への望みの間の揺らぎ】となっていた。また在宅療養を支える周囲への感謝と負担感という【生にも死にもつながりうる家族や周囲の人への思い】を抱きながら,【自己を超越した存在】を意識していた。【結論】看護師が患者にそれまでの人生を振り返る問いかけを行うことの有効性と,家族とともに過去の看取り体験への語りを促すことの重要性が示唆された。
著者
中村 史江 山門 實
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.5_927-5_935, 2023-01-20 (Released:2023-01-20)
参考文献数
20

目的:看護師の勤務体制を16時間夜勤から13時間夜勤へ変更することによる,心の健康度と疲労蓄積度,酸化ストレスバランスの変化を検証した。方法:13時間夜勤体制(実施群)と16時間夜勤体制(対照群)に勤務する16名(各群8名)を対象に,実施前と3ヶ月後、1年後に,心の健康度と疲労蓄積度および酸化ストレスマーカーを調査し,終了後に質問紙調査をした。結果:心の健康度は,13時間夜勤群が実施前より有意に高く,質問紙調査にて心身の楽さなどが抽出された。酸化ストレスバランス度(BAP/d-ROM)比は,16時間夜勤群で経時的に有意に低下したが13時間夜勤群では変化しなかった。結論:13時間夜勤交代制への変更は,主観的に心の健康度が増加して仕事と生活に充実感が得られ,また身体的な疲労感の客観的指標である抗酸化力を示す酸化ストレスバランス度は,16時間夜勤群で経時的に悪化し13時間夜勤群は維持された。
著者
川内 健三 天谷 真奈美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.2_1-2_11, 2013-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
29

研究目的は,精神障害者の療養生活を支援する病棟看護師が,地域への移行や地域生活の安定に向けた訪問看護を実施するなかで感じる困難について明らかにすることである。精神科病棟で3年以上経験し,かつ現在,精神科病棟に所属して精神科訪問看護を行っている看護師15名に対し半構造化面接を行い,Berelsonの内容分析にて分析した。 その結果,病棟看護師は病棟看護と訪問看護による発想の開きから生じる困難,訪問看護に関する病院組織の不十分な実施支援態勢からくる困難,限られた時間や空間で迅速な判断を1人で行う困難,精神障害者が地域生活をするうえでの特質に基づく困難を感じていた。 このような困難をもつ看護師の支援には,精神障害者の地域生活に触れ,地域での支援方法を学ぶ機会を設ける,病院組織の看護部門主導の訪問看護実施体制の確立等で困難の軽減につなげることが必要と考える。
著者
西浦 ちひろ 山田 一朗 中谷 茂子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.5_93-5_101, 2006-12-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
22

昨今,我が国においてもDomestic Violence ; DVに対する社会的関心が高まっている。しかしながら,方法論的問題点から,DVの実態を把握することはきわめて困難である。 そこで本研究では,大阪府T市内の某救命救急センターにおけるDV被害者の状況について明らかにすることを目的とした。 調査の結果,DV被害者と考えられた患者数は,1998年から2001年の間に,女性8人,男性1人であった。主に看護記録による情報から,DVと判断されるまでの経緯は「入院時に被害者自身が告白した」「入院時に被害者の家族が告白した」「入院時に加害者が告白した」「治療経過の中で被害者が告白した」の4パターンに分類できた。さらに,医療者のDVに対する知識が不充分であったために,彼らが被害者の家族や関係機関との連携的役割を充分に果たしていないという現状が明らかとなった。 DV患者の早期発見と治療に向けた,効果的システムの構築が望まれよう。