著者
下坂 智恵 杉山 静代 熊谷 佳代子 木下 朋美 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.344-351, 2004-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1

カスタードプディングの基本的な配合割合にクリームを添加し,嗜好性の高いプディングの配合割合を検討した. 基本材料である鶏卵,牛乳,砂糖にクリームを加えてプディングを調製し,乳脂肱植物性脂肪のクリームがプディングの物性,食味に与える影響を調べようとした. その結果,次のことが明らかになった. 1.プディングは,牛乳の一部を乳脂肪クリームで代替することにより,破断荷重値が有意に低くなり,官能検査においても,基本と比べ,軟らかく,甘く,総合的においしいと評価された. 植物性脂肪クリームを加えたプディングは,代替量が増加することにより硬くなる傾向を示した. 鶏卵の一部をクリームで代替したプディングは,白く,やわらかく,甘く,なめらかなプディングとなり,総合的に好まれた. 2物性試験において,牛乳の一部を乳脂肪で代替すると破断荷重値が低下し,クリームの割合が高くなるにつれ,さらに低下した. 一方,植物性脂肪クリームで代替すると,少量の代替ではやや低下したが,代替割合を高くすると逆に破断荷重値が高くなった. クリープメータによる荷重曲線から,プディングの物性が材料配合の割合で異なり,水分よりもクリームの種類,牛乳及び鶏卵の割合が影響することが示された. すなわち,牛乳の一部を植物性脂肪クリームで代替したプディングは,基本プディングとほぼ同様の荷重曲線を示した. しかし,乳脂肪クリーム代替では,荷重曲線にみられたピークが低く,乳脂肪クリームと植物性脂肪クリームでは,プディングの物性に対する影響が異なった. また,鶏卵の一部をクリームで代替したプディングは,非常にゆるやかな,破断荷重値が低い曲線となり,乳脂肪クリームと植物性脂肪クリームとの違いはほとんどみられなかった. 3.プディングの組織を顕微鏡で観察すると,加えたクリームの種類により脂肪球の大きさが異なっていた. 乳脂肪クリームでは,脂肪球が大きくこれがたんぱく質の結合を阻害していると考えられた. 植物性脂肪クリームでは,均一な細かい脂肪球が全体に分散していた. 小さな脂肪球の多粒子が集まって凝集を起こし固化するために硬くなるものと推察した.
著者
松田,康子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, 2000-05-20

調理素材の変化や新しい調理器具の出現によって、従来の調理法とは異なる、より望ましい方法があるものと考えられる。そこで日常の料理をもとに、簡便化を主目的に、各料理をいくつかの器具や操作で調理し、官能評価して、それらの間に差がみられるか否かについて検討した。あじの塩焼き、さけのムニエルでは、降り塩の時間を変えて比較したが、時間の間に有意差はみられず、またみそ漬け前の降り塩の時間の違いについても有意な差は認められなかった。ハンバーグについては、パン粉を牛乳に浸すものと浸さないもの、タマネギを炒めるのと炒めないものとを比較したところ、パン粉を牛乳につけるか否かについては有意差はみれなかったが、タマネギについては嗜好が二分した。厚焼き卵については、卵液を濾したものと漉さないものを比較した結果、有意差はみられなかった。ソテーに用いるホウレンソウの下処理については、適当な長さに切ってから茹でたものが有意に良いと評価された。かぼちゃのコロッケでは、かぼちゃを裏漉す、すりこ木で潰す、フードプロセサーで潰すの三方法に好みが分散した。豚カツについては肉叩きで叩く、叩かないの間には有意差は認められなかった。こんぶとかつお節のだし汁のとりかたについては、こんぶを沸騰直前に取り出さず、かつお節とともに加熱してから濾し取る方法が有意に高く評価された。みそ汁に用いる油揚げについて油ぬきしたものと、しないものについて比較した結果は、両者間に有意差はみられなかった。
著者
川崎 寛也 赤木 陽子 笠松 千夏 青木 義満
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.334-341, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
13

本実験では,サーモグラフィ動画像の自動色分解処理技術を用い,中華炒め調理における具材及び鍋の温度変化を詳細に把握するための新規システムを構築し,プロ調理と家庭調理の比較によりあおり操作の調理科学的意義を考察した。さらにあおり操作の回数も自動取得した。回鍋肉(豚肉とキャベツの味噌炒め)調理を例とし,サーモ動画像と可視動画像を同時に取得した後,サーモグラフィの動画像から鍋領域と具領域を分離して鍋と具材の表面平均温度を経時的に把握した。終点具材温度に家庭調理とプロ調理では大きな差が見られなかった。プロ調理では,あおり操作が定期的連続的に行なわれているのに対し,家庭調理では不定期であった。各あおり操作の前後におけるプロ調理の具材温度上昇は家庭調理よりも大きい傾向があった。鍋温度はプロ調理では家庭調理よりも顕著に大きく上昇した。本システムにより,動きを伴うプロの炒め調理においても,具材や鍋の平均温度変化を計測する事ができた。
著者
黒沼 有里 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.169-175, 2019-06-05 (Released:2019-06-21)
参考文献数
12

はんぺんは多くの泡を含んだ独特のテクスチャーを持つ日本の伝統的な水産食品である。起泡材としての卵白や山芋のほかに近年は増粘多糖類(主成分はグアルガム)が使われることが多い。そこで,卵白,山芋,増粘多糖類がはんぺんの食味,硬さなどにどう影響しているのか,味覚検査,物性測定,光学顕微鏡観察を行って調べた。はんぺんの製造にはサメの鮮肉を用い,一般的なはんぺん製造の材料から卵白,山芋あるいは増粘多糖類を除いたオミッションテストを行ってその作用を検討した。従来のはんぺんでは,製造材料から卵白または山芋を除くと,はんぺんの硬さの値が高くなり,比重は大きくなり,食味は好まれなかった。増粘多糖類添加はんぺんは,増粘多糖類無添加はんぺんより硬さの値が低く,比重が小さく,また内部に丸みを帯びた多くの泡が観察された。増粘多糖類の添加は山芋の作用を補い,起泡性,気泡保持に効果があると推察された。
著者
北野 直子 中嶋 名菜 福山 豊 中嶋 康博 松添 直隆
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.254-259, 2014 (Released:2014-11-07)
参考文献数
17

2010,2012年に,熊本市と農耕祭事の行事が残っている阿蘇地域において質問紙調査を行った。質問は,年中行事の認知・経験と喫食状況であった。対象は,熊本市が136名,阿蘇地域が168名の食生活改善推進員であった。年中行事は,正月,節句,七夕など15行事であった。両地域の90%以上の者が,ほとんどの行事について認知,経験をしていた。「春祭り」,「秋祭り」の認知度,経験度は他の年中行事より低く,地域差は認められなかった。稲作儀礼を中心とした行事は,農業従事者の高齢化,農業就業人口の減少とともに廃れていき,行事食の伝承も難しくなっていると考えられた。行事食を家庭で作る割合は熊本市より阿蘇地域が高かった。熊本市に比し阿蘇地域が3世代世帯は多かった。その結果,年長者から子どもへ継承されやすいと考えられた。
著者
田尻,明日香
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, 2000-08-20

低脂肪スプレッドは多量の乳化剤、安定剤が添加されているため、口どけ、フレーバーリリースが好ましくない。本研究では、スプレッドの解乳化を評価する客観的な測定方法を確立し、乳化の安定性が良く口中で解乳化が生じる脂肪率20%スプレッドを調製するために、有機酸モノグリセリドを中心とした乳化剤の組み合わせの影響について検討を行い、以下の結果を得た。1.スプレッドの電気伝導度を経時的に測定することでスプレッドの解乳化を評価することができ、電気伝導度の平衡値により解乳化の度合いを推定できることが確認された。2.乳化剤としてPGPRとMG、さらに有機酸モノグリセリドを添加することにより、脂肪率20%の低脂肪スプレッドの口中温度36℃付近における解乳化が促進された。3.PGPRの濃度が高くなる程、解乳化に必要な有機酸モノグリセリドの濃度は増加し、有機酸モノグリセリドとPGPRとの相互作用により解乳化を引き起こすことが推定された。4.PGPRとMGに、さらに有機酸モノグリセリドを添加し乳化剤の総HLB値を3〜6にすることにより、乳化が不安定となり解乳化が促進されることが判明した。
著者
藤本 健四郎
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.271-276, 2006-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
25
被引用文献数
2
著者
綾部 園子 本間 千裕 長浜 ゆり 高橋 伸幸
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.188-193, 2009 (Released:2015-02-13)
参考文献数
17
被引用文献数
1

同じ条件で栽培したF1種のフルーツトマト(甘しずく)と普通のトマト(麗容),および比較のため特殊栽培によるフルーツトマト(アメーラ)の品質と嗜好性について検討した。その結果,甘しずくの糖度は,麗容と同じ栽培方法であったが,アメーラとほぼ同じであった。甘しずくとアメーラは麗容に比べてフルクトースとグルコースの含量が多かった。フルクトース/グルコースは甘しずくはアメーラよりも高く,甘味の質が異なることが示唆された。酸度は甘しずくのゼリー部において有意に高かったが,果肉においては有意の差はなかった。皮付きの破断応力は甘しずくが最も高く,皮を除いた果肉の圧縮応力はアメーラが最も高かった。官能評価の結果,麗容に対し甘しずくとアメーラは有意に好まれた。
著者
添田 孝彦
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.87-92, 2004-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
4

1.訴求表現に関する文字数訴求文字数は豆腐1 個あたり平均2 1 . 7 字の表現がなされていた. 項目としては「大豆」, 「にがり」, 「味風味」および「製法」における文字数は多く,「安心安全」,「新鮮さ」,「料理」,「形態」,「食感」および「消泡剤」に関するものは少なかった.地域的にみると,「大豆」および「にがり」は四国地方で多く,沖縄地方は少なかった.「製法」は沖縄地方および近畿地方で多く, 北海道および東北地方で少なかった. 「味風味」は各地域一様に表現されていた.2.具体的訴求内容「大豆」は"無農薬有機栽培大豆","国産大豆"および"地名+国産大豆"の出現がほとんどで,「にがり」は" にがり使用" または" 地名+ にがり" , 「水」は" 地名+ 水" が多く出現した. 「製法」は" 手造り" が最も多く,"生絞り法","一丁仕込み"なども使われ,「味風味」は" 豆の旨み・香り・こく・甘味" , " まろやかな味わい"が多く出現し,「食感」は"煮くずれしない"," なめらかな舌ざわり" といったわかりやすい表現が多かった.3.地名を冠した訴求表現の出現頻度地名を冠した表現のものは全体に対して3 5 . 8 % と高く,項目別では「大豆」および「水」が高く,地域的には東北,関東,北陸地方の東日本および四国地方で高かった.
著者
三神 彩子 喜多 記子 佐藤 久美 長尾 慶子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.98-105, 2010 (Released:2014-10-24)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究では,幅広い料理法に対応できる中華鍋(鉄製)の特性を活用し,省エネルギー効果およびCO2排出量削減効果をはかることを目的に,「炒める」「焼く」「揚げる」「蒸す」「煮る」の 5操作法別に代表的な調理での他の鍋類との比較を行い,調理時のガス・水使用量,試料内部温度,仕上がりまでの加熱時間を測定し,さらにCO2排出量に換算した。 炒める(キャベツ炒め)では,中華鍋は鉄製フライパンと比較し約26%,テフロン加工フライパンとでは約56%,焼く(ハムステーキ)は,中華鍋は鉄製フライパンと比べ約13%,テフロン加工フライパンとでは約47%,揚げる(トンカツ)は,揚げ鍋と比較し約16%,蒸す(蒸しイモ)は,中華鍋で蒸籠を使った場合と西洋蒸し器とで比較すると,約7%のCO2排出量削減効果が得られた。煮る(煮豚)では,中華鍋によるCO2排出量削減効果はみられなかった。以上5項目中4項目の加熱操作の中華鍋使用の料理で7~56%のCO2排出量削減効果が確認できた。