著者
玉川 和子 櫛田 壽恵 四方 幸子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.49-61, 2002-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
15

カトマンズ近郊の農村地区の食生活を料理の特徴と料理組合わせ評価を中心に研究してきた。(1)食形態は1日2回の食事と,2回の軽食で構成されている。(2)食品の摂取状況は1日に米322gと,その他の穀類142gで,穀類の30%をその他の穀類が占めている。また総穀類の摂取量が多くなるほど,その他の穀類の摂取割合が増えていた。(3)主食は,米,とうもろこし,小麦粉が中心であった。主食は毎食必ず摂っていて,その内容はめし,チューラ,ロティ,ディドであった。さらに両地区ともめしが80%であった。軽食はミルクティにパン,チューラ,とうもろこし(粒および粉)であった。また軽食に関しては両地区の差は大きく,C村はパンが多く,B村はロティが多くみられた。(4)副食はカレー,ダルスープ,アチャールといった固定的な料理の組合せパターンを示している。しかし料理が毎食3品揃っている世帯は16%しかない。カレーの喫食状況はタルカリとサーグで95%を占め,肉を用いたマスは殆どない。カレーは殆どの世帯で毎食食べている。ダルスープは3日間のうち1回も食べていない世帯が17.9%で平均では3日間で3~4回であり,アチャールはダルスープより比較的よく食べられていた。これらの傾向は季節による料理の組み合わせは変わらない。料理に用いられる野菜の種類が変わるだけであった。60(60)カトマンズ近郊の農村地区の食生活調査(第1報)(5)(食事)料理組合わせ評価と,(軽食)料理組合わせ評価との関係を見ると,食事の組合わせ評価の低いものは軽食評価が低い傾向を示したが,B村では食事評価点が高い低いに関わらず,軽食評価が低く,軽食は常に簡単にすませていることがわかる。(6)(食事)料理組合わせ評価点の値が高い低いに関わらず,エネルギーおよびたんぱく質の摂取量は変わらない。これは動たん比が低いことからも判るように,穀類を中心とする食事内容が原因である。しかし評価点が高くなるほど食品数が増加し,微量栄養素の摂取量に影響すると考える。(7)米と豆,野菜を中心とする文化の中でカレー,ダルスープ,アチャールという伝統的な食事パターンを守り,できるだけ食品数を多く摂取することが,栄養のバランスを改善することにっながり,常にミルクティーを飲む習慣を大切にすることが,少しでも動たん比を上げることになる。
著者
饗庭 照美 尾崎 彩子 李 温九 章 貞玉 康 薔薇 松井 元子 南出 隆久 大谷 貴美子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.180-186, 2002-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
18
被引用文献数
2

要約本研究では,2種類の塗りの皿(黒色,朱色)に物相型を用いて形作った飯を盛り付けて日韓の学生に示し,それらに対するイメージ特性をSD法によって調査した. 物相型は日本料理で伝統的に用いられている丸梅,もみじ,末広と,日本料理では用いられることのないハート型を加えた5種類を使用した. パネルは,日韓の食物系の女子学生である. 評価尺度は「上品な - 下品な」,「美しい一みにくい」などの形容詞対30項目を設定し,7段階評価で行った. その結果,日本と韓国では異なるイメージがあることが示されたため,統計処理にSPSSを用いて因子分析を行った. 日本で抽出された第1因子(α=.799)を構成する形容詞対は『情緒的感覚の因子』,第2因子(α=.779)の形容詞対は『華やかさの因子』と名付けた. 韓国で抽出された第1因子(α=. 899)は『嗜好性の因子』,第2因子(α =.844)は『目立ちやすさの因子』と名付けた. 抽出されたこれらの因子について日韓で比較してみると,日本において物相飯は季節感やハレ(めでたさ)を演出している情緒があるものというイメージが示唆された. しかし,韓国では物相飯を単に形のイメージとしてとらえ,その形の嗜好で評価が行なわれていた. 本研究から,食物の形や色に対する評価は,日常的に接しているその国の食文化に影響を受けていることが示唆された.
著者
大谷 貴美子 饗庭 照美 徳田 涼子 尾崎 彩子 南出 隆久
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.270-275, 2001-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
8
被引用文献数
3

The color harmony of Wanmori (a dish used in the Japanese tea ceremony and presented in a lacquered wooden bowl) was analyzed from photographs in books of Kaiseki cooking. V 20 (Toyobo Co. Ltd. ) color-image analyzing computer software, was used. The food materials occupied less than 40% of the whole area of a Wanmori bowl. The color which appeared most frequently and constituted the largest area of the food materials was the white-skin color to show the cooked fish of the season. In the summer, the number of colors per bowl was smaller and the area of the white-skin color was larger than in the winter which gave the effect of coolness. In the winter, warm colors (red and/or yellow) were added to give the effect of warmth. This color harmony is characteristic of Japanese cuisine that respects the sense of the season.
著者
佐藤 瑶子 入山 明日香 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.165-172, 2018 (Released:2018-06-22)
参考文献数
14

湿式加熱における品質制御の視点から,蒸し加熱及びゆで加熱の軟化の速度定数を測定し,試料内部の温度及び硬さの変化を予測し,官能評価を行った。軟化の速度定数は,85℃付近ではゆで加熱が,100℃付近では蒸し加熱の方が大きかった。しかし,蒸し加熱とゆで加熱の硬さの平均値から求めた軟化速度を用いて加熱時間を予測し,実際に試料を加熱して官能評価を行ったところ,加熱法によって硬さの評価に有意な差は認められなかった。よって,硬さの測定結果より,蒸し加熱とゆで加熱では温度域によって軟化速度にわずかな差はあるものの,加熱時間を同じとしても,ほぼ同程度の硬さに仕上がることを官能評価の結果から確認した。
著者
飯田 文子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.85-95, 2017 (Released:2017-06-21)
参考文献数
97
被引用文献数
1
著者
今村 美穂 牛尼 翔太 宮田 慎吾
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.67-80, 2019-04-05 (Released:2019-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
2

郷土料理としょうゆの相性を検討するために,北海道の郷土料理「芋もち」と全国共通の料理「冷奴」を北海道,関東および九州のしょうゆで調味し,北海道在住の女性6世代(幼児,小学生,中学生,大学生,成人,高齢者)約50人ずつを対象に官能評価を行った。その結果,北海道の郷土料理である芋もちは,香り,色,味のいずれにおいても北海道のしょうゆで調味したものが好まれた。また,印象の評価においても高い評価を得た。冷奴についても,北海道のしょうゆは嗜好性と印象の双方で評価が高かった。なお,地元のしょうゆとその他の地域のしょうゆで調味した料理の評価に違いが現れるのは,中学生ころからであった。さらに,北海道のしょうゆを高く評価した被験者の共通点について検討したところ,芋もちの調味では年代という因子が抽出された。したがって,食生活の内容よりも,北海道に住み,そこで日々の食生活を送ることそのものが地元の味覚を育むために重要と考えられた。
著者
圓口 智子 湯川 夏子 中西 洋子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.166-171, 2016 (Released:2016-05-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究の目的は,乾燥米麹から調製した自家製塩麹のカゼイン分解活性の特性を明らかにすることである。本研究により以下のことが明らかになった。 1) 塩麹のカゼイン分解活性は24℃,7日間の発酵・熟成で84%に低下したが,以後冷蔵庫保存2ケ月間,同レベルの活性を維持した。一方,塩麹の糖度は7日間の発酵・熟成で10%から20%に増加し,以後微増した。塩濃度は調製・保存の全期間を通じて約11%であった。 2) 活性測定に用いた塩麹10倍希釈液によるカゼインの分解は,少なくとも6時間は反応時間に比例して進行した。SDS-PAGEでも,カゼインタンパク質の分解を確認した。 3) 塩麹原液のカゼイン分解活性は,50℃,30分間放置では変化が認められなかったが,さらに高温に放置することにより活性の低下が認められた。 4) 塩麹のカゼイン分解活性は,生姜の約3倍,キウイフルーツの約1/8であった。
著者
高倉,裕
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, 2000-02-20

水,本みりん,煮切りみりんおよびエタノール溶液に豚肉(ヘレ部)を浸漬した時の浸漬液の成分分析を行い,可溶性成分の溶出抑制効果の解明を行った。さらに,加熱処理後の豚肉切断図を電子顕微鏡で観察し,豚肉の筋線維崩壊抑制効果について解明を行った。(1) 豚肉に含まれる可溶性成分の溶出を抑制する調理効果に寄与する浸漬液中の成分は,エタノール及び糖であるが,エタノールまたは糖単独では可溶性成分溶出抑制効果は低く,本みりんのように両成分を含有する調味料がもっとも豚肉の可溶性成分溶出抑制効果が高かった。(2) 豚肉を加熱する前にあらかじめ浸漬調理を行なうと,浸漬液の成分によっては加熱処理した豚肉の筋線維が崩壊するのを抑制する効果があることが明らかとなった。筋線維崩壊抑制効果は豚肉内部で発現しており,エタノール成分が重要な役割を果たしているものと考えられる。(3) 豚肉の筋線維崩壊抑制に寄与する成分は,エタノール及び糖であるが,エタノールまたは糖単独では筋繊維崩壊抑制効果は低く,本みりんのように両成分を含有する調味料が最も筋繊維崩壊抑制効果が高かった。
著者
岡本 洋子 吉田 惠子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.97-102, 2014

味の感じ方に及ぼす温度の影響を調べることを目的に,甘味料および市販甘味飲料を用いて官能評価法によって甘味強度を測定した。甘味料として,スクロース,D-グルコース,D-フルクトース,D-マルトース,エリスリトール,キシリトール,D-ソルビトール,マルチトールの8種類,市販甘味飲料としては11種類を用いた。実験参加者は年齢18~20歳の健康な女子学生27名である。検査の液温は,7°C,25°C(基準),43°Cとした。8種甘味料のうちD-フルクトースおよびキシリトールについては,温度による甘味強度の変化がみられたが,それ以外の甘味料は温度による呈味性の変化はみられなかった。一方,市販甘味飲料については,7°Cでは25°Cに比べ甘味強度が弱く,43°Cでは25°Cに比べ甘味強度が強い飲料が多かった。また,甘味料群では,甘味強度について温度要因の統計的な主効果に有意性はなかったが,市販甘味飲料群では,その効果に有意性がみられた。市販飲料に含まれる甘味料以外の成分について,呈味性に及ぼす影響を検討する必要が示唆された。
著者
深井 洋一 酒井 長雄 齊藤 康一
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.341-350, 2010 (Released:2014-08-22)
参考文献数
21
被引用文献数
1

平成20年に長野県農事試験場で栽培したコシヒカリを用いて,稲の収穫時期別に成熟期前から成熟期後までの6段階について,食味,外観および炊飯品質,官能評価を行った。帯緑5%は,帯緑色籾0%と比して,粒厚分布において2.0mm以上の割合が高い。外観品質は,整粒が有意に高く,胴割粒割合が有意に低い。糊化特性値はブレークダウンが有意に高く,最終粘度およびセットバックが有意に低いことがそれぞれ示された。官能評価は,帯緑5%および帯緑0%の双方ともに他の収穫時期と比して食味が有意に優れた。得られた結果について,主成分分析を行ったところ6試料は3つに大別され,帯緑5%と帯緑0%は第一および第二主成分の正に布置された。因子分析では,官能評価の「硬さ」に関連する負の因子構成,官能評価の「総合」および「味」に関連する正の因子構成がそれぞれ推定された。これらの結果から,帯緑5%の状態で稲を収穫することで,帯緑0%と比して,粒厚分布,外観品質および糊化特性が良質であることが示された。
著者
新野,靖
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, 2003-08-20

The major components, trace elements, ferrocyanide, and viable cell number in common brands of salt were measured. Many types of domestic salt had a significant content of bittern, a lower purity of sodium chloride and less insoluble matter than the imported types. Some imported solar salts contained significant insoluble matter which resulted in contamination by heavy metals. Three of the analyzed samples included 0.5mg/kg of arsenic (the maximum limit according to the Codex Standard for Food Grade Salt) or more, and two samples contained lead or cadmium. Samples with high concentrations of copper, chromium, nickel, and zinc were also found. None of the measured samples had detectable viable cells, and the ferrocyanide ion was contained in four of the imported samples.
著者
柴田 圭子 渡邉 容子 安原 安代
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.304-312, 2008-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
31
被引用文献数
9

和風のだし汁の食味特性を検討するため,かつおだし,煮干しだし,昆布だし,混合だしを日常使用頻度の高い濃度において調製した。更に市販だしも調製した試料と比較した。かつお-昆布だし(かつお2%,昆布1%)は4%かつおだしよりも官能評価では有意に高く評価され,また,抽出を促進する加熱時間の延長はスコアを向上させなかった。かつお-昆布だしをはじめ,煮干し-昆布だし(煮干し2%,昆布1%は)においても,呈味成分(Glu,5′-IMP)の測定,官能評価により相乗効果が確認された。主成分分析の結果より,各単独だしおよび混合だしのそれぞれの持つ特徴が確認できた。即ち,かつおだしはより強い酸味を持ち,煮干しだしは若干の苦味と生臭みを持ち,昆布は穏やかな甘味のあるうま味を持ち,混合だしは単独だしよりも複雑な食味を持っていた。