著者
元田 節士
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.11-15, 1982-01-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1 4

ココア,コーヒーおよび緑茶の抽出液の酵素的褐変をAlternaria tenuis A-2株の生産するポリフェノールオキシダーゼを使用して検討した結果,本酵素により十分に褐変することを見出し本酵素の応用を検討した。醗酵ココア豆の抽出液は未醗酵ココア豆やローストしたココア豆の抽出液よりもより容易に本酵素により酸化された。いずれのココア抽出液も酵素酸化により,一層褐変化した。未醗酵ココア豆を本酵素で処理することによって,醗酵ココア豆に相当する原料ココア豆を調製した。コーヒー抽出液も本酵素で酸化された。酵素酸化によりコーヒー生豆の抽出液は褐色に変化し,ローストしたコーヒー豆の抽出液はさらに褐変化した。市販のインスタントコーヒーを本酵素で酵素処理することによって,より褐変化した着色濃厚なコーヒー飲料を調製した。緑茶抽出液もココアやコーヒーと同様に本酵素によって容易に酸化され,褐変化し,紅茶液に変化した。本酵素を使用して緑茶抽出液を紅茶液に転換しインスタントティーを調製した。
著者
長野 雄治 鮫島 広年 木下 祝郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.213-215, 1969-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
3
被引用文献数
1

(1) 天然米にリジンを20~30%添加する方法を検討した。(2) 精白米ではリジンの浸透吸収は6%にとどまるが,玄米を水浸漬,蒸煮,乾燥後,精米したパーボイルド米ではリジンが最高42%まで吸収されることを認めた。(3) 米の自然の形をそのまま保持し,かつ簡便な操作でリジンを添加するのには,米に対してリジン20%~30%添加が最適であった。
著者
好井 久雄
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.564-570, 1992-06-15 (Released:2010-03-08)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1
著者
石田 欽一 志賀 一三
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.117-121, 1972-03-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
2

乾燥寒天ゼリーの製造過程で,ゼリー原料の濃縮液を冷却,固化する工程の冷却温度条件を検討するため,冷却温度がゼリーの物性に及ぼす影響について調べた。(1) 10℃, 20℃および30℃の各温度で冷却したときのゼリーの破壊荷重の経時的変化を調べ,冷却の温度が低いほどゼリーの破壊荷重が一定値になる時間が早い。しかし,冷却29時間後のゼリーの破壊荷重は冷却温度30℃のゼリーが一番大きく,次いで20℃冷却のゼリーが,そして,10℃冷却のゼリーの破壊荷重が一番小さかった。(2) 冷却の途中で冷却温度を変える変温冷却方式について調べたところ,30℃に一定時間保ち,その後,20℃あるいは10℃に変温したゼリーは,定温で冷却したゼリーよりも破壊荷重の大きいゼリーとなる。一方,はじめに,10℃に保ち,その後20℃に変温したゼリーは,破壊荷重が小さく,冷却初期に10℃に保つことは好ましくない。また,冷却の初期に40℃に保ったときの影響についても調べ,40℃に保つ時間が長くなるに従い,ゼリーの破壊荷重は低下し,あまり高い温度にゼリーを保つこともまた,よくないことを知った。
著者
小宮山 美弘 原川 守 辻 政雄
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.522-529, 1985-07-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
30
被引用文献数
5 6

本邦産果実類14属17種類の成熟期や貯蔵中(20±3℃)における糖含量及び糖組成の変化をHPLCで分析調査し,主要構成糖に基づく果実類の分類と糖組成の変化に対する考察を行った。(1) 果実の主要構成糖はショ糖,ブドウ糖,果糖及びソルビトールであった。(2) 収穫適熟期の果実の糖組成から果実類を分類すると以下のようである。ショ糖型(全糖の50%以上を含む):カキ,モモ,ネクタリン,追熟後のバナナ,完熟期のスモモとメロン;還元糖型(全糖の50%以上を含む):(i) ブドウ糖型(果糖より25%以上多い):オウトウ,ウメ。(ii) 果糖型(ブドウ糖より25%以上多い):リンゴ,ナシ。(iii) 等量型(両者の差が25%以内):イチゴ,ナシ,ウンシュウミカン,トマト;平衝型(ショ糖,ブドウ糖,果糖含量の比が25%以内):イチゴ,スモモ;ソルビトール型:リンゴを除いたバラ科果実全てに含まれ,0.2~1.45%の含量を示す。(3) 成熟期ではイチゴを除いて顕著な全糖分の増加がみられ,なかでもショ糖の増加率が大きいが,完熟期になると減少する果実もみられた。スモモとメロンは他の果実に比較してショ糖の増加は特に顕著であった。(4) 貯蔵中の全糖分は,ウメ,スモモ,メロンのように減少率の大きい果実を除くとその変化は少なかった。構成糖の変化はショ糖の加水分解と思われるブドウ糖と果糖の増加がみられる果実が多く,カキは特に貯蔵後期に顕著であった。ナシ('長十郎')はブドウ糖のみが増加した。ウンシュウミカンではショ糖の著しい増加がみられた。一方ウメは還元糖,スモモとメロンは構成糖の全てが減少した。(5) ソルビトールは成熟期に増加し,貯蔵中で減少した。
著者
安田 俊隆 正木 和好 柏木 隆史
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.994-1000, 1992-11-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
26
被引用文献数
21 37

ダッタンそばに含まれるルチンの分解酵素について,普通そばと比較しながら検討を行った.(1) ダッタンそば粉および普通そば粉のルチン含量は,HPLC分析により,それぞれ1470mg/100g, 14.2mg/10Ogであった.ダッタンそば粉に加水することにより,その大部分のルチンが急速にケルセチンに分解されたが,普通そば粉では殆どルチンの分解はみられなかった.(2) ダッタンそば粉おおび普通そば粉の抽出液について,ルチン分解活性を比較したところ,普通そばがタンパク1mg当たり0.09Uであったのに対し,ダッタンそばはタンパク1mg当たり61Uと約680倍も強い活性を示した.(3) ダッタンそば粉および普通そば粉の抽出液について,ルチンに構造の類似したケルシトリン,ナリンギンに対する分解活性およびβ-グルコシダーゼ活性, α-ラムノシダーゼ活性を測定したところ,ケルシトリン,ナリンギンには分解活性を示さず,またβ-グルコシダーゼ活性, α-ラムノシダーゼも非常に弱かった.(4) ダッタンそばのルチン分解酵素について,熱,pH,タンパク変性剤の影響をみたところ. 70℃以上,pH3以下, pH7以上で急速にルチン分解活性を失い,タンパク変性剤によっても活性の低下がみられた.
著者
松井 利郎 桑原 滋 伊福 靖 下田 満哉 筬島 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.116-121, 1991-02-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
12
被引用文献数
2

柑橘果皮油のテルペンレス化を目的として,減圧(4~5mmHg)の蒸留法の適用を試みた.モデル系を用いて,以下のことを明らかにした.1) リモネンとシトラール2成分系で,リモネンの分別蒸留を試みたところ,沸点はリモネン濃度の低下とともに上昇し,特に体積分率が0.4以下で顕著であった.2) リモネン,リナロール,シトラール3成分系においては,リモネンの濃度は60℃まで顕著に減少し,それ以上ではほぼ一定となった.一方,リナロールの沸点は61℃であったことから70℃付近までは含有率が顕著であったが,それ以降では含有率は急激に低下した.従って,目的とする組成のテルペンレスオイルを作製するには抽出温度の設定が重要となることが明らかとなった.つぎに実試料のテルペンレス化を試み,以下のことを明らかにした.3) レモン果皮油のテルペンレス化は60℃, 30分間で最大となり,リモネン含量は約1/26に減少した.一方,シトラールは50℃でテルペンレス化を行ったとき最も効率よく濃縮され,全体の約27%を占めた.4) バレンシアオレンジ果皮油においては,香気寄与の高いリナロールの含量が50℃, 30分間の蒸留で約7倍となり,より芳香性に富むオイルを得ることができた.
著者
新原 立子 米沢 大造
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.10, pp.522-527, 1981-10-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
7
被引用文献数
3 2

1. 脂肪酸とモノグリセリドは小麦デンプン糊化時の膨潤を抑制したが,高温(95℃)に加熱すると膨潤抑制効果は消失した。卵黄レシチンは膨潤をいくぶん促進し,綿実油は添加効果がほとんど認められなかった。2. 小麦粉にオレイン酸を添加すると,小麦デンプンの場合と異なり,高温糊化時の膨潤が抑制された。この現象は食塩の存在でさらに顕著に認められた。3. 脱脂小麦粉の稀食塩水抽出液中でオレイン酸を含む小麦デンプンを糊化させると,高温においても膨潤抑制効果が認められた。4. 小麦粉稀食塩水可溶物質のひとつとして,タンパク質の寄与を調べるために,牛血清アルブミン,同α-グロブリン,小麦グルテンを小麦デンプン・脂肪酸系に添加して高温糊化時の膨潤性を調べたところ,食塩水中でのグルテンの添加を除き,いずれも添加効果が認められた。とくに食塩共存下の牛血清α-グロブリンの寄与は大きく,微量の存在で効果が認められた。5. このような,脂肪酸存在下でおこる小麦デンプンの膨潤抑制に対するタンパク質の寄与は単なるpH調節作用とは考えられない。以上より,小麦粉は脂肪酸と食塩の共存により高温糊化時もデンプンの膨潤はおさえられるが,それは小麦粉中のタンパク質の寄与によるものであることを結論した。そして脂肪酸,タンパク質,食塩の存在によるデンプンの膨潤性の低下が,厄後の手延素麺におけるゆで麺の膨潤性の低下の一因であることを指摘した。

1 0 0 0 OA 糖アルコール

著者
柏木 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.308, 1993-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
2
被引用文献数
1

1 0 0 0 OA 魚貝類の味

著者
鴻巣 章二
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.20, no.9, pp.432-439, 1973-09-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
36
被引用文献数
25 34
著者
伊藤 三郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.311-322, 1980-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
30
被引用文献数
1
著者
佐々木 弘子 酒井 登美子 青柳 康夫 菅原 竜幸
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.107-112, 1993-02-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

干し椎茸の水もどしおよび加熱加工におけるγ-GT活性,香り物質であるレンチオニン量の変化について検討を加えた. (1) 干し椎茸の水もどし後のγ-GT活性の変化は,温度が高温であるほど,減少が著しく,加熱過程中においては,加熱5分後にほぼ完全に失活していた. (2) 干し椎茸のレンチオニン量は,水もどし直後では浸漬温度が高いもの程多く,低温のもの程少なかった.また10分加熱後のレンチオニンの増加の割合は水もどし温度が高いもの程小さく,低温のもの程大きかった.20分加熱時ではレンチオニンは急激に減少したが,5℃で水もどしをしたものには比較的残存していた.40分加熱時ではレンチオニンはほとんど残存していなかった.
著者
蟹沢 恒好 伊藤 秀一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.477-482, 1984-08-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
7
被引用文献数
1

(1) 培養液にエタノールを添加,蒸留し,留液をガスクロマトグラフにかけることよりなるメチルケトン類の簡便な分析定量法を確立した。(2) 市販ブルーチーズよりPenicilliumに属する菌株を分離し,C. Cylindracea lipase処理した乳脂肪に作用させたところ,一様にメチルケトン様フレーバーを生成した。これら菌株の中より,有用株TK-2068を選定した。生成主要メチルケトンはC3, C5, C7, C9, C11, C13のn-2-アルカノンであった。(3) 効率よくメチルケトン類を生成させるための,基質とTK-2068株の接触方法は,まず麦芽エキス,ホエーパウダーなどを主原料とする培地に菌糸,胞子をよく形成させたのち基質を添加接触させる方法であった。(4) 天然の基質として,リパーゼ処理全乳粉末,クリーム,バターについて検討し,いずれからもメチルケトン類がよく生成されることが認められた。フレーバープロフィルは全乳からのものがよりブルーチーズ的であり,バターからのものはより純粋なメチルケトン混成物に近いフレーバーを与えていた。(5) 極端に遊離脂肪酸プロフィルの異なるCalf pregastric esterase処理全乳粉末からも,C. cylindracea lipase処理品からのものとほとんど変らないメチルケトンプロフィルが生成された。ただし全体の生成量は小さかった。(6) 合成脂肪酸混成物からもメチルケトン類は生成されたが,乳脂肪のリパーゼ処理物を基質とした場合に比べ,生成量は少なく,かつそのプロフィルにもかなりの差が見られた。
著者
真鍋 勝 松浦 愼治
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.275-279, 1972-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1 7

みそ仕込みの時点にアフラトキシンが混入していた場合,みそ醸造中にはたしてアフラトキシンが分解されるか否かについて検討を加えた。(1) みそ醸造中のアフラトキシンの分解を調べる場合の基礎的実験として,水素イオン濃度の違いによるアフラトキシンの分解を調べた結果,アフラトキシンB1, G1ともにpH 4~5の範囲で安定であり,pH 1とpH 9~10でよく分解していた。pH 1~3においては,アフラトキシンB1とG1はそれぞれアフラトキシンB2aとG2aに変わることがわかった。(2) 全国各地より集めた種々のタイプのみそ95点についてpHを調べた結果,大部分がpH 4.6~5.4の間に入っており,水素イオン濃度によるアフラトキシンの分解は考えられないことがわかった。(3) みそ醸造中の添加したアフラトキシンの分解試験結果では,アフラトキシンB1とG1は醸造の初期に分解が認められるが,その後の分解は少なかった。またアフラトキシンB2とG2については,ほとんど分解が認められなかった。以上のことより,みその仕込み段階にアフラトキシンが混入した場合,みその醸造中には完全に分解されることはないことがわかった。
著者
原川 守 辻 政雄 小宮山 美弘
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.119-124, 1981

シアン化合物を含む雑豆(バター豆)を用いて製あん工程を改善し,安全でかつ合理的製造方法を確立することを目的とし,まず現在操業中の新旧の典型的な2工場の工程解析を行った。<BR>現在の食品衛生法に準拠して製造した場合,製品に遊離シアンは検出されなかったが,渋切りや煮熟が不十分であると定量値も高く検出されやすかった。一方遊離したシアンの一部は排水中に流出し,特に豆の浸漬温度が高い場合の排水に多かった。浸漬工程でのシアン遊離率(シアン化合物分解率)は新しい工場で30.2%,古い工場で21.3%であった。
著者
加藤 丈雄 清水 健司 原田 昭夫 佐藤 泰
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.344-349, 1991

乳酸菌スターターをを10<SUP>7</SUP> cells/g添加して37℃で発酵することによりソーセージ内部の<I>Staphylococcus aureus</I>の生育は阻止されたが,ソーセージ表面の<I>S. aureus</I>の生育は阻止されなかった.ソーセージに乳酸菌スターターを添加し,直ちに乳酸菌の最適温度で短時間くん煙処理を行うことにより,ソーセージ表面及び内部における<I>S. aureus</I>の増殖とエンテロトキシン産生を効果的に阻止することができた.また,このようなくん煙処理は実質的にソーセージの乳酸発酵に影響しないと考えられた.
著者
石井 智恵美 鈴木 敦子 倉田 元子 表 美守
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.984-987, 1990-12-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
22
被引用文献数
2

アントシアニン色素の熱安定性を明らかにするため,ナス果皮の凍結真空乾燥粉末およびこの粉末より0.1%塩酸-メタノールで抽出した粗色素液を用いて検討した.色素抽出液のアントシアニンの熱分解は50℃と60℃で,また凍結乾燥粉末のそれは100℃, 120℃で行い,経時的なアントシアニンの残存率を測定した.得られた結果はアントシアニンの分解の速度論的データ(k, 4△G≠, Ea, △艾H≠, △S≠)を用いて示した.1) 0.1%塩酸-メタノール液中の総アントシアニンの褪色は,熱安定性を検討する上で変化が明確であり再現性も良い.特にナスニンは光の影響を受けにくかった.2) 凍結真空乾燥粉末を用いた場合は, 100℃, 120℃加熱とも60分までは総アントシアニン残存率,反応速度とも大きな変化が見られなかった.加熱時間が120分になると, 120℃加熱において速やかなナスニンの分解が観察された.