著者
Simon Croft 北 潔
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.149, no.5, pp.220-224, 2017
被引用文献数
1

<p>リーシュマニア症は典型的な「顧みられない熱帯病(neglected tropical diseases:NTDs)」の一つであり,中南米,アフリカから中近東,ヨーロッパ,アジアそしてインドと世界中に患者が見られる点が特徴である.単細胞の寄生虫で鞭毛虫類に属するリーシュマニア<i>Leishmania</i>によって発症し,サシチョウバエによって媒介される.宿主哺乳類の中ではマクロファージに寄生していることからワクチンによる予防や治療は困難であり,薬剤による治療が中心となっている.しかし治療薬の現状は,長期の投与や激しい副作用など満足できる状態ではない.そこで,薬剤開発と治療デザインを考えるにあたっては,リーシュマニア症の特徴である多様な症状と病原体の原虫としての多様性を理解することが必須である.リーシュマニア症は2つに大別され,皮膚リーシュマニア(cutaneous leishmania:CL)においては主に感染がサシチョウバエに刺された部位に成立するが,<i>Leishmania donovani</i>や<i>L. infantum</i>などによる内蔵リーシュマニア(visceral leishmania:VL)では肝臓や脾臓,骨髄のマクロファージに感染し,治療しなければ死をもたらす.このような問題を解決するには安価で投与しやすく効果的で,しかも小児への投与を含む短期間投与が可能な新規薬剤の開発が喫緊の課題である.VLとCL両者のリーシュマニア症の新しい治療法の開発は不可欠であり,われわれはこの原虫に関する生物学,病理学,医薬品化学,薬物動態学や製剤学などを統合して新薬の開発と新たな治療法の確立をめざしている.近い将来にリーシュマニア患者に新しい治療法が提供されることを確実にするためには製薬企業,政府や非営利組織を含む国際機関,バイオテクノロジーセクターおよびアカデミアのパートナーシップと弛まぬ努力が必要である.</p>
著者
伊藤 幹雄 横地 英治 鬼頭 利宏 鈴木 良雄
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.419-425, 1981
被引用文献数
2

糸球体腎炎の発症および増悪において,血液凝固系の役割を明らかにするために,liquoid(Liq)を正常あるいは腎炎ラットに反復投与した場合の影響について検討した.正常ラットに Liq 10mg/kg 毎日1回計22回 i.v. 投与(I群)した場合,尿中への蛋白,N-acetyl-β-glucosaminidase の排泄,血中尿素窒素含量は正常対照群と比較して,ほとんど変わらなかった.また,抗ラット糸球体基底膜ウサギ血清(AGS)[0.5ml/150g体重]のi.v. 投与後15日目から Liq を 10mg/kg,3日目毎に計8回 i.v. 投与(III群)しても,毎日1回計22回 i.v. 投与(IV群)しても,これらの生化学的パラメーターは AGS のみを投与した腎炎対照群(II群)との間に有意差を認めなかった.螢光抗体法による糸球体への fibrin あるいは fibrinoids の沈着は弱かったが,10匹中I群およびII群では2匹,III群では8匹,そしてIV群では10匹に認められた.光顕所見ではI群においても係蹄壁とボウマン嚢との癒着,富核,半月体形成や硝子化を示す糸球体が少数例認められた.腎炎ラットに対する Liq の影響に関して,特に硝子化が顕著となり,硝子化を示す糸球体はII群ではわずか17%であるのに対してIII群では14%,IV群では55%であった.他の糸球体変化は富核を除いてII群に比しIII群では変わらなかったがIV群では明らかに増加を示した.しかし富核は逆にIII群,IV群では減少した.糸球体毛細管腔閉鎖はI群でも軽度ながら認められた.また腎炎群においてはII群に比しIV群ではその閉鎖の程度は明らかに強度であった.以上の結果から,糸球体内の血液凝固亢進が,糸球体腎炎の発症,増悪の主要な因子と考えられる.
著者
小川 治克 田所 作太郎
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.560-571, 1972

Doxepin, one of tricyclic antidepressants was examined as to whether or not it possesses a diazepam-like effect. Water-deprived rats were tested in an apparatus where they drank water under two kinds of conflict schedules.<br> A clear diazepam-like effect was observed after long term administration of doxepin in the approach-withdrawal conflict schedule, although the potency was weaker than that of diazepam. In approach-avoidance conflict schedule a slight effect only was exhibited after doxepin.<br> No marked sign was detected in the experiments after withdrawal of daily administration of doxepin.
著者
田島 清孝 南里 真人
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.116, no.4, pp.209-214, 2000-10-01
参考文献数
14
被引用文献数
1

ミオクローヌスは一連の筋肉群に発生する突然,急速,短時間の不規則な不随意運動であり,進行性ミオクローヌスてんかん,低酸素脳症,アルツハイマー病などの疾患に伴って出現する,希ではあるが機能障害を示す極めて難治性な疾患である.ピラセタム (2-oxo-1-pyrrolidin-eacetamide,ミオカーム&reg;)は30年以上も前に開発された環状&gamma;-アミノ酪酸 (cyclic GABA) の誘導体であり,認知記憶障害の治療薬としてヨーロッパ各国で臨床使用されている.更に,ピラセタムは皮質性ミオクローヌスに対する抑制作用が報告されているが,ミオクローヌスの原因が不明であり,ピラセタムのミオクローヌスに関する基礎試験はほとんどなされていない.今回,ラットに尿素を過剰量投与した際誘発されるミオクローヌスに対するピラセタムの抑制作用を筋電図により検討し,抗てんかん剤クロナゼパムの抑制効果と比較した.尿素 4.5g/kg (i.p.) で誘発されるミオクローヌスにおいて,ピラセタム300mg/kg (i.p.) およびクロナゼパム 0.3mg/kg (p.o.) は,有意なミオクローヌス抑制作用を示した.また,それぞれ単独では効果を示さない用量のピラセタム 100mg/kg とクロナゼパム 0.03-0.1mg/kg を併用すると,有意なミオクローヌス抑制作用を示した.体内動態試験では,本剤は経口投与後,体内でほとんど代謝されず,ほぼ全量が尿中に未変化体として排泄され,ヒト血清タンパク質との結合率は低かった.7日間反復投与 P-I 試験においても,本剤は蓄積性を示さなかった.臨床試験は,イギリスでプラセボを対照薬とした二重盲検交叉法試験を実施し,皮質性ミオクローヌスに対する改善作用が示された.国内のP-II試験では,ミオクローヌスの有意な抑制作用と患者の quality of life (QO:L) の改善作用が示された.以上の結果から,ピラセタムは抗てんかん剤と併用することで難治性ミオクローヌス患者のミオクローヌスを抑制し,QOLを改善するという臨床上の有用性を示すことが明らかとなった.
著者
林 元英
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.193-203, 1977 (Released:2007-03-29)
参考文献数
7
被引用文献数
36 45

紫根の色素成分であるshikoninおよびacetylsikoninにっいてその薬理作用を試験した,両色素の構造的相違はacctyl基の有無であり,構造の類以性と共に薬理作用も同様で効力に僅かの差が認められたのみであった.経口投与における主な作用は,血管透過性亢進および浮腫の急性炎症反応に対する抑制作用と軽度な下熱作用で,前報の紫根工一テルエキスの作用と同じであった.摘出臓器に対しては心房運動を促進し,血管を収縮させた.しかしこの作用はtolazolilleやpropranololの前処置によって影響されなかった.また高濃度では腸管を弛緩し,腸管収縮物質に拮抗した.これらの作用は自律神経系あるいはその受容体に働くものではなく,色素のもつ刺激作用による直接作用と思われた.色素は全身投与において血液凝固に影響しなかったが,heparinの凝固抑制作用を阻止した.この作用が血液凝固抑制因子に拮抗して,静脈瘤などの血栓形成を促進して痔疾の治療に有益に作用するかもしれない.他方色素を軟膏として局所に適当した場合は,血管透過性充進ならびに浮腫の急性炎症反応を顕著に抑制した.他方肉芽増殖に対しては増大作用を示し,創傷治癒を明らかに促進させた.この局所作用は製剤である紫雲膏の薬効を推定するものであるが,この点についてはさらに検討中である.
著者
前島 裕子 Sedbazar Udval 岩崎 有作 高野 英介 矢田 俊彦
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.137, no.4, pp.162-165, 2011 (Released:2011-04-11)
参考文献数
24
被引用文献数
1

近年,世界中で肥満人口が増加し,深刻な健康上の問題となっている.肥満は摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることで生じるが,過食はその最大の原因である.近年中枢における摂食調節メカニズムの研究が進展し,レプチン,アディポネクチンなどのアディポサイトカイン,グレリンなどの消化管ホルモンが中枢作用により摂食調節に関わることが分かってきた.2006年にnesfatin-1が新規満腹因子として発見され,その後5年が経過し,その摂食抑制メカニズムの解明が進み,さらに血圧・ストレスなどにおける新たな機能も明らかになりつつある.Nesfatin-1は多くの摂食関連神経核に分布しているが,特に視床下部室傍核のnesfatin-1が生理的な摂食制御に関与しており,室傍核においてnesfatin-1はオキシトシンニューロンの活性化と分泌を促し,オキシトシンはその投射先の延髄の孤束核プロオピオメラノコルチン(POMC)ニューロンを介して摂食を抑制することが明らかになった.この室傍核nesfatin-1/oxytocin→脳幹POMC系はレプチン抵抗性の動物においても正常に作動することから,レプチン抵抗性を呈する場合が多いヒト肥満への治療応用が期待される.またnesfatin-1は末梢組織である脂肪,消化管,膵臓等に分布すること,末梢投与nesfatin-1も摂食を抑制することが報告されており,末梢組織由来nesfatin-1の摂食その他の機能の解明は今後の重要な課題である.
著者
川道 穂津美 岸 博子 加治屋 勝子 高田 雄一 小林 誠
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.133, no.3, pp.124-129, 2009 (Released:2009-03-13)
参考文献数
17
被引用文献数
1

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患やくも膜下出血後の脳血管攣縮などの疾患は,合計すると我が国の死因の第2位を占める.これらの血管病の原因は2つあり,一つは,長い年月を掛けて発症する動脈硬化であり,もう一つは,急性発症の血管攣縮,すなわち,血管平滑筋の異常収縮である.この血管異常収縮は,血圧維持を担っている細胞質Ca2+濃度依存性の正常収縮とは異なり,Rhoキナーゼを介する血管収縮のCa2+感受性増強(Ca2+-sensitization)によることが知られているが,その上流の分子メカニズムについては不明な点が多い.本稿では,この血管異常収縮の原因分子の1つとして見出されたスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)が引き起こすSPC/Srcファミリーチロシンキナーゼ/Rhoキナーゼ経路について解説する.SPCとRhoキナーゼを仲介する分子として同定されたSrcファミリーチロシンキナーゼに属する分子群の中でも,Fynが血管異常収縮に関与しているという直接的証拠を蓄積してきたので,本稿では,これらの直接的証拠を得た方法と結果について解説する.さらに,Fynを標的にしてその機能を阻害する事によって,Ca2+依存性の血管収縮には影響を与えず,SPCが引き起こす血管異常収縮のみを選択的に抑制する分子標的治療薬として同定されたエイコサペンタエン酸(EPA)の効果について記述する.
著者
村上 泉 浅野 正一 幸重 浩一 長屋 秀明 佐藤 宏 稲富 信博
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.323-332, 1996-12-01
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

ランソプラゾールの急性胃粘膜病変に対する治療効果を検討する目的で, ラットを用いインドメタシンによる胃出血と胃粘膜損傷に対する作用を静脈内投与で検討し, オメプラゾール, ファモチジンおよびラニチジンの作用と比較した.インドメタシン30mg/kg投与により胃出血が惹起されるが, この条件下にランソプラゾールを投与すると強い胃出血抑制作用を示し, ID<SUB>50</SUB>値は0.29mg/kg, i.v.であった.オメプラゾールおよびファモチジンも有意な胃出血抑制作用を示したが, ラニチジンは軽度な抑制しか示さなかった.ランソプラゾールの胃出血抑制作用は酸分泌抑制作用と相関し, 灌流液中に50mM塩酸を添加することにより消失したことから, ランソプラゾールの胃出血抑制作用は主として酸分泌抑制作用に基づくと考えられた.ランソプラゾールはインドメタシンによる胃粘膜損傷の進展に対して抑制作用を示し, ID50<SUB></SUB>値は0.10mg/kg, i.v.であった.オメプラゾール, ファモチジンおよびラニチジンのID<SUB>50</SUB>値は各々0.69, 2.58および24.6mg/kg, i.v.であり, ヒスタミンH2受容体遮断薬の作用は比較的弱かった.以上の成績からランソプラゾ-ルは胃出血および胃粘膜損傷の進展に対して強い抑制作用を有し, 急性胃粘膜病変の治療に有用と考えられた.
著者
小澤 光
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3-4, pp.172-177,en11, 1951-11-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
14
被引用文献数
3 4

In order to determine the differences in effect of methyl and ethyl radicals in pharmacological actions, I compared compounds having one, two, or three methyl radicals with those in which the methyl radicals had been substituted with the ethyl radicals respectively and vice versa. Results : (1) For comparing the differences in effect of methyl and ethyl radicals in compounds having single methyl or ethyl radical, I have chosen meperidine hydrochloride (a), an analgesic, and a compound (b) which was obtained by substituting the methyl radical attached to nitrogen of the meperidine hydrochloride with an ethyl radical. No qualitative differences were observed. However, the action of (b) appeared to be slightly weaker than that of (a) as shown by LD50 in mice and the tests for analgesic action by the hot plate method and the respiratory depressant action in rabbit by the Wright's respiratory apparatus. (2) As an example of compounds having two methyl and ethyl radicals, the respiratory stimulants, coramine (nikethamide) (c) and cycliton (e) were compared with compounds derived from them by the substitution of the ethyl radicals by the methyl radicals respectively (d, f). Not only considerable quantitative differences were observed in LD50 in mice, minimal convulsive doses and, in respiratory stimulant action, but also qualitative differences were observed. Where as (c) and (e) had only stimulant action, (d) and (f) had depressast action in small dosage and stimulant action in large dosage. As a further example the sedatives, coumarine-3-carboxylic acid diethylamide (g) and its methyl substituted coumarine-3-carboxylic acid dimethylamide (h) were compared (h) was weaker in hypnotic action but was more toxic. Qualitative differences were also observed in the respiratory stimulant action and in the convulsive state. (3) As an example of three methyl and ethyl radicals, carbaminoyl choline chloride (i) was compared with a compound derived from it by the substitution of its three methyl radicals by three ethyl radicals (j). Althoush (i) exhibited series of actions observable when three parasympathetic nerve is stimulated. (j) had none of such actions. Also difference in LD50 in mice of (j) and (i) was very great, (j) being 200 times that of (i).
著者
崎村 克也 平仁田 尊人 宮本 道彦 永田 健一郎 山本 経之
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.126, no.1, pp.24-29, 2005 (Released:2005-09-01)
参考文献数
52

薬物依存研究の視点は,(1)依存の形成機構の解明および(2)薬物への“渇望”の再燃・再発機構の解明にある.薬物依存の実験法としては,1)薬物選択試験法,2)条件づけ場所嗜好性試験法,3)薬物弁別試験法および4)薬物自己投与実験法が繁用されている.しかし,前者3つの実験法は依存性薬物の強化/報酬効果または薬物摂取行動の機構解明に迫れても,薬物への“渇望”の再燃・再発の機構解明に向けての妥当性の高い戦略とは言い難いが,ラットの薬物自己投与実験法では“渇望”の動物モデルが確立されている.“渇望”を誘発する臨床上の要因として,(1)少量の興奮性薬物の再摂取(priming),(2)薬物使用を想起させる環境因子(薬物関連刺激),そして(3)ストレスの3種類が知られている.ヒトで乱用される薬物はラットでの薬物自己投与行動が成立し,上記の刺激により生理食塩液投与下でのレバー押し行動(薬物探索行動)が発現する.この行動が臨床上の“渇望”を表す動物モデルとして考えられている.脳内局所破壊法と薬物の脳内微量注入法により,薬物摂取行動と薬物探索行動(“渇望”)では,脳内責任部位が異なることが明らかにされている.また,薬物探索行動は,その誘発要因により発現パターンやD2受容体の関与の仕方が異なることも分かっている.これらの知見は,薬物探索行動の発現機序が誘発要因の違いによって異なることを示唆している.一方,近年,薬物探索行動における内因性カンナビノイドの関与が示唆され,内因性カンナビノイドとドパミンやグルタミン酸神経系とのクロストークに熱い視線が注がれている.今後の薬物依存研究は,“渇望”の発現機序の解明と共に,“渇望”のモデル動物での情動や認知機能の変容にも焦点をあて,多面的に薬物依存を捉えていく必要がある.
著者
鳥居 邦夫
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.110, no.supplement, pp.28-32, 1997 (Released:2007-01-30)
参考文献数
12
被引用文献数
2 3

Taste preferences are altered to reflect physiological needs and to support the recovery from nutritional disorders. The central mechanism both recognition for and adaptation to a deficient essential nutrient, i.e. L-lysine, have been unveiled that the feeding center in the hypothalamus is a primary center nucleus to induce a neuronal plasticity responding to dietary intake of deficient nutrient in the brain and peripherally, such as sense of taste and its concentration change. Changing preferences may act as an alarm, signaling protein malnutrition or metabolic adult disease, such as hypertension for saltiness, diabetes for sweetness, etc. In addition, our consumption of alcohol beverage is still increasing despite of one of candidate to induce the hepatic disorders, because pharmacological function of alcohol in the brain is welcome for people enjoying meal or being relieved from stresses. Preference for both L-alanine and L-glutanine was observed when alcoholic rats fell in the hepatic disorder. Acute alcohol loading induced suppression of motor activity and the hepatic dysfunction, but both amino acids did obviously protect these alcoholic symptoms. People should have to require a little bit more specific L-amino acid physiologically and pharmacologically depending upon different states among aging, lifestyle, metabolic diseases and various stresses.
著者
亀山 勉 鍋島 俊隆 山口 和政
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.73-89, 1979 (Released:2007-03-29)
参考文献数
30
被引用文献数
4 4

Morphineによって生じるStraub挙尾反応(STR)と鎮痛作用の発現機構を脊髄レベルで検討し,以下の成績を得た.1)STRは背側仙尾骨筋の切断によって消失した.2)spinal miceの脊髄を電気刺激すると挙尾反応が生じる.3)morphine 0.25~5μgを腰椎髄腔内に投与するとSTRが用量依存的に生じた.しかし,spinal miceの腰椎髄腔内にmorphineを投与してもSTRは生じなかった.4)STRは末梢性筋弛緩薬のtubocurarineおよびmorphine拮抗薬のnaloxoneの腰椎髄腔内投与によって抑制および拮抗された.5)STRはC5~6の右後半部,左後半部または左右後半部およびT11~12の右後半部または左右後半部を切除しても抑制されず,T11~12のTransectionで始めて消失した.6)脊髄のcatecholamine(CA)ニューロンを破壊したり,5-hydroxytryptamine(5-HT)ニューロンを破壊してもTail Reactionは生じなかったが,morphineで生じるSTRは増強された.7)morphine 0.5μgを腰椎髄腔内に投与すると鎮痛作用が得られた.8)C5~6の左後半部または左右後半部を切除すると疼痛閾値が上昇したが,C5~6の右後半部を切除しても疼痛閾値は変化しなかった.Morphineの鎮痛作用はC5~6の右後半部,左後半部または左右後半部を切除すると抑制された.T11~12の右後半部を切除しても疼痛閾値は変化しなかったが,morphineの鎮痛作用は減弱した.9)脊髄のCAニューロンを破壊したり,5-HTニューロンを破壊すると疼痛閾値が低下したが,morphineの鎮痛作用はnorepinephrine(NE)ニューロンを破壊した場合にのみ抑制された.以上の知見から,morphineは脊髄に作用しSTRと鎮痛作用を生じ,STR発現は脊髄の前半部が重要であり,NEニューロン,5-HTニューロンの神経活動が抑制され生じるが,morphineの鎮痛作用発現には脊髄の後半部が重要であり,NEニューロンの神経活動が増強されることによって生じることを見い出した.
著者
木皿 憲佐 桜田 忍 只野 武 桜田 司 丹野 孝一 碓井 千春 北野 裕 高砂 浄
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.269-280, 1993 (Released:2007-02-06)
参考文献数
8

イオヘキソール及びイオパミドールの静脈内投与時の中枢作用9項目((1)一般症状,(2)自発運動量,(3)直腸体温,(4)電撃痙攣,(5)抗痙攣,(6)脳波,(7)催眠増強,(8)筋弛緩,(9)抗侵害刺激)について比較検討した.(1)一般症状観察の項目の内で驚き反応に対するスコアはddY系のマンニトール投与群で0であるのに対しICR系では0.6と高い値であった.さらに,両造影剤投与による驚き反応はマンニトール投与群との間に明らかな差は認められなかった.(2)自発運動量に対してはイオパミドールの1750mgI/kgで抑制作用が認められた.チオペンタールナトリウムの(7)催眠作用に対してイオヘキソールの7000mgI/kg投与によって催眠作用の増強が認められた.(3)直腸体温及び(4)電撃痙攣に対して両造影剤の高用量において正常体温の下降作用と電撃痙攣による死亡率の有意な上昇が引き起こされた.(5)抗痙攣,(6)脳波,(8)筋弛緩及び(9)侵害刺激に対して両造影剤は有意な作用は示さなかった.以上の実験結果から,両造影剤は必ずしも類似の薬理作用を示すものではないことが示された.しかし,両造影剤のLD50値が約15000mgI/kgであることから判断すると,それぞれの造影剤投与によるこれらの作用は非特異性なものであると考えられた.
著者
中尾 薫 安藤 晃裕 平形 美樹人 安藤 直生 竹下 浩一郎 宮本 庸平 望月 英典
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.135, no.5, pp.205-214, 2010-05-01
被引用文献数
2 6

レミッチ<sup>®</sup>カプセル2.5 <I>μ</I>g(主成分はナルフラフィン塩酸塩)は,血液透析患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果が不十分な場合に限る)を効能・効果として2009年1月に承認された,選択的なオピオイド<I>κ</I>受容体作動薬である.各種そう痒モデル動物の抗ヒスタミン薬感受性および抵抗性の引っ掻き行動に対して,ナルフラフィン塩酸塩は用量依存的な抑制作用を示し,種々の痒みに対して止痒作用を発現する可能性が示唆された.また,ナルフラフィン塩酸塩の作用が<I>κ</I>受容体拮抗薬nor-BNIの脳室内投与により抑制されることから,中枢神経系の<I>κ</I>受容体の活性化を介して止痒作用を発現するものと考えられた.非臨床および臨床試験から,薬物動態学的特徴として,(1)長期投与により未変化体または代謝物が蓄積する可能性はないと考えられる,(2)投与後速やかに吸収され,肝臓や腎臓に高濃度分布すると共に,薬理作用部位と考えられる中枢神経系にも分布する,(3)CYP代謝反応の主な分子種はCYP3A4であり,それを阻害する薬剤との併用により未変化体の血漿中濃度が上昇する場合がある,(4)ナルフラフィン塩酸塩はP糖タンパク質の基質であるが,併用した他のP糖タンパク質基質薬物の輸送に影響を及ぼす可能性は低い,(5)未変化体およびその代謝物は,透析により除去され,血液透析患者において蓄積する可能性は低い,という特徴を有する.臨床においては,ナルフラフィン塩酸塩2.5および5 <I>μ</I>gの1日1回原則として夕食後の経口投与により,既存治療抵抗性そう痒症を有する血液透析患者に対して止痒作用を示し,その作用は長期の反復投与によっても減弱しなかった.また,動物を用いた依存性試験および臨床試験の結果から,ナルフラフィン塩酸塩が依存性および乱用をもたらす可能性は非常に低いと考えられた.以上のように,ナルフラフィン塩酸塩は,血液透析患者の既存治療抵抗性のそう痒症を抑制し,QOLを向上できる極めて有効な薬剤であると考えられる.
著者
森際 克子 福田 淳 山下 勝幸
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.115, no.4, pp.185-192, 2000 (Released:2007-01-30)
参考文献数
48
被引用文献数
11 13

中枢神経系における傷害,虚血に際して,免疫細胞であるミクログリアやグリア細胞が活性化され,サイトカインを分泌して侵入物の撲滅と組織修復を図る.この免疫細胞が,プリン受容体のイオンチャネル型P2XおよびGタンパク共役型P2Yを発現し,傷害された細胞から放出されるATPに応答して,その機能を変化させることが明らかとなって来た.単離培養されたラット網膜ミクログリアでは,非刺激下で,Gタンパク共役型P2U(P2Y2,P2Y4)とイオンチャネル型P22Z(P2X7)が同等に発現しているのに対して,LPS刺激下では,P2Z優位となり,そのCa2+応答が増大する.一方,虚血(低酸素1%濃度)下で活性化されたミクログリアはP2UとP2Zの両受容体の感受性が共に高く,また,P2Uの応答が優位である.この低酸素濃度下では代謝型P2Uの活性化を介してミクログリアの増殖が誘導され,P2Uによる細胞内Ca2+動態と容量性流入がこの増殖機構に関与していると考えられる.さらに,LPS刺激と低酸素の両活性化においてTNF-αとIL-1βの分泌が見られ,その分泌がP2ZのアゴニストBzATPにより亢進し,アンタゴニストoATPにより抑制されることから,P2Z(P2X7)受容体がサイトカイン分泌機構に関与していると考えられる.P2Z(P2X7)はまた同時に増殖を阻止し,アポトーシスを誘導する.このP2Z(P2X7)受容体は,マクロファージ,単球,線維芽細胞のいずれにもあり,サイトカインのみならずプラスミノゲンの分泌にも関与する.TNF-αの転写,遊離にはMAPキナーゼのp44/42およびp38が関与することが示唆されており,P2Z(P2X7)の活性化はCa2+依存性に,NFAT,NF-κをも活性化させて,増殖のシグナル経路を阻止し,アポトーシス誘導経路とp44/42とp38を介する分泌経路を駆動する可能性がある.