著者
米田 千恵 粟津原 元子 畑江 敬子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.337-343, 2008

冷凍メバチ肉の塊を,30℃ の3%食塩水に浸漬する解凍法(解凍法1),30℃ の水に浸漬する解凍法(解凍法2)および4℃ での緩慢解凍(解凍法3)に供した。品質の同じ試料では,解凍過程における重量変化,色は解凍法1と解凍法2の間で差異はみられなかった。上物とよばれる品質の高いマグロ肉についての官能検査では, 解凍法1 で解凍した試料は解凍法2で解凍したものに比べて,水っぽくなく,一方で,粘性,塩味,マグロらしい味(うま味)が強かった。解凍法1で解凍した刺身の外側の食塩濃度は,解凍法2および解凍法3で解凍した試料の食塩濃度よりも有意に高かった。マグロ肉へ食塩が浸透することによって,粘性が増し,うま味が増強されるものと考えられた。
著者
島﨑 とみ子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.244-254, 2009 (Released:2015-01-30)
参考文献数
21

本報告は幕末の京都に住む商人の日記をもとに,暮らしと食を年中行事に絞り,その一端を明らかにしようとしたものである。その結果は,年中行事の中,最も大きな行事は正月であった。彼は日常に交際ある人々を大事に考え,飲食を共にしている。料理は豊富に魚介類が使われ,野菜類は京都近郊の物が多い。また,信仰にもとづく行事では,寺と神社で料理・食品の使い方が区別されていた。行事の扱い方には差違がみられる。敬重に行なわれるもの,簡略化あるいは遊興的に変化したものがあった。
著者
モサマット・ナズマナラ・ カノム 高村 仁知 青佐 千津子 モハマド・アブル・ マンスル 松澤 一幸 的場 輝佳
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.201-204, 2001

Headspace volatile compounds in <I>chapa shutki</I>, a Bangladeshi semi-fermented fish product, were determined by gas chromatography-mass spectrometry and were compared with those in izushi, and iwashi no nama boshi. Identified volatile compounds were 21,10, and 11 in <I>chapa shutki</I>, izushi and iwashi no nama boshi, respectively. Among the identified compounds, ethanol, hexanal, propanal, and 1-penten-3-ol were found common in all the investigated fish products. Although the lipid derived components, such as aldehydes, alcohols, and ketones comprised the majority of volatile compounds of these processed fishes, <I>chapa shutki</I> contained more acids such as acetic and butanoic acids than <I>izushi</I> and <I>iwashi no nama boshi</I>.
著者
神田 知子 安藤 真美 五島 淑子 櫻井 菜穂子 花井 玲子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.390-400, 2004
参考文献数
20
被引用文献数
2

山口県の豆類といも類を用いた料理に関するアンケート調査および聞き取り調査を行い,山間部(阿東町)と海岸部(山陽町)における地域性を検討したところ,以下の知見が得られた. 1)阿東町は豆類やいも類の自家栽培が多く,平均6.4種類の作物を栽培していた. またきな粉,豆腐,こんにゃくなどの食品を手づくりしている世帯も多かった. 一方,山陽町では,平均2.8種類の作物が栽培されていた. 2)阿東町では,自家栽培の多い食材を用いた料理が多く,工夫して食されていることが明らかとなった. 一方,山陽町では出現した料理の種類が多く,とくにじゃがいもと木綿豆腐の料理が多かった. 3)行事に関連する料理は阿東町の方が多く,葬式の料理を地域で作るという風習も残されていた. 4)豆類を用いた郷土料理である「けんちょう」と「いとこ煮」について検討した結果,材料や作り方に両地域で違いが見られた. 本研究を行うにあたり,アンケート調査にご協力いただきました阿東町消費者連絡協議会と山陽消費者の会の皆様に深謝いたします. なお本研究は日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学」の一環として行った. また平成13年度日本調理科学会大会において発表した.
著者
堀江,秀樹
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, 2006-12-20

我が国では,ホウレンソウ葉中のシュウ酸がホウレンソウを食べる時のえぐ味に関係すると広く解釈されている。本報では,シュウ酸塩溶液を味わった後に残る不快な感覚をシュウ酸味と定義した。ホウレンソウの茹で汁は強いシュウ酸味を示したが,ホウレンソウ葉に水を加えて調製した抽出液では,シュウ酸濃度は茹で汁より高いにもかかわらず,シュウ酸味はごく弱かった。さらに,ホウレンソウの生葉を食してもシュウ酸味はほとんど感じられなかった。これらの現象は唾液由来のカルシウムイオンとホウレンソウ葉由来のシュウ酸イオンの間で,シュウ酸カルシウムの微細な結晶が生成され,これが口腔内を物理的に刺激するのがシュウ酸味である考えれば解釈可能であった。モデル系において,シュウ酸イオンとカルシウムイオンを混合すれば,シュウ酸カルシウムによる白濁が生じた。ホウレンソウ葉中にはクエン酸イオンも含まれ,クエン酸イオンの濃度が十分に高い場合には,シュウ酸カルシウム結晶生成に伴う濁りを抑制したが,クエン酸イオン濃度が低い場合には濁りが生じた。シュウ酸味には,シュウ酸カルシウムの生成を抑制する成分の寄与が大きいものと推定された。ホウレンソウの水抽出物は固相抽出法によって,水溶出画分とエタノール溶出画分に分離できた。シュウ酸イオンとシュウ酸味は水溶出画分に回収され,苦味はエタノール溶出画分に回収された。ホウレンソウの苦味については,シュウ酸とは異なる成分によるものと考えられる。
著者
池田 博子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.254-258, 2006-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
12
被引用文献数
3

Fifteen samples of bottled mineral water on the market, one of tap water and one of distilled water were tested to measure the effect of water hardness on the foaming characteristics of powdered green tea and on the amounts of tannin and dissolved solids.Increasing water hardness resulted in a decreasing tannin content and dissolved solids, as well as a decreasing foam volume, although the stability of the resulting foam was improved.
著者
福田 靖子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.321-328, 2001-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
33
被引用文献数
1
著者
竹内 枝穂 津田 淑江
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.23-31, 2003-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
19
被引用文献数
5

1.品種による調理特性を検討したところ,ファリノグラム特性では,強力粉のみの場合と比べて,六条種の大麦粉を加えると安定性が増し,二条種の大麦粉を加えることにより安定性が低下した.また糊化特性では,温暖地で改良が行われた大麦粉よりも,寒冷地で改良が行われた大麦粉の方が高い最高粘度を示すことが明らかとなった.2.小麦粉に5種類の大麦粉をそれぞれ置換させて食パンを焼き上げたところ,5種類ともに大麦粉を添加することによりパンの体積が低下し,硬くなり,黄色みを増すなどパンとしての品質が低下した3.5種の大麦粉の中でミノり2は,体積の低下が最:も少なかった.4.ミノリ240%配合の強力粉を以下の条件で製パンする事により基準パンの体積,色硬さ,風味に近づけることができた.1)大麦粉量の5%のグルテン量を添加する.2)水を通常の110%加える.3)砂糖を通常の125%加える.5.改善バンの官能検査をおこなった結果,普段口にしている食パンとあまり差がなく食べられるという結果となった.6.改善パンを6枚切り1枚食べる事により,食物繊維総量が2.7g摂取する事ができ,食物繊維摂取量増加に効果があることが期待できた.

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著者
桂 正子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.314-322, 1996-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
44
著者
真部 真里子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.148-154, 2005

調理効率のよいカルシウム摂取のためには,日々の食事を有効に活用することが重要である。そのために,食材中のカルシウム(Ca)含量だけでなく,調理によるカルシウム吸収効率の変化を明らかにする必要である。本報では,未調理ならびに調理済みの牛乳の人工消化処理液をCaco-2細胞単一層に添加し,調理によるCa吸収への影響を検討した。未調理の牛乳中のCaは,他のCa源よりも吸収量が多かった。しかし,きなこや抹茶粉末を添加すると,無添加の牛乳と比較して有意にCa吸収量が低下した。また,65℃ の加熱したホットミルクやベシャメルソースに調理しても,Ca吸収は低下した。また,これらのCa吸収量の変化は,抹茶粉末添加の場合は細胞間経路の阻害により,他の試料の場合は,Caの溶解度変化など細胞間経路に対する間接的な影響によることが示唆された。このように,食事からの効率的なCa吸収のためには,調理によるCa吸収の変化について考慮する必要がある。
著者
遠藤 瑶子 渥美 恵理 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.422-428, 2012 (Released:2013-12-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ダイコン,ニンジン,ジャガイモの1~3cm角を20℃,0.8~2.0% NaCl水溶液に浸漬した時の試料内部の食塩濃度分布の経時変化をプログラム計算により算出した。プログラムは三次元熱伝導および拡散解析に基づく差分法を用い,Visual Basic(Microsoft)により作成した。水から加熱し余熱を利用して適度な硬さとしたものを試料とした。計算により試料全体の平均濃度が0.6~0.9%になる時間を求め,実際に試料を調製し,塩味の濃さについて-2から+2の5段階評点法で官能評価を行った。官能評価の結果,0.8~1.5% NaCl水溶液浸漬時の試料全体の平均濃度が0.7%であれば,野菜の種類やサイズによらず適度な食塩濃度であった。2.0% NaCl水溶液では試料断面の食塩濃度分布から表面付近が濃すぎて適度な状態が得られなかった。加熱時の調味時間はそれぞれジャガイモ>ニンジン>ダイコンの順に長かった。
著者
桒田 寛子 寺本 あい 治部 祐里 田淵 真愉美 渕上 倫子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.137-144, 2011 (Released:2014-07-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1

玄米をおいしく炊く条件を探る目的で,玄米を七分つき米,精白米に搗精し,テクスチャーと組織構造を比較した。玄米の20°C,30°Cでの吸水速度は搗精した米と比べ遅かった。しかし,60°Cに2時間浸漬すると,七分つき米,精白米と同じ吸水率となった。炊飯後の玄米飯の水分含量は搗精した米飯と比べ少なく,サイズは小さかった。クライオ走査電子顕微鏡観察すると,米の搗精度が高くなるに従って,果皮,種皮,糊粉層が除かれていた。米を水に浸漬すると,玄米より搗精米のほうが,デンプン貯蔵細胞中のアミロプラストがより大きく膨らんでいた。米の搗精度が高くなるほど,小孔(水の痕跡)が増加した。これはデンプンの糊化が十分であったことを示唆している。玄米の官能評価は搗精米より悪かった。
著者
岡田 久美子 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.327-336, 2008-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1

うどんのおいしさには食したときの物性が大きく関与し,それにはうどんの成分である澱粉の性状が影響するといわれる。現在製麺業界で麺の物性改良として用いられている各種澱粉としてタピオカ澱粉,コーンスターチ,サゴ澱粉のいずれかを中力粉に加えたときの物性及び官能評価を行った。その結果タピオカ澱粉代替麺は,破断エネルギー値が低く,伸長度の高い,軟らかく伸びやすい性状を,またコーンスターチ代替麺は破断エネルギー値が高く,伸長度の低い,すなわち硬く伸びにくい性状であった。この違いはα-アミラーゼ処理した生麺の走査電子顕微鏡観察でグルテン組織の形状に明らかな違いとして認められた。さらに,各種澱粉に活性グルテンを添加すると,破断エネルギー値はいずれの澱粉の場合も高くなった。官能検査ではタピオカ澱粉に活性グルテンを添加した麺が弾力,腰のある麺として好まれた。
著者
石原 三妃 大森 恵美 水野 尚子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.65-73, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
12

管理栄養士・栄養士養成施設に適した調理学実習の必要度について管理栄養士・栄養士を対象にアンケート調査を行い調理の学習内容について検討した。 アンケートは,選択回答法と自由回答法を用いて行い,施設種類ごとの評価を分析した。 その結果,いずれの施設でも基本の料理や知識が大切であることが示された。また,施設種類によって必要な調理操作や料理は異なった。特に対象となるライフステージにより,必要な料理が異なり,病院,高齢者施設および乳幼児を対象とする保育園・幼稚園ではやわらかい料理の必要度が高かった。 調理操作においては,魚の下処理に関する操作は行政では必要度が高く,他の病院,高齢者施設など給食施設では低かった。切砕操作は,日常食に用いる基本の切り方は,いずれの施設でも有意差なく,必要度が高いと評価されていた。
著者
石原 三妃 水野 尚子 大森 恵美
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.405-415, 2015 (Released:2016-01-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1

管理栄養士・栄養士養成施設に適した調理学実習内容の必要度について,給食施設と非給食施設に勤務する管理栄養士・栄養士にアンケート調査を行い,調理の学習内容について検討した。アンケートは,選択回答法と自由回答法を用いて行い,給食施設と非給食施設の評価を分析した。その結果,料理については,“味噌汁”,“青菜のお浸し”の必要度が高かった。調理操作について,給食施設では非給食施設より浸漬操作と茹で操作の必要度が高かった。また,いずれの施設でも基本の料理や知識が大切であることが示された。切砕操作のなかでも,日常食に用いる基本の切り方は,いずれの施設でも有意差なく,必要度が高いと評価されていた。だしを取る操作は非給食施設で給食施設より必要度が高かった。大量調理と少量の調理では,調味料の重量や調理時間が異なることが推察された。
著者
長尾 慶子 喜多 記子 天野 里香 森田 真由美 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.491-496, 2005-12-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
10

Keiko Nagao Noriko Kita Rika Amano Mayumi Morita Midori Kasai Keiko Hatae“Covered food cooking” is a parcel cooking method in which meat or fish is usually covered with Japanese paper or salt. We evaluated wheat flour dough, pie dough, mashed potato, misogama (miso and flour) and shiogama (salt and egg white) for food parcel wrapping in this study. The thermal diffusivity (α) of each sample was calculated from measurements of the thermal conductivity (λ), heat capacity (c) and density (ρ). The internal temperature along one axis was measured during heating, and the heat retardation time was calculated. The various materials used for covered food cooking were then studied for their properties.Shiogama had the highest thermal conductivity, being followed by mashed potato, wheat flour dough, misogama and pie dough in that order. The retardation time τ(χ), an index of heating rate, tended to follow the order of thermal conductivity for the covering materials. A high correlation was seen between 1/τ(χ) and thermal diffusivity(α).The retardation time in cooling made shiogama easy to heat and easy to cool, so it could not retain the heating effect. Misogama, wheat flour dough and pie dough retained the heating effect much better than shiogama.
著者
河村 明子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.118-122, 2001-02-20