著者
畦 五月
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.362-370, 2016 (Released:2016-12-19)
参考文献数
49
被引用文献数
1

岡山県南部地方で食用とされているヒラ,サッパ,コノシロの食習慣に注目した。これら三種の魚は分類学上極めて類似し,白身が多く,しかも小骨が多いという特徴を示す。酢の物,すし,焼き物,煮物などの多彩な調理方法で三種は食べられるが,昭和初期から大正時代には,稲作行事や祭りの行事に合わせ使い分けがされている魚であった。その食習慣が形成されている背景を,江戸時代の岡山藩の文献より明らかにした。三種は岡山藩の産物として認定され,幕府に届け出をされた魚であった。後楽園での各種行事の饗応膳にも使用された魚であったが,藩主など身分階級の高い人の膳にはのらない魚であった。この江戸時代からの食習慣は,調理法を伝承しながら,現代も他の魚の食習慣とともに岡山県南部地域に継承され,岡山県独自の食習慣を形成している。
著者
肥後 温子 寺本 あい 富永 暁子 井部 奈生子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.221-230, 2013 (Released:2013-08-20)
参考文献数
21
被引用文献数
1

水,バッター生地,食パンを試料とし,スチームコンべクションオーブンの7種類の加熱モードを用いて加熱速度,消費エネルギー量,力学特性を比較した。(1)水温上昇速度,バッター生地の凝固速度,食パンの焦げ速度とも熱風モードに比べてスチームを併用したコンビモードの方が速くなった。(2)180℃の熱風モードを基準とした単位時間当たりの消費電力量は,280℃熱風では1.87倍となり,コンビモード(スチーム100%)では3.62倍(180℃),3.95(280℃)倍となった。(3)180℃の熱風モードを基準とした水,バッター生地加熱時の消費電力量は,280℃熱風では1.37~1.44倍となり,コンビモード(スチーム100%)では2.41~3.01倍となった。(4)食パンの焦げ速度は,庫内温度を180℃から280℃に上げると6倍以上となり,一定の焦げ色にするための消費電力量は庫内温度180℃の1/2以下となった。(5)熱風モードでは加熱時間が長くなると乾燥して硬くなる傾向があるが,コンビモードでは食パンの力学特性の変化が速いにもかかわらず長時間加熱しても硬化が少なかった。
著者
李 利 江原 絢子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.193-201, 2007-06-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
16

本研究は,中国明朝に李時珍によって編纂された『本草綱目』(1587年)と,この書を学び,日本の食生活にあわせて編纂した食物本草書『本朝食鑑』(人見必大著1697年刊)の分類上の比較を通して,両国の食文化の特徴を明らかにすることを目的としている。その結果『本草綱目』で取りあげられなかった食品が,『本朝食鑑』で多く取りあげられていたものは魚介類であり,逆に『本朝食鑑』で積極的な解説がなく,わずかな種類しか取りあげられなかったものは,獣類や虫類である。その取りあげ方を見るだけでも両国の食文化のちがいが明確になる。また,獣畜類に着目すると,『本朝食鑑』では,胆,皮などは薬として扱っているが,『本草綱目』のように,血,心臓など多くの内臓については紹介していないのも食文化のちがいを示す特徴の一つといえる。
著者
高橋 智子 河村 彩乃 大越 ひろ
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.342-350, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
18
被引用文献数
3

本研究では,食パン,およびミルク溶液の一部をサラダ油に置換した液状食品を材料としたゲル状パン粥を基本パン粥とし,加えて,基本パン粥試料の表面にとろみ(粘稠液状食品)を付加した試料を用い,ゲル状パン粥にとろみを付加することがヒトの嚥下状態にどのように影響するかを検討した。テクスチャー特性の硬さは品温20℃パン粥試料が45℃試料に比べ,有意に硬いことが認められた。官能評価より,品温20℃でとろみを付加したパン粥試料は,とろみを付加しないものに比べ,口中でべたつかず食べやすいと評価された。試料品温20℃の嚥下直前の食塊の硬さは,口中で食塊形成中に顕著に軟らかくなることが示され,嚥下直前の食塊のテクスチャー特性の試料間の差は小さいものとなった。表面にとろみを付加した45℃試料は20℃基本パン粥試料に比べ,嚥下時筋活動時間が短くなることが示された。
著者
立屋敷 かおる 山岸 好子 今泉 和彦
出版者
日調科誌
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.355-361, 2005

Developmental changes in the handling motion of chopsticks and writing motion of a pencil were studied in elementary and junior high school students. The handling motion of chopsticks and the writing motion of a pencil were respectively classified into four (I to IV) and five (A to E) types. The linkage between the motion type for chopsticks and that for a pencil was also examined. The relative proportion of type I (conventional) increased with increasing age, while those for types II (less complete) and III (incomplete) decreased with increasing age. The relative proportion of type IV (others) was 14%, being independent of age. The relative proportion of type A (conventional) was 42% in three age groups. The total relative proportion of types B (less complete folding of the thumb), C (extended thumb) and D (forefinger control) were 39%. The total numbers of types I and II were 79% for all subjects, with 44% and 56% of these subjects being respectively assigned to types A and B to E (others). The number of type A was 42% of all subjects, with 83% of these subjects being assigned to types I and II. These results suggest that development of the handling motion for chopsticks was slower than that of the writing motions for a pencil, and that the age at which many students attain type I capability may be at least 15 years old.
著者
中里 トシ子 長谷川 千佳子 村上 智子 横田 聖子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.381-386, 2000-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
15

Gomadango was made by adding 10,20 or 30% of wheat starch or wheat flour to glutinous rice flour. The effect of those additions on the formability and taste of gomadango were examined.The breaking stress of the dough was initially decreased by the addition of wheat starch and wheat flour, but after steaming, increased to a higher value than the control with no addition.The percentage weight loss of gomadango was increased with increasing amo unt of added wheat starch and wheat flour. This weight loss was larger with wheat flour than that with wheat starch.The formability of gomadango was enhanced by the addition of wheat starch and wheat flour to result in a better appearance than that with no addition. The color of gomadango added with wheat flour was deeper, this depth of coloratin increasing with the amount of wheat flour added.A sensory test showed that gomadango samples with 10% wheat starch and 10% w heat flour were preferred to the control sample without either of these additives in the total evaluation, while the sample with 10% wheat flour had the most favourable color and flavor.
著者
石渡 奈緒美 堤 一磨 福岡 美香 渡部 賢一 田口 靖希 工藤 和幸 渡辺 至 酒井 昇
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.265-274, 2012-08-05
参考文献数
19
被引用文献数
1

IHクッキングヒーターを加熱源とし,フライパンでハンバーグを片面ずつ焼成する時の温度と水分移動を予測できる数学モデルを構築するため,モデル試料(シリコン,ボロニアソーセージ)を用いた解析を行った。蓋をしたフライパン内全体を調理空間とみなした伝熱モデルは,IH発熱層,フライパン伝熱層,フライパンと試料との接触層および試料から構成される伝導伝熱領域と,フライパン内の空気との熱伝達からなる。試料表面と空気との熱伝達とともに,フライパンから空気への放熱が,試料の温度上昇に影響をおよはずことから,試料のないフライパン面と空気との熱伝達も考慮した。水分移動の計算では,試料表面とともに,試料内部も水分蒸発の計算領域とした。本モデルの妥当性を検証するため,調理中に形状が一定とみなせるボロニアソーセージを用い,中心温度50℃で一度反転させた際の温度と含水率変化を算出した。その結果,解析値は実験値と同様な傾向を再現可能であった。
著者
柳本 正勝
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.32-36, 2002-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
28
被引用文献数
4

食べ物のおいしさは一般に,感覚特性で決まるとされている。ところが,それぞれの重要性の差についてはあまり取り組まれてこなかった。そこで,著者が行ってきた10品目の「食べ物のおいしさとは」を考察した表を用いて,感覚特性の食べ物のおいしさに対する貢献度を比較した。6つの感覚特性,味,匂い,テクスチャー,外観品温,音のうち,テクスチャーと味が(35)35日本調理科学会誌Vo1.35No.1(2002)2大特性であった。テクスチャーと味を比べれば明確な差はないが,テクスチャーの方が貢献度の高い項目が多いことが指摘できた。また,液状食品と固形食品に分けると,液状食品は味が,固形食品はテクスチャーの貢献度が高い結果を得た。外観と匂いがこれに次いで高かったが,外観のこの評価は他の調査結果と比べると低い。音は最も低かったが,これは常識的な結果と考える。
著者
池田 博子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.214-218, 1999-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
9

The effect was investigated of the temperature of water on the foaming property of powdered green tea. Water temperatures of 20,40,60,70,80,90 and 100°C were tested to dissolve powdered green tea with subseqnent stirring of the tea solution. The foam volume, expansion rate and degree of stability of the foam were measured. The amounts of tannin, soluble nitrogen and pectin that could be dissolved at each of these temperatures in 30 seconds and the viscosity of the resulting tea solution werem also measured.The higher the temperature of the water used to dissolve the powdered green tea, the more chemical elements were dissolved, the more the viscosity increased, the more the foam volume increased and the more the foam became fine and stable.Evaporation at the surface of the foam membrane became more active, the foam disappeared more easily and the foam stability decreased as the temperature of the water during stirring was increased.